米国における動物による咬み傷の大半はイヌとネコによるものです。傷口はできるだけ早急に洗浄し治療する必要があります。
(咬み傷と刺し傷に関する序も参照のこと。)
どんな動物も咬むことはありますが、米国における咬み傷の原因のほとんどはイヌと、イヌよりはかなり少ないですがネコによるものです。家庭用のペットとして一般化しているため、自分の飼い主やなわばりを守ろうとして起きるイヌによる事故が、動物による咬み傷の大部分を占めています。毎年10~20人がイヌに咬まれたことが原因で死亡しており、その大半は小児です。ネコは自分のなわばりを守るためではなく、主に人間がネコを押さえつけようとするか、ネコ同士のけんかを止めようとしたときなどに咬みつきます。ウマやウシ、ブタなどの家畜が咬みつくことは多くはありませんが、咬まれた場合は、体が大きく力が強いことから重傷になります。野生動物に咬まれることは非常にまれです。
イヌの咬み傷の多くはギザギザで裂けたような傷口になります。ネコの咬み傷は深部まで達し、頻繁に感染を起こします。傷口が感染すると痛みや腫れがみられ、赤くなります。
狂犬病は、感染している動物(最も多いのはコウモリ、アライグマ、キツネ、スカンクなど)を媒介として伝染します。米国ではワクチン接種が普及しているため、ペットが狂犬病にかかっていることはまれですが、発展途上国ではワクチンが接種されていない動物が多いため、ペットに咬まれて狂犬病に感染することもあります。リス、ハムスターなどのげっ歯類による咬み傷で狂犬病に感染することはめったにありません。
治療
動物に咬まれたら、まず応急処置を受け、その後は速やかに医師の診察を受ける必要があります。できれば飼い主は咬みついた動物を檻に閉じこめるようにします。咬みついた動物がつながれていない場合は、咬まれた人は捕獲しようとしてはいけません。警察に連絡をし、適切な専門家に依頼して動物に狂犬病の徴候がないかを調べてもらうようにします。
処置としては、医師が滅菌された食塩水(生理食塩水)で咬み傷を洗い流した後、石けんと水で洗浄します。傷口が裂けているときや、ギザギザになっているときなどは傷口の端を整えます。
顔面への咬み傷の場合外科的に縫合します。傷が軽い場合や、刺し傷、手の咬み傷は縫合しません。
抗菌薬を内服して感染を予防することもあります。咬み傷が感染を起こしている場合は、外科的ドレナージや抗菌薬の静脈への投与もしくはその両方が必要となります。