遺伝とは、ある世代から次の世代へ遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある 遺伝子 X連鎖劣性遺伝疾患 を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 遺伝性疾患 単一遺伝子疾患の遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があ... さらに読む には様々な種類があります。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも疾患は現れていません。一部の遺伝性代謝疾患は X連鎖性 X連鎖劣性遺伝疾患
であり、これは男児に異常な遺伝子のコピーが1つあるだけで病気が発生することを意味します。
代謝疾患には数百種類のものがあり、そのほとんどは非常にまれなものです。
代謝
食べものや飲みものの大半は複雑な物質であるため、体はそれらを単純な物質に分解しなければなりません。この過程は、いくつかの段階を経て行われます。分解された単純な物質は、生命維持に必要な物質を組み立てるための基本成分として使われます。この合成の過程にも、いくつかの段階が必要です。重要な基本成分は以下の通りです。
代謝とは、摂取した物質の分解と合成に関わるこの複雑なプロセスのことです。
代謝を担うのは酵素という種類の化学物質で、これは体の細胞内で作られます。遺伝子の異常によって酵素の機能障害や不足、欠損が起こると、様々な代謝疾患が発生します。このような病気は通常、以下のいずれかまたは両方に起因します。
分解すべき物質を分解できないため、毒性のある中間代謝物が蓄積する
何らかの必須の物質を産生できない
代謝疾患は、影響が及ぶ物質の種類によって分類されます。
診断
出生前スクリーニング検査
新生児スクリーニング検査
出生前には、 羊水穿刺 羊水穿刺 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む または 絨毛採取 絨毛採取 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む といった出生前スクリーニング検査で診断が可能な遺伝性代謝疾患(フェニルケトン尿症 フェニルケトン尿症(PKU) フェニルケトン尿症は、 アミノ酸代謝異常症であり、フェニルアラニンというアミノ酸を生まれつき正常に分解できない乳児に起こります。脳に有害なフェニルアラニンが血液中に蓄積します。フェニルケトン尿症は、この病気を引き起こす欠陥のある 遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。... さらに読む や リピドーシス ライソゾーム病の概要 ライソゾーム病は 遺伝性代謝疾患です。遺伝性疾患は、これらの病気を引き起こす欠陥のある 遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。 遺伝性疾患には様々な種類があります。多くの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも... さらに読む など)もあります。しかし通常は、遺伝性代謝疾患の診断は血液検査か組織を採取する生検を行って特定の酵素の不足または欠損があるかどうかを調べることで確定されます。ときに、遺伝子検査も行われます。
出生後には、これらの病気の多くが、出生時に行われることになっている 新生児スクリーニング検査 新生児スクリーニング検査 出生時に分からない重篤な病気の多くは、様々なスクリーニング検査により発見できます。新生児の健全な発達を妨げるような多くの病気を早期に診断し、迅速に治療を行うことで、症状を軽くしたり、予防したりすることができます。どこでも必ず行われる検査もあれば、特定の州だけが義務づけている検査もあります。スクリーニング検査の結果が陽性の場合、他の検査もし... さらに読む で発見されます。州が実施する新生児スクリーニングの一覧表は全米新生児スクリーニング&グローバルリソースセンター(National Newborn Screening and Global Resource Center)のウェブサイトで閲覧できます。しかし、あまり一般的でない遺伝性代謝疾患の多くに対しては新生児へのスクリーニングは行われず、医師は問題が疑われる場合にのみ、こうした病気の検査を行います。
医師は、身体診察の結果から遺伝性代謝疾患を疑うことがあります。症状から手がかりが得られることもあります。例えば、甘い匂いのする尿を排泄する小児は メープルシロップ尿症 メープルシロップ尿症 アミノ酸代謝異常症は 遺伝性代謝疾患です。遺伝性疾患は、これらの病気を引き起こす欠陥のある 遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも疾患は現れていません。一部の遺... さらに読む 、足の蒸れたような匂いがする小児は イソ吉草酸血症 イソ吉草酸血症 アミノ酸代謝異常症は 遺伝性代謝疾患です。遺伝性疾患は、これらの病気を引き起こす欠陥のある 遺伝子が親から子どもに受け継がれることで発生します。ほとんどの遺伝性代謝疾患では、患児の両親がともに異常な遺伝子のコピーをもっています。通常、病気の発生には異常な遺伝子のコピーが2つ必要であるため、普通はいずれの親にも疾患は現れていません。一部の遺... さらに読む の可能性があります。眼の異常、大きな肝臓もしくは脾臓、心臓の異常(心筋症 心筋症の概要 心筋症とは、心臓の壁を構成する筋肉の構造と機能が障害される進行性の病気です。 心筋症の主な病型としては、以下の3種類があります。 拡張型心筋症:心室(心臓内部の下側にある2つの部屋)が拡大(拡張)する病型 肥大型心筋症:心室の壁が厚く硬くなる病型 拘束型心筋症:心室の壁が硬くなるものの、必ずしも厚くならない病型 さらに読む など)、または筋力低下は、その他の遺伝性代謝疾患を示すことがあります。
さらなる情報
全米新生児スクリーニング&グローバルリソースセンター(National Newborn Screening and Global Resource Center)
全米希少疾患患者協議会(National Organization for Rare Disorders)(NORD)
遺伝子疾患・希少疾患情報センター(Genetic and Rare Diseases Information Center)(GARD)