胎児の子宮内での動きを妨げる状態があれば、先天性多発性関節拘縮症が生じる可能性があります。そのような原因としては以下のものがあります。
胎児の動きの制限、例えば、母親の子宮の形に異常がある場合、母親が2人以上の胎児を妊娠している場合、 羊水が不足 羊水の問題 羊水とは、子宮内の胎児の周囲を満たしている液体のことです。羊水と胎児は羊膜腔と呼ばれる膜の中に入っています。羊水の問題には、以下のものがあります。 羊水量が多すぎる 羊水量が少なすぎる 羊水、羊膜腔、または胎盤の感染( 羊膜内感染と呼ばれる)。 羊水過多や羊水過少などの妊娠合併症は、妊娠中だけに発生する問題です。母体に影響を及ぼすもの、胎... さらに読む している場合など
胎児が子宮内で動く能力に影響を及ぼす遺伝性疾患、例えば 筋ジストロフィー 筋ジストロフィーと関連疾患に関する序 筋ジストロフィーとは、正常な筋肉の構造と機能のために必要な 遺伝子の1つ以上に異常があるために、様々な重症度の筋力 低下を引き起こす遺伝性筋疾患の総称です。顕微鏡で観察すると、筋線維が変性しているように見えます。 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーは、最も多くみられる病型の筋ジストロフィーです。... さらに読む や 結合組織の異常 小児における結合組織疾患の概要 結合組織は頑丈で、その多くは線維性であり、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしています。 筋肉、 骨、軟骨、 靱帯、 腱は、ほとんどが結合組織からできています。ほかには皮膚や内臓などにも結合組織があります。結合組織の特徴や含まれる細胞の種類は、体のどこに位置する組織かによって異なります。結合組織は、重さや張力に耐えられ... さらに読む など
300種類以上の遺伝性疾患(脊髄性筋萎縮症I型 脊髄性筋萎縮症(SMA) 脊髄性筋萎縮症は、脊髄と脳幹に由来する神経細胞が変性して、進行性の筋力低下と萎縮が起こる遺伝性疾患です。 脊髄性筋萎縮症には4つの主な病型があり、それぞれ筋力低下と筋萎縮の程度が異なります。 病型によっては、車いすでの生活を余儀なくなれ、余命が短くなることもあります。 脊髄性筋萎縮症は症状から疑われ、その診断は家族歴、筋肉と神経の機能の検査、異常遺伝子を検出するための血液検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む や 18トリソミー 18トリソミー 18トリソミーは、余分な18番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 18トリソミーは、18番染色体が余分にあることで発生します。 この症候群の乳児は、典型的には体格が小さく、多くの身体的異常と内臓の機能障害がみられます。 診断を確定するための検査は、出生前でも出生後にも行えます。 18トリソミーには治療法がありません。 さらに読む など)が、先天性多発性関節拘縮症と関連することが報告されています。
(顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序 顔面および四肢の先天異常はかなり多くみられます。体の特定の部分、例えば口( 口唇裂または 口蓋裂[こうがいれつ])や足( 内反足)だけが侵されることがあります。多くの異常を伴う遺伝性症候群の一部である場合もあり、その例としては先天異常が顔面だけでなく他の多くの部位にも現れるトリーチャー・コリンズ症候群などがあります。... さらに読む も参照のこと。)
症状
先天性多発性関節拘縮症の乳児では、いくつかの関節が弯曲した状態で硬直し、そのために関節が曲がらなくなります。筋肉の弱まりが多くの乳児でみられます。子宮内で胎児の筋肉と関節の動きが低下していると、生まれた後も関節の動きが低下しやすくなります。侵されている関節では、正常の場合は骨を動かす働きをする神経も損なわれていることがあります。関節拘縮症がある乳児では、股関節、膝関節、または肘関節に脱臼がみられることもあります。
診断
医師による評価
遺伝子検査
出生前に、定期的な超音波検査で異常のある腕や脚が認められることがあります。腕や脚の異常がみられる場合、胎児の他の部位の超音波検査や、 絨毛採取 絨毛採取 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む や 羊水穿刺 羊水穿刺 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む で胎児の遺伝子検査を行うことがあります。医師は、親に遺伝カウンセリングを受けるよう勧めることがあります。
出生後には、医師が身体診察を行い、乳児の固まった関節や腕と脚に注目します。その後、乳児の血液サンプルを分析して遺伝子検査を行い、染色体や遺伝子の異常がないか調べます。この検査は、特定の病気が原因なのかどうかを判断し、他の原因を否定するために役立ちます。
様々な種類の関節拘縮症を鑑別するために、筋生検(検査のために筋肉のサンプルを採取すること)や 筋電図検査 筋電図検査と神経伝導検査 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む などの筋肉の検査を行うことがあります。
予後(経過の見通し)
生まれつき関節拘縮症がある乳児では、関節拘縮症の原因が知能にも影響を及ぼす病気や症候群でなければ、一般的に比較的正常な知能が発達します。医師は、親が予後(経過の見通し)を知り遺伝カウンセリングを受けられるように、何が関節拘縮症の原因になったのか詳細な診断を確定しようとします。
治療
ギプスと理学療法
ときに手術
患児の四肢をギプスで固定して、硬くなった関節を注意深く動かす 理学療法 理学療法 (PT) 理学療法は、 リハビリテーションの中心となるもので、運動療法と整体を行います。関節や筋肉の機能を改善し、患者がより容易に立ち、バランスをとり、歩き、階段を昇れるようにします。理学療法では以下のような訓練が行われます。 関節可動域訓練 筋肉強化運動 協調・バランス運動訓練 歩行訓練 さらに読む を行うと関節の動きがよくなります。
関節の動きをより正常にするために、付着している組織から骨を離す手術が必要になる場合もあります。筋肉を動かす手術(例えば、上腕三頭筋が肘関節を伸ばすのではなく曲げることができるように動かす)によって機能が改善することがあります。