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未熟児網膜症(ROP)

執筆者:

Leila M. Khazaeni

, MD, Loma Linda University School of Medicine

レビュー/改訂 2022年 2月
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やさしくわかる病気事典
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未熟児網膜症とは、早産児において眼の奥の部分(網膜)にある微小な血管が異常に成長する病気です。

網膜 眼の構造と機能 眼の構造と機能はとても複雑です。眼は、入ってくる光の量を調節し、見るものの距離に応じて焦点を合わせ、その画像情報を瞬時に脳に伝えるという働きを絶えず行っています。 眼球は、眼窩(がんか)という骨で囲まれた空間に収まっています。眼窩の中には、筋肉、神経、血管、そして涙を分泌し排出する器官もあります。眼窩はいくつかの骨が組み合わされて形作られ... さらに読む は、眼の奥にある光を感じる透明な構造物です。網膜の血管は、胎児の子宮内での発育18~20週頃に成長し始め、妊娠満期まで成長を続けます。非常に未熟な状態で生まれた乳児では、網膜に血液を供給する血管の成長がしばらくの間、止まることがあります。成長が再開したとき、無秩序な成長が起こります。この無秩序な急成長により、微小な血管が出血することがあります。最も重症の例では、眼の後部で 網膜剥離(もうまくはくり) 網膜剥離 網膜剥離(はくり)とは、網膜(眼の奥にあって光を感じ取る透明な構造物)が、その下に付着している層から剥がれてしまうことをいいます。 飛蚊症(ひぶんしょう)の症状が突然増える、突然チカチカする光が見える、カーテンまたはベールのようなものに視界が遮られる、または突然の視力障害などの症状が現れます。 医師は検眼鏡で眼を観察することにより診断を下します。 剥離が起こってすぐに修復すれば、ほとんどの網膜剥離は完治し、視力はいくらか回復します。... さらに読む が起こり、重度の視力障害が発生します。

網膜もうまく構造こうぞう

網膜もうまくの構造こうぞう

早産児では、感染症、 脳内出血 脳内および脳周囲の出血 分娩損傷とは、分娩の過程で通常は産道を通る際に物理的な圧力が生じる結果として新生児が受ける損傷のことです。 多くの新生児が出生の際に軽いけがをします。 まれに、神経が損傷したり骨が折れたりします。 ほとんどのけがは、治療をしなくても治ります。 極めて大きな胎児は難産になる場合があり、生まれてくる子どもに損傷のリスクを伴います。胎児が5000グラム(母親が糖尿病の場合は4500グラム)を超えると推定される場合には、... さらに読む 脳内および脳周囲の出血 、肺の病気(気管支肺異形成症 気管支肺異形成症(BPD) 気管支肺異形成症は、 人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)の長期使用や長期間の酸素投与によって引き起こされる新生児の慢性肺疾患です。 この病気は多くの場合、非常に未熟な状態で生まれた乳児、重い肺の病気がある乳児、長期間の人工呼吸器もしくは酸素投与を必要とした乳児、または肺胞の発達が不十分な乳児に起こります。 呼吸が速くなったり、呼吸が苦しそうになったり、その両方がみられたり、皮膚や唇が青みを帯びたりすることもありますが、... さらに読む など)といった重篤な病気がある場合、未熟児網膜症のリスクが高くなります。酸素投与を長期間受けている早産児(例えば、肺が未熟であることによる)でも、リスクは上昇します。

未熟児網膜症の診断

  • 眼の検査

未熟児網膜症は症状を起こさないため、診断は眼科医(あらゆるタイプの眼の病気の評価と治療を専門とする医師)による眼の奥の注意深い 診察 眼の検査 眼に何らかの症状が出た場合は、医師の診察を受けるべきです。 しかし、眼の病気の中には、初期段階では症状がほとんどまたはまったくないものもあります。したがって、症状がなくても、眼科医やオプトメトリストによる定期的な検査を1~2年に1回程度(眼の状態によってはもう少し頻繁に)受けるべきです。眼科医とは、眼の病気の評価と(手術を含む)治療を専門... さらに読む に依存します。そのため通常は、出生時の体重が約1500グラム未満であった早産児または子宮内で30週間を経過せず出生した乳児に対しては、眼科医が眼の診察を行います。 眼の診察は必要に応じて1~3週間毎に行い、網膜の血管が成長を終えるまで継続します。

重い網膜症を起こしている乳児は、最低でも年1回の眼の診察を生涯受け続けなくてはなりません。網膜剥離を早期に発見すれば、罹患した眼に視力障害が起こるのを防げるための手術によって治療できる場合があります。

未熟児網膜症の予後(経過の見通し)

たいていの場合、未熟児網膜症は軽度で自然に治ります。しかし、出生時の体重が約1kg未満であった患児のごく一部では未熟児網膜症が重度であり、分娩後2~12カ月で進行して網膜剥離になり、視力障害が起こります。

未熟児網膜症が治癒した小児では、 近視 原因 屈折異常があると、眼に入った光線は網膜の上に正しく焦点を結ばず、かすみ目(霧視[むし])の原因となります。 眼もしくは角膜の形または加齢による水晶体の硬化によって、眼の焦点を合わせる能力が低下することがあります。 遠くの物、近くの物、または両方とも、かすんで見えることがあります。... さらに読む 原因 (近眼)、 斜視 斜視 斜視(眼位のずれ)は、片側の眼の向きがときに(間欠性)、または常にずれているために(恒常性)、その眼の視線が、もう片方の眼が見ている物体の方向を向いていない状態です。斜視を治療しなければ、 弱視(視力の低下)や恒久的な視力障害に至ることがあります。 斜視の治療では、屈折異常の矯正、アイパッチまたは点眼薬による弱視の治療のほか、場合によっては手術が行われます。 斜視は、左右の眼の向きがずれている状態です。... さらに読む 斜視 弱視 弱視 弱視は、小児における視力障害の一般的な原因であり、眼から送られてくる像を脳が無視するために起こる視力の低下です。小児期早期に診断かつ治療されないと、視力障害が回復不能なものとなることがあります。 弱視の原因としては、焦点を合わせられない(屈折異常)、左右の眼の向きのずれ(斜視)、緑内障、白内障、その他の眼の異常などがあります。... さらに読む など、その他の眼の問題が発生リスクがより高くなります。中等度の未熟児網膜症が治癒した小児の少数には網膜に瘢痕が残り、後に網膜剥離を起こすリスクがあります。まれに、 緑内障 緑内障 緑内障とは、進行性の視神経損傷を特徴とする一群の眼疾患で(眼圧の上昇を伴うことが多いものの、常に伴うわけではありません)、不可逆的な視力障害につながることがあります。 眼の内部の圧力(眼圧)が上昇すると視神経が損傷されることがあります。 通常、視力障害は徐々に生じるため、長い間気づかれないことがあります。... さらに読む 白内障 白内障 白内障は、眼の中の水晶体が濁って進行性に視力が損なわれていく病気で、痛みはありません。 視界はかすみ、コントラストが失われ、光の周りに虹のような輪(ハロ)が見えること(光輪視)があります。 医師は、検眼鏡または 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で眼を観察することで白内障を見つけることができます。... さらに読む 白内障 が生じることもあります。

未熟児網膜症の予防

未熟児網膜症の治療

  • レーザー光凝固術

  • ベバシズマブ

未熟児網膜症が非常に重い場合、網膜の一番外側の部分に対しレーザー光凝固術による治療を行います。この治療法では、レーザー光線を使用して血管の異常な成長を止め、網膜剥離と視力障害のリスクを軽減します。

網膜の血管の異常な成長を止めるために、ベバシズマブという薬剤を注射することもあります。

未熟児網膜症が網膜の部分的または完全な剥離につながった場合、ときに手術を行って網膜を元に戻し、さらなる視力障害を予防します。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国小児斜視学会の小児眼財団(Children's Eye Foundation of AAPOS):小児の視力を保護する上での予防、病気の発見、研究、教育に関する実用的な情報

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