正常な場合、長いチューブ状をした器官である 食道 のどと食道 のど(咽頭[いんとう]、 のどを参照)は口の下後方に位置しています。口から飲み込まれた飲食物はのどを通過します。飲食物を飲み込む運動(嚥下[えんげ])は、特に意識しなくても始まり自動的に継続します。嚥下時には、小さな筋皮弁(喉頭蓋[こうとうがい])が閉じて、飲食物が肺に向かう気管に入らないように防いでいます。口の天井の後方部分(軟口蓋[なんこうがい])は上にもち上がって、飲食物が鼻に入らないように防いでいます。口蓋垂(こうがいすい)は、... さらに読む は口と胃をつないでいます。食道閉鎖症では、食物は、食道から胃へ送られるのが遅くなるか、送られなくなります。
食道閉鎖症と気管食道瘻がみられる小児の多くでは、脊椎、 心臓 心臓の異常の概要 約100人に1人は心臓に異常をもって生まれます。重症の場合もありますが、多くはそうではありません。心臓の異常には心臓壁、弁、心臓に出入りする血管の異常形成などがあります。 哺乳不良、呼吸困難、青みがかった皮膚、正常に発育しない、あるいは正常に運動できない、速い心拍、失神のほか、乳児が成長するに従って運動中の胸痛といった症状がみられます。... さらに読む 、 腎臓 腎臓の異常 腎臓(左右に2つあって血液から老廃物をろ過して尿を作っている臓器)に生じる先天異常がいくつかあります。そのような異常は、通常は医師による診察では明らかにならず、 尿路を評価する検査を行う必要があります。 ( 尿路の先天異常の概要も参照のこと。) 腎臓の先天異常には多くの種類があります。そのような異常の多くは以下の変化をもたらします。 尿が腎臓から出る流れを妨げたり遅くしたりする... さらに読む 、性器、耳、 四肢 四肢の欠損または形成不全 出生時に、四肢の欠損や変形、発育不全がみられることがあります。 四肢の形成に異常がみられることがあります。例えば、遺伝的異常のため、手や前腕の骨が欠損していたり( 染色体異常を参照)、ときには手や足の一部または全部が欠損している場合があります。四肢の正常な発達が子宮内で中断することもあります。羊膜索症候群では、羊膜腔(子宮内で発育中の胎児の周囲を満たす羊水が入っている袋)から出た細い組織の束によって腕や脚が締めつけられ、その発育に異常が... さらに読む の異常や精神的・身体的な発達の遅れなど、他の異常もみられます。
飲み込んだ食物と唾液が瘻孔(ろうこう)を経由して肺に入り、せきや窒息、呼吸困難を引き起こし、ときに 誤嚥性肺炎 誤嚥性肺炎と化学性肺炎 誤嚥性肺炎は、口腔内の分泌物、胃の内容物、またはその両方を肺に吸い込んだ場合に発生する肺の感染症です。化学性肺炎は、肺に有毒な物質を吸い込んだ場合に起こる肺の炎症です。 症状には、せきや息切れなどがあります。 医師は、患者の症状や胸部X線検査に基づいて診断を下します。 治療法や予後は、吸い込んだ物質の種類によって異なります。 誤嚥性肺炎と化学性肺炎は、どちらも肺を刺激する物質を吸入して起こる肺の炎症であるため、しばしばまとめて扱われます... さらに読む (食物や唾液を肺に吸い込むことによる)も引き起こすことから、気管食道瘻は危険です。食物や液体が肺に入ると、血液の酸素の受け取りが阻害され、皮膚が青みがかった色になることがあります(チアノーゼ チアノーゼ チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。 酸素が枯渇した血液(脱酸素化血液)は、赤色というより青みがかっており、これが皮膚を循環している場合にチアノーゼがみられます。肺または心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素レベルを低下させるため、チアノーゼの原因となります。また、血管や心臓にある種の奇形があると、血液が空気中から酸素を取り込む場所である肺胞(肺にある小さな空気の袋)を通らず、直接心臓に流れるために、... さらに読む )。
(消化管先天異常の概要 消化管先天異常の概要 消化管の発達が不完全である、または位置が異常であるために通過障害を起こすことがあり、また消化管の筋肉や神経に異常があることもあります。 症状は異常のある部位によって変わってきますが、けいれん性の腹痛、腹部の膨満、嘔吐などがみられます。 診断は通常、画像検査とその他の検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む も参照のこと。)
閉鎖と瘻孔:食道の異常
食道閉鎖とは、食道が狭くなっていたり行き止まりになっていたりする状態です。この場合、正常な食道のように胃につながっていません。気管食道瘻とは、食道と気管(肺につながっています)がつながっている異常な状態です。 ![]() |
症状
食道閉鎖症の新生児では、哺乳中に飲み込もうとすると、せきが出て、むせび、よだれが出ます。
診断
出生前:出生前超音波検査
出生後:食道へのチューブの挿入およびX線検査
食道閉鎖症は、出生前では 出生前超音波検査 超音波検査 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む の結果から、出生後では症状から疑われます。
出生後にこの病気を疑った場合、医師は患児の食道にチューブを挿入することを試みます。チューブが途中までしか入らない場合には、診断を確定して、問題の部位を特定するために、X線検査を行います。
治療
手術
異常を修復するための手術を行う前に、誤嚥性肺炎などの合併症を予防するために準備を整える必要があります。まず、口からの栄養摂取を中止した上で、唾液が肺に到達する前に絶えず吸い出すためのチューブを食道の上部に留置します。以降、栄養は静脈から与えます(静脈栄養)。
食道と胃の正常な接続を確立するとともに、食道と気管の連結部をふさぐための手術を、すぐに行う必要があります。