Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

嚢胞性線維症(CF)

執筆者:

Beryl J. Rosenstein

, MD, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

嚢胞性線維症(のうほうせいせんいしょう)は、特定の分泌腺が異常な分泌物を産生し、それによって組織や器官、特に肺や消化管が損傷を受ける遺伝性疾患です。

  • 嚢胞性線維症は、遺伝子の突然変異を親から引き継ぐことで発生し、粘り気の強い濃厚な分泌物が肺やその他の臓器の働きを妨げます。

  • 典型的な症状としては、新生児にみられる嘔吐や腹部膨満、軟便、体重増加不良のほか、せき、喘鳴(ぜんめい)などがあり、生涯にわたって気道感染症が頻繁にみられます。

  • 診断は汗検査や遺伝子検査の結果に基づいて下されます。

  • この病気では、40代前半まで生存できる患者は半数です。

  • 治療薬や処置には、抗菌薬、気管支拡張薬、肺の分泌物を薄める薬、呼吸の問題に対する気道クリアランス処置、消化障害に対する膵酵素やビタミンの補充などのほか、特定の遺伝子変異がみられる患者では嚢胞性線維症に関連するタンパク質の活性を改善するための薬の投与などがあります。

  • 肺移植が有効な患者もいます。

白人では、短命の原因となる遺伝性疾患として最も多いのが嚢胞性線維症です。米国では、この病気は白人の乳児の約3300人に1人、黒人の乳児の約1万5300人に1人の割合で発生します。アジア人にみられることはまれです。治療の進歩により、嚢胞性線維症の人の余命が伸びているため、米国では嚢胞性線維症の患者の約50%が成人です。嚢胞性線維症の発生率は男児と女児で同程度です。

嚢胞性線維症:肺だけの病気ではありません

嚢胞性線維症では、肺のほか、他のいくつかの臓器にも問題が生じます。

肺では、気管支の分泌物の粘り気が強いため、細い気道がふさがれて炎症を起こします。病気が進行するにつれて、気管支の壁が厚くなり、感染した分泌物で気道が満たされ、肺のあちこちが萎縮して、リンパ節が腫れます。

肝臓では、粘り気の強い分泌物で胆管がふさがれます。胆嚢に結石ができることもあります。

膵臓では、粘り気の強い分泌物で分泌腺が完全に詰まり、消化酵素が腸に届かなくなることがあります。また、膵臓で作られるインスリンの量が減り、糖尿病になる人もいます(通常は青年期か成人になってから発症します)。

小腸では、粘り気の強い分泌物によって胎便性イレウスという腸閉塞が発生することがあり、新生児で手術が必要になることがあります。

生殖器官も、様々な形で嚢胞性線維症の影響を受けることから、男性では通常、不妊症がみられます。

皮膚の汗腺からは、正常時よりも塩分を多く含んだ液体が分泌されます。

嚢胞性線維症:肺だけの病気ではありません

原因

遺伝子異常

嚢胞性線維症は、両親からそれぞれ受け継いだ2本の染色体にある特定の遺伝子の両方に異常(突然変異)がある場合に発生します。この遺伝子は嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)と呼ばれ、塩化物イオン(Cl-)とナトリウムイオン(Na+)が細胞膜を超えて移動する量を調節するタンパク質の産生を制御しています。全世界で、白人の約100人に3人は、CFTR遺伝子の片方に異常があります。遺伝子の片方に異常がある人はキャリアと呼ばれますが、それだけで病気になるわけではありません。この遺伝子の両方に異常がある人(白人の約1万人に3人)が、嚢胞性線維症を発症します。発症した患者では、塩化物イオンとナトリウムイオンの移動が阻害されるため、全身の分泌物の粘り気が強くなります。

分泌物の異常

嚢胞性線維症は、全身の多くの器官に影響を与え、管の中に液体を分泌する外分泌腺のほぼすべてが障害を受けます。

影響を最も受けやすい器官は以下の通りです。

  • 膵臓

  • 肝臓と胆嚢

  • 生殖器

は、出生時点では正常ですが、その後、粘り気の強い分泌物によって粘液栓子ができ、細い気道をふさぐようになるため、いつでも呼吸障害が起こる可能性があります。この粘液栓子により慢性的な細菌感染症や炎症が生じ、気道に永続的な損傷(気管支拡張症)を引き起こします。これらの障害によって呼吸がますます困難になり、血液中に酸素を取り込む肺機能が低下します。また、細菌による呼吸器感染症(副鼻腔が侵されます)も頻繁にみられます。

膵管胃がふさがれると消化酵素が腸に届かなくなります。これらの酵素がないと、脂肪、タンパク質、ビタミンなどの吸収が悪くなります(吸収不良)。この結果、栄養が不足して、発育が遅れる原因となることがあります。最終的には膵臓が瘢痕化して、もはや十分な インスリンを産生できなくなり、糖尿病になる患者もいます。ただし、嚢胞性線維症の患者の約5~15%では膵臓に由来する消化の問題は生じません。

が粘り気の強い分泌物でふさがれることもあります。胎児の消化管の内容物(胎便と呼ばれます)の異常な粘り気のため、この閉塞は出生後すぐの段階でよくみられます。これを胎便性イレウスと呼んでいます。年長の小児や成人では、便秘や腸の閉塞が起こることもあります(遠位腸閉塞症候群と呼ばれます)。

粘り気の強い分泌物によって、肝臓および胆嚢が詰まることもあり、最終的に肝臓の瘢痕化を引き起こします(線維化)。胆石ができることがあります。

粘り気の強い分泌物によって生殖器が詰まることもあり、不妊の原因となります。ほとんどすべての男性患者が不妊となりますが、女性患者が不妊になることははるかにまれです。

汗腺からは正常時よりも塩分を多く含んだ液体が分泌されるため、脱水症のリスクが高まります。

症状

嚢胞性線維症の症状は年齢によって様々です。

新生児および乳幼児

嚢胞性線維症の新生児の約15~20%に胎便性イレウスがみられます。胎便性イレウスは、嘔吐、腹部の膨隆(膨満)、排便の欠如などの原因になります。胎便性イレウスでは、ときに腸の穿孔が合併することがあります。これは感染や腹膜炎(腹腔および腹部臓器を覆っている組織の炎症)を引き起こす危険な状態で、治療しなければショックを起こし死に至ります。腸のねじれ(腸捻転)や腸の発育不良がみられる新生児もいます。胎便性イレウスの新生児では、ほとんどの場合、別の嚢胞性線維症の症状が現れます。

胎便性イレウスにならなかった乳児では、嚢胞性線維症の最初の症状として、出生時にいったん体重が減少した後になかなか回復しない、あるいは生後4~6週間で体重が十分に増えないことがよくみられます。この体重増加の不良は、膵酵素の量が不十分なことに関連するもので、栄養素を十分に吸収できないことが原因です。この病気の乳児では、悪臭のする脂ぎった大量の排便が頻繁にみられ、腹部の膨れ(腹部膨満)がみられることもあります。乳児やより年長の小児では、食欲が正常または旺盛であっても、治療しなければ体重はゆっくりとしか増加しません。

年長児および成人

新生児スクリーニングで嚢胞性線維症と診断されない場合、この病気の約半数の小児は、頻繁なせき、喘鳴、気道感染症などで初めて医師を受診します。せきは最も気づきやすい症状で、しばしば吐き気、嘔吐、睡眠障害などを伴います。呼吸困難または喘鳴、あるいはその両方がみられる小児もいます。病気が進行するにつれて、小児の運動耐容能が低下し、肺の感染症の頻度が高くなる傾向がみられ、胸部がたる状になり、酸素不足によって指がばち状になる場合( ばち状指)や爪の下にある皮膚(爪床)が青っぽくなる場合があります。鼻にポリープができることもあります。副鼻腔が粘り気の強い分泌物で満たされ、副鼻腔炎が慢性化したり、再発を繰り返したりすることがあります。

年長の小児や成人では便秘や腸の閉塞がみられ、腸の閉塞は再発を繰り返すか、ときに慢性になることもあります。排便パターンの変化、けいれん性の腹痛、食欲減退、ときに嘔吐が症状としてみられます。小児および成人で、胃食道逆流症が比較的よくみられます。

嚢胞性線維症の小児や成人が、暑い日や発熱時に大量の汗をかいた場合、体内の塩分や水分が不足して脱水症になることがあります。小児の皮膚に塩の結晶がみられたり、塩辛かったりすることに親が気づくこともあります。

青年の場合、成長が遅く、思春期の遅れがみられることがよくあります。病気が進行すると、肺感染症が大きな問題となります。 気管支炎や肺炎を繰り返すことで、少しずつ肺が破壊されていきます。

合併症

嚢胞性線維症には多くの合併症があります。

脂溶性のビタミンA、D、E、Kの吸収が不十分になって、夜盲症、骨減少症(骨密度が低下する)、骨粗しょう症貧血、出血性疾患が起こることがあります。治療を受けていない乳幼児の約20%に、直腸の内層が肛門から飛び出す直腸脱と呼ばれる病態がみられます。まれですが、嚢胞性線維症の乳児はタンパク質を十分に吸収できないため、大豆乳や低アレルゲン乳で育てると、貧血や四肢のむくみがみられることがあります。

青年や成人における嚢胞性線維症の合併症として、肺胞(肺にある空気の袋)が肺と胸壁の間にあるすき間(胸膜腔)に向かって破裂してしまうこともあります。 この結果、空気がそのすき間へ入り込み、肺がつぶれる気胸が起こります。 その他の合併症には、心不全、気道内の大量出血や再発性の出血などがあります。

嚢胞性線維症の小児の約2%、青年の約20%、成人の約40%が、膵臓が瘢痕化して十分な量の インスリンを産生できないため、 インスリン依存性の糖尿病を発症します。

胆管が粘り気の強い分泌物でふさがれると肝臓に炎症が生じることがあり、最終的には嚢胞性線維症の患者の約2~3%に肝臓の瘢痕化(肝硬変)が発生します。 肝硬変になると、肝臓に流れ込む静脈の血圧が上昇して門脈圧亢進症となることがあります。この状態になると、食道の下端にある静脈が拡張してもろくなり、食道静脈瘤が形成され、これが破裂してひどい出血を起こすおそれがあります。

嚢胞性線維症では、ほぼすべての患者の胆嚢は小さくて、粘り気の強い胆汁で満たされているため、ほとんど機能しません。約10%の患者に胆石ができますが、症状がみられる患者の割合はわずか数パーセントです。手術による胆嚢の切除が必要になることはまれです。

嚢胞性線維症の患者では、生殖機能の障害がよくみられます。ほぼすべての男性が、精巣の管(輸精管)の片方の発育が異常で、精子の移動が妨げられるため、精子の数が減少して不妊症になります。女性では、子宮頸部の分泌物の粘り気が強すぎるため、妊よう性が低下します。しかしながら、この病気の多くの女性が、満期まで妊娠を持続しています。その妊娠の結果として、母体と新生児がどうなるかについては、妊娠中の母体の健康状態に関連します。その他の性機能には、男女とも異常はみられません。

他の合併症としては、関節炎、腎結石、腎疾患、抑うつなどのほか、胆管膵臓腸管にがんができるリスクを高めることなどが挙げられます。

診断

  • 新生児スクリーニング検査

  • 汗試験

  • 遺伝子検査

  • キャリアスクリーニング

  • その他の検査

新生児スクリーニング

米国では、嚢胞性線維症のスクリーニング検査がすべての新生児に対して行われます。少量の血液をろ紙片に採取し、トリプシン(消化酵素)の濃度を測定します。このスクリーニング検査で陽性となった新生児は、汗試験を受けます。診断の確定は汗試験や遺伝子検査で行います。今や、嚢胞性線維症の新規症例数の90%を超える数が新生児スクリーニングで見つかっています。

新生児スクリーニングを受けなかった場合、嚢胞性線維症の診断は、乳児期または小児初期に確定するのが普通ですが、約10%の患者では青年期または成人初期まで発見されません。

汗試験

スクリーニング検査で陽性となった新生児と、嚢胞性線維症を疑わせる症状がみられる乳児や小児およびさらに上の年齢層に対して汗試験が行われます。この検査(外来で行われます)では、汗の中の塩分の量を測定します。まず、ピロカルピンという薬を皮膚の上に貼って発汗を促し、ろ紙または細いチューブを皮膚に押し付けて汗を集めます。それから、汗に含まれる塩分濃度を測定します。嚢胞性線維症の症状がある人や嚢胞性線維症の兄弟姉妹がいる人では、塩分濃度が正常値よりも高いことで嚢胞性線維症の診断が確定します。この検査の結果は、生後48時間を過ぎた新生児であれば有効とされますが、生後約2週間に満たない新生児では、検査に必要な量の汗を採取することが困難な場合があります。

遺伝子検査

嚢胞性線維症に典型的な症状が1つでもみられる人や嚢胞性線維症の兄弟姉妹がいる人では、CFTR遺伝子の異常を調べる遺伝子検査が診断の助けになる可能性があります。嚢胞性線維症にかかわる遺伝子が両方とも異常(突然変異)であることが分かれば、嚢胞性線維症の診断と一致します。ただし、診断を確定するためには、汗試験の結果が陽性である必要があります。加えて、一般的な遺伝子検査では、嚢胞性線維症に関係する1,900種類を超える突然変異のすべてを調べるわけではないため、両方の遺伝子に突然変異が確認されなかったとしても、嚢胞性線維症ではないと断定できるわけではありません(ただし嚢胞性線維症である可能性は非常に低くなります)。 出生前の胎児でも、絨毛採取羊水穿刺で得た組織の遺伝子検査を行うことでこの病気を診断できます。

新生児スクリーニング検査で嚢胞性線維症であるとの結果を得た乳児の一部では、たとえ汗試験や遺伝子検査を行った後であっても、分類が難しい場合があります。例えば乳児に、嚢胞性線維症に関連する症状がみられない、汗試験の結果が正常値と異常値の間にある、嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の変異が1つしかみられないかまったくみられない場合などです。このグループに属する場合、CFTR遺伝子関連メタボリック症候群(CFTR-related metabolic syndrome)と診断されます。このような乳児のほとんどは健康な状態を維持するものの、一部では後に嚢胞性線維症の症状がみられるようになり、嚢胞性線維症の診断が確定します。ゆえに、このグループに属する小児はすべて、嚢胞性線維症のケアセンターにて定期的に経過観察を行う必要があります。症状が発生するのは、通常、小児が大きくなってからであり、多くの場合は影響を受ける器官も1つのみです。例としては、膵炎、気管支拡張症(肺損傷)、男性不妊などが起こる場合があります。

保因者検査

子どもをもうけたいと考えている人や、出生前ケアを受けたいと考えている人は保因者検査を受けることができます。特に、親族に嚢胞性線維症を発症した小児がいる場合、自分たちに同じ病気の子どもが生まれるリスクが高いかどうか知りたいと考えるのはもっともなことであり、心配であれば遺伝子検査やカウンセリングを受けるべきです。嚢胞性線維症にかかわる遺伝子に異常(突然変異)があるかどうか判定するために、血液サンプルを採取します。

両親ともに嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の少なくとも片方に変異が認められない限り、子どもが嚢胞性線維症になることはありません。両親ともに嚢胞性線維症にかかわる遺伝子の片方に異常がある場合、妊娠すれば25%の確率で嚢胞性線維症の子どもが生まれ、50%の確率で異常遺伝子を保有する子どもが、また25%の確率で異常遺伝子を保有しない子どもが生まれます。

その他の検査

嚢胞性線維症は様々な器官に影響を及ぼす可能性があるため、他の検査が診断に有用である場合があります。膵酵素の濃度は通常低下するため、便検査では膵臓から分泌される消化酵素であるエラスターゼの濃度低下や検出不能が認められ、便中脂肪量の増加が明らかになることがあります。

インスリンの分泌量が低下しているかどうか、血糖値が上昇しているかどうかを確認するために血液検査が行われます。肝機能を測定する検査や脂溶性ビタミンの濃度を測定するための検査も行われます。

通常、医師はのどやせきで出てくるたんなどの物質のサンプルを採取し、培養して気道の細菌を特定しますが、これはどの抗菌薬が必要かを医師が決める助けになります。

肺機能検査で呼吸障害が明らかになることがあるため、この検査は肺機能の程度を示す良い指標となります。

また、胸部X線検査や胸部CT(コンピュータ断層撮影)検査は、肺感染症や肺の損傷範囲を確認するのに有用となる場合があります。副鼻腔に重篤な症状がある場合、特に鼻茸(はなたけ)がみられる場合や手術が検討されている場合には、副鼻腔のCT検査が行われます。

予後(経過の見通し)

嚢胞性線維症の重症度は、人によって大きく異なり、年齢とは無関係です。主にどれだけ肺が損傷しているかで、重症度が決定されます。米国における嚢胞性線維症の患者の半数は、生存期間が約41年以上です。過去50年間で、生存期間の見通しは確実に長くなってきており、それは主に肺に生じる異常の一部を治療によって遅らせることが可能になったためです。膵臓に障害が生じなかった患者では、生存期間が著しく長くなります。

しかし、症状の悪化は避けられず、肺機能が失われ、やがて死に至ります。嚢胞性線維症の患者は、一般に肺機能が悪化し始めて何年も経ってから呼吸不全で死亡します。これ以外にも、少数ですが、心不全、肝疾患、気道内の出血、手術の合併症などによって死亡することもあります。嚢胞性線維症の患者は多くの障害を抱えながらも、死亡する少し前まで、ごく普通に学校や職場に通っています。

治療

  • 定期予防接種

  • 抗菌薬、気道の分泌物を薄めるための吸入薬、気道クリアランス処置

  • 気道が狭くなるのを予防する薬(気管支拡張薬)およびときにコルチコステロイド

  • 膵酵素のサプリメント

  • 高カロリー食

  • 特定の変異がみられる場合には、アイバカフトール(ivacaftor)またはアイバカフトール(ivacaftor)/ルマカフトール(lumacaftor )の合剤

嚢胞性線維症の患者にはこの病気の治療経験が豊富な医師によって管理された包括的な治療プログラムが必要です。通常は小児科医や内科医に加え、他の専門医、看護師、栄養士、呼吸療法士、そして理想的にはソーシャルワーカー、遺伝カウンセラー、薬剤師、心理士、理学療法士などがチームに加わります。治療の目的には、肺疾患や消化器疾患、その他の合併症の長期的な予防と治療、良好な栄養状態の維持、身体活動の促進などがあります。

嚢胞性線維症の小児は、普通の小児が行う活動に参加できず疎外感を覚えることがあるため、心理的・社会的な支援が必要です。嚢胞性線維症の小児の治療に伴う負担のほとんどが親にかかってくるため、病気のメカニズムや治療の意味づけを理解できるよう、親は十分な情報提供やトレーニング、そしてサポートを受ける必要があります。

青年には、独り立ちして自分自身のケアに責任をもてるよう、助言と教育が必要です。

成人では、雇用、パートナーなどとの関係、健康保険、そして健康状態の悪化などの問題に対応できるよう、サポートが必要となります。

肺に対する治療

肺疾患の治療は、以下に重点が置かれます。

  • 気道の閉塞を防ぐ

  • 感染症を管理する

患者は、すべての定期予防接種、特にインフルエンザ菌 Haemophilus influenzae、インフルエンザウイルス、麻疹、百日ぜき、肺炎球菌、水痘などの呼吸器の問題を引き起こす感染症に対する予防接種を受ける必要があります。

気道クリアランス法には、体位ドレナージ、胸部軽打法、振動法、せきの補助などがあり、嚢胞性線維症が初めて診断されたときから始めます( 胸部の理学療法)。幼児の場合は、親がこれらの呼吸療法のやり方を習得して、毎日家庭で実施します。年長児や成人では、特別な呼吸用の器具や加圧ベストのほか、特別な呼吸法を用いて、自分で気道クリアランス法を行うことができます。有酸素運動を定期的に行うことも、気道のクリアランスを保つ助けになります。

気管支拡張薬は、気道が狭くなるのを防ぐ助けとなる薬です。気管支拡張薬は通常は吸入薬として用います。重い肺疾患がある場合や血液中の酸素レベルが低い場合は、酸素療法が必要になることがあります。一般的に、慢性の呼吸不全の患者に対する人工呼吸器の使用は有効ではありません。しかし、急性の感染症になった場合や外科手術の後、あるいは肺移植の待機中などでは、入院して人工呼吸器を短期間だけ使用することが有効な場合があります。

気道内の粘り気の強い粘液を薄めるために、ドルナーゼ アルファ(遺伝子組換え型ヒトデオキシリボヌクレアーゼI)などの吸入薬(噴霧薬)、または患者が6歳以上の場合には高濃度の食塩水(高張食塩水)が広く使用されています。このような薬の投与により、せきと一緒にたんが吐き出されやすくなり、肺機能が改善するため、重い気道感染症にかかる頻度が低くなることもあります。

コルチコステロイド(プレドニゾン(日本ではプレドニゾロン)やデキサメタゾンなど)の服用によって、気管支に重度の炎症がみられる乳児や、気管支拡張薬では気道の狭窄防ぐことができない場合のほか、ある種の真菌による肺のアレルギー反応(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)がみられる場合に、症状が緩和できます。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の治療は抗菌薬の服用によっても行われます。

肺機能の悪化を遅らせるために非ステロイド系抗炎症薬NSAID)であるイブプロフェンが、ときに使用されることがあります。

気道感染症では、可能な限り早く抗菌薬による治療を始めなければなりません。気道感染症の最初の徴候がみられた時点で、吐き出されたたんのサンプルか、のどの奥または扁桃の裏側をぬぐってサンプルを採取して検査します。これによって感染の原因微生物を特定し、それに対して最も効果がある可能性の高い薬を医師が選択できます。黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus(メチシリン耐性株を含む)および緑膿菌 Pseudomonasが一般的にみられる原因菌です。ブドウ球菌による感染症の治療では、経口で投与できる抗菌薬が数多くあります。緑膿菌 Pseudomonas による感染の治療では、しばしばフルオロキノロンなどの抗菌薬が経口で投与されます。トブラマイシンやアズトレオナムなどの抗菌薬が噴霧薬として投与される場合もあります。

しかし、感染症が重い場合は、抗菌薬の静脈内投与が必要になることもあります。この場合、トブラマイシンまたはゲンタマイシンが、特に緑膿菌 Pseudomonasを標的としたある種のペニシリンとともに投与されます。抗菌薬による治療では、しばしば入院が必要になりますが、治療の一部を自宅で行うこともできます。トブラマイシンやアズトレオナムの噴霧薬を通常は1カ月毎に長期間使用し、同じく抗菌薬であるアジスロマイシンの経口薬を週に3回、継続して使用することで、緑膿菌による感染症の再発を予防し、肺機能の悪化を遅らせるのに役立つ場合があります。

アイバカフトール(ivacaftorは、細胞膜を通過する塩化物イオン(Cl-)とナトリウムイオン(Na+)の輸送を調節するタンパク質の機能を改善するための薬であり、年齢が2歳以上で、かつ嚢胞性線維症の特定の遺伝子変異(G551D、G178R、S549N、S549R、G551S、G1244E、S1251N、S1255P、G1349D、R117H)を有する患者に推奨されています。これらの突然変異は嚢胞性線維症の患者のほんの少数にみられるにすぎませんが、このような患者では、アイバカフトール(ivacaftor)によって肺機能が改善し、体重が増加し、肺の感染症が少なくなります。

ルマカフトール(lumacaftor)は、嚢胞性線維症の特定の遺伝子変異(F508del)を有する患者に投与される薬です。ルマカフトール(lumacaftor)とアイバカフトールの合剤は6歳以上の嚢胞性線維症の患者で、この遺伝子変異の2コピーを有する場合に推奨されます。

現在、嚢胞性線維症を引き起こす他の遺伝子変異を対象として、アイバカフトール(ivacaftor)やルマカフトール(lumacaftor)と同じような薬の開発が進められています。

ヒト成長ホルモンの注射によって、肺機能が改善し、身長が伸び、体重が増加し、入院の回数が減ることがあります。ただし、この薬は投与を受けるのに費用がかかり、問題も生じるため、一般的には処方されません。

浣腸と便軟化剤

腸閉塞がみられる新生児には特別な浣腸液による治療が行われますが、しばしば手術が必要になります。

年長児や成人で便秘や部分的な腸閉塞がみられる場合には、便軟化剤や浣腸のほか、特別な溶液を経口か経鼻胃管(細くて柔軟なプラスチックのチューブで鼻または口から胃の中に通して使用します)を介して投与することで治療します。

食事とサプリメント

正常な発育のためには、食事によって十分なカロリーとタンパク質を摂取する必要があります。膵酵素のサプリメントを摂取している場合でも、消化と吸収が異常である可能性があるため、ほとんどの小児の患者では、発育に支障がでないよう、通常推奨量よりカロリーを30~50%多く摂取する必要があります。脂肪の割合は標準~高めにすべきです。高カロリーの経口サプリメントを利用すれば、小児患者も成人患者も追加でカロリーを摂取できます。

食べものから十分な栄養を吸収できない患者では、胃や小腸に挿入したチューブを通して栄養補給を行う必要があります。

嚢胞性線維症の患者は、吸収しやすくした特殊な製剤で、脂溶性ビタミンA、D、E、Kを1日の通常推奨量の2倍の量を摂取すべきです。

食欲を増進させる薬が有用な場合もあります。運動時や発熱時、気温が高いときは、水分と塩分の摂取量を増やす必要もあります。

膵酵素の補充

嚢胞性線維症によって膵臓に障害が生じている場合は、食事や間食をするたびに膵酵素補充用のカプセルを服用しなければなりません。乳児では、カプセルをあけて中身をアップルソースなどの酸性の食べものと混ぜて与えることで、膵酵素補充用カプセルの特別なコーティングが腸に届く前に溶けてしまわないようにします。一部の人では、ヒスタミンH2受容体拮抗薬やプロトンポンプ阻害薬などの胃酸を減らす薬を服用することで、膵酵素の有効性が改善する可能性があります。タンパク質と脂肪を含んだ特殊な人工乳は消化しやすいため、膵臓に障害があり、発育が遅い乳児に有効な場合があります。

インスリン

嚢胞性線維症の患者で、糖尿病を発症している場合には、インスリンの注射が必要です。経口薬では十分な治療にはなりません。

インスリンの注射に加え、糖尿病の管理には、栄養カウンセリング、糖尿病自己管理教育プログラム、眼および腎臓の合併症のモニタリングが含まれます。また、糖尿病だけ、あるいは嚢胞性線維症だけを考慮した標準的な食事の推奨内容では不十分なため、特別な栄養カウンセリングが必要です。

手術

ときに、気胸、慢性の副鼻腔炎、肺の一部に限定した重い慢性感染症、食道の血管からの出血、胆嚢疾患、腸閉塞などになり、手術による治療が必要になることがあります。 肺の内部に大量出血や繰り返し出血がみられる場合は、出血している動脈をふさぐ塞栓形成術と呼ばれる手術で治療することもあります。

重い肝臓の傷害に対しては、肝移植が成功を収めています。

重い肺疾患に対する両肺の同時移植は、以前より日常的に行われるようになり、経験や技術の向上に伴って成功率も高くなってきています。 両肺の同時移植による5年生存率は約50~60%で、患者の状態はかなり改善します。

その他の治療

心不全がみられる場合には、体液量を減少させるため、利尿薬を投与します。利尿薬には、腎臓によって体から排泄される水分の量を増やすのを助ける働きがあります。ナトリウム(塩分や多くの食品に含まれる)の摂取量を制限する必要もあります。

血液中の酸素レベルが低い場合には、先が2つに分かれた鼻用のチューブ(鼻カニューレ)を用いて酸素を投与することがあります。一部のケースでは、鼻または鼻と口の両方をぴったり覆うマスクを用いることがあります。このマスクを通して、酸素と空気の混合気体を加圧して供給します。この方法は、二相性陽圧換気または持続陽圧呼吸と呼ばれ、睡眠中に酸素レベルを正常に保つのに役立ちます。

終末期の問題

嚢胞性線維症の患者は家族とともに、病気の予後(経過の見通し)やどのような種類の治療を受けたいかについて、主治医やケアチームと話し合う必要があります。このような話し合いをもつことは、肺機能が悪化している場合に特に重要です。将来起こることに備えて、余命を伸ばすためにどのような治療が行われるかを知る必要があります。進行した嚢胞性線維症の患者やその家族は、肺移植における便益と負担の可能性について話し合う必要があります。

医師は嚢胞性線維症の患者に対し、患者がケアを選択するために必要な情報を提供する必要があります。また、死についてそれをいつどのように受け入れるのかやどのように死について話すのかを決める手助けをするべきです。嚢胞性線維症の患者が終末期を迎えるときには、ほとんどの場合、青年期後期か成人になっているため、選択に対して自ら責任を負い、また通常は選択を自分自身で行うことができます。

積極的な治療が役に立たなくなった場合には、症状の緩和のみを目的とした治療(緩和ケアと呼ばれます)が開始されることがあります。終末期ケアに関するこのような決断は、必要性が生じる十分前に行っておくとよいでしょう。 病気が進行すると患者は自身の望みを説明できなくなることが多いため、早めに話し合うことが非常に重要です。こうした終末期ケアに関する要望を事前に決定するプロセスは事前ケア計画と呼ばれます。この計画には、終末期ケアに関する患者の希望を反映させた適切な法的書面の執行も含めるべきです。

さらなる情報

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP