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高齢者における宗教とスピリチュアリティ

執筆者:

Daniel B. Kaplan

, PhD, LICSW, Adelphi University School of Social Work;


Barbara J. Berkman

, DSW, PhD, Columbia University School of Social Work

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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宗教とスピリチュアリティは類似していますが、同じ概念ではありません。宗教はスピリチュアリティに比べて、施設を拠点とし、組織化され、伝統的な儀式や慣習を伴うものと多くの場合みなされています。スピリチュアリティは漠然とした実体のないものを指すため、特定のグループまたは組織に関連しない、より一般的な用語とみなされることがあります。スピリチュアリティは魂に関連する感情、思考、経験、行動、または聖なるものの探索を指します。

伝統的な宗教は責任と義務を伴います。スピリチュアリティはそれに比べ要求が少なめです。伝統的な宗教を拒絶していても、自身をスピリチュアルな人間だと考えている人々もいます。米国では、90%を超える高齢者が、自身を信仰深いか、またはスピリチュアルな人間だと捉えています。約6~10%は無神論者で、人生の意義を見出すのに宗教的もしくはスピリチュアルな慣習または伝統に頼りません。

高齢者の宗教への関与度は、他のどの年齢層をも上回ります。約半数の高齢者が礼拝に週1回以上出席します。高齢者にとって、宗教団体は家族以外で最も大きな社会的支援を得られるところであり、また、宗教団体への参加は最も一般的な社会的ボランティア活動で、他の種類の社会的ボランティア活動すべてを合わせたものよりよくみられます。

便益

信仰深い人はそうでない人と比べて、心身の健康状態が高まる傾向があります。信仰深い人は、このような便益は神の御業によるものと主張するかもしれません。しかし、宗教組織への参加によって健康がもたらされるかどうか、または心身の健康状態がより良好な人が宗教的グループに引き付けられるかどうか、専門家は判断できていません。宗教が役に立つとしても、その理由(信仰自体によるものか、またはその他の要因によるものか)は不明です。その他の要因に当たるものが、多数指摘されています(例えば、精神衛生上の便益、健康に良い習慣の奨励、社会的支援)。

精神衛生上の便益

宗教は、以下のような精神衛生上の便益をもたらすことがあります。

  • 人生や病気に対する前向きで希望に満ちた姿勢が健康状態を改善させる傾向がある

  • 人生の意義や目的意識が、健康にかかわる行動、社会的関係、家族関係に影響を及ぼす

  • 病気と障害に対する対処能力が高まる

多くの高齢者は、宗教が、身体的な健康上の問題と生活上のストレス(経済力の低下、または配偶者もしくはパートナーの喪失など)に対処できるようになる最も重要な要因であると報告しています。例えば、将来に対して希望に満ちた前向きな姿勢でいることは、身体的な問題がある人が回復しようという意欲をもち続ける助けになります。

宗教的な対処法を利用する高齢者は、そうでない場合に比べて、うつ病や不安を発症しにくいことが、いくつかの研究で明らかになっています。信仰心の程度によって、障害の捉え方さえも変わるようです。股関節を骨折した高齢女性を対象とした研究では、最も信仰深い女性は、それほど信仰深くない女性と比べて、うつ病の発生率が最も低く、退院時に有意に長い距離を歩行できました。

健康を増進させる習慣

宗教団体への積極的な参加は、身体機能や健康がよりよく維持されることと関連があります。一部の宗教グループ(モルモン教徒、セブンスデー・アドベンティスト信者など)は、喫煙や大量の飲酒を回避するなど、健康を増進する行動を提唱しています。このようなグループのメンバーは物質関連障害を発症する可能性が低く、一般の人に比べて長生きします。

社会的便益

信仰と宗教的慣習は、しばしば地域社会や広範な社会的支援ネットワークの発達を促進します。高齢者と社会との接触が増えると、地域社会のメンバーが高齢者と交流し、健康状態や医療について質問するため、病気が早期に発見され、治療レジメンが遵守されやすくなります。このような地域社会のネットワークをもつ高齢者は、セルフネグレクトが起こりにくくなります。

介護者

信仰心は介護者にも便益をもたらします。アルツハイマー病または末期がん患者の介護者の研究では、信仰心が強く、社会との接触が多い介護者は、介護のストレスに対する対処能力が高いことが明らかになりました。

有害な影響

宗教は高齢者にとって常に有益とは限りません。信仰心は過度の罪悪感、偏狭さ、柔軟性のなさ、不安を助長することがあります。強迫症、双極性障害、統合失調症、または精神病の患者では、宗教への執着や宗教妄想が生じることがあります。

一部の宗教グループは、救命治療(例えば、輸血、生命を脅かす感染症の治療、インスリン療法)を含む必要な精神医療や身体医療に反対し、代わりに宗教儀式(祈り、読経、または灯明を上げるなど)を行うことがあります。より厳格な宗教グループでは、家族やより広い社会コミュニティから高齢者を孤立させ、遠ざけることもあります。

医療従事者の役割

信仰は高齢患者の心身の健康に影響を及ぼすことがあるため、医療従事者は高齢患者と信仰について話すことがあります。以下のような場合には、高齢者の信仰について把握することが、よりよいケアを提供する助けになることがあります。

  • 重い病気がある、多大なストレスがある、または死期が迫っている高齢者が、医療従事者に宗教的な事柄について話すことを求めるか、または示唆した場合

  • 高齢者が医療従事者に対し、自分に信仰があることや、宗教が病気に対処する助けになると話した場合

  • 宗教上のニーズが明白であり、高齢者の健康状態または健康にかかわる行動に影響を及ぼしている可能性がある場合

高齢者のスピリチュアルなニーズを把握した医師またはその他の医療従事者は、高齢者が必要な支援(例えば、スピリチュアルカウンセリング、支援団体との接触、宗教的活動への参加、または宗教団体のメンバーとの社会的接触)を得る助けになります。医師は、スピリチュアリティ上の信念が人生の重要な部分を占めているかどうかや、そのような信念が自身をケアする方法にどのような影響を及ぼすか尋ねます。または、高齢者自身にとって最も重要な対処法について、説明を求めます。高齢者が宗教またはスピリチュアリティ上の支援に関心を示した場合は、医師はそのような支援を阻む障壁があるかどうかについて尋ねます。医師は、代替案を助言できることがあります。例えば、礼拝に出席できない高齢者に対しては、医師は送迎サービスを示唆することができます。

ときに高齢者にとっては、精神科医によるカウンセリングよりも聖職者によるカウンセリングの方が受け入れやすいことがあります。聖職者がカウンセリングの訓練や、専門的な精神医療が必要な時期を見極める訓練を受けていれば、非常に役に立ちます。聖職者は、例えば、退院後に訪問したり、または食事もしくは移動手段を提供したりすることによって、必要な地域社会の支援を高齢者が得る助けにもなります。

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