星細胞腫の原因は不明です。
歩行困難、脱力、視覚変化、嘔吐、頭痛がみられることがあります。
通常、診断の際には画像検査と生検が行われます。
治療の選択肢には、手術、化学療法、放射線療法があります。
小児の脳腫瘍 小児の脳腫瘍の概要 脳腫瘍( 成人の脳腫瘍も参照)は、15歳未満の 小児のがんの中で(白血病の次に)多くみられるがんであり、がんによる死亡の2番目に多い原因です。 小児で最も多くみられる脳腫瘍は 星細胞腫です。次いで多いのが 髄芽腫と 上衣腫です。 脳腫瘍により、頭痛、吐き気、嘔吐、視覚障害、ぼんやりする、協調運動障害、平衡障害などの様々な症状が生じます。 診断は通常、MRI(磁気共鳴画像)検査と生検の結果に基づいて下されます。... さらに読む の中では星細胞腫が最も多く、全体の40%に上ります。通常、星細胞腫の診断は、5歳から9歳の間に下されます。
症状
頭蓋内圧が上昇し、頭痛(しばしば小児が目覚めた直後に生じます)、嘔吐、ぼんやりするなどの症状が起こります。協調運動障害が現れたり、歩行困難に陥ったりすることがあります。視力が低下したり、失明に至ったり、眼球が突出したり、眼球が無意識のうちに一方向に急に動いてすぐ元の位置に戻ったり(眼振)することがあります。
脊髄にできた星細胞腫は、背部痛、歩行困難、筋力低下を引き起こすことがあります。
診断
MRI検査
生検
通常は 造影剤 造影剤 画像検査では、特定の組織または構造を周辺領域から区別したり、詳細な画像を撮影したりするために造影剤を使用することがあります。 造影剤には以下のものがあります。 放射線不透過性造影剤:X線画像に写る物質 常磁性造影剤: 磁気共鳴画像(MRI)で用いられる物質 放射線不透過性造影剤はX線を吸収するため、X線画像上で白く見えます。典型的には以下のものを見るために用いられます。 さらに読む を用いた MRI検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるよう... さらに読む が行われます。MRIが利用できない場合は CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査 CT検査(以前はCAT検査とよばれていました)では、X線源とX線検出器が患者の周りを回転します。最近の装置では、X線検出器は4~64列あるいはそれ以上配置されていて、それらが体を通過したX線を記録します。検出器によって記録されたデータは、患者の全周の様々な角度からX線により計測されたものであり、直接見ることはできませんが、検出器からコンピュータに送信され、コンピュータが体の2次元の断面のような画像(スライス画像)に変換します。(CTとは... さらに読む
が行われますが、精度は低くなります。
それから医師は腫瘍組織からサンプルを採取して顕微鏡で調べます(生検)。生検を行う理由は、腫瘍細胞がどれくらい異常に見えるか(腫瘍の悪性度)に基づいて治療内容が決定されるからです。通常、切除された腫瘍は、低悪性度(若年性毛様細胞性星細胞腫など)または高悪性度(膠芽腫など)に分類されます。グレード(悪性度)IとIIの腫瘍が低悪性度で、グレードIIIとIVの腫瘍が高悪性度です。
治療
手術(可能な場合)
放射線療法、化学療法、またはその両方
(がん治療の原則 がん治療の原則 がんの治療は、医療の中でもとりわけ複雑なものの1つです。治療には、様々な医師(かかりつけ医、婦人科医やその他の専門医、腫瘍内科医、放射線腫瘍医、外科医、病理医など)とその他の様々な医療従事者(看護師、放射線技師、理学療法士、ソーシャルワーカー、薬剤師など)が1つのチームとなって取り組みます。 治療計画では、がんの種類、位置、 病期、遺伝学的特徴などのほか、治療を受ける人に特有の特徴を考慮に入れます。... さらに読む も参照のこと。)
低悪性度の星細胞腫のほとんどは 手術で切除 がんの手術 手術は、がんに対して昔から用いられてきた治療法です。大半のがんでは、リンパ節や遠く離れた部位に転移する前に除去するには、手術が最も効果的です。手術のみを行う場合もあれば、 放射線療法や 化学療法などの治療法と併用する場合もあります( がん治療の原則も参照)。医師は以下の他の治療を行うことがあります。 手術前に腫瘍を小さくする治療(術前補助療法) 手術後にできるだけ多くのがん細胞が除去されるようにする治療(術後補助療法)... さらに読む されます。星細胞腫が完全に切除された場合、他の治療は必要ない場合があります。
ときおり、正常な脳組織と腫瘍組織を分離することができなかったり、切除できない部位に腫瘍があったりすることがあります。そのような場合には、代わりに放射線療法が行われます。 放射線療法 がんに対する放射線療法 放射線は、コバルトなどの放射性物質や、粒子加速器(リニアック)などの特殊な装置から発生する強いエネルギーの一種です。 放射線は、急速に分裂している細胞や DNAの修復に困難がある細胞を優先的に破壊します。がん細胞は正常な細胞より頻繁に分裂し、多くの場合、放射線によって受けた損傷を修復することができません。そのため、がん細胞はほとんどの正常な細胞よりも放射線で破壊されやすい細胞です。ただし、放射線による破壊されやすさはがん細胞によって異な... さらに読む は、10歳以上の小児に、手術で切除できない腫瘍や、知的機能を損なう可能性が高い腫瘍、手術後に進行または再発している腫瘍がある場合に使用されます。小児が10歳未満の場合には、放射線療法を行うと幼児の発育や脳の発達が妨げられるため、代わりに 化学療法 化学療法 化学療法では、薬を使ってがん細胞を破壊します。正常な細胞は傷つけずに、がん細胞だけを破壊する薬が理想的ですが、大半の薬はそれほど選択的ではありません。その代わりに、一般的には細胞の増殖能力に影響を与える薬を用いることで、正常な細胞よりがん細胞に多くの損傷を与えるよう設計された薬が使用されます。無秩序で急速な増殖ががん細胞の特徴です。しかし正常な細胞も増殖する必要があり、なかには非常に速く増殖するもの(骨髄の細胞や口または腸の粘膜の細胞な... さらに読む が行われることがあります。低悪性度の星細胞腫のほとんどが治療で根治できます。
高悪性度の星細胞腫では(可能であれば)手術が行われ、放射線療法と化学療法も組み合わせて治療が行われます(がんの併用療法 がんの併用療法 抗がん剤は、複数の薬を組み合わせて使用する場合に最も効果的です。併用療法の原理は、異なる仕組みで作用する薬を用いることで、治療抵抗性のがん細胞が発生する可能性を減らすというものです。異なる効果をもつ薬を併用する場合は、耐えがたい副作用を伴うことなくそれぞれの薬を最適な用量で使用できます。( がん治療の原則も参照のこと。) 一部のがんでは、 がん手術、 放射線療法、 化学療法または他の抗がん剤を組み合わせるのが最善の方法です。手術と放射線... さらに読む を参照)。高悪性度の場合の予後(経過の見通し)は悪く、治療後3年経過時点での全生存率は20~30%に過ぎません。