先天性ミオパチーにはいくつかの病型があります。以下の3つの病型が最も多くみられます。
セントラルコア病とマルチミニコア病(コアミオパチー)
中心核ミオパチー
ネマリンミオパチー
症状と寿命はミオパチーの病型と重症度に応じて変わります。
セントラルコア病とマルチミニコア病(コアミオパチー)
セントラルコア病とマルチミニコア病は、先天性ミオパチーの中で最も多くみられる病型です。
この病気の新生児の大半には、筋肉の緊張が極度に低下する筋緊張低下と軽度の 筋力低下 筋力低下 筋力低下または脱力とは、筋肉の力が低下することで、どれだけ頑張っても筋肉を正常に動かすことができない状態をいいます。しかし、これらの用語はしばしば誤った使い方をされます。多くの人は、筋肉の力(筋力)は正常であるにもかかわらず、単なる 疲労感を「脱力感」と言ったり、痛みや関節のこわばりが原因で動きが制限されているだけなのに「筋力が落ちた」と表現したりすることがあります。筋力低下は、... さらに読む がみられますが、コアミオパチーの症状は成人期まで現れないこともあります。多くの場合、顔面の筋力低下もみられます。筋力低下は悪化せず、余命は正常ですが、重症の人では車いすが必要になる場合もあります。セントラルコア病の患者では 悪性高熱症 悪性高熱症 悪性高熱症とは、もともと悪性高熱症にかかりやすい人が、一部の筋弛緩薬と手術のための麻酔ガスを併用した場合に生じるまれな、生命を脅かす体温の上昇です。 悪性高熱症は、麻酔を行ったとき、または手術中や手術直後に生じることがあります。 筋細胞の働きが過度に活発になることで、持続性の筋収縮が起き、その結果熱が生じ、体温が非常に高くなります。 症状には、筋肉の硬直、心拍数の増加、速い呼吸などがあります。... さらに読む という生命を脅かす病気のリスクが高まります。
中心核ミオパチー
中心核ミオパチーは、様々な形で遺伝します。X染色体上で運ばれる遺伝子によって遺伝する病型(X連鎖遺伝 X連鎖遺伝 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む を参照)が最もよくみられ、最も重症で、大半の患者が生後1年以内に死亡します。 常染色体優性遺伝 優性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む 型の症状は、典型的には青年期または成人期に現れます。これらの病型のいずれかの患者には、運動によって生じる筋肉痛、顔面の筋力低下、まぶたの垂れ下がり、ならびに眼の筋力低下がみられます。
ネマリンミオパチー
ネマリンミオパチーは、比較的多くみられる先天性ミオパチーの一種で、常染色体優性または 常染色体劣性 劣性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む で遺伝します。
ネマリンミオパチーは重症、中等症、軽症に分けられます。重症の病型の患者には、呼吸に使う筋肉の筋力低下や 呼吸不全 呼吸不全 呼吸不全は、血液中の酸素レベルが危険なほど低くなったり、血液中の二酸化炭素濃度が危険なほど高くなる病気です。 呼吸不全の原因としては、気道をふさぐ病気、肺組織を損傷する病気、呼吸を制御する筋肉を衰えさせる病気、呼吸を促す仕組みが抑制される病気などがあります。 激しい息切れ、皮膚の青みがかった変色、錯乱または眠気などの症状がみられることがあ... さらに読む がみられることがあります。中等症の病型の患者には、時間の経過とともに悪化する顔面、首、体幹、足の筋力低下がみられることがありますが、余命はほぼ正常になる場合もあります。軽症の病型の患者には、悪化しない筋力低下がみられ、余命は正常です。
診断
筋力低下の症状
筋生検
先天性ミオパチーの診断は、それぞれの特定の病型によって引き起こされる特徴的な筋力低下の症状に基づいて下されます。
医師は、生検(組織片を採取して顕微鏡で調べます)のために筋力低下がみられる筋肉組織のサンプルを採取し、診断を確定します。
治療
理学療法
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国筋ジストロフィー協会(Muscular Dystrophy Association):先天性ミオパチーとともに生きる人向けの研究、治療、技術、支援に関する情報