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嚢胞性線維症(CF)

執筆者:

Beryl J. Rosenstein

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

医学的にレビューされた 2020年 4月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常な分泌物を産生し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。

  • 嚢胞性線維症は、遺伝子の突然変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。

  • 典型的な症状としては、腹部膨満、軟便、体重増加不良のほか、せき、喘鳴(ぜんめい)などがあり、生涯にわたって気道感染症が頻繁にみられます。

  • 診断は汗検査や遺伝子検査の結果に基づいて下されます。

  • 米国では、この病気の患者の約半数が成人です。

  • 治療薬や処置には、抗菌薬、気管支拡張薬、肺の分泌物を薄める薬、呼吸の問題に対する気道クリアランス処置、消化障害に対する膵酵素やビタミンのサプリメントのほか、特定の遺伝子変異がみられる患者では嚢胞性線維症に関連するタンパク質の機能を改善するための薬の投与などがあります。

  • 肝臓や肺の移植が有益な患者もいます。

白人では、短命の原因となる遺伝性疾患として最も多いのが嚢胞性線維症です。米国では、この病気は白人の乳児の約3300人に1人、黒人の乳児の約1万5300人に1人の割合で発生します。アジア人にみられることはまれです。治療の進歩により、嚢胞性線維症の人の余命が伸びているため、米国では嚢胞性線維症の患者の約半数が成人です。嚢胞性線維症の発生率は男児と女児で同程度です。

嚢胞性線維症:肺だけの病気ではありません

嚢胞性線維症では、肺のほか、他のいくつかの臓器にも問題が生じます。

肺では、気管支の分泌物の粘り気が強いため、細い気道がふさがれて炎症を起こします。病気が進行するにつれて、気管支の壁が厚くなり、感染した分泌物で気道が満たされ、肺のあちこちが萎縮して、リンパ節が腫れます。

肝臓では、粘り気の強い分泌物で胆管がふさがれます。胆嚢に結石ができることもあります。

膵臓では、粘り気の強い分泌物で分泌腺が完全に詰まり、消化酵素が腸に届かなくなることがあります。また、膵臓で作られるインスリンの量が減り、糖尿病になる人もいます(通常は青年期か成人になってから発症します)。

小腸では、粘り気の強い分泌物によって胎便性イレウスという腸閉塞が発生することがあり、新生児で手術が必要になることがあります。

生殖器官も、様々な形で嚢胞性線維症の影響を受けることから、男性では通常、不妊症がみられます。

皮膚の汗腺からは、正常時よりも塩分を多く含んだ液体が分泌されます。

嚢胞性線維症のうほうせいせんいしょう:肺はいだけの病気びょうきではありません

原因

遺伝子異常

嚢胞性線維症は、両親からそれぞれ受け継いだ2本の染色体にある特定の遺伝子の両方に異常(突然変異)がある場合に発生します。この遺伝子は嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)と呼ばれます。様々な変異によってこのCFTR遺伝子が影響を受ける可能性があります。例えば、最も一般的なものはF508del変異と呼ばれています。CFTR遺伝子は、塩化物イオン(Cl-)、重炭酸イオン(HCO3-)、およびナトリウムイオン(Na+)が細胞膜を超えて移動する量を調節するタンパク質の産生を制御しています。CFTR遺伝子の突然変異が原因でタンパク質が正常に機能しなくなります。タンパク質が正しく機能しないと、塩化物イオン、重炭酸イオン、およびナトリウムイオンの移動が阻害されるため、体中の分泌物の濃度が高くなって粘り気が強くなります。

全世界で、白人の約100人に3人は、CFTR遺伝子の片方に異常があります。遺伝子の片方に異常がある人はキャリアと呼ばれますが、それだけで病気になるわけではありません。この遺伝子の両方に異常がある人(白人の約1万人に3人)が、嚢胞性線維症を発症します。

分泌物の異常

嚢胞性線維症は、全身の多くの器官に影響を与え、管の中に液体を分泌する外分泌腺のほぼすべてが障害を受けます。

影響を最も受けやすい器官は以下の通りです。

  • 膵臓

  • 肝臓と胆嚢

  • 生殖器

は、出生時点では正常ですが、その後、粘り気の強い分泌物によって粘液の栓ができ、細い気道をふさぐようになるため、いつでも呼吸障害が起こる可能性があります。この粘液の栓により慢性的な細菌感染症や炎症が生じ、気道に永続的な損傷(気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む )を引き起こします。これらの障害によって呼吸がますます困難になり、血液中に酸素を取り込む肺機能が低下します。また、細菌による呼吸器感染症(副鼻腔が侵されます)も頻繁にみられます。

膵管胃がふさがれると消化酵素が腸に届かなくなります。これらの酵素がないと、脂肪、タンパク質、ビタミンなどの吸収が悪くなります(吸収不良 吸収不良の概要 吸収不良症候群とは、食べたものに含まれる栄養素が様々な理由により小腸で適切に吸収されない状態のことをいいます。 ある種の病気、感染症、手術でも吸収不良が起こることがあります。 吸収不良によって、下痢、体重減少、極度の悪臭がする大量の便がみられます。 診断は、典型的な症状と、便検査の結果、ときに小腸粘膜の生検結果に基づいて下されます。... さらに読む )。この結果、栄養が不足して、発育が遅れる原因となることがあります。最終的には膵臓が瘢痕化して、もはや十分なインスリンを産生できなくなり、 糖尿病 小児と青年における糖尿病 糖尿病は、体が必要とするインスリンが十分に産生されない、または産生されたインスリンに体が正常に反応しないため、血糖(ブドウ糖)値が異常に高くなる病気です。 糖尿病とは、インスリンの産生量低下、またはインスリンの効果低下、あるいはその両方が原因で、血糖値が上昇(高血糖)し、それに伴って生じる一連の病態のことをいいます。... さらに読む 小児と青年における糖尿病 になる患者もいます。ただし、嚢胞性線維症で特定の遺伝子変異がある患者の約5~15%では膵臓に由来する消化の問題は生じません。

粘り気の強い分泌物によって生殖器が詰まることもあり、不妊の原因となります。ほとんどすべての男性患者が不妊となりますが、女性患者が不妊になることははるかにまれです。

汗腺からは正常時よりも塩分を多く含んだ液体が分泌されるため、脱水症のリスクが高まります。

症状

嚢胞性線維症の症状は年齢によって様々です。

新生児および乳幼児

嚢胞性線維症の新生児の約15~20%に胎便性イレウスがみられます。胎便性イレウスは、嘔吐、腹部の膨隆(膨満)、排便の欠如などの原因になります。胎便性イレウスでは、ときに腸の穿孔が合併することがあります。これは感染や 腹膜炎 腹膜炎 腹痛はよく起こりますが、多くの場合軽度です。しかし、強い腹痛が急に起きた場合は、ほとんどが重大な問題であることを示しています。このような腹痛は、手術が必要なことを示す唯一の徴候であるかもしれず、速やかに診察を受ける必要があります。高齢者やHIV感染者、免疫抑制薬(コルチコステロイドなど)を使用している人では、同じ病気の若い成人や健康な成人... さらに読む (腹腔および腹部臓器を覆っている組織の炎症)を引き起こす危険な状態で、治療しなければショックを起こし死に至ります。腸のねじれ(腸捻転)や腸の発育不良がみられる新生児もいます。胎便性イレウスの新生児では、ほとんどの場合、別の嚢胞性線維症の症状が現れます。

胎便性イレウスにならなかった乳児では、嚢胞性線維症の最初の症状として、出生時にいったん体重が減少した後になかなか回復しない、あるいは生後4~6週間で体重が十分に増えないことがよくみられます。この体重増加の不良は、膵酵素の量が不十分なことに関連するもので、栄養素を十分に吸収できないことが原因です。この病気の乳児では、悪臭のする脂ぎった大量の排便が頻繁にみられ、腹部の膨れ(腹部膨満)がみられることもあります。乳児やより年長の小児では、食欲が正常または旺盛であっても、治療しなければ体重はゆっくりとしか増加しません。

年長児および成人

新生児スクリーニングで嚢胞性線維症と診断されない場合、この病気の約半数の小児は、頻繁なせき、喘鳴、気道感染症などで初めて医師を受診します。せきは最も気づきやすい症状で、しばしば吐き気、嘔吐、睡眠障害などを伴います。呼吸困難または喘鳴、あるいはその両方がみられる小児もいます。病気が進行するにつれて、小児の運動耐容能が低下し、肺の感染症の頻度が高くなる傾向がみられ、胸部がたる状になり、酸素不足によって指がばち状になる場合(ばち状指 ばち状指 ばち状指は、手や足の指先が肥大して、爪が生えてくる部分の角度に変化が生じることです。 ばち状指は、爪床のすぐ下にある軟部組織が増殖した場合にみられます。このような増殖が起こる原因は不明ですが、血管の成長を刺激するタンパク質の量に関係している可能性があります。ばち状指は、 肺がん、... さらに読む ばち状指 )や爪の下にある皮膚(爪床)が青っぽくなる場合があります。鼻にポリープができることもあります。副鼻腔が粘り気の強い分泌物で満たされ、副鼻腔炎が慢性化したり、再発を繰り返したりすることがあります。

嚢胞性線維症の小児や成人が、暑い日や発熱時に大量の汗をかいた場合、体内の塩分や水分が不足して脱水症になることがあります。小児の皮膚に塩の結晶がみられたり、塩辛かったりすることに親が気づくこともあります。

合併症

嚢胞性線維症には多くの合併症があります。

脂溶性のビタミンA、D、E、Kの吸収が不十分になって、夜盲症、骨減少症(骨密度が低下する)、 骨粗しょう症 骨粗しょう症 骨粗しょう症とは、骨密度の低下によって骨がもろくなり、骨折しやすくなる病態です。 加齢、エストロゲンの不足、ビタミンDやカルシウムの摂取不足、およびある種の病気によって、骨密度や骨の強度を維持する成分の量が減少することがあります。 骨粗しょう症による症状は、骨折が起こるまで現れないことがあります。... さらに読む 骨粗しょう症 貧血 貧血の概要 貧血とは、赤血球の数が少ない状態をいいます。 赤血球には、肺から酸素を運び、全身の組織に届けることを可能にしているヘモグロビンというタンパク質が含まれています。赤血球数が減少すると、血液は酸素を十分に供給できなくなります。組織に酸素が十分に供給されないと、貧血の症状が現れます。... さらに読む 、出血性疾患が起こることがあります。治療を受けていない乳幼児の約20%に、直腸の内層が肛門から飛び出す 直腸脱 直腸脱 直腸脱とは、痛みを伴わずに直腸が肛門の外に突き出ている状態です。 直腸脱の原因として多いのは、排便時などのいきみです。 診断は、診察と様々な内視鏡検査および画像検査に基づいて下されます。 乳児や小児の直腸脱は通常は手術をしなくても治ります。 成人では手術により治療します。 さらに読む 直腸脱 と呼ばれる病態がみられます。まれですが、嚢胞性線維症の乳児はタンパク質を十分に吸収できないため、大豆乳や低アレルゲン乳で育てると、貧血や四肢のむくみがみられることがあります。

青年や成人における嚢胞性線維症の合併症として、肺胞(肺にある空気の袋)が肺と胸壁の間にあるすき間(胸腔)に向かって破裂してしまうこともあります。この結果、空気がそのすき間に入り込み、肺がつぶれる 気胸 気胸 気胸とは、2層の胸膜(肺の外側と胸壁の内側を覆っている薄くて透明な膜)の間に空気が入り込むことによって、肺が部分的または完全につぶれてしまう病気です。 症状には、呼吸困難や胸痛などがあります。 胸部X線検査によって診断が下されます。 治療は通常、ドレーンやときに合成樹脂製のカテーテルを胸部に挿入して空気を抜くことです。... さらに読む 気胸 が起こります。 その他の合併症には、心不全、気道内の大量出血や再発性の出血などがあります。

胆管が粘り気の強い分泌物でふさがれると炎症が生じることがあり、最終的には嚢胞性線維症の患者の約2~3%に肝臓の瘢痕化(肝硬変 肝硬変 肝硬変は、機能を果たさない瘢痕組織が大量の正常な肝組織と永久に置き換わり、肝臓の内部構造に広範な歪みが生じることです。肝臓が繰り返しまたは継続的に損傷を受けると、瘢痕組織が生じます。 肝硬変の最も一般的な原因は、慢性的な アルコール乱用、 慢性ウイルス性肝炎、 飲酒によらない脂肪肝です。... さらに読む 肝硬変 )が発生します。 肝硬変になると、肝臓に流れ込む静脈の血圧が上昇して 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症 門脈圧亢進症は、門脈(腸から肝臓に向かう太い静脈)とその分枝の血圧が異常に高くなる病気です。 欧米諸国で最も一般的な原因は、 肝硬変(瘢痕化により肝臓の構造が歪み、機能が損なわれること)です。 門脈圧亢進症は、腹部の膨隆( 腹水)、腹部の不快感、錯乱、消化管での出血につながります。... さらに読む となることがあります。この状態になると、食道の下端にある静脈が拡張してもろくなり、 食道静脈瘤 食道静脈瘤 食道静脈瘤は、食道にある静脈が拡張したもので、大出血を引き起こす可能性があります。 食道静脈瘤は、肝臓内とその周囲の血管の血圧が高い状態(門脈圧亢進症)によって引き起こされます。 食道静脈瘤は、通常は症状を引き起こしませんが、自然に出血することがあります。 出血は非常に重度となることがあり、ショックを引き起こしたり、まれですが死に至ること... さらに読む 食道静脈瘤 が形成され、これが破裂してひどい出血を起こすおそれがあります。

嚢胞性線維症では、ほぼすべての患者の胆嚢は小さくて、粘り気の強い胆汁で満たされているため、ほとんど機能しません。約10%の患者に 胆石 胆石 胆石は胆嚢内で固形物(主にコレステロールの結晶)が集積したものです。 肝臓はコレステロールを過剰に分泌することがあり、このコレステロールは胆汁とともに胆嚢に運ばれ、そこで過剰なコレステロールが固体粒子を形成して蓄積します。 胆石は、ときに数時間続く上腹部痛を起こすことがあります。... さらに読む 胆石 ができますが、症状がみられる患者の割合はわずか数パーセントです。手術による胆嚢の切除が必要になることはまれです。

嚢胞性線維症の患者では、生殖機能の障害がよくみられます。ほぼすべての男性が、精巣の管(精管)の片方の発育が異常で、精子の移動が妨げられるため、精子の数が減少するか存在しない状態となり不妊症になります。女性では、子宮頸部の分泌物の粘り気が強すぎるため、妊よう性が低下します。しかしながら、この病気の多くの女性が、満期まで妊娠を持続しています。その妊娠の結果として、母体と新生児がどうなるかについては、妊娠中の母体の健康状態に関連します。その他の性機能には、男女とも異常はみられません。

他の合併症としては、関節炎、慢性的な痛み、睡眠障害、 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよく... さらに読む 小児における閉塞性睡眠時無呼吸症候群 腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む 尿路結石 、腎疾患、 抑うつ うつ病 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がう... さらに読む および不安などのほか、 胆管 胆管と胆嚢の腫瘍 胆管や胆嚢の腫瘍は、悪性か良性かを問わず、まれです。 通常は超音波検査で、胆管や胆嚢の腫瘍を検出できます。 これらのがんは多くの場合致死的ですが、症状の治療はできます。 胆汁は、肝臓で作られ消化を助ける液体です。胆汁は、胆汁を送り出すための細い管(胆管)を通って、最初に肝臓内を、続いて肝臓から胆嚢へ、そこからさらに小腸へと送られます。胆嚢... さらに読む 膵臓 膵臓がん 膵臓がんの危険因子としては、喫煙、慢性膵炎、男性であること、黒人であることがあるほか、長期の糖尿病も危険因子である可能性があります。 典型的な症状は、腹痛、体重減少、黄疸、嘔吐などです。 診断法はCT検査、超音波内視鏡検査、またはMRI検査です。 膵臓がんは通常、死に至ります。... さらに読む 腸管 大腸がん 大腸がんのリスクは、家族歴や食事に関する一部の要因(低繊維、高脂肪)によって高まります。 典型的な症状としては、排便時の出血、疲労、筋力低下などがあります。 50歳以上の人ではスクリーニング検査が重要です。 診断を下すために大腸内視鏡検査がよく行われます。 早期に発見された場合に最も高い治癒の可能性があります。 さらに読む 大腸がん にがんができるリスクが高くなることなどが挙げられます。

診断

  • 新生児スクリーニング検査

  • 汗試験

  • 遺伝子検査

  • キャリアスクリーニング

  • その他の検査

新生児スクリーニング

米国では、嚢胞性線維症のスクリーニング検査がすべての新生児に対して行われます。少量の血液をろ紙片に採取し、トリプシン(膵臓からの消化酵素)の濃度を測定します。血中トリプシンの濃度が高い場合、その新生児に対し、汗試験や遺伝子検査などの、診断を確定するための検査が行われます。嚢胞性線維症のほとんどが新生児スクリーニングで見つかっています。

新生児スクリーニングを受けなかった場合、嚢胞性線維症の診断は、乳児期または小児初期に確定するのが普通ですが、約10%の患者では青年期または成人初期まで発見されません。

汗試験

新生児スクリーニング検査で陽性となった新生児と、嚢胞性線維症が疑われる症状がみられる乳児や小児およびさらに上の年齢層に対して、汗試験が行われます。この検査(外来で行われます)では、汗の中の塩分の量を測定します。まず、ピロカルピンという薬を皮膚の上に貼って発汗を促し、ろ紙または細いチューブを皮膚に押し付けて汗を集めます。それから、汗に含まれる塩分濃度を測定します。嚢胞性線維症の症状がある人や嚢胞性線維症の兄弟姉妹がいる人では、塩分濃度が正常値よりも高いことで嚢胞性線維症の診断が確定します。この検査の結果は、生後48時間を過ぎた新生児であれば有効とされますが、生後約2週間に満たない新生児では、検査に必要な量の汗を採取することが困難な場合があります。

遺伝子検査

新生児スクリーニング検査で陽性になった新生児や、嚢胞性線維症に典型的な症状が1つでもみられる人、嚢胞性線維症の兄弟姉妹がいる人では、CFTR遺伝子の異常を調べる遺伝子検査が診断の助けになる可能性があります。嚢胞性線維症にかかわる遺伝子が両方とも異常(突然変異)であることが分かれば、嚢胞性線維症の診断と一致します。ただし、診断を確定するためには、汗試験の結果が陽性である必要があります。加えて、一般的な遺伝子検査では、嚢胞性線維症に関係する2000種類を超える突然変異のすべてを調べるわけではないため、両方の遺伝子に突然変異が確認されなかったとしても、嚢胞性線維症ではないと断定できるわけではありません(ただし嚢胞性線維症である可能性は非常に低くなります)。出生前の胎児でも、 絨毛採取 絨毛採取 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む 羊水穿刺 羊水穿刺 出生前診断は、遺伝性または自然発生的な特定の遺伝性疾患などの特定の異常がないかどうか、出生前に胎児を調べる検査です。 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。... さらに読む で得た組織の遺伝子検査を行うことでこの病気を診断できます。

新生児スクリーニング検査で嚢胞性線維症であるとの結果を得た乳児の一部では、たとえ汗試験や遺伝子検査を行った後であっても、分類が難しい場合があります。例えば乳児に、嚢胞性線維症に関連する症状がみられない、汗試験の結果が正常値と異常値の間にある、嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の変異が1つしかみられないかまったくみられない場合などです。このグループに属する場合、CFTR遺伝子関連メタボリックシンドローム(CFTR-related metabolic syndrome[CRMS];cystic fibrosis screen positive, inconclusive diagnosis[CFSPID]とも呼ばれる)と診断されます。このような乳児のほとんどは健康な状態を維持するものの、一部では後に嚢胞性線維症に関連する症状がみられるようになり、嚢胞性線維症または嚢胞性線維症関連疾患と診断されます。ゆえに、このグループに属する小児はすべて、嚢胞性線維症のケアセンターにて定期的に経過観察を行う必要があります。

中には、1つの臓器のみに症状がみられる人がおり(通常は成人)、多くの場合、汗試験の結果が中間で、嚢胞性線維症を引き起こす突然変異が両方そろっていません。例えば、症状が膵臓のみ(膵炎 膵炎の概要 膵炎とは、膵臓の炎症です。 膵臓は木の葉の形をした臓器で、長さは約13センチメートルあります。周囲を胃の下側と小腸の最初の部分(十二指腸)に囲まれています。 膵臓には主に以下の3つの機能があります。 消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌する 血糖値の調節を助けるインスリンとグルカゴンというホルモンを分泌する さらに読む を引き起こす)、肺のみ(気管支拡張症 気管支拡張症 気管支拡張症は、気道の壁が損傷を受けて、呼吸の管や気道の一部(気管支)が広がったまま元に戻らない状態(拡張症)です。 最も一般的な原因は、重度の呼吸器感染症や繰り返す呼吸器感染症で、これは肺または免疫系にすでに異常がある人によくみられます。 ほとんどの患者に慢性的なせきがみられ、せきとともに血が出たり、胸痛が現れたり、肺炎を繰り返したりす... さらに読む を引き起こす)、あるいは男性の生殖器のみ(不妊症を引き起こす)に生じることがあります。それらはCFTR関連疾患と診断されます。

保因者検査

子どもをもうけたいと考えている人や、出生前ケアを受けたいと考えている人は 保因者検査 キャリアスクリーニング 遺伝子スクリーニングは、遺伝する遺伝性疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。遺伝する遺伝性疾患とは、次の世代へ受け継がれる 染色体または遺伝子の病気です。 スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプル(頬の内側から採取した細胞など)を分析します。... さらに読む を受けることができます。特に、親族に嚢胞性線維症を発症した小児がいる場合、自分たちに同じ病気の子どもが生まれるリスクが高いかどうか知りたいと考えるのはもっともなことであり、心配であれば遺伝子検査やカウンセリングを受けるべきです。嚢胞性線維症にかかわる遺伝子に異常(突然変異)があるかどうか判定するために、血液サンプルを採取します。

両親ともに嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の少なくとも片方に変異が認められない限り、子どもが嚢胞性線維症になることはありません。両親ともに嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の片方に異常がある場合、妊娠すれば25%の確率で嚢胞性線維症の子どもが生まれ、50%の確率で異常遺伝子を保有する子どもが、また25%の確率で異常遺伝子を保有しない子どもが生まれます。

その他の検査

嚢胞性線維症は様々な器官に影響を及ぼす可能性があるため、他の検査が診断に有用である場合があります。膵酵素の濃度は通常低下するため、便検査では膵臓から分泌される消化酵素であるエラスターゼの濃度低下や検出不能が認められ、便中脂肪量の増加が明らかになることがあります。

インスリンの分泌量が低下しているかどうか、血糖値が上昇しているかどうかを確認するために血液検査が行われます。肝臓の異常を調べる検査や脂溶性ビタミンの濃度を測定するための血液検査も行われます。

通常、医師はのどやせきで出てくるたんなどの物質のサンプルを採取し、培養して気道の細菌を特定しますが、これはどの抗菌薬が必要かを医師が決める助けになります。

予後(経過の見通し)

嚢胞性線維症の重症度は、人によって大きく異なり、年齢とは無関係です。主にどれだけ肺が損傷しているかで、重症度が決定されます。米国では、2017年に生まれた嚢胞性線維症の人は約47歳まで生存すると予測されています。過去50年間で、生存期間の見通しは確実に長くなってきており、それは主に早期に診断されるようになったことと、肺に生じる異常の一部を治療によって遅らせることが可能になったためです。膵臓に障害が生じなかった患者では、生存期間が著しく長くなります。

しかし、症状の悪化は避けられず、肺機能が失われ、やがて死に至ります。嚢胞性線維症の患者は、一般に肺機能が悪化し始めて何年も経ってから呼吸不全で死亡します。これ以外にも、少数ですが、心不全、肝疾患、気道内の出血、肺や肝臓の移植などの手術の合併症によって死亡することもあります。嚢胞性線維症の患者は多くの障害を抱えながらも、死亡する少し前まで、たいていの場合は学校や職場に通っています。

治療

  • 定期予防接種

  • 抗菌薬、気道の分泌物を薄めるための吸入薬、気道の分泌物を除去するための気道クリアランス処置

  • 気道が狭くなるのを予防する薬(気管支拡張薬)およびときにコルチコステロイド

  • 膵酵素およびビタミンサプリメント

  • 高カロリー食

  • 特定の変異がみられる場合には、CFTR修飾薬

嚢胞性線維症の患者にはこの病気の治療経験が豊富な医師によって管理された包括的な治療プログラムが必要です。通常は小児科医や内科医に加え、他の専門医、看護師、栄養士、呼吸療法士または理学療法士、そして理想的にはソーシャルワーカー、遺伝カウンセラー、薬剤師、および心理士などがチームに加わります。治療の目的には、肺疾患や消化器疾患、その他の合併症の長期的な予防と治療、良好な栄養状態の維持、身体活動の促進などがあります。

嚢胞性線維症の小児は、普通の小児が行う活動に参加できず疎外感を覚えることがあるため、心理的・社会的な支援が必要です。嚢胞性線維症の小児の治療に伴う負担のほとんどが親にかかってくるため、病気のメカニズムや治療の意味づけを理解できるよう、親は十分な情報提供やトレーニング、そしてサポートを受ける必要があります。

青年には、独り立ちして自分自身のケアに責任をもてるよう、助言と教育が必要です。

成人では、雇用、パートナーなどとの関係、健康保険、そして健康状態の悪化などの問題に対応できるよう、サポートが必要になります。

肺に対する治療

肺疾患の治療は、以下に重点が置かれます。

  • 気道の閉塞を防ぐ

  • 感染症を管理する

気道クリアランス法には、体位ドレナージ、胸部軽打法、振動法、せきの補助などがあり、嚢胞性線維症が初めて診断されたときから始めます(胸部の理学療法 胸部の理学療法 呼吸療法士は、以下のような様々な方法を用いて、肺疾患の治療を補助します。 体位ドレナージ 吸引 呼吸訓練 どの方法を用いるかは、基礎にある病気の種類や患者の全身状態に基づいて決定します。 さらに読む 胸部の理学療法 )。幼児の場合は、親がこれらの呼吸療法のやり方を習得して、毎日家庭で実施します。年長児や成人では、特別な呼吸用の機器や高頻度で振動する膨張式ベスト(high-frequency oscillation vest)のほか、特別な呼吸法を用いて、自分で気道クリアランス法を行うことができます。有酸素運動を定期的に行うことも、気道のクリアランスを保つ助けになります。

気管支拡張薬は、気道が狭くなるのを防ぐ助けとなる薬です。気管支拡張薬は通常は吸入薬として用います。重い肺疾患がある場合や血液中の酸素レベルが低い場合は、酸素療法が必要になることがあります。一般的に、慢性の呼吸不全の患者に対する人工呼吸器の使用は有効ではありません。しかし、急性の感染症になった場合や外科手術の後、あるいは肺移植の待機中などでは、入院して人工呼吸器を短期間だけ使用することが有効な場合があります。

気道の濃い粘液を薄くする薬、例えばドルナーゼ アルファや高張食塩水(高濃度食塩水)などが広く使用されています。これらの薬剤はネブライザーで吸入します。これらによって、せきと一緒にたんが吐き出されやすくなり、肺機能が改善するため、重い気道感染症にかかる頻度が低くなることもあります。

コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]やデキサメタゾンなど)の服用によって、気管支に重度の炎症がみられる乳児や、気管支拡張薬では気道の狭窄防ぐことができない場合のほか、ある種の真菌による肺のアレルギー反応(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症は、一種の真菌(最も多いのはアスペルギルス・フミガーツス Aspergillus fumigatus)に対する肺のアレルギー反応で、喘息や嚢胞性線維症の患者に発生することがあります。 せきや喘鳴が生じることがあり、ときには発熱や軽度の喀血がみられることもあります。... さらに読む )がみられる場合に、症状が緩和できます。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療は抗真菌薬の服用によっても行われます。

抗菌薬

気道感染症では、可能な限り早く抗菌薬による治療を始めなければなりません。気道感染症の最初の徴候がみられた時点で、吐き出されたたんのサンプルか、のどの奥または扁桃の裏側をぬぐってサンプルを採取して検査します。これによって感染の原因微生物を特定し、それに対して最も効果がある可能性の高い薬を医師が選択できます。黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus(メチシリン耐性株またはメチシリン感受性株を含む)および緑膿菌 Pseudomonasが一般的にみられる原因菌です。ブドウ球菌による感染症の治療では、経口で投与できる抗菌薬が数多くあります。緑膿菌 Pseudomonasによる感染の治療では、しばしばフルオロキノロン系などの抗菌薬が経口で投与されるか、トブラマイシンやアズトレオナムなどの抗菌薬がネブライザーで吸入される場合もあります。

しかし、感染症が重い場合は、抗菌薬の静脈内投与が必要になることもあります。この場合、トブラマイシンまたは別の アミノグリコシド系 アミノグリコシド系 アミノグリコシド系薬剤は 抗菌薬のクラスの1つで、 グラム陰性細菌(特に緑膿菌 Pseudomonas aeruginosa)などによる重篤な細菌感染症の治療に使用されます。 アミノグリコシド系薬剤としては以下のものがあります。 アミカシン ゲンタマイシン カナマイシン さらに読む 抗菌薬が、特に緑膿菌 Pseudomonasを標的とした他の抗菌薬とともに投与されます。このような抗菌薬には、 セファロスポリン系薬剤 セファロスポリン系 セファロスポリン系は、ベータラクタム系 抗菌薬(ベータラクタム環と呼ばれる化学構造をもつ抗菌薬)のサブクラスです。ベータラクタム系抗菌薬には、ほかにも カルバペネム系、 モノバクタム系、 ペニシリン系などがあります。 セファロスポリン系薬剤は主に5つの種類(世代)に分けられます。それぞれの世代で効果がある細菌の種類が異なります。... さらに読む ペニシリン ペニシリン系 ペニシリン系は、ベータラクタム系 抗菌薬(ベータラクタム環と呼ばれる化学構造をもつ抗菌薬)のサブクラスです。 カルバペネム系、 セファロスポリン系、および モノバクタム系もベータラクタム系の抗菌薬です。 ペニシリン系薬剤は、 グラム陽性細菌による感染症( レンサ球菌感染症など)と一部の... さらに読む フルオロキノロン系薬剤 フルオロキノロン系 フルオロキノロン系は広域 抗菌薬のクラスの1つであり、様々な種類の感染症の治療に使用されます。 フルオロキノロン系薬剤としては以下のものがあります。 シプロフロキサシン デラフロキサシン(delafloxacin) ゲミフロキサシン(gemifloxacin) さらに読む 、および モノバクタム系薬剤 アズトレオナム アズトレオナムは、モノバクタム系と呼ばれる 抗菌薬のクラスに属する唯一の抗菌薬で、モノバクタム系は、ベータラクタム系抗菌薬(ベータラクタム環と呼ばれる化学構造をもつ抗菌薬)のサブクラスです。ベータラクタム系抗菌薬には、ほかにも カルバペネム系、 セファロスポリン系、 ペニシリン系などがあります。... さらに読む などがあります。抗菌薬による治療では、しばしば入院が必要になりますが、治療の一部を自宅で行うこともできます。トブラマイシンやアズトレオナムの吸入薬を2カ月毎に長期間使用し、同じく抗菌薬であるアジスロマイシンの経口薬を週に3回、継続して使用することで、緑膿菌(Pseudomonas)感染症をコントロールし、肺機能の悪化を遅らせるのに役立つ場合があります。

CFTR修飾薬

CFTR修飾薬は、長期的に服用する経口薬で、CFTR遺伝子の変異によってできる異常なタンパク質の機能を改善します。

特定の変異を有する人に対し、アイバカフトール(ivacaftor)、ルマカフトール(lumacaftor)/アイバカフトール(ivacaftor)、テザカフトール(tezacaftor)/アイバカフトール(ivacaftor)、エレクサカフトール(elexacaftor)/テザカフトール(tezacaftor)/アイバカフトール(ivacaftor)の4つのCFTR修飾薬(合剤)があります。これらの薬は、嚢胞性線維症の患者の約90%で治療に使用できます。医師は、患者の年齢と変異に基づいてこれらの薬を投与します。

アイバカフトール(ivacaftor)は、生後6カ月以上で、特定の嚢胞性線維症の変異が少なくとも1コピー認められる場合に投与されます。

ルマカフトール(lumacaftor)とアイバカフトール(ivacaftor)の合剤は2歳以上の嚢胞性線維症の患者で、F508del変異が2コピー認められる場合に投与できます。

テザカフトール(tezacaftor)とアイバカフトール(ivacaftor)の合剤は6歳以上で、F508del変異または他の特定の変異が2コピー認められる場合に投与できます。

エレクサカフトール(elexacaftor)、テザカフトール(tezacaftor)、アイバカフトール(ivacaftor)の合剤は12歳以上で、F508del変異が少なくとも1コピー認められる場合に投与できます。

CFTR修飾薬によって、肺機能を改善させ、体重を増加させ、汗の中の塩分濃度を低下させ、肺感染症の頻度を低下させることができます。これらの薬剤はどれも有用ですが、エレクサカフトール(elexacaftor)、テザカフトール(tezacaftor)、アイバカフトール(ivacaftor)の合剤とアイバカフトール(ivacaftor)のみが非常に効果的な治療法とみなされています。

現在、嚢胞性線維症を引き起こす他の遺伝子変異をもつ患者の助けとなる薬の開発が進められています。

浣腸と便軟化剤

食事とサプリメント

正常な発育のためには、食事によって十分なカロリーとタンパク質を摂取する必要があります。膵酵素のサプリメントを摂取している場合でも、消化と吸収が異常である可能性があるため、ほとんどの小児の患者では、発育に支障がでないよう、通常推奨量よりカロリーを30~50%多く摂取する必要があります。脂肪の割合は標準~高めにすべきです。高カロリーの経口サプリメントを利用すれば、小児患者も成人患者も追加でカロリーを摂取できます。

食欲を増進させる薬が有用な場合もあります。運動時や発熱時、気温が高いときは、水分と塩分の摂取量を増やす必要もあります。

膵酵素の補充

嚢胞性線維症によって膵臓に障害が生じている場合は、食事や間食をするたびに膵酵素補充用のカプセルを服用しなければなりません。乳児では、カプセルをあけて中身をアップルソースなどの酸性の食べものと混ぜて与えることで、膵酵素補充用カプセルの特別なコーティングが腸に届く前に溶けてしまわないようにします。一部の人では、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの 胃酸を減らす薬 胃酸の薬物治療 消化性潰瘍、 胃炎、 胃食道逆流症(GERD)などのいくつかの胃の病気には胃酸が関与しています。胃に存在する酸の量は通常、このような病気の患者では正常ですが、胃と腸の損傷の治療や症状の緩和には、胃酸の量を減らすことが重要です。 プロトンポンプとは化学的過程の名称であり、これによって胃から酸が分泌されます。プロトンポンプ阻害薬は胃酸の分泌を... さらに読む を服用することで、膵酵素の有効性が改善する可能性があります。タンパク質と脂肪を含んだ特殊な人工乳は消化しやすいため、膵臓に障害があり、発育が遅い乳児に有効な場合があります。

インスリン

インスリンの注射に加え、糖尿病の管理には、栄養カウンセリング、糖尿病自己管理教育プログラム、眼および腎臓の合併症のモニタリングが含まれます。また、糖尿病だけ、あるいは嚢胞性線維症だけを考慮した標準的な食事の推奨内容では不十分なため、特別な栄養カウンセリングが必要です。

手術

ときに、気胸、慢性の副鼻腔炎、肺の一部に限定した重い慢性感染症、食道の血管からの出血、胆嚢疾患、腸閉塞などになり、手術による治療が必要になることがあります。 肺の内部に大量出血や繰り返し出血がみられる場合は、出血している動脈をふさぐ塞栓形成術と呼ばれる手術で治療することもあります。

その他の治療

心不全がみられる場合には、体液量を減少させるため、利尿薬を投与します。利尿薬には、腎臓によって体から排泄される水分の量を増やすのを助ける働きがあります。ナトリウム(塩分や多くの食品に含まれる)の摂取量を制限する必要もあります。

ヒト成長ホルモンの注射によって、肺機能が改善し、身長が伸び、体重が増加し、入院の回数が減ることがあります。ただし、この薬は投与を受けるのに費用がかかり、問題も生じるため、一般的には処方されません。

血液中の酸素レベルが低い場合には、先が2つに分かれた鼻用のチューブ(鼻カニューレ)を用いて酸素を投与することがあります。一部のケースでは、鼻または鼻と口の両方をぴったり覆うマスクを用いることがあります。このマスクを通して、酸素と空気の混合気体を加圧して供給します。この方法は、 二相性陽圧換気 代替手段 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以... さらに読む (BiPAP)または 持続陽圧呼吸 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよく... さらに読む 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (CPAP)と呼ばれ、睡眠中に酸素レベルを正常に保つのに役立ちます。

終末期の問題

嚢胞性線維症の患者は家族とともに、病気の予後(経過の見通し)やどのような種類の治療を受けたいかについて、主治医やケアチームと話し合う必要があります。このような話し合いをもつことは、肺機能が悪化している場合に特に重要です。将来起こることに備えて、余命を伸ばすためにどのような治療が行われるかを知る必要があります。進行した嚢胞性線維症の患者やその家族は、肺移植における便益と負担の可能性について話し合う必要があります。

医師は嚢胞性線維症の患者に対し、患者がケアを選択するために必要な情報を提供する必要があります。また、死についてそれをいつどのように受け入れるのかやどのように死について話すのかを決める手助けをするべきです。嚢胞性線維症の患者が終末期を迎えるときには、ほとんどの場合、青年期後期か成人になっているため、選択に対して自ら責任を負い、また通常は選択を自分自身で行うことができます。

積極的な治療が役に立たなくなった場合には、症状の緩和のみを目的とした治療(緩和ケア ホスピスケア ホスピスとは、死が迫っている患者とその家族の苦痛を最小限にすることを主な目的とするケアのプログラムであり、またその概念を意味します。米国では、ホスピスは、居住場所で重病患者を支援するために広く利用されている唯一の総合的プログラムです。ホスピスプログラムは症状の軽減を優先し、診断検査や延命治療をほとんど行いません。また、死期を迎えた患者と家... さらに読む と呼ばれます)が開始されることがあります。終末期ケアに関するこのような決断は、必要性が生じる十分前に行っておくとよいでしょう。 病気が進行すると患者は自身の望みを説明できなくなることが多いため、早めに話し合うことが非常に重要です。こうした終末期ケアに関する要望を事前に決定するプロセスは 事前ケア計画 事前指示書 医療に関する事前指示書は、ある人が医療に関する決断を下すことができなくなった場合に、医療についての本人の希望を伝達する法的文書です。事前指示書には、基本的にリビングウィルと医療判断代理委任状の2種類があります。( 医療における法的問題と倫理的問題の概要も参照のこと。) リビングウィルは、終末期ケアに代表されるような、個人が医療に関する決定... さらに読む と呼ばれます。この計画には、終末期ケアに関する患者の希望を反映させた適切な法的書面の執行も含めるべきです。

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