小児におけるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症

執筆者:Geoffrey A. Weinberg, MD, Golisano Children’s Hospital
レビュー/改訂 2020年 5月
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やさしくわかる病気事典

ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすウイルス感染症です。

  • ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症はHIV-1ウイルスとHIV-2ウイルスが原因で、幼児の場合一般的には分娩の際に母親から感染します。

  • 感染の徴候としては、成長の遅れ、体の数カ所でのリンパ節の腫れ、発達の遅れ、繰り返す細菌感染症と肺の炎症があります。

  • 診断は特殊な血液検査の結果に基づいて下されます。

  • 抗HIV薬の投与(抗レトロウイルス療法と呼ばれます)を受ければ成人期まで生きることができます。

  • 感染した母親が抗レトロウイルス療法を受け、新生児に母乳ではなく人工乳を与え、また、一部の女性では帝王切開で分娩すれば、新生児にHIVを感染させずに済みます。

  • 小児も成人と同じ薬で治療します。

成人のHIV感染については、 see page ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を参照。

ヒト免疫不全ウイルスには以下の2種類があります。

  • HIV-1

  • HIV-2

ほぼすべての地域で、HIV-2感染と比較してHIV-1感染がはるかに一般的です。いずれのHIVも、体の免疫防御で重要な役割を果たす特定タイプの白血球(リンパ球と呼ばれます)を進行性に破壊します。このリンパ球が破壊されると、体は他の多くの感染性微生物による攻撃を受けやすくなります。HIV感染症の多くの症状および合併症は、死亡も含め、このような他の感染症の結果であり、HIV感染症自体によるものではありません。HIV感染により、健康な人には通常感染しない微生物による様々な厄介な感染症が起こることがあります。これらの感染症は、免疫系の機能の低下に乗じて発生するため、日和見感染症と呼ばれています。日和見感染症は、ウイルス、寄生虫、真菌によって生じ、ときに細菌によっても(おそらく成人よりも多い頻度で)起こります。

後天性免疫不全症候群(エイズ)は、HIV感染症の中で最も重い状態です。HIV感染症にかかっている小児に合併症が1つでも現れた場合や、感染症から体を守る機能が著しく低下していることが分かった場合、エイズを発症したとみなされます。

米国ではHIV感染者のうち小児や年齢の低い青年期に診断される割合はわずか1%です。HIVに感染した妊婦への検査と治療の充実により、小児におけるHIV感染症は現在ではまれになっています。1983年~2015年の間に、小児および年齢の低い青年で約9000件のHIV感染が報告されましたが、2018年には、13歳未満の小児で新しく診断されたのは100人未満でした。

米国に在住している乳児および小児のHIV感染者数は減少し続けていますが、青年および若い成人のHIV感染者数は増加しています。増加している理由は、乳児期に感染した小児がより長期にわたって生存していることと、特に男性と性行為をする若い男性といった、青年および若い成人で新規の感染者が発生していることにあります。

世界的にはHIVは小児にずっと多くみられます。約170万人の小児がHIVに感染しています。毎年、約16万人の小児が新たに感染し、約10万人の小児が死亡しています。過去数年には、妊婦と小児を対象として抗レトロウイルス療法を提供する新しいプログラムが複数開始され、それらにより小児の新たな感染および小児の死亡の年間発生数が33~50%低下しています。しかしながら、小児の感染者が抗レトロウイルス療法を受ける頻度は、成人と同程度近くまでにはまだ達していません。

感染経路

幼児

小児で最も多いHIVの感染経路は以下のものです。

  • 出産前または出産中の感染している母親

  • 出生後の母乳

幼児のHIV感染症はほぼ必ず母親から感染したものです。 米国でHIVに感染している小児の95%以上は、母親から感染しており、出産前または周産期のいずれかに感染しています(垂直感染または母子感染と呼ばれます)。現在エイズにかかっているその他の小児は、ほとんどが性行為から感染しており、まれに性的虐待による場合もあります。血液および血液製剤のスクリーニングに関する安全対策が改善したことから、近年では血液および血液製剤の使用による感染は、米国、カナダ、西欧ではほぼなくなっています。

米国で毎年何人のHIV感染女性が出産するかについて、専門家らは把握していませんが、米国疾病予防管理センター(CDC)では約5000人と推定しています。予防策をとらないと、これらの女性の25~33%で新生児にHIV感染症が起きることになります。感染は、しばしば分娩時に起こります。

感染のリスクは母親が以下の状態のときに最も高くなります。

  • 妊娠中または授乳中にHIVに感染した場合

  • 病状が重い場合

  • ウイルス量が多い場合

しかしながら、感染は米国では1991年の約25%から2018年の1%未満へと顕著に減少しました。母子感染が減少した理由は、感染している妊婦に対して、妊娠中および分娩中に集中的に検査と治療を行う努力が行われているためです。

このウイルスは母乳で感染する可能性もあります。出生時に感染していなかった乳児がHIVに感染している母親の母乳を飲むと、約12~14%がHIVに感染します。ほとんどの感染は生後数週間から数カ月の間に起こりますが、それ以降も感染が起こることがあります。授乳による感染は、体内のウイルスが多い母親で起こる可能性が高く、これには乳児への授乳期に感染した母親などが含まれます。

知っていますか?

  • 米国では、感染した母親から子どもへのHIVの感染は、1991年の約25%から2018年の1%未満へと減少しました。

青年

青年の感染経路は、以下の通りで、成人と同様です。

  • 無防備な性交

  • 汚染された注射針の共用

青年の異性愛者および同性愛者が、無防備な性行為をした場合、HIV感染のリスクが上昇します。また、薬物を注射する際に、汚染された注射針を共用する際もリスクが増大します。

非常にまれに、感染した血液が皮膚について感染したという報告がありますが、このような例のほとんどでは、皮膚の表面にすり傷やただれによって損傷した部分がありました。唾液もウイルスを含んでいる可能性がありますが、せきやキス、かみつくことによって感染したことはこれまで一度も確認されていません。

HIVは、以下のものを介しては感染しません

  • 食べもの

  • 家庭用品

  • 家庭、職場、または学校での社会的接触

小児におけるHIV感染症の症状

HIV感染症にかかって生まれた小児は、最初の数カ月間は、抗レトロウイルス療法を受けていない場合でさえ、めったに症状が現れることはありません。そのまま治療が行われなかった場合でも、2歳までに問題が生じるのは約20%に過ぎません。このような小児は、出生のはるか前に感染していた可能性があります。残りの80%は、引き続き治療を受けなかったとしても、3歳まで、さらには5歳になっても症状が現れない場合があります。このような小児はおそらく出生時またはその前後に感染した可能性があります。

未治療のHIV感染小児

未治療のHIV感染症の小児でよくみられる症状には以下のものがあります。

  • 成長遅延および成熟の遅れ

  • 体の数カ所のリンパ節の腫れ

  • 繰り返し起きる下痢

  • 肺感染症

  • 脾臓または肝臓の腫大

  • 口の真菌感染症(鵞口瘡)

ときには、中耳の感染症(中耳炎)、副鼻腔炎、血液中細菌が感染した状態(菌血症)、肺炎などの細菌感染症が繰り返し起きることもあります。

免疫機能が低下するにつれて、様々な症状と合併症が現れます。例えば、HIVに感染した小児の約3分の1に、せきと呼吸困難を伴う肺の炎症(リンパ球性間質性肺炎)が起こります。

また、生まれたときからHIVに感染している小児は、少なくとも1回はニューモシスチス(Pneumocystis jirovecii)肺炎を発症します( see page 易感染状態にある人の肺炎)。この重篤な日和見感染症は、早ければ生後4~6週で起こる可能性がありますが、ほとんどの場合、出生前または出生時にHIVに感染した乳児では生後3~6カ月で発生します。治療を受けていないHIV感染小児の半数以上で、いずれこの肺炎が起こります。このニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎は、エイズにかかっている小児や成人の主な死亡原因の1つです。

さらに、HIVに感染した非常に多くの小児は、脳障害が次第に進行するため、歩く、話すといった重要な発達の段階に達することができなかったり、遅れたりします。このような小児は、知的障害があり、体の大きさに比べて頭が小さい場合があります。治療を受けていない小児では、最大20%が社会的能力と言語能力、および筋肉の制御能力を徐々に失い、部分的な麻痺や、足がふらふらする、筋肉が少しこわばるなどの症状がみられます。

貧血(赤血球数の減少)もHIVに感染した小児によくみられ、貧血のせいで弱く、疲れやすくなります。さらに、治療を受けていない小児の約20%で、心臓の拍動が速くなるか不規則になったり、心不全などの心臓の異常が起こります。

また、肝臓の炎症(肝炎)や腎臓の炎症(腎炎)もよくみられます。エイズ患者の小児ではがんはまれですが、非ホジキンリンパ腫や脳のリンパ腫はエイズに感染していない小児に比べて発生率がやや高い傾向があります。 エイズに関連したがんで、皮膚や内臓に影響を与えるカボジ肉腫は、成人のHIV感染者ではよくみられますが、小児のHIV感染者では非常にまれです。

治療を受けたHIV感染小児

HIVに感染した小児に対して抗レトロウイルス療法を行えば、HIV感染症の症状が発現しないことがあります。抗レトロウイルス療法により、小児に現れるHIV感染症の症状が大きく変わりました。抗レトロウイルス療法が導入される以前の時代と比較して、細菌性肺炎および他の細菌感染症(菌血症や反復性中耳炎など)は、HIV感染小児ではやや起こる頻度が高いですが、日和見感染症および発育不良の発生頻度は、はるかに低くなっています。

抗レトロウイルス療法により脳や脊髄の病気の影響は明らかに軽減していますが、治療を受けたHIV感染小児の行動、発達、認知の問題は発生率が上昇しているようです。これらの問題の原因が、HIV感染症自体にあるのか、HIVの治療で使用される薬にあるのか、HIV感染小児でよくみられる他の生物学的、心理学的、社会的要因にあるのかは、分かっていません。

抗レトロウイルス療法によって、小児も成人も長年生きられるようになったため、HIV感染症の長期的な合併症が発生する人も増えています。このような合併症としては、肥満、心疾患、糖尿病、腎疾患などがあります。これらの合併症には、HIV感染症自体と特定の抗レトロウイルス薬の影響の両方が関連しているようです。

青年期に感染したHIV感染症の症状は成人期に感染した場合と同様です(成人におけるHIV感染症の症状を参照)。

小児におけるHIV感染症の診断

  • 出生前スクリーニング検査

  • 血液検査

  • 診断後は、頻繁なモニタリング

小児におけるHIV感染症の診断は、定期的な出生前スクリーニングの血液検査で妊婦のHIV感染症を発見することから始まります。母親が病院の分娩室にいる間に、HIVの迅速検査を行うことができます。そうした検査は数分から数時間で結果が出ます。

生後18カ月以降の小児および青年

生後18カ月以降の小児および青年では、成人におけるHIV感染症診断のための血液検査と同じ検査が用いられます。通常は、HIV抗体と抗原を確認するための血液検査が行われます。(抗体とは、異物による攻撃から体を守るために免疫系によってつくられるタンパク質のことで、抗原は体の免疫系の反応を誘発する物質です[微生物などの抗原またはそれに対する抗体を検出するための検査を参照]。)

18カ月未満の小児

生後18カ月未満の小児では、成人に対して行う標準的な血液検査であるHIV抗体または抗原検査は役に立ちません。その理由は、乳児自身がHIVに感染していない場合でも、HIVに感染している母親から生まれた乳児の血液には、胎盤を通過したHIV抗体がほぼ必ず存在するためです。生後18カ月未満の小児でHIV感染症の診断を確定するには、核酸増幅検査(NAT)と呼ばれる特別な血液検査を行います。この検査ではPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いて、遺伝物質(DNAやRNA)を検出します。NATで小児の血液中にHIVの遺伝物質が検出されれば、HIV感染の診断が確定します。

NATによる血液検査は頻繁に行う必要があり、一般的には生後2週、生後約1カ月と、生後4~6カ月の間に行います。このように頻繁に検査することで、HIVに感染している乳児を生後6カ月までにほとんど発見できます。HIVを発症するリスクが非常に高い乳児の場合には、さらに頻繁に検査を受ける必要があります。

以下の状態の母親から生まれた乳児は、必ず検査を受ける必要があります。

  • HIV感染症を患っている

  • HIV感染リスクがある

モニタリング

HIV感染症と診断されたら、医師は3~4カ月毎に定期的に血液検査を行い、CD4陽性リンパ球の数(CD4陽性細胞数)と、血液中のウイルス粒子の数(ウイルス量)をモニタリングします。

CD4陽性細胞数はHIV感染症が悪化すると低下します。CD4陽性細胞数が低いと、小児は重篤な感染症や、特定のがんなどHIV感染症の他の合併症を発症する可能性が高くなります。

ウイルス量はHIV感染症が悪化すると増加します。ウイルス量は、その後の数年間にCD4陽性細胞数がどの程度の速度で低下するかを予測する上で有用です。

CD4陽性細胞数とウイルス量は、どの程度早急に抗レトロウイルス薬の使用を始めるべきか、治療で得られると思われる効果、感染症の合併を予防するために他の薬が必要かどうかを医師が判断するのに役立ちます。

小児におけるHIV感染症の予後(経過の見通し)

抗レトロウイルス療法が導入される前は、先進国では小児の10~15%、発展途上国ではおそらく50~80%の小児が4歳になる前に死亡していました。現在では、抗レトロウイルス療法により、出生時からHIVに感染している小児のほとんどは成人へと成長しています。出生時にHIVに感染したこうした若い成人が自分の子どもを出産したり、父親になったりする数が増加しています。

しかしながら、日和見感染症が起こると、特にニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎が起こると、抗レトロウイルス療法が成功しない限り、予後はよくありません。ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎によって、治療を受けた小児の5~40%と、未治療の小児のほぼ100%が死亡します。予後は、ウイルスが生後まもなく発見された小児(生後1週間以内)または生後1年以内に発症した小児でも、よくありません。

HIV感染症自体、または成長や発達の重要な期間中に投与された抗レトロウイルス療法によって、HIV感染小児に、その後出現するさらなる副作用が生じるのかどうかは不明です。しかし、これまでのところ、出生時または出生前に感染し、小児期に抗レトロウイルス療法による治療を受けた若い成人では、そのような副作用は認められていません。

HIVは人間の細胞内に隠れて存在し続けることができるため、薬では体内からこのウイルスを完全に駆除することができません。検査でこのウイルスが検出されなかった場合でも、一部は細胞内に存在しています。例えば、最近、未治療のHIV感染症の母親から生まれた小児1人に高用量の抗レトロウイルス薬が投与されました。生後15カ月の時点で抗レトロウイルス療法は意図せず中止されましたが、生後24カ月時点でも、小児の中で複製されているHIVは検出されませんでした。しかし、その後、ウイルスが検出されました。たとえ短期間でも、高用量で抗レトロウイルス薬を投与してウイルスを抑制することが健康状態の改善につながるどうかを見極めるため、調査研究が現在進められています。医師は抗レトロウイルス療法を中断しないよう推奨しています。

今のところ、HIV感染症には根治的な治療法がなく、治癒が可能なのかどうかもまだ知られていません。ただし、HIV感染症は治療可能な感染症であり、効果的な抗レトロウイルス療法が行われれば、長期の生存も可能であることが分かっています。

小児におけるHIV感染症の予防

HIVにさらされた後の予防的治療も参照してください。

感染した母親における感染予防

感染した妊婦のための現在の予防治療は、新生児への感染のリスクを最小限にする上で極めて効果的です。HIVに感染している妊婦には、内服薬を用いた抗レトロウイルス療法を開始するべきです。抗レトロウイルス療法はHIV感染が診断されたら直ちに開始し、女性が指示された通りに治療法を遵守できる準備が整っているのが理想的です。HIVに感染している妊婦がすでに抗レトロウイルス療法を受けている場合は、妊娠期間中、それを継続すべきです。HIV感染女性は、妊娠を考えている場合でも抗レトロウイルス療法を継続すべきです。

母体への抗レトロウイルス療法に加え、分娩時に母親に抗レトロウイルス薬のジドブジン(ZDV)も静脈内投与します。その後、HIVにさらされた新生児にもジドブジン(ZDV)を生後4~6週間は1日2回、経口投与します(HIVに感染するリスクが高い特定の新生児には、抗ウイルス薬を追加することもあります)。このように、母子共に治療を行うことで、感染率は25%~1%以下にまで低下します。また、陣痛が始まる前に帝王切開で分娩することでも、新生児がHIVに感染するリスクを低下させる可能性があります。感染症が抗レトロウイルス療法で良好にコントロールされていない女性では、帝王切開による分娩が推奨される場合があります。分娩後も、すべてのHIV感染女性に対して抗レトロウイルス療法が継続されます。

HIVに感染した母親が、質のよい人工乳と清潔な水が簡単に手に入る国にいる場合、人工乳で乳児を育てるべきで、母乳を乳児に授乳してはならず、絶対に母乳バンクに母乳を寄付しないよう母親にアドバイスする必要があります。乳児に水を飲ませたり人工乳を作ったりする際に汚染された水を使用することで、低栄養や感染性の下痢のリスクが高くなっている国では、HIV感染のリスクよりも、母乳で育てるメリットの方が大きくなります。このような発展途上国では、HIVに感染している母親は生後6カ月間は母乳による授乳を続け、その後は速やかに離乳食に移行する必要があります。このような場合、しばしば乳児に対して授乳期間を通して抗レトロウイルス療法が行われます。母親がHIVに感染している場合には、乳児に与える食べものを、母親が咀嚼しないようにします。

小児における感染予防

個々の小児がHIVに感染しているかどうか分からない場合もあるため、すべての学校や託児所は、鼻血などの事故の処理や、血液で汚れた場所の掃除や殺菌に関して、特別な対策を講じるべきです。掃除を行う職員は、皮膚が血液に接触しないよう気をつけるべきです。普段からゴム手袋を使用できるようにしておき、手袋を外したら手を洗います。血液で汚れた場所は、家庭用の漂白剤を水で10~100倍に薄めたものを新しく用意して、洗浄・殺菌する必要があります。 これらの対策(普遍的予防策と呼ばれます)は、HIVに感染した小児だけではなくすべての小児について、また血液に関わるあらゆる状況で守る必要があります。

青年における感染予防

青年の予防策は、成人の予防策と同じです。すべての青年がHIV検査を受けられるようにし、HIVはどのように感染するかを教え、また感染の予防策、例えば高リスクの行動や性交を控えることや安全な性行為を実践することについて教える必要があります(性感染症:予防を参照)。

HIVにさらされる前の予防的治療

HIVにさらされる前に抗レトロウイルス薬を投与することで、HIV感染のリスクを減らすことができます。このような予防的治療は、曝露前予防(PrEP)と呼ばれます。PrEPは、毎日薬を服用すれば最も効果的ですが、費用がかかる可能性があります。PrEPは現在、HIVに感染しているパートナーがいる人や、男性と性行為をする男性、トランスジェンダーの人など、感染リスクが非常に高い人々に勧められています。年長の青年でリスクがある場合も、PrEPの対象となる可能性がありますが、機密保持の問題とコストの問題は、成人の場合と比較して、より複雑になります。

日和見感染症の予防

ニューモシスチス肺炎の予防として、HIV感染が確実で免疫系に著しい障害のある小児の一部と、感染している女性から生まれた乳児の全員(検査で感染していないことが分かるまで継続)に、生後4~6週目からトリメトプリム/スルファメトキサゾールの投与を開始します。副作用のためにトリメトプリム/スルファメトキサゾールに耐えられない小児には、ジアフェニルスルホン、アトバコン、またはペンタミジンを投与します。

また、免疫系の機能がひどく低下している小児には、マイコバクテリウム・アビウム(Mycobacterium avium)コンプレックス感染症を予防するためにアジスロマイシンかクラリスロマイシンを投与します。代替の薬としてはリファブチンがあります。

小児におけるHIV感染症の治療

  • モニタリングの継続

  • 治療遵守の奨励

薬物療法

HIVに感染したすべての小児に対して、できるだけ早く、理想的には診断から1~2週間以内に抗レトロウイルス療法を行うべきです。小児の治療は成人に使用されている抗レトロウイルス薬とほぼ同じもので行われ( see page ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の薬物治療)、一般的には以下のもので構成される組合せの抗レトロウイルス療法を用います。

  • 2種類の核酸系逆転写酵素阻害薬(NRTI)および

  • プロテアーゼ阻害薬またはインテグラーゼ阻害薬

まれに、非核酸系逆転写酵素阻害薬が、2種類のNRTIと併用されます。

しかし、液剤がないなどの理由から、比較的年長の小児や青年および成人に使用される薬のすべてを幼児にも使用できるわけではありません。

一般的に、小児にも成人と同じ副作用が起こりますが、出現する確率はずっと低いのが通常です。それでも副作用により治療が制限されることがあります。

モニタリング

医師は血液中のウイルス量と小児のCD4陽性細胞数を定期的に測定して治療の有効性をチェックします(小児におけるHIV感染の診断を参照)。医師は定期的に他のいくつかの検査を行い、青年期の女子には妊娠検査を行います。

血液中のウイルスの数が増えていたら、ウイルスがその薬に対する抵抗性(耐性)をもつようになったか、または小児が薬を飲んでいない可能性があり、いずれの場合も薬を変える必要があるかもしれません。小児の状況をモニタリングするため、医師は3~4カ月間隔で小児を診察し、血液検査を行います。他の種類の血液検査と尿検査が6~12カ月間隔で行われます。

治療遵守

処方された抗レトロウイルス療法の服薬スケジュールを遵守(指示された通りに薬物療法を行うこと)することが極めて大切です。小児の抗レトロウイルス薬の服用回数が処方されたものより少ない場合、小児の体内のHIVは1つ以上の薬に対して恒久的な耐性を急速に獲得する可能性があります。複雑な投薬計画を遵守し続けることは親や小児にとって難しいことがあり、このことが治療の有効性を限定的にしています。投薬計画を単純にし、治療の遵守率を向上させるため、3種類以上の薬を含有する錠剤を与える場合もあります。そのような錠剤は、服用も1日1~2回で済むことがあります。液剤も現在では味がよくなっており、これにより治療の遵守率が向上する可能性があります。

抗レトロウイルス療法の遵守は、比較的若年の小児よりも青年の方が難しい場合があります。青年は、糖尿病や喘息などの他の慢性疾患でも治療計画の遵守が困難です。青年は、友達と同じようにしていたいと望み、病気によって他者と距離があるように感じる可能性があります。治療をさぼったり、やめたりすることは、青年にとっては自分が病気であるということを否定する手段である場合があります。青年の治療を複雑にし、遵守率を低下させる他の問題としては以下のものがあります。

  • 低い自尊心

  • 無秩序で統一性のない生活習慣

  • 病気によってのけ者にされることの恐怖

  • ときに家族の支援の欠如

また、青年は、体の調子が悪くないときになぜ薬が必要であるかを理解できないことや、副作用を強く心配する場合もあります。小児科医療チームとの頻繁な連絡にもかかわらず、出生時から感染している青年は、自分のHIV感染症をおそれたり否定したりする場合や、医療ケアチームが提供した情報を信用しない場合があります。 医療ケアチームは、薬を服用する必要性に関して支援のシステムが整っていない青年に対し、直接的に必要性を突きつけるのではなく、青年が実務的な事項(例えばどのように日和見感染を予防するかや、どのように生殖医療支援や住居、良好な学校生活についての情報を得るのか)に焦点を合わせる手助けをすることもあります(成人ケアへの移行を参照)。

予防接種

ほぼすべてのHIV感染小児は、小児定期予防接種を受けるべきで、これには以下のものが含まれます。

最近では、HIVに感染している小児、青年、成人に対して髄膜炎菌結合型ワクチンのルーチン接種およびキャッチアップ接種が推奨されています。

生きている細菌を含有する一部のワクチン(例、米国以外の一部の国で結核予防に使用されているBCG)、または生きているウイルスを含有する一部のワクチン(例、経口ポリオウイルス、水痘、麻疹・ムンプス・風疹)は、免疫系の機能が非常に低下しているHIV感染小児では、重度の病気や死に至る病気を引き起こす可能性があります。一方、免疫系の機能がひどくは低下していないHIV感染小児に対しては、麻疹・ムンプス・風疹混合生ワクチンと、水痘生ワクチンが推奨されます。

ロタウイルス生ワクチンは、HIVにさらされたり感染したりした乳児に、定期スケジュールに従って接種することができます。

年1回の不活化(生ではない)インフルエンザ予防接種も、生後6カ月以上のすべてのHIV感染小児に推奨され、家族のすべてに不活化または生ワクチンによる予防接種が推奨されます。

ただし、HIVに感染している小児では、どの予防接種も有効性が低くなります。CD4陽性細胞数が非常に低いHIV感染小児は、ワクチンで予防可能な病気(麻疹[はしか]、破傷風、水痘など)に対し、その病気に対するワクチン接種を受けていたかどうかにかかわらず、病原体にさらされた場合にかかりやすいと考えられており、免疫グロブリンを静脈内投与されることがあります。世帯内の予防接種を受けていない人が麻疹ウイルスにさらされた場合は、免疫グロブリン製剤の静脈内投与または麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンを直ちに接種することを考慮する必要があります。

社会的支援

里親を必要としたり、保育、学校教育を受ける必要がある小児に関しては、小児が感染性病原体にさらされるリスクを医師に判断してもらいましょう。一般的には、HIVに感染した小児を含む、免疫機能が低下した小児が水痘などの感染症にかかるリスクの方が、この小児が他の小児にHIVを感染させてしまうリスクよりも大きくなります。ただし、HIVに感染している幼児の皮膚がただれて、じくじくした面が見えている場合や、かみつくなどの危険な行動をとるおそれがある場合は保育施設に行かせてはいけません。

その一方で、健康状態が許す限り、健康な小児がこの時期に行う日常活動に参加させるのがよいでしょう。他の小児とかかわることで社会性や自尊心が育ちます。HIV感染症にはよくないイメージがあること、学校および託児所で普遍的予防策を常用していること、他の小児には感染する可能性が極めて低いことを考慮すれば、両親と医師は別として、おそらく養護教諭以外には小児がHIVに感染していることを話す必要はありません。

小児の状態が悪化してきた場合は、できるだけ制約の少ない環境で治療を行うのが一番です。訪問看護や地域サービスが受けられるなら、入院せずに家庭で長く過ごせます。

成人ケアへの移行

小児が一定の年齢に達したら(一般的には18~21歳)、HIVに感染している青年は小児対象の医療から成人対象の医療へと移行します。成人を対象とする医療モデルは非常に多様なため、青年を成人向けのクリニックまたは診療所に、補足的な計画を伴わずに単に紹介することはすべきでありません。

小児を対象とした医療は、家族を中心とする傾向にあり、ケアチームには医師、看護師、ソーシャルワーカー、精神医療の専門家などの集学的チームが含まれます。出生時に感染した青年は、このようなチームによるケアを生涯にわたって受けてきている可能性があります。一方、典型的な成人対象の医療モデルは、個人を中心とする傾向にあり、関与する医療従事者が別個の場所に診療所を構えていて、何度も受診しなければならない可能性があります。成人対象のクリニックおよび診療所での医療従事者は患者数が多いために、予約に遅れたり、行かなかったりする(これは青年でより多くみられます)ことに、より厳格です。

移行を数カ月にわたって計画し、青年が小児医療と成人医療の従事者と話し合うか、または合同での診察を受診することで、移行がよりスムーズに成功をおさめます。(世界保健機関の移行に関する情報も参照)。

さらなる情報

  1. HIV流行の終息(Ending the HIV Epidemic):米国疾病予防管理センターの新たなHIV感染を防ぐために役立つ情報

  2. 世界保健機関の小児対象の医療から成人対象の医療への移行(Transitioning from child to adult care

  3. 曝露前予防(PrEP)(Preexposure Prophylaxis (PrEP)):米国性的健康協会の曝露前予防(PrEP)の薬剤についての説明

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