(先天性の尿細管疾患に関する序 先天性の尿細管疾患に関する序 腎臓では、血液のろ過と浄化が行われます。腎臓はさらに、 体内の 水分、 電解質( ナトリウム、 カリウム、 カルシウムなど)、そして栄養素のバランスを維持するという役割も果たしています。 腎臓のこうした機能は、血液が腎臓の糸球体(小さな穴が多数あいた血管でできた微細な球状の組織)を通過する際に、その一部がろ過されることから始まります。... さらに読む と 腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む も参照のこと。)
シスチン尿症は尿細管の遺伝的な異常が原因で発生します。遺伝的な異常によって、アミノ酸の一種であるシスチンが尿中に過剰に排泄されます。尿中の過剰なシスチンにより シスチンの腎結石 尿路結石 結石は尿路のいずれかの部位で形成される硬い固形物で、痛み、出血、または尿路の感染や閉塞の原因となることがあります。 小さな結石の場合は症状がみられませんが、大きな結石が発生すると、肋骨と腰の間の部分に耐えがたい激痛が生じることがあります。 結石の診断では通常、画像検査と尿検査が行われます。... さらに読む が腎臓、膀胱、腎盂(じんう―尿が集まって腎臓の外に流れ出る部分)、または尿管(腎臓から膀胱へ尿を流している細長い管)の中で形成されます。ときに 腎不全 腎不全の概要 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく場合( 慢性腎臓病、慢性腎不全とも呼ばれます)もあります。腎不全になると、腎臓は血液をろ過して老廃物... さらに読む を起こすこともあります。
ほとんどのシスチン尿症の原因となる遺伝子異常は2つあります。これらの遺伝子は 劣性 劣性遺伝疾患 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパク質の設計情報が記録された領域のことです。 染色体は非常に長いDNA鎖からできており、そこには多く(数百~数千)の 遺伝子があります。特定の細胞(例えば、精子と卵子)を除き、人間の正常な細胞には23対の染色体があります。22対の常染色体と1対の性染色体があり、合わせて46本の染色体があります。通常、それぞれの対を構成する染色体は、片方を母親から、もう片方... さらに読む のため、この病気を発症する人は異常遺伝子を両親からそれぞれ1つずつ受け継いでいます( 非X連鎖劣性遺伝疾患 )。
シスチン尿症患者の親など、異常遺伝子が1つだけある人(キャリア)の場合、正常な人と比べて多くのシスチンが尿中に排泄される場合がありますが、シスチン結石が形成されるだけの量になることはめったにありません。
一般的に女児よりも男児で多くみられます。
尿路の構造
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症状
シスチン尿症の症状は、乳児期に始まる場合もありますが、通常は10~30歳で始まります。最初の症状として多いのは、結石が詰まった箇所で尿管がけいれんすることで生じる激しい痛みです。そうした結石に細菌が集まって、 尿路感染症 小児の尿路感染症(UTI) 尿路感染症(UTI)とは、細菌による膀胱の感染症( 膀胱炎)、腎臓の感染症( 腎盂腎炎[じんうじんえん])、またはその両方がある状態です。 尿路感染症は細菌によって引き起こされます。 乳児や年齢の低い小児に尿路感染症がみられる場合は、ときに泌尿器系に構造的異常があるために発症しやすくなっていることがあります。 新生児と乳児では発熱以外の症状が出ないことがありますが、年長児では、排尿するときに痛みや灼熱感があったり、膀胱周辺が痛んだり、頻... さらに読む やまれに 腎不全 腎不全の概要 腎不全とは、血液をろ過して老廃物を取り除く腎臓の機能が十分に働かなくなった状態のことです。 腎不全の原因としては、様々なものが考えられます。腎機能が急激に低下する場合( 急性腎障害、急性腎不全とも呼ばれます)もあれば、ゆっくりと低下していく場合( 慢性腎臓病、慢性腎不全とも呼ばれます)もあります。腎不全になると、腎臓は血液をろ過して老廃物... さらに読む の原因になる場合もあります。
診断
腎結石の分析
尿検査
腎結石を繰り返す人には、シスチン尿症の検査を行います。採取された結石を分析します。
治療
水分摂取量を増やす
食事中の塩分とタンパク質の量を減らす
尿をアルカリ性にする薬
シスチンを溶解する薬
シスチン尿症の治療は、尿中のシスチン濃度を低下させることでシスチン結石の発生を予防することです。シスチンの濃度を低く抑えるには、毎日3~4リットル以上の尿を出せるだけの十分な量の水分を摂取する必要があります。これを続けたとしても、水分を摂取できない夜間には尿の生産量が減少するため、結石ができやすくなります。そのため、寝る前にも水分を摂取することで結石のリスクを抑えます。
また、アルカリ性の尿には酸性の尿と比べてシスチンが溶けやすいことから、クエン酸カリウムや炭酸水素ナトリウム、ときにアセタゾラミドを服用することで、尿をアルカリ性にする(すなわち酸性度を下げる)治療方法もあります。水分の摂取量を増やし尿のアルカリ度を高めようとすると、腹部の膨満につながるため、この治療法は耐えがたいと感じる人もいます。塩分とタンパク質の摂取量を減らすことが、尿中のシスチン濃度を低下させる助けになる場合があります。
こうした治療法を続けても結石が繰り返しできる場合は、ペニシラミン、チオプロニン、カプトプリルなどの薬剤が試みられます。これらの薬剤には、シスチンを水に溶けたままの状態にする効果があります。ペニシラミンは、尿中のシスチン濃度を低く保つ上で効果的ですが、毒性があるため、ペニシラミンを服用する人には ビタミンB6 ビタミンB6欠乏症 ビタミンB6はほとんどの食品に含まれていますが、適切に吸収されなければビタミンB6欠乏症が生じることがあります。 ビタミンB6は多くの食品に含まれますが、長時間の調理によって失われることがあります。 患者には、けいれん発作、うろこ状の発疹、赤い舌、口の端のひび割れ、手足の針で刺したような感覚がみられることがあります。 診断は、症状、可能性のある原因があること、ビタミンB6のサプリメントに反応することに基づいて下されます。... さらに読む (ピリドキシン)のサプリメントが処方されます。チオプロニンは、副作用の発生頻度が低いことから、一部の小児にはペニシラミンの代わりとして使用できます。カプトプリルは、有効性の点ではペニシラミンにやや劣りますが、毒性が少ないという利点があります。この治療により通常は効果がみられますが、それでも結石の形成が続くリスクがかなり高くなります。