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胆道閉鎖症

執筆者:

William J. Cochran

, MD, Geisinger Clinic

レビュー/改訂 2021年 4月
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やさしくわかる病気事典
  • この異常により、肝臓に胆汁が貯留し、非可逆的な損傷が肝臓に起こります。

  • 典型的な症状としては、黄疸(皮膚の黄色の変色)、濃い尿、灰白色便、肝臓の腫大などがあります。

  • 診断は血液検査、核医学検査、および肝臓と胆管の外科的検査の結果に基づいて下されます。

  • 肝臓から胆汁を排出させるための経路をつくる手術が必要になります。

胆道閉鎖症では、生後数週間から数カ月で胆管が進行性に狭くなり、やがて閉塞します。そのため、胆汁が腸に到達できなくなります。結果として胆汁が肝臓内にたまっていき、やがて行き場をなくして血液中に流れ込むことで、皮膚が黄色っぽく変色します(黄疸 新生児黄疸 黄疸とは、血流中のビリルビンの増加が原因で、皮膚や眼が黄色くなることです。ビリルビンは、古くなった赤血球や損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに生成される、黄色い物質です。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁(肝臓で作られる消化液)の一部として肝臓から排泄されるように処理されます。肝臓でのビリルビンの処理において、ビリルビンは抱合と呼ばれる過程で別の化学物質に結合し... さらに読む 新生児黄疸 )。胆道閉鎖症を治療しないと、「 肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。肝硬変はかつては不可逆的と考えられていましたが、最近の科学的証拠から一部の症例では可逆的であることが示唆されています。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、... さらに読む 肝硬変 」と呼ばれる進行性で不可逆的な肝臓の瘢痕化が生後2カ月までに始まります。

胆道閉鎖症が発生する理由は不明ですが、感染症の原因となる微生物や遺伝子異常が関与している可能性があります。約15~25%の患児では他の先天異常がみられます。

胆道閉鎖症の症状

胆道閉鎖症の乳児では、尿の色が濃くなって便の色が白っぽくなり、皮膚が次第に黄疸を示してきます。生後2週間頃にこれらの症状と腫大して硬くなった肝臓に最初に気づくのが普通です。

生後2~3カ月になる頃までに、その乳児は成長が阻害され、かゆがり、興奮しやすく、腹部には大きくなった静脈が見え、脾臓も肥大します。

胆道閉鎖症の診断

  • 血液検査

  • 核医学検査

  • 超音波検査

  • 手術

肝硬変を予防するためには、生後1~2カ月以内に胆道閉鎖症を診断して治療を行う必要があります。

胆道閉鎖症の診断を下すには、一連の血液検査と核医学検査(放射性同位元素[トレーサー]を使用する画像検査)を行う必要があります。トレーサーを患児の腕に注射して、トレーサーが肝臓から胆嚢と小腸まで流れていく様子を特殊な撮影機器で追跡します(これは胆道シンチグラフィーと呼ばれる 核医学検査 核医学検査(シンチグラフィー) 肝臓、胆嚢、胆管の画像検査には、超音波検査、核医学検査、CT検査、MRI検査、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)検査、経皮経肝胆道造影検査、術中胆道造影検査、単純X線検査などがあります。 ( 肝臓と胆嚢の概要も参照のこと。) 超音波検査では、音波を利用して肝臓や胆嚢、胆管を画像化します。経腹超音波検査は、 肝硬変(肝臓の重度の瘢痕化)や 脂肪肝(肝臓に過剰な脂肪が蓄積している状態)など肝臓全体を一様に侵す異常よりも、腫瘍など肝臓の特... さらに読む の一種です)。腹部の 超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む 超音波検査 が診断に役立つ場合もあります。

予後(経過の見通し)

胆道閉鎖症の治療

  • 手術

  • しばしば肝移植

肝臓から胆汁を排出させるための経路をつくる手術が必要になります。その経路は、小腸の一部を肝臓の胆管が出てくる部分に縫い付けることで作製します。この手術は、肝臓が瘢痕化する前の生後1カ月以内に行うべきです。手術が不成功に終わった場合は、肝移植が必要になります。たとえ手術が成功した場合でも、約半数の患児は引き続き肝臓の病状が悪化していき、最終的に肝移植が必要になります。残りの患児は通常の生活を送れる可能性があります。

手術後、患児には胆管の炎症を予防するためにしばしば1年間にわたって抗菌薬が投与されます。ウルソデオキシコール酸という薬剤が投与されることもあります。ウルソデオキシコール酸は胆汁の流れを促進し、胆汁の排出路の開通を維持するのに役立ちます。十分な栄養補給が重要であるため、患児には 脂溶性ビタミン 脂溶性ビタミン ビタミンは健康的な食事に不可欠です。ほとんどのビタミンについて、健康な人の大半が健康を維持するのに必要な1日当たりの量を表した推奨量(RDA)が設定されています。一部のビタミンには、安全な上限量(耐容上限量)が決められています。この上限を超えて摂取すると、有害な影響(毒性)が出るリスクが高まります。... さらに読む の補充も行われます。

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