便失禁は4歳児の約3~4%でみられますが、年齢が上がるにつれて少なくなります。たいていは、トイレトレーニングや小学校への入学に関連して起こります。
原因
便失禁の主な原因は以下のものです。
便秘
ときに身体的な原因や病気
心理的な原因
矛盾しているようにも思えますが、便失禁は通常、便秘が原因で生じます。 便秘 小児の便秘 便秘とは、乳幼児では少なくとも1カ月間、より年長の小児では2カ月間、排便が遅れたり困難になったりすることです(成人の 便秘も参照)。便が硬くなりときに大きさが通常より増し、排便時に痛みを伴うことがあります。便秘は小児でとてもよくみられます。便秘は、小児が医療機関を受診する理由の約5%を占めています。乳児と小児が便秘を特に起こしやすい時期は3回あります。1回目は乳児の食事に シリアルや固形食が開始された時、2回目は... さらに読む は排便が遅れたり困難になったりする状態で、多数の原因で起こる可能性があり、特に行動と食事が原因になります。原因が何であれ、便が腸内にとどまっていると水分が吸収され、便が硬くなります。大きな硬い便を排便することは痛みを伴う可能性があるため、小児は切迫した便意をさらに我慢し、その結果、便秘がさらに悪化するという悪循環に陥ります。その後、大腸のより上流にある軟らかく水分の多い便が、硬い便のかたまりの周囲から漏れ出し、便失禁に至ります。便秘が持続すると、直腸および大腸の壁が拡張します。拡張により、直腸がいっぱいになったことに対する小児の認識が低下するとともに、筋肉のコントロールが損なわれ、便が漏れるリスクがさらに高まります。
ときに、身体的な原因や病気を調べるために、検査が必要になります。心理的要因によって便失禁が起こることもあります。
診断
医師による評価
便失禁の診断は、小児の病歴と身体診察の結果に基づいて下されます。他の原因の可能性を否定するため、腹部X線検査などの他の検査を行うこともあります。
治療
便秘に対しては、下剤
行動計画
維持療法
原因が便秘の場合は、下剤などの薬を処方して腸の中を完全に空にしますが、これは治療の開始地点として必須です。いったん腸が空になったら(ときに腹部X線検査で確認します)、定期的な下剤の投与計画および行動計画を開始し、定期的な排便が確実に行われるようにします。規則正しく排便できるようになれば、維持段階へと移行します。
行動計画
行動計画では、一般的に、計画的にトイレに座る時間を決め、各食事後に、便意の有無にかかわらず、5~10分間にわたってトイレに座らせます。日中の特定の時間に便が漏れてしまった場合は、その時刻の直前に小児をトイレで座らせます。ちょっとしたご褒美がしばしば有用です。例えば、トイレに毎回座るたびに(排便の有無にかかわらず)専用の用紙に貼るシールを小児にあげることで、計画に従おうという気持ちが高まります。しばしば段階的なプログラムが用いられますが、そうしたプログラムでは、小児はトイレに座ることで小さなご褒美(シールなど)をもらい、計画に一貫して従っていれば、より大きなご褒美がもらえます。ご褒美の内容は、小児の計画に対する興味を維持するため、時間経過とともに変更していく必要があります。
維持
規則正しく排便できるようになれば、たいてい便失禁を起こさなくなります。引き伸ばされた腸壁が正常に戻り、直腸がいっぱいになったという感覚が戻ってくるまでには、軟便の状態を数カ月間続けなければならないこともあります。維持段階でも、便意が感じられるようになるまで、ある程度下剤を使用したり、規則的な時間にトイレで座らせたりすることで、排便を促す必要があります。
この維持段階の終了後には、下剤の用量を徐々に減らしていき、その後投与を中止し、規則的な時間にトイレで座ることを少なくします。この時点でしばしば再発がみられるため、医療従事者は小児を継続的にモニタリングします。
この方法で効果がない場合は、診断のために腹部X線検査などの検査や、まれに直腸壁の生検(組織のサンプルを採取して顕微鏡で調べる検査)が行われることがあります。便秘の身体的な原因が見つかった場合は、しばしばその治療が可能です。最も重症のケースでは、便失禁が感情面や行動面の問題の原因になっている小児や、逆に感情面や行動面の問題によって便失禁が起きている小児に対して、心理カウンセリングが必要になることがあります。