(先天性の尿細管疾患に関する序 先天性の尿細管疾患に関する序 腎臓では、血液のろ過と浄化が行われます。腎臓はさらに、 体内の 水分、 電解質( ナトリウム、 カリウム、 カルシウムなど)、そして栄養素のバランスを維持するという役割も果たしています。 腎臓のこうした機能は、血液が腎臓の糸球体(小さな穴が多数あいた血管でできた微細な球状の組織)を通過する際に、その一部がろ過されることから始まります。... さらに読む も参照のこと。)
この非常にまれな病気は、ほぼ常に遺伝性で、最も一般的にはX染色体(2種類ある性染色体の一方)にある 優性遺伝子 優性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む を介して遺伝します。
腎臓の尿細管の遺伝的な異常により、多量のリンが尿中に排泄される結果、血液中の リン 体内でのリンの役割の概要 リンは体内で重要な役割を担う元素です。体内にあるリンはほとんどすべて酸素と結合し、リン酸を形成しています。リンは体内に存在する 電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルですが、体内のリンの大半は電荷を帯びていません。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内に存在するリンの約85%が骨に含まれています。残りは主に細胞の中にあり、エネルギー産成にかかわっています。... さらに読む 濃度が低下します。骨の発育と強化のためにはリンが必要ですので、この物質が欠乏すると骨に異常が起こります。低リン血症性くる病の女性では、骨の障害は男性患者ほど重度になりません。
まれに、特定のがん(骨の巨細胞腫瘍、肉腫、前立腺がん、乳がんなど)の結果として、低リン血症性くる病が発生することがあります。低リン血症性くる病は、 ビタミンDの欠乏 ビタミンD欠乏症 ビタミンD欠乏症の最も一般的な原因は、太陽の光を十分に浴びないことです。一部の病気もこの欠乏症の原因になります。 最も一般的な原因は太陽の光を十分に浴びないことで、食事のビタミンDも欠乏している場合が通常ですが、ある種の病気で欠乏症になることもあります。 ビタミンDが不足すると、筋肉や骨が弱くなり、痛みを感じます。 乳児の場合はくる病が生じ、頭蓋骨が柔らかくなって骨の成長に異常がみられ、座ったりはいはいができるようになる時期が遅くなりま... さらに読む によって発生するくる病とは別の病気です。
症状
低リン血症性くる病は通常、生後1年以内に異常がみられるようになります。その異常は、目立った症状のない軽症の場合もあれば、 内反膝 O脚 O脚は、医師には内反膝と呼ばれており、脚が膝の部位で外側に弯曲し、膝が正常な場合より広く離れているように見えます。この外見の原因は通常、出生前の子宮内での脚の位置によるものです。この病気は幼児にはよくみられ、治療しなくても生後18カ月までに通常は治ります。O脚が持続する場合や重症化する場合、医師は くる病や他の代謝性の骨疾患を除外する必要があります。 この写真にはO脚(内反膝、特に左脚にみられる)の小児が写っています。O脚とは、膝が互い... さらに読む 、その他の骨の変形、骨や関節の痛み、骨の発育不良による低身長などをきたす重症の場合もあります。筋肉が骨に付着している部分で骨の過剰な増殖が起こり、それにより関節の可動域が制限される場合があります。
また乳児では、頭蓋骨にある骨の隙間が通常よりかなり早い時期に閉じてしまうことがあります(頭蓋縫合早期癒合症 頭蓋縫合早期癒合症 頭蓋縫合早期癒合症は、1カ所以上の頭蓋骨の縫合が早期に閉鎖する先天異常です。 ( 顔面、骨、関節、および筋肉の先天異常に関する序も参照のこと。) 縫合とは、頭蓋骨同士をつないでいる帯状の組織です。縫合によって、中の脳の成長に伴い頭蓋骨が成長することができます。生後数年間は柔らかいままであり、乳児が成長するに従って閉じて固くなっていきます。縫合が閉じた後は、頭蓋骨はそれ以上大きくなることはできません。... さらに読む )。頭蓋骨が早く閉じてしまうと、発育途中にある小児の脳が拡大するための空間がなくなり、脳内の圧力が上昇します。脳に対する圧力の上昇により、発達面で異常が生じる可能性があります。
診断
血液と尿の検査
ときに骨のX線検査
血液検査では、カルシウム濃度は正常ですが、リン濃度の低下が認められます。排泄されたリンの量を測定するために尿検査も行いますが、尿中のリン濃度は高値となります。
また、骨のX線検査を行うこともあります。
治療
リン酸とカルシトリオール
ときに手術による腫瘍の摘出
低リン血症性くる病の治療では、血液中のリン濃度を上昇させることを目標とし、それにより正常な骨の形成を促進します。リンは内服が可能ですが、必ずカルシトリオール(活性型 ビタミンD ビタミンD欠乏症 ビタミンD欠乏症の最も一般的な原因は、太陽の光を十分に浴びないことです。一部の病気もこの欠乏症の原因になります。 最も一般的な原因は太陽の光を十分に浴びないことで、食事のビタミンDも欠乏している場合が通常ですが、ある種の病気で欠乏症になることもあります。 ビタミンDが不足すると、筋肉や骨が弱くなり、痛みを感じます。 乳児の場合はくる病が生じ、頭蓋骨が柔らかくなって骨の成長に異常がみられ、座ったりはいはいができるようになる時期が遅くなりま... さらに読む )と一緒に服用する必要があります。ビタミンDだけを摂取しても不十分です。リンとカルシトリオールを投与すると、しばしば血液中および尿中のカルシウム濃度の上昇、腎臓へのカルシウムの蓄積、腎結石の形成などが生じるため、投与量を慎重に調節する必要があります。これらの副作用により、腎臓や他の組織に損傷が起きる可能性があります。
一部の成人患者では、様々な種類の腫瘍を原因とする低リン血症性くる病が、腫瘍を摘出した後に劇的に軽減します。腫瘍が原因でくる病を起こした患者で低リン血症性くる病が軽減しない場合には、カルシトリオールとリンが使用されます。