高齢者によっては、援助やケアをする意志と能力をもつ家族、友人、または隣人が存在します。このような人々は介護者と呼ばれます。ときに、宗教団体またはその他のグループが、無償または低料金で介護者を助ける、または介護者の役割を担う場合があります。介護者は、基本的な活動(食事、着衣、入浴など)、家事(調理、掃除、買い物、請求書の支払い、芝生の手入れ)、その他の作業(処方通りの薬の服用など)を助けます。
2016年、米国では、65歳以上の高齢者4900万人のうちの多くが日常的に介護者の助けを必要としています。現在2200万人を超える人が高齢者を介護しています。1週間に数時間、または24時間体制で介護に当たっている人もいます。
ほとんどの介護者が家族内介護者、つまりケアを受けている人の配偶者または子どもで、その大半が女性です。介護者の約3分の2が、介護の他にフルタイムまたはパートタイムの仕事をもっています。
高齢者に介護が必要かどうかの判断が難しい場合があります。家族は、高齢者が以下の事柄をどの程度できるかを観察すると、判断の助けになるでしょう。
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食事:よく食べもので衣服を汚していないか。明らかな理由がないのに体重が減っていないか。
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いすまたはベッドの移動:立ち上がる前に、体が数回前後に揺れていないか。近くの家具などを支えとして使用していないか。いすに倒れこむようにして座っていないか。ベッドから出るとき、またはいすから立ち上がるときに、頻繁に転倒しないか。
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トイレの使用:衣服が汚れたり、または濡れたりすることがないか。
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入浴:皮膚や毛髪が汚れたままになっていないか。
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身だしなみ:衣類がしわだらけだったり、または乱れたりしていないか。
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歩行:不安定に見える、または転倒することがないか。
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処方薬の服用:処方薬が予定より長持ちしていないか。または予定より早くなくなっていないか。複数の薬を1つの容器に混ぜていないか。
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電話の使用:電話での会話の内容を理解できているか。家にいるのに留守番電話になっていないか。
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お金の管理:請求書の支払いが滞り、延滞通知がきていないか。預金の貸越通知が繰り返しきていないか。
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食料品の買い物と食事の準備:十分な食物が手に入っているか。消費期限の過ぎた食品を保存していないか。鍋を何回も焦がしていないか。コンロを付けたままにしていないか。
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洗濯:衣類は清潔か。
報酬と課題
家族の介護は重労働でストレスにもなりますが、非常に意義深い仕事です。多くの人は愛情と尊敬から、配偶者、パートナー、または親の介護を引き受けます。努力が常に評価されるとは限りませんが、他者の生活に寄与することにより自分自身の生活に新しい意味を見つけ出します。しかしながら、介護の困難さに対して完全に備えておくことはできません。
以下のような状況になると、介護は肉体的、精神的、金銭的、精神的に大きな負担になります。
介護者自身がフレイルである場合、予期せず、もしくは望まないながらも役割を担うことになった場合、または非協力的な人もしくは攻撃的な人の世話をしなくてはならない場合には、要求はより厳しいものとなります。
高齢者介護に伴う多くの責任や葛藤により、介護者が孤立したり人間関係にひびが入ったりすることがあり、就業の機会が脅かされる場合もあります。その結果、怒り、欲求不満、罪悪感、不安、ストレス、抑うつ、無力感、極度の疲労がたまることになりかねません。このような感情は、ときに介護者の燃えつきと呼ばれます。燃えつきはいつでも誰にでも起こりえますが、介護される人を1人にすることができない、または夜も眠れないような状況で生じやすくなります。最悪のケース(介護者が支援について知らない場合、または支援を得られない場合)では、燃えつきが高齢者虐待(介護の放棄やさらには高齢者に対する暴力など)につながることがあります。
どのようにして高齢者のニーズにこたえつつ、介護者の燃えつきを避けるかを判断するためには、介護者は様々な医療従事者、すなわちソーシャルワーカー、ケアマネージャー(高齢者が必要とするすべての支援と介護を確実に受けられるようにする訓練を受けた専門家)、かかりつけ医、看護師、および/または理学療法士、作業療法士などと話し合わなければならないことが多くあります。介護者が介護の心構えをして、燃えつきてしまわないよう対策を講じることもできます。
遠距離介護
流動的な現代社会では、ときに家族が数百キロまたは数千キロも離れて暮らしていることがあります。これほど離れていると、高齢の家族が確実に必要なケアを受けられるようにすることは困難です。遠距離介護者(通常は成人した子ども)は、多くの課題を抱えます。
良好なコミュニケーションの継続はしばしば困難です。家族が高齢者の生活またはニーズを完全に、または正確に把握することは決してできないと感じる場合もあります。ニーズを理解したとしても、一緒にいなければ高齢者にしてあげられることはほとんどないと感じるかもしれません。
遠距離介護の心配を減らすための対策として以下のようなことがあります。
また家族は、リビングウィルまたは医療判断代理委任状などの事前指示書のコピーを入手し、家族に緊急の治療が必要なときに助けになるようにすべきです。また、当人が生命維持治療に関する医師指示書(POLST)(延命治療に関する医療指示書[MOLST]と呼ばれることもあります)を作成しているかどうかも家族は知っておくべきです。これらの文書は、どのような延命治療を行ってほしいか、または行ってほしくないかを明記したもので、実際の医師の指示とみなされます。
高齢者が住む地域の援助システムをよく知っている人に助力を求めることもできます。地域での支援を手配するにあたって、高齢者のかかりつけ医が役に立つ場合もあります。また、家族が高齢者ケアマネージャーを手配して、介護と医療の監視をしてもらうこともできます。しかし、ときに、自分たちが身近で直接助ける以外の選択肢はないと思い込んでいる家族もいます。米国の家族医療休暇法(Family Medical Leave Act)は、扶養家族の世話を行う人が在職中に最長12週間の無給休暇をとることを認めています。ただし、この保護制度の提供が求められているのは、ある程度以上の規模を有する企業のみであり、従業員の適格性などの制限があります。
さらなる情報
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AARP:家族による介護(AARP: Family Caregiving)—全米退職者協会(American Association of Retired Persons:AARP)家族による介護に関するリソース
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エルダーケア・ロケーター(Eldercare Locator)—米国高齢者局(Administration on Aging)の高齢者および介護者向けサービスのデータベース