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加齢と薬

執筆者:

J. Mark Ruscin

, PharmD, FCCP, BCPS, Southern Illinois University Edwardsville School of Pharmacy;


Sunny A. Linnebur

, PharmD, BCPS, BCGP, University of Colorado Anschutz Medical Campus

最終査読/改訂年月 2015年 6月
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最も一般的な医学的介入である薬は、高齢者医療の重要な部分です。薬がなければ、多くの高齢者の身体機能はさらに衰えたり、またはより早く死を迎えるでしょう。

知っていますか?

  • 半数近い高齢者が、医師の指示通りに薬を服用していません。

  • 高齢者では多くの薬の作用(と副作用)が出やすくなっています。

高齢者は、高血圧、糖尿病、または関節炎など複数の慢性疾患にかかりやすいことから、若い人より多くの薬を服用する傾向があります。高齢者が慢性疾患の治療に使用するほとんどの薬は何年にもわたり服用されます。その他の薬は、感染症、ある種の痛み、便秘などの治療に短期間のみ服用されます。65歳以上の人のうち、90%が週に1種類以上、40%を超える人が週に5種類以上、12%が週に10種類以上の薬を服用します。一般に、女性は男性よりも多くの薬を服用します。高齢者のうち、フレイル(加齢に伴い筋力や心身の活力が低下した状態)であるか、入院している人、または介護施設に入居している人が最も多くの薬を服用します。介護施設入居者は平均7~8種類の薬を定期的に処方され、服用しています。高齢者は多数の非処方薬(市販薬[OTC薬])も服用しています。多くのOTC薬は潜在的に高齢者にとって危険です。

処方薬の便益とリスク

薬のおかげで、過去数十年間に、高齢者の健康と機能面の多くが改善されました。

  • ワクチンは、かつては多くの高齢者を死亡させた様々な感染症(インフルエンザや肺炎など)を予防する助けになります。

  • 多くの場合、抗菌薬は、肺炎や多くの重篤な感染症の治療に効果的です。

  • 高血圧をコントロールする薬(降圧薬)は、脳卒中や心臓発作を予防する助けになります。

  • 血糖値をコントロールする薬(インスリンやその他の血糖降下薬)により、数百万人の糖尿病の人が普通の生活をすることができます。これらの薬は、糖尿病により引き起こされる眼や腎臓の障害のリスクも軽減します。

  • 痛みやその他の症状をコントロールする薬により、数百万人の関節炎の人が機能を維持することができます。

しかし、薬は意図しない作用や望ましくない作用を引き起こすことがあります(副作用)。中高年から、薬の使用に関連する副作用のリスクが増加します。高齢者は若い人の2倍以上も薬の副作用を起こしやすくなります。副作用は重くなりやすく、生活の質(QOL)にも支障をきたすようになり、医療機関の受診や入院という結果になることがあります。

高齢者が副作用の影響を受けやすい理由はいくつかあります。

  • 年齢とともに、体内の水分が減少し、脂肪組織の量が増加します。そのため高齢者では、薬を希釈する水分が不足しがちで、水溶性の薬は濃度が濃くなります。そして薬を貯蔵する脂肪組織が比較的多いため、脂溶性の薬は体内に多く蓄積するようになります( 薬の体内分布)。

  • 加齢に伴い、腎臓では薬を尿中に排泄する能力が低下し、肝臓では薬を分解(代謝)する能力が衰えます( 薬の代謝)。その結果、薬が体から除去されにくくなります( 薬の排泄)。

  • 高齢者は通常、比較的多くの薬を服用し、多くの病気にかかっています。

  • 多くの薬を服用している人は、薬物相互作用のリスクが高くなります。

  • 高齢者に対する薬の適切な投与量を決める助けになる研究はほとんど行われていません。

  • 高齢者は、薬が原因で悪化したり、または薬の作用に影響を及ぼしたりすることがある慢性疾患にかかりやすい傾向があります。

こうした加齢に伴う変化のため、多くの薬は体内にとどまる時間が長くなり、薬の作用を長引かせ、副作用のリスクを高めます。したがって、高齢者ではしばしば、ある種の薬について、1回の用量を減らすか、または1日の投与回数を減らす必要があります。例えば、特定の心疾患の治療に使用されることのあるジゴキシンは、水に溶けて腎臓から排出されます。年齢とともに体の水分が少なくなり腎機能が衰えるため、体内のジゴキシン濃度が上昇し、副作用のリスクが高まります(吐き気または不整脈など)。この問題を防ぐため、医師は少量を処方する必要があります。または、他の薬に変更することもあります。

高齢者は薬の作用の影響を受けやすくなります。例えば不眠症の治療に抗不安薬または睡眠補助薬を使用すると、眠くなりがちで、錯乱を起こしやすくなります。一部の血圧を下げる薬を使うと、高齢者では若い人に比べて血圧が劇的に下がる傾向があります。血圧が大きく低下すると、めまい、ふらつき、転倒などの副作用が生じることがあります。このような副作用が生じた高齢者は、それについて主治医に相談すべきです。

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高齢者で特に問題を起こしやすい主な薬

用途

問題

アルファ遮断薬(ドキサゾシン、プラゾシン、テラゾシンなど)

高血圧の治療

高血圧治療に用いるべきではない。

起立性低血圧(立ち上がったときの急激な血圧低下)のリスクが高まる。

アルファ作動薬(クロニジン、グアナベンズ、グアンファシン、メチルドパ、レセルピンなど)

高血圧の治療

他の薬が効果的でない場合を除き、通常、高血圧の治療に用いるべきではない。

起立性低血圧と異常な心拍数低下が生じることや、脳の機能が低下することがある。

メチルドパとレセルピンはうつ病の一因になることがある。

レセルピンは、勃起障害(インポテンス)の一因になることがある。

鎮痛薬(ペチジン、ペンタゾシンなどの一部)

痛みの緩和

ペチジンは、オピオイドの一種であり、しばしば錯乱を引き起こし、ときにけいれんを引き起こす。すべてのオピオイドと同様に、便秘、尿閉(膀胱に尿がたまっても排尿できない状態)、眠気、錯乱を引き起こす。ペチジンは、内服ではあまり効果的でない。

ペンタゾシンは、錯乱や幻覚を引き起こすことがある。

抗不整脈薬(アミオダロン、ジソピラミド、ドフェチリド、ドロネダロン[dronedarone]、フレカイニド、イブチリド[ibutilide]、プロカインアミド、プロパフェノン、キニジン、ソタロールなどの一部)

不整脈の治療

通常、心房細動(不整脈)の治療に用いるべきではない。

アミオダロンは、甲状腺疾患、肺疾患、QT延長症候群(これ自体が、重篤な不整脈の一因になることがある)のリスクを高めることがある。

ジソピラミドは、強い抗コリン作用がある*。高齢者で心不全を引き起こす可能性がある。

抗うつ薬(アミトリプチリン、クロミプラミン、高用量のドキセピン、イミプラミン、トリミプラミンなどの古い薬)

うつ病の治療

これらの古い抗うつ薬には強い抗コリン作用がある*。起立性低血圧や過度の眠気も引き起こす。

抗コリン作用のある抗ヒスタミン薬(古い薬)(ブロムフェニラミン[brompheniramine]、カルビノキサミン、クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、デキスブロムフェニルアミン[dexbrompheniramine]、デクスクロルフェニラミン[dexchlorpheniramine]、ジフェンヒドラミン、ドキシラミン[doxylamine]、ヒドロキシジン、プロメタジン、トリプロリジンなど)

アレルギーもしくはかぜ症状の軽減、または睡眠補助

抗ヒスタミン薬の多くの非処方薬(市販薬)と処方薬には、強力な抗コリン作用がある*。

眠気や錯乱を引き起こすことがある。

せき止め、かぜ薬に含まれることが多い。

睡眠補助薬として使用すると、その作用に対する耐性が発生することもある。

抗パーキンソン病薬(ベンツトロピン、トリヘキシフェニジル)

パーキンソン病の治療

より効果的な薬が市販されている。

ベンツトロピンとトリヘキシフェニジルには強い抗コリン作用がある*。

抗精神病薬(クロルプロマジン、ハロペリドール、メソリダジン[mesoridazine]、チオリダジン(訳注:日本では販売中止)、チオチキセン、リスペリドン、オランザピン、クエチアピン、アリピプラゾールなど)、メトクロプラミド

現実との接点の喪失(精神病)の治療、またはいくぶん議論の余地はあるが認知症の人の行動障害の治療

ときに、吐き気の治療(一般に、クロルプロマジンまたはメトクロプラミドのみ)

眠気、運動障害(パーキンソン病に類似)、コントロールできない顔面けいれんを引き起こす。一部は、抗コリン作用もある*。これ以外に、死に至る副作用もある。精神病性障害がある場合のみ使用すべきであり、医師が患者を慎重にモニタリングする必要がある。

認知症の患者に抗精神病薬を投与すると、脳卒中や死亡のリスクが高まる。

メトクロプラミドは、眠気や運動障害(パーキンソン病に類似)を引き起こす。

バルビツール酸系薬剤(アモバルビタール、ブタバルビタール[butabarbital]、ブタルビタール、メホバルビタール、ペントバルビタール、フェノバルビタール、セコバルビタールなど)

鎮静、不安の軽減、または睡眠補助

薬に依存するようになる可能性がある。睡眠を助ける効果が失われることがある。低用量で服用しても過量投与になることがある。

ベンゾジアゼピン系薬剤(アルプラゾラム、クロルジアゼポキシド、クロルジアゼポキシド/アミトリプチリン、クリジニウム/クロルジアゼポキシド、クロナゼパム、クロラゼプ酸、ジアゼパム、エスタゾラム、フルラゼパム、ロラゼパム、オキサゼパム、クアゼパム、テマゼパム[temazepam]、トリアゾラムなど)

鎮静、不安の軽減、または睡眠補助

眠気を引き起こし、歩行時の平衡感覚が失われることがある。転倒と骨折のリスクが増加するほか、自動車事故のリスクも高くなる。

高齢者では、一部の薬の作用が極めて長時間続く(数日以上続くことが多い)。

特定の睡眠薬(エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデムなど)

睡眠補助

副作用はベンゾジアゼピン系薬剤と類似している。医師は、この薬の使用を短期間にとどめる方がよいとしている。

抱水クロラール

睡眠補助

耐性が短期間で発生し、睡眠補助薬として作用しなくなる。

過剰摂取のリスクが高い。

ジゴキシン

心不全または不整脈の治療

年齢とともに、腎臓のジゴキシンを排出する能力が低下する。大量に投与すると容易に有害な濃度(毒性濃度)に達する。副作用には、食欲不振、吐き気、錯乱などがある。

ジピリダモール(即放型)

血栓リスクの減少または血流改善

高齢者で起立性低血圧を引き起こすことが多い。アスピリンまたは抗凝固薬のワルファリンなど、血栓を形成しにくくする他の薬と併用すると、出血リスクを増加させる可能性もある。

消化管の筋れん縮を抑えたり止めたりする薬(鎮けい薬であるベラドンナアルカロイド、クリジニウム/クロルジアゼポキシド、ジサイクロミン、ヒヨスチアミン、プロパンテリン、スコポラミンなど)

腹部のけいれんと腹痛の軽減

強い抗コリン作用があり*、高齢者では副作用を引き起こすことが多い。有用性、特に高齢者が耐えられる低い投与量での有用性には疑問がある。

麦角アルカロイドメシル酸塩とイソクスプリン

血管拡張

年齢を問わず効果的ではない。

エストロゲン(プロゲスチン併用の有無を問わない)

ホットフラッシュ(ほてり)、寝汗、腟の乾燥などの更年期症状を緩和する助けになる。

高齢女性で乳がんと子宮(内膜)がんのリスクを増加させ、脳卒中、心臓発作、認知症のリスクを増加させる可能性がある。腟の乾燥の治療にはエストロゲン腟クリームが安全かつ効果的と考えられる。

ヒスタミン受容体(H2)拮抗薬(シメチジン、ファモチジン、ニザチジン、ラニチジンなど)

胸やけ、消化不良、または潰瘍の治療

シメチジンは、通常の用量で薬物相互作用や副作用(特に錯乱)を引き起こす可能性がある。

ファモチジン、ニザチジン、ラニチジンは、高用量で副作用(特に錯乱)を引き起こす可能性がある。

認知障害患者の記憶と思考の問題を悪化させることがある。

スライディングスケールを用いたインスリン投与

糖尿病の治療

この方法でインスリンを投与すると、血糖値が危険な水準まで低下することがあり、固定用量を食事と一緒に投与する方法と比較して、糖尿病のコントロールに効果的ではない。

緩下薬(鉱物油など)

便秘の治療

鉱物油は内服時に誤って肺の中へ吸い込まれ、肺の損傷を引き起こすことがある。

男性ホルモン(テストステロン、メチルテストステロンなど)

テストステロン低値(男性性腺機能低下症という)

男性のテストステロン値が低く、重大な症状が引き起こされている場合に限り使用するべきである。心疾患の一因となったり、前立腺疾患が悪化したりすることがある。

メゲストロール(megestrol

食欲を増進し、減少した体重を回復する助けになる

血栓を引き起こすことがあり、死亡リスクを高める可能性がある。また、体重増加を助けるのに、あまり効果的でないと考えられる。

筋弛緩薬(カリソプロドール、クロルゾキサゾン、シクロベンザプリン[cyclobenzaprine]、メタキサロン[metaxalone]、メトカルバモール、オルフェナドリン[orphenadrine]など)

筋肉のけいれんの軽減

ほとんどの筋弛緩薬には抗コリン作用がある*。眠気や脱力も引き起こすため、転倒と骨折のリスクが高まる。すべての筋弛緩薬について、高齢者の副作用を避けるために必要な低い投与量での有用性には疑問がある。リスクが便益を上回る可能性が高い。

ニフェジピン(即放型)

降圧

即放型カプセルの形で服用すると、血圧が過度に低下することがあり、ときに心臓発作と類似した症状(例えば、胸部の圧迫感や胸痛)が生じることがある。

ニトロフラントイン

尿路感染症の治療

長期間使用すると、副作用(肺の損傷など)を引き起こすことがある。膀胱感染の治療のために服用した場合では、腎機能が低下していると、効果的でないことがある。

NSAID(アスピリン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、メクロフェナム酸[meclofenamate]、メフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダク、トルメチンなど)

COX-2阻害薬(セレコキシブ)

痛みと炎症の軽減

NSAIDを長期間使用する場合、胃を保護する他の薬を併用しなければ、消化性潰瘍疾患、または胃もしくは腸の出血を引き起こすことがある。NSAIDとセレコキシブは、腎機能と心不全症状を悪化させることもある。

すべてのNSAIDのうち、インドメタシンの副作用が最も多い。錯乱またはめまいを引き起こす可能性もある。

スピロノラクトン

降圧または利尿薬としての作用

血中カリウム濃度上昇の一因になることがある。

スルホニル尿素薬(クロルプロパミド、グリベンクラミドなどの長時間作用型の薬)

糖尿病の治療

クロルプロパミドとグリベンクラミドの作用が長期間続く。高齢者では、血糖値が低い状態(低血糖)が長時間続く可能性がある。クロルプロパミドは、腎臓に過剰な水分を保持させ、血液中のナトリウム濃度を低下させることもある。

チクロピジン

脳卒中の予防の助けになる

重篤な血液疾患を引き起こすことがある。より安全で効果的な薬が市販されている。

トリメトベンズアミド(trimethobenzamide

吐き気の軽減

腕、脚、その他の部位の異常運動を引き起こすことがある。吐き気軽減に最も効果が低い薬の1つである。

*抗コリン作用には錯乱、かすみ目、便秘、口腔乾燥(口の中の乾燥)、ふらつきや平衡感覚の喪失、排尿の開始困難などがあります。

ジピリダモールは徐放剤としてアスピリンと併用することも可能です。これは、脳卒中の既往がある人で脳卒中を予防するために使用されますが、この表に含まれていません。

COX-2阻害薬 = コキシブ系薬剤、NSAID = 非ステロイド系抗炎症薬

一般的に使用されている多くの薬に抗コリン作用があります。この種の薬には、一部の抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミン)、多くの抗ヒスタミン薬(OTC薬の睡眠補助薬、かぜ薬、アレルギー薬に含まれるジフェンヒドラミンなど)、多くの抗精神病薬(クロルプロマジン、クロザピンなど)などがあります。高齢者、特に記憶障害がある場合は、抗コリン作用を特に受けやすく、錯乱、かすみ目、便秘、口腔乾燥、排尿の開始困難などが現れます。抗コリン作用の中には、振戦の軽減(パーキンソン病の治療の場合など)や吐き気の軽減といった好ましいものもありますが、その他のほとんどは望ましくありません。

抗コリン作用:どんな作用か?

抗コリン作用は、アセチルコリンの作用を遮断する薬がもつ働きです。アセチルコリンは、信号を隣接する神経細胞または筋肉もしくは分泌腺内の細胞に伝達するために神経細胞が放出する化学伝達物質(神経伝達物質)です。アセチルコリンは細胞同士の連絡を助けます。アセチルコリンは記憶、学習、集中の助けになります。心臓、血管、気道、泌尿器、消化管の調節も助けます。アセチルコリンの作用を遮断する薬は、これらの臓器の正常な機能を乱す可能性があります。

一般的に使用されている多くの薬に抗コリン作用があります。これらの薬のほとんどは、こうした望ましくない作用を引き起こすことを意図して設計されたわけではありません。抗コリン作用には、以下のような症状などがあります。

  • 錯乱

  • かすみ目

  • 便秘

  • 口腔乾燥

  • ふらつきと平衡感覚の喪失

  • 排尿の開始困難

一方で、抗コリン薬には振戦や吐き気を抑える助けになるなど有用な作用もあります。

高齢者は加齢とともに体内のアセチルコリンの量が減少するため、抗コリン作用を経験しやすくなります。つまり、抗コリン薬によって遮断されるアセチルコリンの割合が高くなり、高齢者の体は少量しかないアセチルコリンをうまく利用できなくなるのです。また、体の多くの部分(消化管など)の細胞で、アセチルコリンが結合する部位(受容体)が減少します。結果的に、医師は通常、可能であれば、高齢者には抗コリン作用のある薬の使用を避けます。

薬の副作用には、以下の要因との相互作用が原因の場合もあります。

  • 薬を服用した目的とは別の病気、症状、または状態(薬と病気の相互作用)

  • 別の薬(薬物間相互作用)

  • 食品(薬と食品の相互作用)

  • 薬用ハーブ(薬と薬用ハーブの相互作用— 可能性のある主な薬用ハーブと薬の相互作用

高齢者は多くの病気にかかりやすく、若い人よりもたくさんの薬を服用するため、薬と病気、薬と薬の相互作用を起こす可能性もそれだけ高くなります。薬と病気の相互作用の多くは、薬を服用することで病気、症状、または状態が悪化します( 薬が原因となって悪化する可能性がある高齢者の主な病気や症状)。

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薬が原因となって悪化する可能性がある高齢者の主な病気や症状

病気または症状

慢性腎臓病

NSAID(イブプロフェン、ナプロキセンなど)、トリアムテレン

便秘

ジルチアゼム

抗コリン作用がある薬剤*

ベラパミル

せん妄、認知症、または軽度認知障害

クロルプロマジン

コルチコステロイド

鎮静作用のある薬(ベンゾジアゼピン系薬剤、鎮静薬、睡眠補助薬など)または抗コリン作用のある薬*

ヒスタミンH2受容体拮抗薬

ペチジン

チオリダジン(訳注:日本では販売中止)

失神または起立性低血圧(立ち上がったときの急激な血圧低下)

クロルプロマジン、ドネペジル、ドキサゾシン、ガランタミン、オランザピン、プラゾシン、一部の古い抗うつ薬(アミトリプチリン、イミプラミンなど)、リバスチグミン、テラゾシン、チオリダジン(訳注:日本では販売中止)

複数の降圧薬の使用

転倒

鎮静作用のある薬(抗てんかん薬、抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデムなど)、抗うつ薬、一部の降圧薬(高用量での使用時)

心不全

シロスタゾール、ジルチアゼム、ジソピラミド、ドロネダロン(dronedarone)、NSAIDとCOX-2阻害薬、ピオグリタゾン、ロシグリタゾン、ベラパミル

不眠

カフェイン、経口鼻閉改善薬(プソイドエフェドリン、フェニレフリンなど)、中枢刺激薬(アンフェタミン、メチルフェニデート、ペモリンなど)、テオフィリン

パーキンソン病

特定の制吐薬(メトクロプラミド、プロクロルペラジン、プロメタジン)、ほとんどの抗精神病薬(クエチアピン、クロザピンなどの少数の薬を除く)

消化性潰瘍疾患または胃出血

アスピリンとほとんどのNSAID

けいれん性疾患

ブプロピオン(bupropion)、クロルプロマジン、クロザピン、マプロチリン、ペチジン、オランザピン、チオリダジン(訳注:日本では販売中止)、チオチキセン、トラマドール

尿失禁

ドキサゾシン、経口または経皮型(腟に直接貼付しない)エストロゲン、プラゾシン、テラゾシン

前立腺の肥大が原因となって生じる尿閉または泌尿器症状(尿の流れが悪くなる、少量ずつの頻繁な排尿、排尿後尿滴下など)

抗コリン作用を有する薬剤*、鼻閉改善薬を含有するかぜ薬

肺疾患の治療に用いられる吸入抗コリン薬(アクリジニウム、イプラトロピウム、チオトロピウム)

*抗コリン作用には錯乱、かすみ目、便秘、口腔乾燥、ふらつきや平衡感覚の喪失、排尿の開始困難などがあります。

COX-2阻害薬 = コキシブ系薬剤、NSAID = 非ステロイド系抗炎症薬

患者、医師、薬剤師は、薬と病気の相互作用や薬物間相互作用のリスクを軽減する対策を講じることができます。OTC薬や薬用ハーブが他の薬と相互作用する可能性があるため、これらの薬と処方薬の併用について医師または薬剤師に尋ねるべきです。

薬の服用に関する医師の指示に従わないこと(ノンコンプライアンスまたはノンアドヒアランスといいます)は危険です( 薬物治療のアドヒアランス(指示の遵守))。高齢者だけが指示通りに薬を服用しないわけではありません。しかし、高齢者では半数近くが指示通りに服用していません。薬をまったく服用しない場合も、服用する量が少なすぎたり多すぎたりした場合にも問題が起こります。副作用があるという理由で、指示よりも量を減らすのは理にかなっていると思うかもしれませんが、やはり薬の服用のしかたを変える場合はあらかじめ医師に相談すべきです。

服用の便益を最大にし、リスクを減らす

高齢者とその介護者は、薬の服用の便益を最大にし、リスクを減らすためにできることが多くあります。薬に関する疑問または問題は何でも医師または薬剤師に相談しましょう。問題を回避し、健康を増進するためには、薬を指示通りに服用し、医療提供者に情報を伝達することが不可欠です。

薬と治療中の病気について知りましょう。

  • 市販薬やビタミン、ミネラル、薬用ハーブなどのサプリメントを含め、服用中のすべての薬の一覧表を保持する。

  • それぞれの薬について、なぜ服用し、どのような効果が期待されるのかを知っておく。

  • それぞれの薬について、どんな副作用があり、副作用が起こったときにどうすればよいかを知っておく。

  • 薬を服用すべき時刻、食事と一緒に服用できるか、他の薬と同時に服用できるか、いつ服用を中止するかなど、薬の服用法を知っておく。

  • 服用を忘れたときどうするかを知っておく。

  • 薬の服用法に関して、書き留めるか、または医師、看護師、もしくは薬剤師に書いてもらうよう依頼する(このような情報は忘れやすいため)。

  • 現在抱えているすべての病気の一覧表を保持する。

薬を正しく使用しましょう。

  • 指示された通りに薬を使用する。

  • 薬を指示通りに服用するために、薬の整理箱など記憶を助ける道具を使用する。

  • 薬を中止する前に、副作用が現れた、薬が効いていないらしい、または薬の購入が負担になる、などの問題を何でも医師に相談する。

  • 医師、看護師、または薬剤師から指示がなければ、以前に処方された薬で使用していない薬を廃棄する。

  • 薬を廃棄する際は、ラベルに表示されている廃棄時の指示に従う、米国食品医薬品局のウェブサイトの記載事項を確認する、正規の処理センター(場合により薬局または地元の当局)に持っていく、または薬をネコ用砂やコーヒーかすと混ぜてビニールなどに包み、密閉または防水容器あるいは袋に入れてゴミとして捨てる。

  • 類似する病気であっても、他者の薬を服用しない。

  • 薬の有効期限を確認し、期限切れの薬を使用しない。

医師や薬剤師と密接に連絡しましょう。

  • 同じ薬局、できれば包括的なサービス(薬が相互作用を起こす危険性のチェックなど)を提供し、各人の完全な薬歴管理を実施している薬局に、すべての処方をしてもらう。

  • 医師に求められたら、診察時に服用中のすべての薬を持参する。

  • 服用中の薬と病気の一覧表を持参して、医師、看護師、または薬剤師と定期的に話し合い、薬が正しいことや、使用を継続すべきであることを確認する。例えば、すべての薬のしかるべき服用方法を医師に話し、その内容が正しいかどうか尋ねることで、自分自身を試すことができる。

  • 薬を変更するたびに、医師、看護師、または薬剤師と薬の一覧表を確認する(医師と薬剤師は薬同士の相互作用を確認できる)。

  • 使用中のすべての市販薬とビタミン、ミネラル、薬用ハーブなどのサプリメントについて、医師と薬剤師に知らせる。

  • 市販薬やサプリメントを含め、どんな薬でも新たに服用する場合は医師に相談する。

  • 薬の使用に関連すると疑われる症状(新しい症状または予想外の症状など)があれば、医師または薬剤師に報告する。

  • 薬の服用スケジュールが複雑で従うのが困難な場合は、簡単にするよう医師に依頼する。

  • 複数の医師にかかっている場合は、必ずそれぞれの医師に、使用しているすべての薬を伝える。

  • ラベルを拡大して印刷してもらうよう薬剤師に依頼し、読めることを確認する。

  • 持ちやすく開けやすい容器に薬を包装してもらうよう、薬剤師に依頼する。

処方された通り、忘れずに薬を服用する

薬が有益であるためには、薬を服用することだけでなく、正しい時刻に正しい方法で服用することを覚えておかなければなりません。いくつかの薬を服用する場合は、そのスケジュールが複雑になります。例えば、相互作用を避けるために、異なる時刻に薬を服用しなければならない場合もあります。ある薬は食後に服用しなければなりません。別の薬は空腹時に服用しなければなりません。スケジュールが複雑になればなるほど、服用間違いを起こしやすくなります。例えば、骨密度を増やすために使用するビスホスホネート系薬剤(アレンドロン酸やリセドロン酸など)は、空腹時に少なくともコップ1杯の水とともに服用する必要があります。これらの薬を他の液体または食べものと一緒に服用すると、十分吸収されず効果的に働きません。

高齢者の記憶力に問題がある場合は、複雑なスケジュールに従うのはさらに困難です。このような人では通常援助が必要で、多くの場合、家族に援助を求めることになります。スケジュールを簡単にするよう、医師に依頼することができます。多くの場合、服用スケジュールを変更して簡便にしたり、または1日の服用回数を減らしたりすることができます。また、時間の経過とともに不要になる薬や服用を中止できる薬もあります。

薬を処方された通りに忘れずに服用するには、以下のものが助けになります。

  • 記憶補助法

  • 薬の容器

  • スマートフォンのアプリケーション

記憶補助法

薬の服用を忘れないために、記憶補助法が助けになります。例えば、食事など特定の日常の作業と関連付けて薬を服用することができます。

薬の容器

指示通りに服用する助けになる容器を薬局が提供してくれることもあります。日時を印刷したプラスチック包装に1日ずつの用量を1または2週間分パッケージしたもので、空になった分を見れば、服用を確認できます。薬局の中には、薬をブリスター包装で提供してくれるところもあります。これにより日々の服用分を容易に取り出すことができ、経過も容易に確認できます。しかし、このような包装ではいくらか費用がかかるかもしれません。

電子的なリマンダー機能が付いたより精巧な容器もあります。服用時刻になると、容器がアラーム音を鳴らしたり、点滅したり、または言葉で通知したりします。

スマートフォンのアプリケーション(携帯電話のアプリケーション)

薬の管理に役立つアプリケーションを複数のスマートフォンやタブレットにダウンロードできます。このようなアプリケーションは、高齢者またはその家族が時間通りの服用を忘れないようにする助けになります。このアプリケーションの多くでは、スマートフォンやタブレットに注意喚起のための通知が送信されます。このアプリケーションには、有料で提供されるものもあります。

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