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バーター症候群とギッテルマン症候群

執筆者:

Christopher J. LaRosa

, MD, Perelman School of Medicine at The University of Pennsylvania

レビュー/改訂 2022年 12月
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バーター症候群とギッテルマン症候群では、遺伝による尿細管の異常により、腎臓から電解質(カリウム、ナトリウム、塩素イオン)が過剰に排泄されてしまうため、発育、電解質、ときに神経および筋肉に異常が発生します。

バーター症候群とギッテルマン症候群は、遺伝性の病気であり、通常は 劣性遺伝子 劣性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む によって引き起こされます(非X連鎖(常染色体)劣性遺伝疾患 非X連鎖(常染色体)劣性遺伝疾患 非X連鎖(常染色体)劣性遺伝疾患 )。したがって、バーター症候群またはギッテルマン症候群を発症した人は、通常、これらの病気の原因である劣性遺伝子を両親から1つずつ受け継いでいます。劣性遺伝子が関与する病気が発症するには2つの遺伝子を受け継ぐ必要があるため、両親ともその遺伝子を保有していますが、この病気を発症してはいません。ただし、この病気を発症した小児の兄弟姉妹も、この病気を受け継いでいる可能性があります。どちらもまれな病気ですが、バーター症候群と比較して、ギッテルマン症候群の方がより多くみられます。

バーター症候群とギッテルマン症候群では、腎臓で尿細管から塩分(塩化ナトリウム)を正常に再吸収することができなくなります。このため、腎臓から過剰な量の 電解質 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む (ナトリウムと塩素イオン)が尿中に排泄されます。ナトリウムと塩素イオンが失われると、尿が過剰に作られるようになり、それにより軽度の 脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む 状態になります。

軽度の脱水状態になると、体内で血圧の調節を補助する酵素(レニン)とホルモン(アルドステロン)が多く作られるようになります。アルドステロンが増えると、腎臓でのカリウムと酸の分泌量が増加するため、血液中のカリウム濃度が低下するとともに(低カリウム血症 低カリウム血症(血液中のカリウム濃度が低いこと) 低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が非常に低い状態をいいます。 カリウム濃度の低下には多くの原因がありますが、通常は嘔吐、下痢、副腎の病気、利尿薬の使用が原因で起こります。 カリウム濃度が低下すると、筋力低下、筋肉のけいれんやひきつり、さらには麻痺が生じるほか、不整脈を起こすことがあります。 診断は、カリウム濃度を測定する血液検査に基づいて下されます。 通常は、カリウムを豊富に含む食べものを食べるか、カリウムのサプリメントを飲むだ... さらに読む )、血液中から酸が失われることで血液のpHが上昇してアルカリ性になります(代謝性アルカローシス アルカローシス アルカローシスは血液のアルカリ性度が高くなりすぎた状態で、血液中の重炭酸塩の過剰または血液中の酸の減少が原因で発生する代謝性アルカローシスと、深く速い呼吸により血液中の二酸化炭素濃度が低下して生じる呼吸性アルカローシスとがあります。 アルカローシスは、易刺激性、筋肉のひきつり、筋肉のけいれん(強い痛みを伴うこともあります)を引き起こすことがあります。 アルカローシスの診断は血液検査により行われます。... さらに読む )。いずれの症候群でも尿細管に異常がみられますが、腎臓はその他の点では影響を受けておらず、老廃物を正常にろ過できます。

尿路の構造

尿路の臓器

これら2つの症候群は主に以下の点で異なっています。

  • 関係する遺伝子

  • 尿細管のうち異常がある部分

  • 症状が始まる年齢

バーター症候群とギッテルマン症候群の症状

バーター症候群の症状は、出生前、乳児期、または小児期の早期に現れます。

ギッテルマン症候群の症状は、小児期の後期から成人期までに現れます。

しかし、一部の人、特にギッテルマン症候群の人は、症状が現れずに、ほかの理由で血液検査を受けて初めて診断されます。

これらの症候群の小児では、尿の量を増加させる利尿薬という種類の薬を服用している人でみられるのと似た症状が現れ、その影響によって血液中の化学物質のバランスが乱れることがあります。しかし、利尿薬を服用している人とは異なり、バーター症候群やギッテルマン症候群の人では、単に薬の使用を中止することで症状を止めることはできません。

バーター症候群の胎児は、子宮内で良好な発育が得られないことがあります。一部の患児は早産で生まれ、知的障害がある場合もあります。

バーター症候群の小児は、ときにギッテルマン症候群の小児も、発育が不良になり発達に遅れが生じることがあります。マグネシウム、カルシウム、カリウムの喪失により、筋力低下、けいれん、れん縮、疲労が生じる可能性があり、特にギッテルマン症候群でその傾向がみられます。これらの症状群の小児では、強いのどの渇きが生じたり、尿が大量に作られたり、塩分を強く求めたり、吐き気や嘔吐がみられたりします。

バーター症候群とギッテルマン症候群の診断

  • 血中および尿中の電解質濃度の測定

バーター症候群とギッテルマン症候群は、これらの症候群の特徴的な症状がみられる小児や、血液中および尿中の電解質濃度に異常がみられた小児で疑われます。ときに、ほかの理由で行われた臨床検査で、電解質の測定値に異常が認められることがあります。

レニンおよびアルドステロンの血中濃度とナトリウム、塩素イオン、およびカリウムの尿中濃度が高いことで、どちらかの症候群と疑うことができます。

診断は遺伝子検査で確定されますが、遺伝子検査はより広く普及してきています。

家族が遺伝子専門医または腎臓専門医の評価を受けることができます。ほとんどの場合、遺伝子検査が行われます。

バーター症候群とギッテルマン症候群の治療

  • ナトリウム、カリウム、およびマグネシウムのサプリメント

  • バーター症候群には非ステロイド系抗炎症薬

腎臓の尿細管細胞の機能障害を治すことはできないため、治療は生涯にわたって続けられ、ホルモン、体液、電解質の異常を是正することが目標となります。ナトリウムやカリウム、マグネシウムなど、尿中に排泄される物質を含有するサプリメントを服用するとともに、水分の摂取量も増やします。

特定の薬剤が役立つ可能性があります。バーター症候群の人には、インドメタシンやイブプロフェンなどの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が使用されます。NSAIDはギッテルマン症候群の治療には役立ちません。

患児の身長が非常に低い場合は、成長ホルモンを投与することもあります。

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