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新生児の貧血

執筆者:

Andrew W. Walter

, MS, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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貧血とは、血液中の赤血球の数が非常に少なくなる病気です。

骨髄には、血球に変化する特別な細胞が含まれています。新生児の骨髄では、正常な状態でも生後3~4週間は新しい赤血球がごくわずかしか作られないため、生後2~3カ月は赤血球数が徐々に減少していきます(生理的貧血)。

予定日より非常に早く生まれた未熟児 未熟児 未熟児とは、37週未満で生まれた新生児です。生まれた時期により、未熟児の臓器は発達が不十分であるため、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、および高血圧などがある場合に、未熟児を出産するリスクが高くなります。... さらに読む では、赤血球数の減少の程度が大きくなります。この状態を未熟児貧血といいます。未熟児貧血が最もよくみられるのは、在胎期間(卵子が受精してから子宮内で経過した期間)が32週未満であった乳児と、病院で過ごした日数が多かった乳児です。

以下の場合には、より重度の貧血が起こります。

  • 赤血球の破壊が非常に急速な場合(溶血と呼ばれる過程)。

  • 血液検査のため未熟児から多量の血液を採取した場合。

  • 陣痛や分娩の際に多量に血液を失った場合。

  • 骨髄で新しい赤血球が十分に作られない場合。

これらの2つ以上が同時に起こる場合もあります。

赤血球の急速な破壊(溶血)

新生児の赤血球に遺伝性の異常があった場合も、赤血球の急速な破壊が起こることがあります。遺伝性の異常には、例えば遺伝性球状赤血球症があり、赤血球を顕微鏡下で観察すると、小さくて丸い形をしています。

乳児でみられる別の例として、グルコース‐6‐リン酸デヒドロゲナーゼ(G6PD)という赤血球酵素の欠損があります。この赤血球酵素が欠乏していると、妊娠中に母親または胎児が、ある特定の薬剤(アニリン色素、サルファ剤などほかにも多数あり)にさらされたときに、赤血球の急速な破壊が起こります。

出生前にトキソプラズマ症 トキソプラズマ症 トキソプラズマ症は、単細胞の寄生虫であるトキソプラズマ原虫 Toxoplasma gondiiによる感染症です。通常は症状を引き起こしませんが、一部の患者ではリンパ節の腫れ、発熱、漠然とした体調の悪さがみられ、ときにはのどの痛みまたはかすみ目や眼の痛みが現れることもあります。エイズまたは他の病気によって免疫機能が低下している人では、トキソ... さらに読む 風疹 風疹 風疹は感染力の強いウイルス感染症で、関節痛や発疹などの軽い症状が出ます。 風疹の原因はウイルスです。妊娠中の母親が風疹に感染すると新生児に重い先天異常が起きます。 典型的な症状としては、リンパ節の腫れ、口蓋(こうがい)に出るバラ色の斑点、特徴的な発疹などがあります。 診断は症状に基づいて下されます。... さらに読む 風疹 サイトメガロウイルス感染症 サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多様です。 このウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。... さらに読む 単純ヘルペスウイルス感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症では、皮膚、口、唇(口唇ヘルペス)、眼、性器に、液体で満たされた、痛みのある小さな水疱が繰り返し発生します。 非常に感染力の強いウイルス感染症であり、潰瘍に直接触れたり、ときには潰瘍がない場合でも患部に触れることで感染します。 ヘルペスウイルスは口の中や性器に水疱や潰瘍を引き起こし、最初の感染時には、発... さらに読む 単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ Treponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵され... さらに読む 梅毒 などにかかっていた場合も、赤血球が急速に破壊されます。出生時や出生後に新生児が細菌感染症にかかった場合も同様です。

失血

その他の貧血の原因としては、失血があります。新生児の血液が失われる状況はいろいろあります。例えば、胎児の血液が胎盤 胎児と胎盤の発達 受精卵として始まった新たな命は、いくつもの段階を経て成長していきます。受精卵は胚盤胞、胎芽、胎児へと発達していきます。 月経周期が正常であれば、最後の月経開始日の約14日後に、通常、左右の卵巣のどちらかから1個の卵子が放出されます。卵子が放出されることを排卵といいます。放出された卵子はじょうご形をしている卵管の開口部からさっと卵管内に入り... さらに読む 胎児と胎盤の発達 (子宮と胎児をつなぐ臓器で胎児に栄養を与える)を通じて母体の循環血液中に大量に移ってしまった場合(胎児母体間輸血)です。大量の血液が胎盤に取られてしまった場合にも血液が失われることがあり、これは、出産時に臍帯を臍帯クランプで留める前に胎児を母親の腹部より上に長時間置きいた場合に起こります。

遺伝子異常や染色体異常を発見するために、胎児の体に負担がかかる特定の処置を行った場合に血液が失われることがあります。体に負担がかかる処置とは、器具を母体に挿入する必要がある処置のことです。そのような処置としては、羊水穿刺 羊水穿刺 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む 絨毛採取 絨毛採取 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む 臍帯血採取 経皮的臍帯血採取 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。... さらに読む などがあります。

ビタミンKの欠乏 ビタミンK欠乏症 ビタミンKには次の2種類があります。 フィロキノン:この型は植物に含まれ、食事から摂取されます。脂肪と一緒にとると、よりよく吸収されます。フィロキノンに毒性はありません。 メナキノン:この型は腸内細菌によって産生されますが、少量しか産生されません。一部の国では、メナキノンがサプリメントとして使用されています。... さらに読む がある新生児でも、血液が失われることがあります。ビタミンKは、体内で血液がかたまるのを助け、出血の抑制を助ける物質です。ビタミンK欠乏症は、新生児の出血性疾患(出血しやすい傾向を特徴とします)の原因となります。新生児は出生時点でビタミンKの血中濃度が低いですが、これは正常なことです。出血を予防するために、新生児には出生時に通常ビタミンKが注射されます。

赤血球の生産

出生前に、胎児の骨髄で新しい赤血球が十分に作られなくなることがあります。このまれにある異常は重度の貧血につながります。このような赤血球の生産ができなくなる状態の例として、ファンコニ症候群 ファンコニ症候群 ファンコニ症候群は、尿細管の機能が低下するまれな病気で、ブドウ糖(グルコース)、重炭酸塩、リン、尿酸、カリウム、一部のアミノ酸などが尿中に過剰に排泄されます。 (尿細管疾患に関する序も参照のこと。) ファンコニ症候群はファンコニ貧血とは無関係ですから、混同しないよう注意が必要です。... さらに読む やダイアモンド‐ブラックファン貧血などのまれな遺伝性の病気があります。

いくつかの感染症(サイトメガロウイルス感染症 サイトメガロウイルス(CMV)感染症 サイトメガロウイルス感染症はよくみられるヘルペスウイルス感染症で、症状が出ないものから、発熱と疲労感が出るもの(伝染性単核球症に似たもの)、また、眼や脳、その他の内臓を侵す重い症状が生じるものまで、症状は多様です。 このウイルスは、体の分泌物と接触(性的接触とそれ以外の接触の両方)することで感染します。... さらに読む 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ Treponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵され... さらに読む 梅毒 ヒト免疫不全ウイルス 小児におけるヒト免疫不全ウイルス (HIV)感染症 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすウイルス感染症です。 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症はHIV-1ウイルスとHIV-2ウイルスが原因で、幼児の場合一般的には分娩の際に母親から感染します。 感染の徴候には成長の遅れ、体の数カ所でのリンパ節の腫れ、発達の遅れ... さらに読む [HIV]など)でも、骨髄での赤血球の十分な生産が妨げられます。新生児の体内で 鉄欠乏症 体内の鉄の多くはヘモグロビンに含まれています。ヘモグロビンは赤血球の成分で、赤血球が酸素を体の各組織へ運搬できるようにします。鉄はまた、筋肉細胞の重要な構成要素でもあり、体内の様々な酵素の形成に必要です。 鉄は体内で再利用されていて、赤血球が壊れると、その中の鉄は骨髄へ戻り、新しい赤血球の中で再び使われます。鉄は主に腸の粘膜から剥がれ落ち... さらに読む 葉酸 葉酸欠乏症 葉酸はビタミンB群の1つです。ビタミンB12とともに、葉酸は正常な赤血球の形成と細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要不可欠な物質です。葉酸は胎児の神経系の正常な発達にも必要です。 生の緑色の葉野菜、アスパラガス、ブロッコリー、果物(特にかんきつ類)、レバーなどの内臓肉、乾燥酵母、栄養強化したパンやパスタおよびシリアル... さらに読む ビタミンE ビタミンE欠乏症 ビタミンE(トコフェロール)には抗酸化作用があり、フリーラジカル(正常な細胞活動の副産物で、細胞内の化学反応に関与する)による損傷から細胞を守ります。フリーラジカルが関与する反応の中には、有害なものもあります。(ビタミンの概要も参照のこと。) 特定の病気の予防に役立てるために、多くの人がビタミンEのサプリメントを摂取しています。ビタミンE... さらに読む など特定の栄養素が欠乏することもあり、その場合は骨髄で赤血球が作られなくなるため、貧血の原因になります。

症状

軽度または中等度の貧血の場合、多くの乳児には症状は現れません。中等度の貧血では、活動性が低下し(嗜眠)、乳を飲まなくなりますが、特に症状がない場合もあります。

合併症

診断

治療

  • 急速な失血による貧血には、静脈内輸液と輸血

  • 溶血性疾患による貧血には、様々な治療法

  • 鉄剤

健康な未熟児では、その大半で軽度の貧血がみられますが、治療の必要はありません。

溶血性疾患が原因で起こる非常に重度の貧血の場合も輸血が必要ですが、貧血の治療には交換輸血 交換輸血 黄疸とは、血流中のビリルビンの増加(高ビリルビン血症)が原因で、皮膚や眼が黄色くなることです。ビリルビンは、古くなった赤血球または損傷した赤血球を再利用する正常なプロセスの中で、ヘモグロビン(酸素を運ぶ赤血球の一部)が分解されるときに形成される、黄色い物質です。ビリルビンは血流によって肝臓に運ばれ、胆汁(肝臓で作られる消化液)の一部として... さらに読む の方が多く行われます。交換輸血は赤血球数を増加させるとともにビリルビンの血中濃度を下げます。交換輸血では、新生児の血液を少しずつ取り除き、提供者の同量の新鮮な血液と交換します。

一部の乳児には、赤血球数の増加を速めるために鉄の補充剤を投与します。

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