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加齢と薬

執筆者:

J. Mark Ruscin

, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;


Sunny A. Linnebur

, PharmD, BCPS, BCGP, Skaggs School of Pharmacy and Pharmaceutical Sciences, University of Colorado

医学的にレビューされた 2018年 12月
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最も一般的な医学的介入である薬は、高齢者医療の重要な部分です。薬がなければ、多くの高齢者の身体機能はさらに衰えたり、またはより早く死を迎えるでしょう。

知っていますか?

  • 半数近い高齢者が、医師の指示通りに薬を服用していません。

  • 高齢者では多くの薬の作用(と副作用)が出やすくなっています。

高齢者は、高血圧、糖尿病、または関節炎など複数の慢性疾患にかかりやすいことから、若い人より多くの薬を服用する傾向があります。高齢者が慢性疾患の治療に使用するほとんどの薬は何年にもわたり服用されます。その他の薬は、感染症、ある種の痛み、便秘などの治療に短期間のみ服用されます。高齢者のうち、90%近くが1種類以上、80%近くが2種類以上、36%が5種類以上の処方薬を定期的に服用しています。市販薬と栄養補助食品も含めると、使用率はさらに高くなります。一般に、女性は男性よりも多くの薬を服用します。高齢者のうち、フレイル(加齢に伴い筋力や心身の活力が低下した状態)であるか、入院している人、または介護施設に入居している人が最も多くの薬を服用します。介護施設入居者は平均7~8種類の薬を定期的に処方され、服用しています。

処方薬の便益とリスク

薬のおかげで、過去数十年間に、高齢者の健康と機能面の多くが改善されました。

  • ワクチンは、かつては多くの高齢者を死亡させた様々な感染症(インフルエンザや肺炎など)を予防する助けになります。

  • 多くの場合、抗菌薬は、肺炎などの重篤な感染症の治療に効果的です。

  • 高血圧をコントロールする薬(降圧薬)は、脳卒中や心臓発作を予防する助けになります。

  • 血糖値をコントロールする薬(インスリンやその他の血糖降下薬)により、数百万人の糖尿病の人が普通の生活をすることができます。これらの薬は、糖尿病により引き起こされる眼や腎臓の障害のリスクも軽減します。

  • 痛みやその他の症状をコントロールする薬により、数百万人の関節炎の人が機能を維持することができます。

しかし、薬は意図しない作用や望ましくない作用を引き起こすことがあります(副作用)。中高年から、薬の使用に関連する副作用のリスクが増加します。高齢者は若い人の2倍以上も 薬の副作用 薬の有害反応の概要 薬の有害反応(副作用)とは薬のあらゆる望ましくない作用のことです。 19世紀初頭に、ドイツの科学者パウル・エールリヒが理想的な薬を「魔法の弾丸(magic bullet)」と表現しました。これは病気の部位を正確に狙い、健康な組織には害を及ぼさないような薬を意味したものです。新薬の多くは、それまでの薬よりも狙いが正確になっているものの、現在... さらに読む を起こしやすくなります。副作用は重くなりやすく、生活の質(QOL)にも支障をきたすようになり、医療機関の受診や入院という結果になることがあります。

高齢者が副作用の影響を受けやすい理由はいくつかあります。

こうした加齢に伴う変化のため、多くの薬は体内にとどまる時間が長くなり、薬の作用を長引かせ、副作用のリスクを高めます。したがって、高齢者ではしばしば、ある種の薬について、1回の用量を減らすか、または1日の投与回数を減らす必要があります。例えば、特定の心疾患の治療に使用されることのあるジゴキシンは、水に溶けて腎臓から排出されます。年齢とともに体の水分が少なくなり腎機能が衰えるため、体内のジゴキシン濃度が上昇し、副作用のリスクが高まります(吐き気または不整脈など)。この問題を防ぐため、医師は少量を処方する必要があります。または、他の薬に変更することもあります。

高齢者は薬の作用の影響を受けやすくなります。例えば特定の抗不安薬(表「 不安症の治療に用いられる薬剤 」を参照)または 不眠症の治療のための睡眠補助薬 治療 睡眠関連の問題で最も多い訴えは、不眠症と日中の過度の眠気です。 不眠症とは、寝つきが悪い、途中ですぐに目が覚める、朝早く目が覚める、あるいは、睡眠の質が悪く、寝足りない感じがしたり、すっきりした感じが得られなかったりする状態です。 日中の過度の眠気は、日中に異常なほど眠くなったり、眠り込んでしまったりする状態を指します。... さらに読む を使用すると、眠くなりがちで、錯乱を起こす可能性が高くなります。一部の 血圧を下げる薬 高血圧の薬物治療 高血圧の治療に使用される薬剤は降圧薬と呼ばれています。降圧薬にはいろいろな種類があり、高血圧のほとんどを制御することができますが、治療は患者一人ひとりに適した方法で行う必要があります。( 高血圧も参照のこと。)患者と医師が十分なコミュニケーションをとり、協力して治療プログラムを実行できれば、治療効果も高まります。... さらに読む を使うと、高齢者では若い人に比べて血圧が劇的に下がる傾向があります。血圧が大きく低下すると、めまい、ふらつき、転倒などの副作用が生じることがあります。このような副作用が生じた高齢者は、それについて主治医に相談すべきです。

一般的に使用されている多くの薬に 抗コリン作用 抗コリン作用:どんな作用か? 抗コリン作用:どんな作用か? があります。この種の薬には、一部の抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミン)、多くの抗ヒスタミン薬(OTC薬の睡眠補助薬、かぜ薬、アレルギー薬に含まれるジフェンヒドラミンなど)、多くの抗精神病薬(クロルプロマジン、クロザピンなど)などがあります。高齢者、特に記憶障害がある場合は、抗コリン作用を特に受けやすく、錯乱、かすみ目、便秘、口腔乾燥、排尿の開始困難などが現れます。抗コリン作用の中には、振戦の軽減(パーキンソン病の治療の場合など)や吐き気の軽減といった好ましいものもありますが、その他のほとんどは望ましくありません。

抗コリン作用:どんな作用か?

抗コリン作用は、アセチルコリンの作用を遮断する薬がもつ働きです。アセチルコリンは、信号を隣接する神経細胞または筋肉もしくは分泌腺内の細胞に伝達するために神経細胞が放出する化学伝達物質(神経伝達物質)です。アセチルコリンは細胞同士の連絡を助けます。アセチルコリンは記憶、学習、集中の助けになります。心臓、血管、気道、泌尿器、消化管の調節も助けます。アセチルコリンの作用を遮断する薬は、これらの臓器の正常な機能を乱す可能性があります。

一般的に使用されている多くの薬に抗コリン作用があります。これらの薬のほとんどは、こうした望ましくない作用を引き起こすことを意図して設計されたわけではありません。抗コリン作用には、以下のような症状などがあります。

  • 錯乱

  • かすみ目

  • 便秘

  • 口腔乾燥

  • ふらつきと平衡感覚の喪失

  • 排尿困難

一方で、抗コリン薬には振戦や吐き気、過活動膀胱を抑える助けになるなど有用な作用もあります。

高齢者は加齢とともに体内のアセチルコリンの量が減少するため、抗コリン作用を経験しやすくなります。つまり、抗コリン薬によって遮断されるアセチルコリンの割合が高くなり、高齢者の体は少量しかないアセチルコリンをうまく利用できなくなるのです。また、体の多くの部分(消化管など)の細胞で、アセチルコリンが結合する部位(受容体)が減少します。結果的に、医師は通常、可能であれば、高齢者には抗コリン作用のある薬の使用を避けます。

薬の副作用には、以下の要因との相互作用が原因の場合もあります。

  • 薬を服用した目的とは別の病気、症状、または状態(薬と病気の相互作用)

  • 別の薬(薬物間相互作用)

  • 食品(薬と食品の相互作用)

  • 薬用ハーブ(薬と薬用ハーブの相互作用—表「サプリメントと薬の間で起こりうる主な相互作用」を参照)

高齢者は多くの病気にかかりやすく、若い人よりもたくさんの薬を服用するため、薬と病気、薬と薬の相互作用を起こす可能性もそれだけ高くなります。薬と病気の相互作用の多くは、薬を服用することで病気、症状、または状態が悪化します(表「 薬が原因となって悪化する可能性がある高齢者の主な病気や症状 薬が原因となって悪化する可能性がある高齢者の主な病気や症状 薬が原因となって悪化する可能性がある高齢者の主な病気や症状 を参照)。

患者、医師、薬剤師は、薬と病気の相互作用や薬物間相互作用のリスクを軽減する対策を講じることができます。OTC薬や薬用ハーブが他の薬と相互作用する可能性があるため、これらの薬と処方薬の併用について医師または薬剤師に尋ねるべきです。

薬の服用に関する医師の指示に従わないこと(ノンアドヒアランスといいます)は危険です(薬物治療のアドヒアランス(指示の遵守) 薬物治療のアドヒアランス(指示の遵守) 患者が処方薬をどのくらい指示された通りに使用(服薬)するかの程度を、アドヒアランスといいます。 ( 薬に対する反応の概要も参照のこと。) 薬物療法へのアドヒアランス(コンプライアンス)は重要です。しかしながら、米国では診療所で処方せんを受け取った人のうち、指示を守って服薬するのは半数程度だといわれています。薬物療法の指示を守らない理由は様... さらに読む を参照)。高齢者だけが指示通りに薬を服用しないわけではありません。しかし、高齢者では半数近くが指示通りに服用していません。薬をまったく服用しない場合も、服用する量が少なすぎたり多すぎたりした場合にも問題が起こります。副作用があるという理由で、指示よりも量を減らすのは理にかなっていると思うかもしれませんが、やはり薬の服用のしかたを変える場合はあらかじめ医師に相談すべきです。

服用の便益を最大にし、リスクを減らす

高齢者とその介護者は、薬の服用の便益を最大にし、リスクを減らすためにできることが多くあります。薬に関する疑問または問題は何でも医師または薬剤師に相談しましょう。問題を回避し、健康を増進するためには、薬を指示通りに服用し、医療提供者に情報を伝達することが不可欠です。

薬と治療中の病気について知りましょう。

  • すべての医学的問題と薬物アレルギーのリストを持っておく。

  • 市販薬やビタミン、ミネラル、薬用ハーブなどのサプリメントを含め、服用中のすべての薬の一覧表を持っておく。

  • それぞれの薬について、なぜ服用し、どのような便益が期待されるのかを知っておく。

  • それぞれの薬について、どんな副作用があり、副作用が起こったときにどうすればよいかを知っておく。

  • 薬を服用すべき時刻、食事と一緒に服用できるか、他の薬と同時に服用できるか、いつ服用を中止するかなど、薬の服用法を知っておく。

  • 服用を忘れたときどうするかを知っておく。

  • 薬の服用法に関して、書き留めるか、または医師、看護師、もしくは薬剤師に書いてもらうよう依頼する(このような情報は忘れやすいため)。

薬を正しく使用しましょう。

  • 指示された通りに薬を使用する。

  • 薬を指示通りに服用するために、薬の整理箱など記憶を助ける道具を使用する。

  • 薬を中止する前に、副作用が現れた、薬が効いていないらしい、または薬の費用が負担になる、などの問題を何でも医師に相談する。

  • 医師、看護師、または薬剤師から指示がなければ、以前に処方された薬で使用していない薬を廃棄する。

  • 薬を廃棄する際は、ラベルに表示されている廃棄時の指示に従う、米国食品医薬品局のウェブサイトの記載事項を確認する、正規の処理センター(場合により薬局または地元の当局)に持っていく、または薬をネコ用砂やコーヒーかすと混ぜてビニールなどに包み、密閉または防水容器あるいは袋に入れてゴミとして捨てる。

  • 類似する病気であっても、他者の薬を服用しない。

  • 薬の有効期限を確認し、期限切れの薬を使用しない。

医師や薬剤師と密接に連絡しましょう。

  • 同じ薬局、できれば包括的なサービス(薬が相互作用を起こす危険性のチェックなど)を提供し、各人の完全な薬歴管理を実施している薬局に、すべての処方をしてもらう。

  • 医師に求められたら、診察時に服用中のすべての薬を持参する。

  • 服用中の薬と病気の一覧表を持参して、医師、看護師、または薬剤師と定期的に話し合い、薬が正しいことや、使用を継続すべきであることを確認する。例えば、すべての薬のしかるべき服用方法を医療提供者に話し、その内容が正しいかどうか尋ねることで、自分自身を試すことができる。

  • 薬を変更するたびに、医師、看護師、または薬剤師と薬の一覧表を確認する(医師と薬剤師は薬同士の相互作用を確認できる)。

  • 使用中のすべての市販薬とビタミン、ミネラル、薬用ハーブなどのサプリメントについて、医師と薬剤師に知らせる。

  • 市販薬やサプリメントを含め、どんな薬でも新たに服用する場合は医師に相談する。

  • 薬の使用に関連すると疑われる症状(新しい症状または予想外の症状など)があれば、医師または薬剤師に報告する。

  • 薬の服用スケジュールが複雑で従うのが困難な場合は、簡単にするよう医師や薬剤師に依頼する。

  • 複数の医師にかかっている場合は、必ずそれぞれの医師に、使用しているすべての薬を伝える。

  • ラベルを拡大して印刷してもらうよう薬剤師に依頼し、読めることを確認する。

  • 持ちやすく開けやすい容器に薬を包装してもらうよう、薬剤師に依頼する。

処方された通り、忘れずに薬を服用する

薬が有益であるためには、薬を服用することだけでなく、正しい時刻に正しい方法で服用することを覚えておかなければなりません。いくつかの薬を服用する場合は、そのスケジュールが複雑になります。例えば、相互作用を避けるために、異なる時刻に薬を服用しなければならない場合もあります。ある薬は食後に服用しなければなりません。別の薬は空腹時に服用しなければなりません。スケジュールが複雑になればなるほど、服用間違いを起こしやすくなります。例えば、骨密度を増やすために使用するビスホスホネート系薬剤(アレンドロン酸、リセドロン酸、イバンドロン酸など)は、空腹時に少なくともコップ1杯の水とともに服用する必要があります。これらの薬を他の液体または食べものと一緒に服用すると、十分吸収されず効果的に働きません。

高齢者の記憶力に問題がある場合は、複雑なスケジュールに従うのはさらに困難です。このような人では通常援助が必要で、多くの場合、家族に援助を求めることになります。スケジュールを簡単にするよう、医師に依頼することができます。多くの場合、服用スケジュールを変更して簡便にしたり、または1日の服用回数を減らしたりすることができます。また、時間の経過とともに不要になる薬や服用を中止できる薬もあります。

薬を処方された通りに忘れずに服用するには、以下のものが助けになります。

  • 記憶補助法

  • 薬の容器

  • スマートフォンのアプリケーション

記憶補助法

薬の服用を忘れないために、記憶補助法が助けになります。例えば、食事など特定の日常の作業と関連付けて薬を服用することができます。

薬の容器

指示通りに服用する助けになる容器を薬局が提供してくれることもあります。日時を印刷したプラスチック包装に1日ずつの用量を1または2週間分パッケージしたもので、空になった分を見れば、服用を確認できます。薬局の中には、薬をブリスター包装で提供してくれるところもあります。これにより日々の服用分を容易に取り出すことができ、経過も容易に確認できます。しかし、このような包装ではいくらか費用がかかるかもしれません。また、多くの薬局では、定期的に使用する薬を月毎に1日でまとめて受け取れるように補充スケジュールを調整することができます。これにより、混乱を少なくしたり、薬局へ行く回数を減らしたり、錠剤の整理ケースへの入れ間違えを最小限に抑えたりすることができます。

電子的なリマンダー機能が付いたより精巧な容器もあります。服用時刻になると、容器がアラーム音を鳴らしたり、点滅したり、または言葉で通知したりします。

スマートフォンのアプリケーション(携帯電話のアプリケーション)

薬の管理に役立つアプリケーションを複数のスマートフォンやタブレットにダウンロードできます。このようなアプリケーションは、高齢者またはその家族が時間通りの服用を忘れないようにする助けになります。このアプリケーションの多くでは、スマートフォンやタブレットに注意喚起のための通知が送信されます。このアプリケーションには、有料で提供されるものもあります。

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