腸の一部が鼠径部の穴から突出します。
通常、鼠径部または陰嚢(いんのう)に痛みのない膨らみができます。
診断は診察と画像検査の結果に基づいて下されます。
通常、ヘルニアは外科的に修復します。
(成人については、 鼠径(そけい)ヘルニア 鼠径ヘルニア 鼠径ヘルニアとは、太ももの付け根(鼠径部)にある腹壁の開口部から、腸管や他の腹部臓器の一部が突出した状態のことをいいます。 鼠径部または陰嚢(いんのう)に痛みのない膨らみができます。 診断にはCT(コンピュータ断層撮影)検査または超音波検査を使用できます。 女性の場合、症状がある場合、または絞扼(こうやく)や嵌頓(かんとん)がみられる場合は、手術が行われます。 ( 腹壁ヘルニアも参昭のこと。) さらに読む を参照のこと。)
鼠径部で起きるヘルニアは鼠径ヘルニア(鼠径ヘルニアとは 鼠径ヘルニアとは )と呼ばれます。鼠径ヘルニアは女児より男児に多く、とりわけ早産児に多くみられます。ほとんどが右側に発生し、約10%が鼠径部の両側に生じます。鼠径ヘルニアは広がって鼠径部に入り、陰嚢に入ることもあります。鼠径ヘルニアでは、腹壁の開口部は出生時から存在している場合もあれば、後天的にできる場合もあります。
鼠径ヘルニアとは
鼠径ヘルニアでは、腸管の一部が腹壁の開口部を通って鼠径管に押しこまれています。鼠径管には、精管、血管、神経などで構成される精索が通っています。腹部で形成された精巣は、出生前に鼠径管を通って下っていき陰嚢の中に収まります。 ![]() |
症状
鼠径ヘルニアでは通常、鼠径部または陰嚢(いんのう)に痛みのない膨らみができます。
鼠径ヘルニアの合併症
ときには腸管の一部が陰嚢にはまりこみ戻らなくなることもあり(嵌頓[かんとん]と呼ばれます)、膨らんだ部分は硬くなったり、圧痛があったり、腫れたり、赤くなったりします。この場合、腸管のその部分に血液が供給されなくなることがあります(絞扼[こうやく]と呼ばれます)。血流を断たれた腸管は、数時間以内に壊死(壊疽[えそ])することがあり、これは緊急事態です。
診断
医師の診察
ときに画像検査
診察の結果に基づいて、診断が下されます。
診断の補助に、 超音波検査 腹部の超音波検査 超音波検査では、超音波を用いて内臓の画像を描き出します( 超音波検査)。超音波検査により、肝臓や膵臓(すいぞう)など多くの内臓の形や大きさが確認でき、嚢胞(のうほう)や腫瘍などの内臓の中の異常部位も発見できます。また、腹腔内の液体( 腹水)も確認できます。腹壁にプローブを当てる超音波検査は、消化管の粘膜や壁を調べる方法としては不適切です。しかし、超音波内視鏡検査の場合は、内視鏡の先端にプローブがあるため、消化管壁や一部の腹部臓器がより明... さらに読む や CT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む
が行われることがあります。
治療
手術による修復
鼠径ヘルニアでは嵌頓が生じることがあるため、医師は通常、手術を勧めます。手術の前に、医師が手で突出した腸を元の位置に戻すことを試みる場合があります(徒手整復)。ヘルニアが絞扼や嵌頓を起こしている場合は、直ちに手術が行われます。