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ねんざとその他の軟部組織の損傷の概要

執筆者:

Danielle Campagne

, MD, University of San Francisco - Fresno

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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ねんざは、靱帯(骨と骨をつなぐ組織)の断裂です。その他の軟部組織の損傷には、筋肉の断裂(挫傷)や腱(筋肉と骨をつなぐ組織)の断裂などがあります。

  • 筋肉、またはそれらをつなぐ組織に起こる損傷は、ほとんどが外傷や酷使によるものです。

  • 損傷した部位には痛みが生じ(特にその部位を使うとき)、通常は腫れ上がり、あざができることがあります。

  • 骨折、脱臼、血管や神経の損傷、コンパートメント症候群、感染症、長期に及ぶ関節の問題など、他のけががあったり、発生したりすることもあります。

  • 症状、けがをした状況、身体診察の結果に基づいて診断されることもありますが、ときにはX線検査などの画像検査が必要になることもあります。

  • ほとんどの損傷は、問題をあまり残さずによく回復しますが、治癒にかかる期間は患者の年齢やけがの種類と重症度、他の障害など多くの要因によって異なります。

  • 損傷の種類と重症度に応じて各種の治療が行われ、具体的には、鎮痛薬の投与や、PRICE(保護、安静、氷冷、圧迫、挙上)、損傷部の固定(ギプスや副子による)などがあり、ときに手術が行われます。

骨と筋肉、およびそれらをつなぐ組織(軟部組織と呼ばれる靱帯や腱などの結合組織)は筋骨格系を構成します。これらの構造は人体を形作り、安定させ、動作を可能にします。

筋骨格系の組織は、以下のように様々な損傷を受けます。

  • ねんざ:靱帯(骨と骨をつなぐ組織)が断裂することがあります。

  • 挫傷:筋肉が断裂することがあります。

  • 腱断裂:腱(筋肉と骨をつなぐ組織)が断裂することがあります。

  • 骨折:骨はひびが入ったり折れたりすることがあります。多くの場合は、周囲の組織も損傷を受けます。

  • 脱臼:関節部の骨は互いに完全に離れたり(脱臼)、部分的に位置がずれたり(亜脱臼)することがあります。

ねんざや挫傷など、筋骨格系の損傷は、重症度も必要な治療も多種多様です。

ねんざと挫傷には以下の重症度があります。

  • 軽度(1度):筋肉や靱帯の線維が伸びているものの断裂してはいないか、数本の線維だけが断裂している。

  • 中等度(2度):線維の一部~ほぼすべてが断裂している。

  • 重度(3度):すべての線維が断裂している。

も完全に断裂する場合と部分的に断裂する場合があります。腱が完全に断裂すると、通常は患部を動かすことができなくなります。腱の断裂が部分的なものであれば患部を動かすことはできますが、腱の断裂状態が続いて、やがて完全に断裂することもあります。とりわけ、患部に強い力がかかっていると、そうした結果がよくみられます。

靱帯、腱、筋肉の部分断裂は、多くが自然に治ります。

完全断裂にはしばしば手術が必要になります。

骨折や脱臼の際に、筋肉などの軟部組織に重篤な損傷が生じることがあります。皮膚、神経、血管、臓器も損傷を受けることがあります。こうした損傷によって、一時的または永続的な問題が生じることがあります。

ほとんどの場合、軟部組織の損傷は腕や脚に起こりますが、背中など、あらゆる部位に損傷の可能性があります。

原因

軟部組織やその他の筋骨格系の損傷が起こる最も一般的な原因は外傷です。

外傷には次のような種類があります。

  • 転倒や自動車事故、一部のスポーツ(例えばアメリカンフットボール)などで、直接的な力が加わって起こるもの

  • 日常生活で行う動作や振ったり持ち上げたりする動作によって、繰り返し摩耗や裂傷が生じて起こるもの

  • 運動選手の過剰なトレーニングなどで起こる、体の使いすぎによるもの

損傷の重症度は加わった力の強さに左右される部分があります。

ねんざと挫傷はよく起こるスポーツ外傷です。例えば、走っている時(特に方向を急に変えた時)や筋力トレーニングの際(例えばウェイトリフティングをする人が、ウェイトをゆっくり滑らかに動かすのではなく、急に落としたり引き上げたりした場合)に起こることがあります。

症状

軟部組織の損傷で最も明らかな症状は、次のものです。

  • 痛み

損傷した部位は痛み、その部位を使ったり体重をかけたりすると、特に強く痛みます。損傷部位周辺を押すと痛みます。ほかにも次のような症状があります。

  • 腫れ

  • あざまたは変色

  • 筋肉のけいれん

  • 損傷部位で通常の動作ができない

  • 感覚を喪失している可能性(しびれや異常な感覚)

  • 患部の見た目にゆがみ、曲がり、位置のずれがある(骨折や脱臼も起こったことが疑われる)

多くの場合、損傷した部位(腕、脚、手、手足の指など)は、動かすと痛むか、構造(筋肉、腱、靱帯)の損傷のために、普段通りに動かすことができません。

数時間後に腫れが生じることもあります。この期間に腫れが生じなければ、重度のねんざの可能性は低くなります。

皮膚の下で出血が起きると、あざが現れます。損傷した組織の破れた血管から出血します。皮下出血のあざは最初は黒ずんだ紫色ですが、血液の分解と再吸収が進むにつれて、徐々に緑色や黄色になっていきます。血液は損傷部位からかなり遠くまで広がることがあり、あざが広範囲に及んだり、けがの患部から離れた位置に生じたりする場合もあります。例えば、前頭部の皮下出血によって、後に眼の下にあざが現れることがあります。血液が再吸収されるまでには数週間かかります。血液によって、周囲の組織に一時的な痛みやこわばりが起こることがあります。

損傷した部位を動かすと強く痛む場合、患者は患部を動かそうとせず、また動かすことができません。話すことができない患者(幼児や高齢者など)では、損傷を受けていても、その部位を動かすことを嫌がる以外に、徴候がみられない場合もあります。しかし損傷があっても、患者が患部を動かしている場合もあります。それゆえ、患部を動かすことができれば損傷がない、とは言い切れません。

合併症

軟部組織の損傷は、他の問題(合併症)を伴っていたり引き起こしたりすることがあります。例えば、損傷を受けた腕や脚が正常に機能することができなくなることがあります。ただし、重篤な合併症はまれにしか発生しません。皮膚が破れていたり血管や神経が損傷していたりすると、重篤な合併症のリスクが高くなります。

一部の合併症(血管や神経の損傷など)は、損傷後、最初の数時間から数日の間に発生します。ほかには、時間が経過するにつれて発生する合併症(関節や治癒の問題など)もあります。

出血

軟部組織の重大な損傷は、皮下出血(あざ)を引き起こします。

血栓の形成を予防する薬(抗凝固薬)を服用している人は、比較的軽い外傷でも大量に出血することがあります。

血管の損傷

重度のねんざ(例、膝のねんざ)に見えるものが、自然に元の位置に戻った脱臼であることがまれにあります。このような脱臼によって動脈が損傷し、患部の腕や脚への血液供給が妨げられることがあります。血液の供給が阻害されても、損傷後の数時間は症状が現れないケースもあります。治療しなければ、そうした損傷によって腕や脚を失う可能性があります。

神経の損傷

神経が伸ばされたり、打撲を受けたり、押しつぶされたりすることがあります。直接的な打撃によって、神経が打撲したり押しつぶされたりします。打撲よりも、押しつぶされた方が重い損傷につながります。通常、こうした損傷は自然に治癒しますが、回復に要する期間は、損傷の重症度に応じて数週間から数カ月、または数年と様々です。神経の損傷は、完全には治癒しないこともあります。

関節の問題

例えば副子やギプスなどで関節を長期間動かないようにしておく(固定する)必要がある場合、関節が硬くなることがあります。膝、肘、肩の関節は特に損傷後に硬くなる可能性が高く、とりわけ高齢者で硬くなりがちです。

関節が硬くなるのを予防し、できるだけ正常な動きを維持するには、通常は理学療法が必要です。

重度のねんざでは、関節が不安定になることがあります。関節が不安定だと、生活に支障をきたすことがあり、変形性関節症のリスクが高まります。適切な治療を行うことが永続的な問題の予防に役立ちます。

診断

  • 医師による評価

  • 骨折の有無を調べる必要があればX線検査

  • ときにMRIまたはCT検査

ねんざ、挫傷、腱の損傷を診断するために、医師はけがについて詳しく質問し、念入りな身体診察を行います。多くの場合、軟部組織の損傷は、この情報と身体診察の結果に基づいて診断することができます。

急に筋骨格系の問題が起きた場合は、病院の救急外来を受診するか、かかりつけ医に電話するか、問題(痛みや腫れなどの症状)が自然に治まるか和らぐまで様子を見るかを決定しなければなりません。

次のいずれかに当てはまる場合は、救急車などを利用して救急外来を受診する必要があります。

  • 問題が明らかに重篤である(自動車事故による負傷や、患部を使うことができない場合)。

  • 骨折の疑いがある(例外として、手足の指のけが)。

  • 重度の脱臼や軟部組織の損傷(腱断裂、重度のねんざや挫傷など)の疑いがある。

  • 複数のけががある。

  • 合併症の症状がみられる。例えば、患部の感覚が失われている、患部を正常に動かすことができない、皮膚が冷たく感じたり色が青くなっていたりする、患部に力が入らないなど。

  • 患部に体重をかけることができない。

  • 負傷した関節が不安定なように感じる。

次の場合には医師に電話してください。

  • 損傷によって痛みや腫れが生じているが、その部位に骨折や重度の損傷があるようには思えない。

上記のいずれにも該当せず、損傷が軽いと思われる場合は、かかりつけ医に電話するか、問題が自然に治まるかどうか様子を見てもかまいません。

深刻な事故で損傷を負った場合は、医師は最優先で次の対応をとります。

  • 開いた傷口、神経の損傷、多量の失血、血流障害、コンパートメント症候群(損傷を受けた腕や脚への血液供給が減少したり遮断されたりすると発生する)など、重度の損傷や合併症がないか確認する。

例えば、しびれの有無を確認し、血圧を測定し(大量に出血した人では血圧が低下する)、脈拍を調べ(血流が阻害されている場合は脈がとれないか弱い)、皮膚が青白いまたは冷たいなど、血流障害を示す他の徴候を探します。これらの損傷や合併症があれば、必要に応じて治療し、さらに評価を行います。

骨折と脱臼のほか、靱帯、腱、筋肉の損傷がないか確認する必要があります。この評価を始める前に、まず骨折がないことを確認しなければならないことがあります。

損傷の説明

医師は、患者(または目撃者)に何が起こったのか説明を求めます。しかし、当人がけがをしたときのことを思い出せない場合や、正確に説明できない場合もあります。損傷の発生状況が分かれば、医師が損傷の種類を判定する際の手がかりになります。例えば、当人がパチンまたはポンッなどという音がしたと報告した場合は、靱帯や腱の損傷が起きている可能性があります。医師は、損傷時に関節に力が加わった向きについても質問します。この情報は、どの靱帯や骨に損傷の可能性があるかを判定するために役立ちます。

医師はさらに、いつ痛み始めたかについても尋ねます。負傷した直後から痛みがある場合は、重度のねんざが起きている可能性があります。数時間から数日経った後に痛みが始まった場合は、たいてい軽度の損傷です。損傷の程度から想定される以上に痛みが強い場合や、負傷後の数時間にどんどん痛みが増してきた場合は、コンパートメント症候群が発生しているか、血流が妨げられているかもしれません。

医師はまた、過去のけがや腱が断裂するリスクを高める可能性がある薬(例えばコルチコステロイドや、シプロフロキサシンなどのフルオロキノロン系抗菌薬)の使用歴についても質問します。

身体診察

身体診察では、以下の点を調べます(優先度の高い順)。

  • 患部付近の血管に対する損傷の確認

  • 患部付近の神経に対する損傷の確認

  • 患部の診察と動きの評価

  • 患部の上方と下方に位置する関節の診察

血管の損傷と血流障害の徴候がないか確認するために、医師は脈拍および皮膚の色と温度を調べます。血流が阻害されている場合(コンパートメント症候群などで起こります)、脈拍がなくなるか弱くなり、皮膚が青白く冷たくなることがあります。医師は血圧を測定します。多量の血が失われた人では通常、血圧は低下します。

神経の損傷がないか確認するために医師は皮膚の感覚が正常かどうかも評価し、患者にピリピリ、チクチクする、しびれるといった異常な感覚がないか尋ねます。異常な感覚がある場合は、神経の損傷が疑われます。

医師はそっと患部に触れ、圧痛があるかどうかや、腱や筋肉に触れた感触に異常がないかを確認します。骨折や脱臼がある場合、医師は触れることで骨が分離していることや位置がずれていることが分かることがあります。腫れやあざの有無も調べます。さらに、けがをした部位を使うことができるか、体重をかけたり動かしたりすることができるかどうかを質問します。

医師は、関節に負荷がかかるように関節をゆっくり動かし安定性を検査します(負荷試験と呼ばれます)。関節に触れた感覚が非常に不安定な場合、医師は重度の靱帯の損傷(または脱臼)を疑います。ただし、骨折の可能性がある場合は、最初にX線検査を行い、関節を動かしても安全かどうかを確認します。

けがをした関節を動かしてみることは、医師が損傷の重症度を判定するために役立ちます。例えば、ねんざ(靱帯の断裂)の重症度を調べるときに、その部分の関節をどの程度動かすことができ、動かすとどのくらい痛むかに基づいて判定することができます。靱帯が部分的に断裂している場合は、関節を動かしたときに非常に強く痛みます。一方、完全に断裂していると、それほど痛みません。完全に断裂した靱帯は、関節を動かしても伸ばされないためです。通常、関節の可動域は、靱帯が断裂していないときより断裂しているときの方が広く、靱帯が部分的に断裂しているときより完全に断裂しているときの方が広範囲です。

腱は筋肉と骨をつないでいるため、医師は腱の損傷の重症度を判定するときに、その腱がつながっている筋肉を動かしてみることがよくあります。腱が完全に断裂していると、その腱がつながっている筋肉を動かしても、骨が動かないことがあります。例えば、アキレス腱(ふくらはぎの筋肉とかかとの骨をつなぐ腱)が完全に断裂すると、その下の足を動かすことができません。部分断裂は、ときに関節が正常に動くように見えるため、特定が難しい場合があります。

さらに医師は、損傷した関節の上または下に位置する関節を調べます。

痛みや筋肉のけいれんのために診察ができない場合は、診察を行いやすくするために、鎮痛薬や筋弛緩薬を経口または注射で投与したり、患部に局所麻酔薬を注射したりすることがあります。

検査

骨折や脱臼の可能性がないか確認し、軟部組織の損傷を特定するために画像検査を行います。具体的な検査としては以下のものがあります。

  • 必要であればX線検査

  • MRI(磁気共鳴画像)検査

  • ときにCT(コンピュータ断層撮影)検査

X線検査は必ずしも必要ではありません。X線検査では、靱帯、腱、筋肉の損傷は描出されません。X線検査では骨(と損傷した関節周囲の体液)しか撮影されません。しかし、併存している可能性がある骨折と脱臼の有無を確認するためにX線検査が行われることもあります。さらにX線検査では、ねんざなどの軟部組織の損傷が疑われるような骨の位置の異常が示されることがあります。

X線検査が必要な場合、通常は少なくとも2つの角度から撮影されます。骨折している場合、2枚のX線画像によって骨の断片がどのように存在しているのか見ることができます。

MRI検査では、X線検査では通常確認できない軟部組織を撮影できます。そのため、MRI検査は腱、靱帯、軟骨、筋肉の損傷を見つけるために役立ちます。

軟部組織の損傷に伴う微細な骨折がないか確認するために、CT検査やMRI検査が行われることがあります。

知っていますか?

  • X線検査では骨しか確認できないため、通常、医師がねんざや挫傷、腱の損傷などを特定する際は、たとえ重度の損傷に対してでも、参考にはなりません。

軟部組織の損傷に伴う損傷の有無を調べるため、以下のようなその他の検査が行われる場合もあります。

  • 損傷を受けた血管がないか調べる血管造影検査(動脈に造影剤を注射した後に行われるX線検査またはCT検査)

  • 損傷した神経がないか調べる神経伝導検査

治療

  • 重篤な合併症があればその治療

  • 痛みの緩和

  • 保護、安静、氷冷、圧迫、挙上(PRICE)

  • 固定(通常は副子またはギプスを使用)

  • ときに手術

重度の損傷を負ったと思ったときは、救急外来を受診してください。歩けない場合や複数の損傷を受けている場合は、救急車を呼んでください。救急隊が到着するまでには、以下の処置を行うべきです。

  • 負傷した腕や脚が動かないようにし(固定)、身近なものを利用した応急の副子、つり包帯、枕などで支えます。

  • 腫れを防ぐために、患部の腕または足を心臓より上に、なるべく高く上げておきます。

  • 氷冷を行い(タオルや布で氷を包む)、痛みと腫れを抑えます。

重篤な損傷の治療

救急外来では、医師が即座の治療を必要とする損傷や、コンパートメント症候群などの重篤な合併症を引き起こすことがある損傷の有無を確認します。治療せずにいると、合併症が悪化し、痛みが強くなったり機能障害が起こったりする可能性が高くなります。

損傷部への血流を途絶えさせないために、動脈が細くて血流に影響を及ぼさない場合を除いて、損傷した動脈を手術で修復します。

切断された神経も手術で修復しますが、この手術は必要に応じて、負傷の数日後に延期することがあります。神経の打撲や損傷は、自然に治癒することがあります。

皮膚が破れている場合は、滅菌されたドレッシング材で傷を覆い、患者に破傷風予防のためのワクチンを接種し、感染症予防に抗菌薬を投与します。さらに、通常は局所麻酔で患部を麻痺させてから、傷を洗浄します。

痛みの緩和

痛みの治療には、通常、アセトアミノフェンやオピオイド鎮痛薬を使用します。アスピリンや他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、アセトアミノフェンよりも効果が優れているわけではなく、場合によっては出血を悪化させることがあるため、通常は推奨されません。

PRICE

PRICEとは、保護(protection)、安静(rest)、氷冷(ice)、圧迫(compression)、挙上(elevation)の頭文字をとった治療法です。損傷した筋肉や靱帯、腱の治療に用いられます。

保護は、元の損傷をより悪化させるけがの予防に役立ちます。一般的には、副子などの装具をつけます。

安静はそれ以上の損傷を防ぎ、治癒を早めるために役立ちます。患者は活動を控えて、患部に体重をかけず、損傷部を使用しないように過ごす必要があります。例えば、松葉杖を使用し、接触を伴うスポーツに参加しないようにします。

氷冷圧迫は、腫れと痛みを最小限に抑えます。氷はビニール袋に入れるかタオルや布に包み、1回15~20分にわたって患部にあてます。最初の24~48時間はできるだけ頻繁に冷やします。損傷に対する圧迫は通常、弾性包帯で行います。

損傷のある腕または脚を挙上(上げておくこと)すると、損傷部から体液が排出され、腫れの軽減につながります。最初の2日間、患部のある腕や脚を心臓より高く上げておきます。

48時間が過ぎたら、定期的に1回15~20分、患部を温めるようにします(温熱パッドを使用するなど)。温めることで痛みが和らぐ場合があります。しかし、温熱や氷冷を行うことが最適かどうかは明らかになっておらず、最適な方法が人によって異なる可能性もあります。

固定

腕や脚を動かさないようにする(固定する)と、周辺の組織に対するさらなる損傷が防がれ、痛みを軽減し治癒を助けます。損傷の両側に位置する関節が固定されます。

固定が長期に及ぶと(例えば、若い成人では数週間以上)、関節が硬くなり、こわばりが永続化することがあるほか、筋肉が短くなったり(拘縮の原因)、縮んだり(萎縮)することもあります。また、血栓が発生することもあります。こうした問題が急速に発生し、拘縮が永続化することがあります(通常は高齢者でみられる)。そのため、医師は損傷が治り次第すぐに、その部分を動かすよう高齢者に勧めます。さらに医師は、長期間動かさずにいる必要がある治療(床上安静やギプスの装着など)よりも、高齢者ができるだけ早く歩行を再開できる治療を選択する傾向があります。

固定が必要かどうかと、どの治療法を選択するかは、損傷の種類によって異なります。

腱の部分断裂が疑われる場合、または診断が確定的でない場合は、損傷した部位に副子をあてて固定し、腱の治癒を促します。重度の腱断裂は数日から数週間にわたって固定することがあり、ときにギプスを装着します。

軽度のねんざは、固定したとしても短期間です。たいていは、損傷した部位をできるだけ早くから動かすことが最適な治療法です。中等度のねんざは、多くの場合、つり包帯か副子で数日間固定します。重度のねんざは、数日から数週間にわたって固定することがあり、ときにギプスを装着します。ただし、重度のねんざのなかには、手術で修復しなければならないものがあり、必ずしも固定するとは限りません。

ギプスは、通常、数週間にわたって固定しなければならない損傷に対して使用します。

ギプスで固定するときは、医師が患部を布で巻き、次に軟らかい綿素材のパッドをあてて、皮膚を圧迫や摩擦から保護します。この上に、石膏を付着させた綿包帯やグラスファイバーテープを濡らして巻き、このような包帯やテープは乾くと硬くなります。石膏はよく固まり、皮膚との間でこすれにくいため、骨片同士が分離している骨折の固定によく用いられます。グラスファイバー製のギプスは、より強く軽量で長持ちします。患部の腫れは1週間程度で引きます。その後、患部にぴったりと合うよう、石膏のギプスをグラスファイバーのギプスに交換することがあります。

ギプスを装着した患者は、その取り扱いについての特別な指示を受けます。ギプスを正しく取り扱わないと、問題が起こることがあります。例えば、ギプスを濡らし、その下の保護パッドまで湿らせてしまうと、完全に乾かないことがあります。その結果、皮膚がふやけて破れ、潰瘍ができることがあります。また、石膏ギプスは濡れると崩壊することがあり、そうなると患部の保護や固定ができなくなります。ほかにも、ギプスをなるべく心臓と同じ高さかそれより高く上げておくようにとの指示があります(特に最初の24~48時間に重要)。加えて、定期的に手の指を曲げ伸ばししたり、足の指を動かしたりする必要があります。これらの対策は、患部の腕や脚から血液を流し出す効果があり、腫れの予防につながります。

まれに、ギプスによって痛み、圧迫感、しびれが発生し、これらは持続するか徐々に悪化していくことがあります。そのような症状は、すぐに医師に伝えてください。 これらの症状は、床ずれ(褥瘡[じょくそう])コンパートメント症候群によって発生することがあります。その場合、病院でギプスを交換してもらうことが必要かもしれません。

ギプスの取扱い

  • 入浴時はビニール袋でギプスを包み、口の部分を輪ゴムかテープできっちり留めて密封するか、ギプス用の防水カバーで覆います。そうしたカバーは市販されていて、使いやすく信頼性の高い器具です。ギプスが濡れると、ギプスの内側のパッドが湿ります。ドライヤーである程度は乾かすことができます。十分に乾かなければ、ギプス内で皮膚が損傷しないように、新しいギプスに取り換える必要があります。

  • ギプス内には決して、(かゆいところをかくなどの目的で)異物を入れてはいけません。

  • ギプス周囲の皮膚の状態を毎日チェックし、赤くなったりヒリヒリしたりする場合は医師に報告してください。

  • ギプスの縁を毎日チェックし、粗くなっているようであれば、粘着テープ、ティッシュ、布などの軟らかい素材を詰めて、その縁で皮膚を傷つけないように保護します。

  • 就寝時には、ギプスの縁が皮膚を圧迫したり皮膚に食いこんだりしないように、小さな枕やクッションなどを使って適切な位置に保ちます。

  • 医師の指示に従い、定期的にギプスを高い位置に上げて腫れを防ぎます。

  • ギプスの装着後、痛みが長く続く場合や、強く締めつけられる感じがある場合は、すぐに医師に相談します。これらの症状が床ずれや腫れによって生じた場合は、直ちにギプスを外さなければならないことがあります。

  • ギプスから臭いがするときや、発熱が生じたときは、医師に連絡してください。感染症の疑いがあります。

  • ギプスの装着後、痛みが強くなった場合や、しびれや脱力が発生した場合は、医師に連絡してください。コンパートメント症候群の疑いがあります。

副子は一部のねんざなどの損傷を固定するために使用する固定具で、特に数日以内の固定に用いられます。副子をあてた状態で氷冷を行うことが可能で、ギプスを使用した場合よりも患部を動かすことができます。

副子は、石膏、グラスファイバー、またはアルミでできた細長い板で、弾性包帯やテープで固定して使用します。この器具は腕や脚の周囲を覆い尽くさないため、腫れが生じても膨らむ余地があります。そのため、副子を使用してもコンパートメント症候群の発生リスクは高まりません。いずれギプスを装着する損傷でも、最初に大体の腫れが引くまで副子で固定することがあります。

つり包帯は、それ自体がある程度のサポートになります。つり包帯は完全な固定が好ましくない場合に役立ちます。例えば、肩を完全に固定すると、場合によっては数日以内に、肩関節の周りの組織が硬くなり、肩を動かせなくなることがあります(凍結肩)。つり包帯は肩と肘の動きを制限しますが、手は動かすことができます。

固定帯は1枚の布または帯で、腕が外側に動かないよう、つり包帯と一緒に使用されます(特に夜間)。固定帯は患部を覆い、背中にも回して巻きます。

関節固定に用いられる一般的な技術

関節固定に用いられる一般的な技術

手術

3度(非常に重度)のねんざや腱断裂の多くは、手術で修復する必要があります。

関節鏡視下手術が行われることもあります。この手術では、鉛筆ほどの太さの管状の機器を小さい切開口から関節に挿入します。主に膝の靱帯(膝のねんざ)や板状の軟骨(半月板)を修復するために行います。

リハビリテーションと予後(経過の見通し)

ほとんどの軟部組織の損傷は問題なく治癒します。しかしながら、適切な診断と治療にもかかわらず治癒しない場合もあります。

損傷が治癒する期間は、以下の要因によって、数週間から数カ月と様々です。

  • 損傷の種類

  • 損傷の場所

  • 患者の年齢

  • 他の病気の有無

例えば、小児は成人よりはるかに早く治癒し、特定の病気を患っている人は治りが遅くなります(糖尿病や末梢血管疾患のような血液循環の問題を引き起こす病気など)。靱帯、腱、筋肉の部分断裂は自然に治る可能性が高く、完全断裂の多くには手術が必要です。

固定していると、その部位を使わないため、関節は硬くなり、筋肉は衰えて細くなります。腕や脚をギプスで固定した場合は、患部の関節は週を追う毎に硬くなり、やがてその腕や脚の曲げ伸ばしが完全にはできなくなります。高齢者の場合は特に、そうした問題が急速に現れ、永続化してしまいます。例えば、数週間ずっと脚に長いギプス(太ももの上の方からつま先まで)をしたままでいると、普通は筋肉がかなりやせ落ちて、ギプスと太ももの間に手を入れられるすき間ができます。ギプスを取り外す頃には、その部分の筋肉が非常に衰え、明らかに細くなっています。

関節の硬化を予防または最小限に抑え、筋力の維持を助けるために、医師か理学療法士が、関節可動域訓練筋肉強化運動などの毎日の運動を勧めます。損傷が治るまでの間に、担当の医師や理学療法士の指示に従って、体の他の部位を動かす運動を行ってもかまいません。

損傷が十分に治り関節の固定を解いたら、その腕や脚の運動を開始することができます。運動時には、腕や脚の感覚に注意を払い、負荷が強すぎる運動は避けるようにします。 筋力が低下しすぎて運動できない場合や、癒合した骨が運動により分離して骨折が再発するおそれがある場合は、療法士が患者の腕や脚を動かします(他動運動)。しかし結局のところ、損傷した腕や脚の筋力を完全に取り戻すには、自分で筋肉を動かさなければなりません(能動運動)。

可動域や筋力を改善する運動と、損傷した関節を強化し安定化する運動が、損傷の再発と長期にわたる障害の予防に役立ちます。

損傷が治り、患部だった部位にしっかり体重をかけることができるようになった後でも、ほとんどの患者は活動中に多少の不快感を覚えます。

加齢に関する注意点:軟部組織の損傷

65歳以上の人は筋肉、靱帯、腱に損傷が起こりやすくなり、その原因の一部としては、転倒する可能性が高いことにあります。以下の理由から、転倒の可能性が高まります。

  • バランス、視力、感覚(主に足)、筋力に加齢に伴う正常な変化が生じ、高齢者が転倒して自ら負傷しやすい状態になる。

  • 一部の高齢者は、血圧が急低下しすぎることで座ったり立ち上がったりする時にめまいや立ちくらみを感じることがある。

  • 転倒時に受け身がとれなくなる。

  • 薬の副作用(眠気、平衡感覚を失う、めまい)が出やすくなり、そのせいで転倒することがある。

高齢者では、次の理由により、若い人のようにすぐには治らず、回復が遅いことが少なくありません。

  • 高齢者は、より若い成人に比べて治癒が遅いのが通常です。

  • 一般的な高齢者は、若い人に比べると体力全般が衰えていて、柔軟性や平衡感覚にも欠けています。そのため、損傷によって生じる制約を補うことが難しく、日常生活に戻るのもひときわ大変です。

  • 高齢者は活動を行わなかったり、ギプスや副子で動けなかったりすると、若い成人よりも急速に筋肉組織が失われます。そのため、動かさないようにすると筋力低下に至ることがあります。ときに、筋肉が永久的に短くなり、関節周辺の靱帯や腱などの組織に瘢痕(はんこん)組織ができることがあります。こうした状態(関節拘縮)になると、関節の動きが制限されます。

  • 高齢者は他の病態(関節炎や血行不良など)を抱えていることが多く、それが回復を妨げたり治癒を遅らせたりすることがあります。

軽いけがであっても、食事や着衣、入浴、さらには歩行に至るまで、日々の正常な活動を行うための能力が大きく損なわれ、特にけがをする前に歩行器を使っていた高齢者は大きな影響を受けます。

固定:固定は、特に高齢者で問題になります。

高齢者に固定を施す場合、次のような問題を起こしがちです。

床ずれは、ある部位への血流が途絶えたか、大きく減少したときに発生します。高齢者では、すでに腕や脚への血流量が少なくなっていることがあります。けがをした腕や脚の重みがギプスにかかると、血流がさらに少なくなり、床ずれが発生することがあります。床上安静が必要な場合は、ときに寝床に接している皮膚の領域に床ずれができます。こうした領域は、皮膚が破れる徴候がないか、他の人がこまめにチェックする必要があります。

高齢者に固定を行うと問題が起こりやすいため、高齢者の筋骨格系に生じた損傷の治療では、なるべく早期に日常生活に戻れるよう支援することを優先します。

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