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小児と青年における自殺行動

執筆者:

Josephine Elia

, MD, Sidney Kimmel Medical College of Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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自殺行動とは、自分に害をなすことを意図した行動で、自殺演技、自殺企図、および自殺既遂が含まれます。希死念慮とは、自殺について考え計画することを指します。自殺企図とは、首つりや入水など、死亡につながる可能性がある自傷行為を指します。

  • うつ病などの精神障害がある小児では、ストレスになる出来事が引き金となって自殺することがあります。

  • 自殺の危険性のある小児は、抑うつや不安があったり、何もやりたがらず引きこもっていたり、死に関する話をしたり、急に日頃の行動を変えたりすることがあります。

  • 家族や友人は、自殺するという脅しや自殺企図はすべて深刻に捉えなければなりません。

  • 医療従事者は、自殺のリスクがどれほど深刻かを判断しようと努めます。

  • 自殺のリスクが高い場合には、入院させ、他の精神障害の治療薬による薬物治療や、小児自身や家族に対するカウンセリングなどを行います。

自殺行動の予防も参照のこと。)

思春期以前の小児が自殺することはめったにありません。自殺は主に青年期、とりわけ15~19歳と成人期の問題です。しかし、青年期以前の小児も自殺するため、このような可能性を見過ごしてはなりません。

米国では、青年期における死亡原因の第2位もしくは第3位が自殺です。毎年自殺で2000人が死亡します。自動車事故や銃器の事故などによる死亡者の一部は、実際には自殺である可能性もあります。

自殺企図は、実際に自殺で死亡する若者の数よりはるかに多く起きています。2015年に米国疾病予防管理センターが米国の高校生を対象に実施した調査では、以下の結果が報告されました。

  • 過去1年間に高校生の17%が自殺を試みることを真剣に考えていた。

  • 過去1年間に13%が自殺の計画を立てていた

  • 過去1年間に8%が少なくとも1回自殺を試みた。

  • 過去1年間に少なくとも1回自殺を試みた高校生の6%が異性愛者であったのに対し、レズビアン、ゲイ、両性愛者(LGB)の高校生は29%であった。

自殺企図には、死にたいという願望の中にわずかであれ若干のためらいがある場合が多く、それは助けを求める心の叫びかもしれません。

米国の青年では、自殺による死亡者数の男女比が4:1であり、男子の方が女子よりはるかに多くなっています。しかし自殺企図では、女子の方が男子より2~3倍多くなります。

知っていますか?

  • 米国では、青年期の死亡原因の第2位もしくは第3位が自殺です。

危険因子

自殺を考えることは、必ずしも自殺行動につながるわけではありませんが、自殺行動の危険因子です。自殺を考えるようになってから自殺行動に至るまでには、典型的には複数の要因が相互に関連しています。もともと精神障害があり、ストレスになる出来事が自殺行動の引き金になるケースが非常に多くみられます。ストレスになる出来事の例には以下のものがあります。

  • 愛する人の死

  • 学校あるいは他の集団内における仲間の自殺

  • 失恋

  • なじんでいたある場所(学校や近所など)からの転居・転学や、友人との別れ

  • 家族や友人からの侮辱

  • 学校でのいじめ(特にレズビアン、ゲイ、両性愛者、トランスジェンダー[LGBT]の生徒に対するもの)

  • 学校での失敗

  • 法律上のトラブル

しかし、こうしたストレスになる出来事は小児にとってごく当たり前のことであり、ほかに潜在的な問題がない限り、自殺行動に至ることはまれです。

潜在的な問題のうち最もよくみられるものを以下に掲げます。

  • うつ病うつ病の小児や青年は絶望感と無力感を抱いているため、目の前にある問題を解決する際に別の方法を考えることができなくなります。

  • アルコールや薬物の乱用アルコールや薬物の使用は、危険な行動に対する抑制を緩め、起こりうる結果を予測することを困難にします。

  • 衝動コントロールの低下:素行症などの破壊的行動障害の青年は、何も考えずに行動することがあります。

他の精神障害や身体的な病気がある人でも、自殺のリスクは高くなります。そのような病気としては、不安症統合失調症頭部の外傷心的外傷後ストレス障害などがあります。

自殺を企てる青年や小児は、家族や友人に怒りを抱いていることがあります。その怒りに耐えることができずに、怒りを自分自身へ向けてしまうのです。このような青年や小児は、他者を操ったり罰したりしたいと願っています(「自分が死んだら、あいつらは悪いことをしたと思うだろう」)。親とのコミュニケーションに問題がある場合も、自殺のリスクの一因となります。

ときには、自殺行動が他者の行動をまねた結果として起こることもあります。例えば、有名人の自殺が広く報道されると、後追い自殺や自殺企図がよく起こります。同様に、学校でも後追い自殺が起こることがあります。

家族内に気分障害の人がいる場合、とりわけ自殺やその他の暴力行動の家族歴がある場合には、自殺が起こりやすくなります。

診断

  • 親、医師、教師、友人によるリスクの特定

親、医師、教師、友人は、自殺を試みる可能性がある小児を特定できる立場にいることがあり、とりわけ、最近になって行動に変化がみられた小児には注意が必要です。小児や青年は、友人にだけ胸の内を打ち明けることが多いですが、実際に自殺を招かないようにするため、打ち明けられた側には、秘密は守らず、必ず誰かに伝えるよう指導する必要があります。「自分なんか生まれてこなければよかった」、「眠ったまま目が覚めなれければいいのに」など、あからさまに自殺の考えを表に出す小児には注意が必要ですが、もっと微妙で目立たない徴候(引きこもる、成績が下がる、大切にしていたものを手放すなど)しか示さない小児もいます。

医療従事者には2つの重要な役割があります。

  • 自殺行動のある小児について、安全性と入院の必要性を判断すること

  • うつ病や薬物乱用などの根底にある病気を治療すること

予防

自殺のリスクのある小児に自殺を考えているかと直接尋ねると、小児の苦痛に寄与している重要な問題を浮き上がらせることができます。したがって、問題点をはっきりさせることは、有効な治療につながります。

地方自治体には、たいていは24時間体制の緊急ホットラインが設けられており( 自殺への介入:全米自殺予防ライフライン(National Suicide Prevention Lifeline))、共感的なスタッフがすぐにカウンセリングを行い、さらなるケアを受けるための支援を提供しています。このようなサービスによって自殺による死亡者数が実際に減少していることを証明するのは困難ですが、小児と家族が適切な援助を受けられるようにする上で、このようなサービスは有益と考えられます。

以下の方法が自殺のリスクを低減するのに役立つことがあります。

  • 精神障害、身体疾患、および物質使用障害に対する効果的な治療を受ける

  • 簡単に精神医療サービスを受けることができる

  • 家族や地域社会から支援を受ける

  • 平和的に争いを解決する方法を習得する

  • 自殺を抑止する文化的かつ宗教的思想をもつ

自殺予防プログラムが助けになります。最も効果的なものは、小児が以下の状況にあることを確実にするためのプログラムです:

  • 支持的な養育環境

  • 精神医療サービスを確実に受けることができる

  • 個人、人種、文化の相違を尊重することを促す学校やその他の社会状況

米国では、 自殺予防リソースセンター(Suicide Prevention Resource Center)がこのようなプログラムのいくつかを示しており、全米自殺予防ライフライン(National Suicide Prevention Lifeline)(1-800-273-TALK、米国のみ)は自殺をほのめかす人に対する危機介入を提供しています。

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自殺リスクのある小児と青年の特定

種類

特定の要因

自殺の危険因子

脳に影響を及ぼす病気

家族歴

自殺行動の家族歴

気分障害の母親

警察とのトラブル歴のある父親

親とのコミュニケーションの欠如

引き金となる出来事

懲戒処分や停学処分を受けるなど学校での問題

愛する人(ボーイフレンドやガールフレンドなど)の喪失、特に自殺による喪失

親との別離

ときに失業や大学への不登校による、社会との接触の欠如

いじめの被害者

後追い自殺を招く可能性のある、自殺報道

感染部位や状況

銃器や処方薬の入手

以前の自殺企図

精神保健サービスを受けようとする際の障壁や、そのような支援を求めることには偏見がつきものだという感情

自殺の警戒すべき徴候

精神症状と身体症状

病的な想像で頭がいっぱいになる

うつ病

絶望感

低い自尊心

気分の劇的な変化

食欲の変化

睡眠障害

緊張、不安、神経質

衝動をコントロールできない

行動の修正

不衛生、身だしなみの悪化(とりわけ急に身なりにかまわなくなった場合)

社会的な対人関係から引きこもる

学校をサボる

成績の悪化

暴力行動の増加

大切にしていた持ち物を手放す

会話

罪悪感に関する発言

死にたいとほのめかす発言(「自分なんか生まれてこなければよかった」、「眠ったまま目が覚めなれければいいのに」など)

自殺するという直接的または間接的な脅し

治療

  • ときに入院

  • 今後の自殺企図に対する予防措置

  • 自殺リスクの一因となっている病気があれば、その治療

  • 精神科医と精神療法への紹介

自分を傷つけたいという考えをほのめかす小児や自殺未遂をした小児は、病院の救急部門で緊急の評価を受ける必要があります。どんな種類の自殺未遂も深刻に受け止めなくてはなりません。それは、自殺者の3分の1はそれ以前に自殺未遂を起こしているからで、自殺未遂はときに、手首を浅く数回切ったり、薬をほんの数錠飲んだ程度で、ささいなことに思えることもあります。不成功に終わった自殺の試みを親や保育者が非難したり、重要視しなかったりすると、小児はこの反応を挑戦だと感じて、再び自殺を図るリスクが高くなります。

直接命にかかわる危険を取り除いたら、医師は小児を入院させる必要があるかどうかを判断します。判断にあたっては、入院しないで家にいるリスクはどの程度かということと、家族がどれくらい小児に支援と身体的安全を与えられるかを考慮します。入院は小児を保護する最も確かな方法で、通常は、うつ病などの重篤な精神障害が疑われる場合に必要と判断されます。

自殺企図の深刻さの評価には、以下のようないくつかの点を考慮します。

  • 自殺企図が急に思い立って行われたのではなく、慎重に計画されたものであるか(例えば、遺書が残されている場合には、計画された自殺企図であると考えられます)

  • 試みが発覚しないための対策が講じられていたか

  • どのような方法が用いられたか(例えば、薬を飲むよりも銃を用いた方が死亡する可能性が高くなります)

  • 実際に体に傷が生じたか

  • 自殺企図の際、小児はどのような精神状態であったか

実際に起こったことと本気の程度をしっかりと区別することが極めて重要です。例えば、死に至ると信じて無害な錠剤を飲んだ青年は、自殺のリスクが極めて高いと考えるべきです。

入院の必要がない場合には、小児の家から銃器をすべて排除し、薬剤(市販薬を含めて)や刃物類は家に置かないようにするか、鍵がかかる場所にしまうようにしなければなりません。このような予防策を講じたとしても、自殺の予防は非常に難しいこともあり、確実な手段はありません。

リスクの一因となる病気(うつ病や双極性障害など)がある場合は、その病気を治療します。しかし、そのような治療を行っても、自殺のリスクを完全にはなくすことはできません。抗うつ薬の使用は一部の青年において自殺のリスクを増大すると懸念されていますが( 抗うつ薬と自殺)、うつ病を治療せず放置することは、おそらく治療に伴うリスク以上に危険です。抗うつ薬を使用する小児には、医師が綿密なモニタリングを行い、一度に全部服用しても致死的とならない少量ずつで処方されます。

適切な薬物療法を行える精神科医と、認知行動療法などの精神療法を行える精神療法士に患者を紹介するのが通常です。治療は、かかりつけ医が継続的に関与する場合に最もうまくいきます。

自殺した場合

自殺した小児や青年の家族は、自殺に対して悲嘆、罪悪感、抑うつなどの複雑な反応を示します。家族は目的が失われたように感じたり、日常生活から切り離されたように感じたり、苦々しく思ったりします。自分の生活を継続していくことが難しくなることもあります。カウンセリングによって、自殺が起こった精神医学的背景を理解することができ、自殺する前の困難な状況について考え、その状況を受け入れる助けになる可能性があります。そうすることで家族は、自殺が自分たちの責任でないと理解できるかもしれません。

自殺があった後、その地域の人々、特に自殺した人の友人や同級生で自殺リスクが高まる可能性があります。自殺があった後の学校や地域社会の支援には、リソース(学校支援のためのツールキット[a toolkit for schools]など)が利用できます。学校や地域の職員は、情報やコンサルテーションを提供する際に助けとなる精神医療従事者の手配を行います。

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