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溺水

(死に至る溺水、死に至らない溺水)

執筆者:

David Richards

, MD, Department of Emergency Medicine, University of Colorado School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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本ページのリソース

溺水は、水中で窒息したり、呼吸が妨げられたりしたときに起こります。

  • 溺水中は、体内の酸素が枯渇することで、特に肺や脳などの臓器に損傷が生じます。

  • 患者を診察する医師は、酸素の欠乏や溺水でしばしばみられる異常(飛び込んだ際に生じる脊椎損傷など)がないか評価します。

  • 治療では、酸素の欠乏とその他の問題の改善に重点が置かれます。

溺水には、死に至らない場合と死に至る場合の両方が含まれます。死に至らなかった溺水で入院する人は、溺水で死亡する人の約4倍います。

溺水は、事故による10大死亡原因の1つです。米国では溺水は、不慮の死の原因の第10位です。2013年、米国では溺水は、外傷による死亡原因として、1歳~4歳までの小児では第1位であり、5歳~14歳の小児では自動車衝突事故に次いで第2位でした。このほかに、溺死のリスクが高いグループには以下のものが含まれます。

  • アフリカ系アメリカ人の子ども、移民や貧困層の子ども

  • 男性(1歳以上の溺死者の80%)

  • 飲酒した人または判断力や意識レベルに影響を与える薬を服用した人

  • けいれん発作などの一時的に能力を失う病気のある人(小児および青年において溺水の可能性が20倍高くなります)

  • QT延長症候群がある人(泳ぐことである種の不規則な心拍[不整脈]が引き起こされる可能性があります)

  • 危険な水中息こらえ行為(DUBB:dangerous underwater breath-holding behavior)をする人

溺水は、プール、浴槽、自然の水場で多く起こります。小児やよちよち歩きの幼児の場合、水に落ちてしまうと脱出ができないため、トイレ、浴槽、バケツの水、その他少量の水でも溺水のリスクがあります。

飛び込み(特に浅い水への飛び込み)は、溺水の可能性を高める脊椎損傷頭部外傷を引き起こすおそれがあります。

危険な水中息こらえ行為(DUBB:dangerous underwater breath-holding behavior)とは、水中にもぐっていられる時間を延長しようとして行われる行為のことで、たいてい若い健康な男性(特に泳ぎのうまい人)が行います。DUBBには以下の3種類があります。

  • 意図的な過呼吸(Intentional hyperventilation):水にもぐる前に急速に呼吸することで、二酸化炭素レベルが低下するため、二酸化炭素レベルが再度上昇するのに時間がかかり、水面に浮きあがり呼吸するようシグナルが送られるのが遅くなります。

  • 低酸素トレーニング(Hypoxic training):息を継がずに泳げる距離または息を止めていられる時間を長くしようとすること。

  • 静的無呼吸(Static apnea):水中にもぐって息を継がずにできるだけ長くじっとしたままでいること(競技を含む)。

DUBBでは、意図的に水中で長時間息を止めることにより、意識を失って失神し(低酸素性の失神[hypoxic blackout]または息止めによる失神[breath-hold blackout])、ときに溺水することがあります。

知っていますか?

  • 水中で泳ぐ前に急速に呼吸をして(過換気)、呼吸を止めておける時間を長くしようとすると、溺水のリスクが高くなります。

溺水による酸素欠乏

水中に沈むと、次の2つのうちいずれかが起こります。

  • 水が肺に入る。

  • 一時的に声帯が激しくれん縮し、肺に水が入るのは避けられるが、呼吸が妨げられる。

どちらの場合でも、肺は酸素を血液中に送れなくなります。血液中の酸素レベルが下がると、脳に損傷が起こり、死に至る場合があります。

大量の水が肺に入ると、直ちに溺水します。より少量の水でも、特にその水が細菌、藻類、砂、泥、化学物質、吐いたものなどで汚染されている場合は、肺が損傷することがあります。この病態は水中から出て数時間経過して初めて現れるため、ときに二次性溺水と呼ばれることがあります。肺の損傷は継続的な酸素欠乏を引き起こす傾向があります。肺にたまった淡水は血液中に吸収されます。

声帯れん縮は、水中から出た後に初めて起こることもあります。その場合、通常は数分以内に起こります。水が肺に入るわけではないため、この病態は乾性溺水と呼ばれることがあります。

冷水でおぼれたときの影響

おぼれた水が冷たいと、良い面と悪い面があります。筋肉が冷やされると泳ぐのが困難になり、危険なほど体温が低下し(低体温症)、判断能力が損なわれることがあります。しかしながら、水が冷たいと酸素不足の悪影響から組織が保護されます。それに加え、冷水は哺乳類に特有の潜水反射を刺激するため、水中での生存時間が長くなります。潜水反射では、心拍が遅くなり、血液が手、足、腸管などから心臓や脳へとシフトすることで、これらの重要臓器を維持する助けとなります。潜水反射は、成人より小児により顕著にみられるため、小児は成人よりも、冷水中での生存の可能性が高くなります。

知っていますか?

  • 小児は成人よりも、長時間水に沈んだ場合の生存率が高くなります。

症状

おぼれかけている人や、呼吸ができずにあえいでいる人は、自分で助けを呼ぶことができません。泳ぐことのできない小児は1分以内に沈みます。成人はもっと長くもがきます。

救助された人の症状や所見は様々です。軽い不安だけの場合もあれば、臨死状態の場合もあります。意識がはっきりしていることもあれば、もうろうとしていたり、昏睡状態に陥っていたりすることもあります。呼吸をしていない場合もあります。呼吸をしていても、あえいでいたり、嘔吐したり、せきこんだり、ゼーゼーしていたりすることもあります。皮膚は青っぽくなることがありますが(チアノーゼ)、これは血液中の酸素が不足していることを示しています。呼吸の異常は、おぼれてから数時間後に現れる場合もあります。

溺水の合併症

長時間水中に沈んだ後、蘇生した人には、酸素欠乏による永久的な脳の損傷が残ることがあります。外来粒子を吸い込むと、二次性溺水を起こし、誤嚥性肺炎急性呼吸窮迫症候群を併発して呼吸困難が長期化することがあります。こういった呼吸困難の症状は、水中から出て数時間経過して初めて現れたり重症化したりすることがあります。冷水でおぼれた場合、しばしば低体温症になります。

診断

  • 医師による症状の評価

  • 血液中の酸素レベルの測定

医師は発生状況と症状を基に溺水の診断を下します。血液中の酸素レベルの測定と胸部X線検査は肺の損傷程度を明らかにするのに役立ちます。体温を測り、低体温症になっていないか確認します。

頭部外傷または脊椎損傷を診断するため、X線検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査など、その他の検査が行われることがあります。溺水の一因となった病気を診断するため、心電図検査やときに血液検査が行われることもあります。例えば、未診断のある種の不整脈は、水泳中に意識障害を引き起こすことがあります。

溺水の予防

泳ぐとき、ボートに乗るとき(乗客としての場合を含む)、水場で子どもを見張るときは、その前やその最中に飲酒したり薬剤を服用したりすべきではありません。

水場での安全対策と子ども

プールは溺水事故の最も多く発生する場所の1つであるため、フェンスで囲うべきです。さらにプールに通じるすべての扉や門に鍵をかけておくべきです。小児がプールや浴槽などの中にいるときや近くにいるときには、浮き袋などの使用の有無にかかわらず目を離さないようにすることが必要です。腕が届く距離で目を離さないようにするのが理想的です。乳児や幼児はたった数センチメートル程度の深さの水でもおぼれることがあるため、水を入れてあればバケツやアイスボックスなどにも十分注意する必要があります。こういった容器に水を入れる場合は、使い終わったらすぐに水を抜いておくべきです。

幼い小児を水の近くで遊ばせる際には、アメリカ沿岸警備隊が認定したライフジャケット(救命胴衣)を着用させるべきです。水泳補助用の空気の入った用具やスポンジ製の玩具(アームヘルパー、プールスティックなど)は、水中での安全を確保する目的でつくられているわけではないため、沿岸警備隊が認定した救命胴衣の代わりにはなりません。

1~4歳の小児では、正式な水泳のレッスンを受けさせることで死に至る溺水のリスクを減らすことができます。水泳のレッスンを受けさせることは、すべての小児に勧められます。ただし、水泳のレッスンを受けた小児でも、水の近くでは十分な監視が必要です。

水泳時の安全対策

水泳するときは、常識的な注意を怠らず、天候や水の状態に気を配りましょう。泳いでいて寒いと感じたり、泳いでいる人が寒そうに見えたりする場合、水泳は切り上げましょう。けいれん発作があってもうまくコントロールされていれば、水泳を禁止する必要はありませんが、ボート遊び、シャワー、入浴をするときなど水の近くでは十分に注意することが必要です。

溺水のリスクを減らすためには、1人では泳がず、ライフガードの警備がある場所でのみ泳ぐようにするべきです。海で泳ぐ場合は離岸流(岸から離れる強い流れ)を避ける方法を学び、流されたときは岸に向かう方向ではなく岸に平行に泳ぐようにします。DUBBをする場合は監督の下に行い、この行為の危険性を認識しておくべきです。再度泳ぐ際に、食後1時間経過するのを待つ必要はありません。

知っていますか?

  • 再度泳ぐ際に、食後1時間経過するのを待つ必要はありません。

水場でのその他の安全対策

ボートに乗るときは全員が沿岸警備隊認定の救命胴衣を着用することが望ましく、特に泳げない人や年少の小児には必ず着用させます。脊椎損傷を防ぐため、水深の浅い所での飛び込みは避けます。

公共の遊泳場所は、水場での安全対策、蘇生、救助の訓練を積んだライフガードが監視する必要があります。救命浮輪、救命胴衣、および先端の曲がった水難救助用の棒(shepherd's crookと呼ばれます)をプールサイド付近で使用できるようにしておくべきです。プールサイドには自動体外式除細動器、気道を開通させる器具、救急隊を呼ぶための電話を備え付けておくべきです。地域での包括的な予防プログラムでは、以下の点を実施すべきです。

  • 高リスクのグループを対象とする

  • できるだけ多くの青年と成人に心肺蘇生の方法を教える

  • 小児にできるだけ早い時期に泳ぎを教える

予後(経過の見通し)

脳や肺への永続的な損傷を残さずに生存できる可能性を上げる要因には、以下のものがあります。

  • 速やかな蘇生の開始(最重要)

  • おぼれた時間が短い

  • 低水温

  • 年が若い

小児は、冷たい水の中でなら最大60分間浸かっていても恒久的な脳の損傷を残さずに回復することがあります。心肺蘇生が必要となった人でも多くが完全に回復し、病院に搬送された時点で意識が清明な人であればほぼ全員が完全に回復します。おぼれる前にアルコール飲料を飲んでいると、死亡したり、脳や肺に損傷を残したりする可能性が高くなります。

治療

  • 人工呼吸および心肺蘇生

  • 酸素

病院に着くまでの治療

脳に損傷を残さず生存させる率を高めるための鍵は、その場ですぐに蘇生を施すことです。おぼれている時間が長かった人に対しても、あきらめずに蘇生を試みるべきです。必要に応じて人工呼吸と心肺蘇生を行うべきです。心肺蘇生が必要になる他の状況とは異なり、溺水の場合は胸骨圧迫の前に人工呼吸を始めます。

脊椎損傷の可能性がある場合は、首をできるだけ動かさないようにします。おぼれた人や症状のある人は、病院に搬送しなければなりません。可能であれば救急車を使いましょう。おぼれても症状が軽ければ、救急外来で数時間経過を受けてから家に帰れる場合もあります。数時間症状が持続している場合や、血液中の酸素レベルが低い場合は入院が必要です。

病院での治療

ほとんどの人は酸素吸入が必要になり、高濃度の酸素や人工呼吸器を使った高い圧力での吸入が必要になる場合もあります。ゼーゼーという音(喘鳴[ぜんめい])を発しているときには気管支拡張薬が役立ちます。感染症が生じた場合は、抗菌薬を投与します。

冷たい水でおぼれた場合は、体温が低く危険な状態(低体温症)となっていることがあるため、体を温めなければなりません。脊椎損傷がある場合は専門の治療が必要です。

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