(熱中症の概要 熱中症の概要 恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。 体は熱を生産したり放散したりして、体温を調整します。... さらに読む も参照のこと。)
何時間も運動した若い運動選手や、暑い季節に冷房のない屋内で何日も過ごした高齢者などに起こることがあります。
体温は40℃を超え、脳の機能障害が起こります。
直ちに体を冷やす必要があります。
熱射病は、 高温によって引き起こされる病気 熱中症の概要 恒温動物である人間の体温は、外気温の変動にかかわらず、口腔温では37℃前後、直腸温では38℃前後に保たれています。体が正常に機能するためには、この体温を保つ必要があります。体温が上昇しすぎたり、逆に下がりすぎると、臓器に深刻な損傷が生じたり、死に至ることがあります。 体は熱を生産したり放散したりして、体温を調整します。... さらに読む の中で最も重い病態です。他の熱中症よりもはるかに重症です。他の熱中症との主な違いは以下の通りです。
体温が通常40℃を超える。
脳機能障害の症状が現れる
熱射病は、極度の高温環境で体を動かしている人や、閉め切った暑い場所で過ごしている人などで、かなり急速に起こります。例えば、健康な若い運動選手や兵士が、特に高温多湿の環境に順化していない場合に、そのような環境で数時間激しい運動をした後などに起こります。高温環境で作業をする人、特に消防士や鋳物工場の労働者など、厚い防護服を着用しなければならない人にも、同様のリスクがあります。運動選手において、熱射病は一般的な死因です。
また、暑い季節に、換気が悪く冷房のない屋内に、何日もじっとしている高齢者などにも起こります。高齢者、ある種の病気(心臓や肺、腎臓、肝臓の機能障害を伴う病気など)がある人や幼児が、特に熱射病にかかりやすい人です。小児を暑い車内に残したままにすると、急速に熱射病にかかる可能性があります。
熱射病は、非常に暑いときに体から熱を速やかに放散できないために起こります。体がうまく体温を下げられないために、体温が急激に上昇し続け、危険なレベルにまで達します。特定の皮膚の病気がある場合や、発汗を抑える作用のある薬を使用している場合など、熱の放散を妨げる状態にあるとリスクが高まります。
熱射病は心臓、肺、腎臓、肝臓、脳などの重要臓器に一時的な損傷、あるいは永続的な損傷を与えます。体温が高くなるほど、特に41℃を超えると、より急速に障害が進みます。死に至ることもあります。
熱射病の症状
めまい、ふらつき、脱力感、動きのぎこちなさと協調運動の障害、疲労、頭痛、かすみ目、筋肉痛、吐き気と嘔吐など(これらは熱疲労の症状でもあります)が、熱射病でよくみられる注意すべき症状です。熱射病にかかっている人は体温の著しい上昇を感じません。
熱射病では皮膚は熱く赤くなり、乾燥することもあります。暑くても汗が出ないこともあります。
脳の機能障害が起こるため、錯乱や見当識障害のほか、けいれん発作が生じたり、昏睡状態に陥ったりすることもあります。心拍数や呼吸数は上昇し、脈拍は速くなります。血圧の上昇や低下もみられます。
体温は40℃を超え、普通の体温計では測れないほどの高熱になることもあります。
熱射病の診断
症状と、高温多湿にさらされたという事実
熱射病の診断は状況に基づきます。高熱や脳機能障害の症状、高温多湿の環境にいたという事実です。
診断を確定できない場合は、感染症や脳卒中、薬物使用、 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態で、甲状腺ホルモンの値が高く、身体の重要な機能が働く速度が上昇します。 バセドウ病は甲状腺機能亢進症の原因として最もよくみられます。 心拍数と血圧の上昇、不整脈、過剰な発汗、神経質や不安、睡眠障害、意図しない体重減少、排便回数の増加などの症状がみられます。 診断は血液検査により確定されます。 甲状腺機能亢進症の管理には、チアマゾールまたはプロピルチオウラシルが用いられます。 さらに読む など、似たような症状を引き起こす他の病気がないか、検査を行って調べます。
熱射病の予後(経過の見通し)
熱射病による死亡のリスクは、以下の要因によります。
成人の場合、どれぐらい年齢が高いか
小児の場合、どれぐらい年齢が低いか
医学的な疾患(心臓や肺、腎臓、肝臓の病気など)の重さはどの程度か
どこまで体温が上昇したか
極度の高熱がどれぐらい長く持続したか
迅速に治療しなければ、約80%の人が死亡します。生存者の約20%で、脳の損傷が完全に回復せずに、人格変化、運動障害、協調運動の障害が残ることがあります。人によっては腎臓が完全に回復しないことがあります。
回復後も、体温の異常変動が何週間も持続することがあります。
熱射病の治療
冷水に浸すことによる冷却
蒸発冷却
ときに冷却輸液
熱射病では直ちに体を冷やし、救急車を呼ぶべきです。病院への搬送を待つ間、湖や河川、水の入った浴槽など、冷水に体を浸します。冷水に体を浸すことができない場合は、体に水の霧を吹きかけて、扇風機で風をあてます(蒸発冷却)。霧吹きには、冷水よりもぬるま湯を用いる方がよいでしょう。そうすれば、ふるえによる熱生産を防ぐことができます。
アスピリンやアセトアミノフェンなど、感染症による発熱を治療する薬は効果がないため、避けるべきです。
病院では衣服を脱がせ、体を水に浸したり、氷で覆って急速に体温を下げます。蒸発と冷却を速めるために、扇風機で風をあてる場合もあります。こまめに体温を測り、多くの場合は、計測し続けます。静脈から冷たい輸液を投与することもあります。冷やしすぎを避けるため、体温が約39℃まで下がったところで冷やすのをやめます。
けいれん発作や昏睡、脳以外の臓器の機能障害があれば、その治療も必要です。熱射病では、病院の集中治療室での治療が最善です。