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川崎病

執筆者:

Christopher P. Raab

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 8月
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本ページのリソース

川崎病は全身の血管に炎症が起こる病気です。

  • 川崎病の原因は不明ですが、感染症と関連があると考えられています。

  • 典型的な症状は、発熱、発疹、イチゴ舌のほか、ときに心臓の合併症がみられることもあり、これによりまれに死に至ることがあります。

  • 診断は診断基準に基づいて下されます。

  • 迅速な治療を行えば、ほぼすべての患児が回復します。

  • 治療では、高用量の免疫グロブリンとアスピリンを投与します。

川崎病は全身の血管の壁に炎症(血管炎 血管炎の概要 血管炎疾患は、血管の炎症(血管炎)を原因とする病気です。 血管炎は、特定の感染症や薬によって引き起こされる場合もあれば、原因不明の場合もあります。 発熱や疲労などの全身症状がみられることがあり、その後、侵された臓器に応じて他の症状がみられます。 診断を確定するために、患部の臓器の組織から採取したサンプルの生検を行い、血管の炎症を確認します... さらに読む 血管炎の概要 )が起こる病気です。川崎病の原因は不明ですが、科学的証拠が示唆するところによると、もともと川崎病になりやすい遺伝的素因をもった小児にウイルスなどの感染性微生物が感染することで異常な免疫反応が惹起されるものと考えられています。最も深刻な問題を招くのは心臓の血管の炎症です。膵臓や腎臓など、体の他の部位にも炎症が広がることがあります。

川崎病はたいてい1~5歳の小児に発生しますが、乳児や、年長児、青年にみられることもあります。女児より男児におよそ1.5倍多くみられます。この病気は日系の小児により多くみられます。米国では毎年、数千例の発生があると推測されています。川崎病は年間を通じて発症がみられますが、最も多いのは春季または冬季です。

症状

通常は39℃を超える発熱で始まり、1~3週間にわたって熱が上がったり下がったりします。熱を下げる薬(アセトアミノフェンやイブプロフェンなど)を投与しない限り、小児の体温は正常に戻りません。

発症から1~2日のうちに眼が赤くなりますが眼から分泌物は出ません。発症から5日以内に、体幹、おむつのあたる部分、口や腟の内側などの粘膜に、赤い発疹(斑状であることが多い)が現れるのが普通です。発疹は じんま疹 じんま疹 じんま疹は、かゆみを伴う、わずかに盛り上がった赤い発疹です。腫れは、皮膚の肥満細胞から化学物質(ヒスタミンなど)が放出され、それらの化学物質の作用により毛細血管から一時的に体液が漏れ出すことで生じます。かゆみは重度になる場合があります。じんま疹の縁ははっきりしており、中心部が青白くなっていることがあります。じんま疹は出たり消えたりするのが典型的です。ある部位に数時間にわたって現れた後に消え、その後また別の部位に現れることがあります。じん... さらに読む じんま疹 のようにみえることや、 麻疹(はしか) 麻疹(はしか) 麻疹は非常に感染力の強い ウイルス感染症で、かぜのような様々な症状と特徴的な発疹が現れます。 麻疹の原因はウイルスです。 症状としては、発熱、鼻水、頻発する空せき、目の充血、かゆみを伴う赤い発疹などがみられます。 診断は、典型的な症状と特徴的な発疹に基づいて下されます。 ほとんどの小児が回復しますが、まれに麻疹により死亡したり脳に損傷が生じたりすることもあります。 さらに読む 麻疹(はしか) 猩紅熱(しょうこうねつ) 症状 レンサ球菌感染症は、レンサ球菌属(Streptococcus)の細菌によって引き起こされる感染症です。これらの グラム陽性の球状細菌(球菌)(図「 細菌の形状」を参照)は、レンサ球菌咽頭炎、肺炎のほか、創傷、皮膚、心臓弁、血流の感染症など、多くの病態を引き起こします。 種類の異なる菌株が異なった経路で拡大し、例えば、せきやくしゃみ、感染が生じた傷や褥瘡(床ずれ)、経腟分娩(母親から新生児へ)を介して感染します。... さらに読む による発疹のようにみえることがあります。のどが赤くなり、唇は赤く乾いてひび割れ、赤い舌はイチゴのようにみえます。さらに手のひらと足の裏も赤色または紫がかった赤色になり、しばしば手足が腫れます。発症から約10日後に手足の指の皮膚がむけ始めます。首のリンパ節が腫れることが多く、軽い圧痛を伴います。症状は2~12週間続きますが、もっと長引くこともあります。

川崎病の合併症

小児の場合、治療しなければ、通常は発症から1~4週間後に最大4人に1人の割合で心臓の異常が発生します。このうち少数の小児に、心臓の最も深刻な問題である冠動脈の壁の膨らみ(冠動脈瘤 大動脈瘤と大動脈解離の概要 大動脈は、直径が約2.5センチメートルある体内で最も太い動脈で、心臓の左心室から送られてきた酸素を多く含む血液を、肺を除く全身の組織に送り出しています(肺への血液は右心室から送り出されます)。心臓から出た大動脈からは、すぐに腕と頭へ向かう動脈が枝分かれします。その後、大動脈は弧を描いて下に向かい、左心室の高さから腰の骨(骨盤)の最上部の高... さらに読む )が発生します。この冠動脈瘤は破裂したり、血栓の原因になったりして、心臓発作や突然死を招きます。治療により、心臓の合併症のリスクは20人に1人程度にまで低下します。

このほかに、脳を覆う組織の炎症(髄膜炎)、耳、眼、肝臓、関節、尿道、胆嚢(たんのう)の炎症などがみられることがあり、いずれも痛みを伴います。これらの症状はいずれ治癒し、永久的な障害を残すことはありません。

診断

  • 確立された基準

  • 心電図検査および心臓の超音波検査

  • 臨床検査

あらかじめ定義されている5つの症状(川崎病の診断 川崎病の診断 川崎病の診断 )のうち少なくとも4つがみられれば、川崎病と診断されます。

川崎病の診断

小児に5日以上続く発熱があり、以下の5つの症状のうち少なくとも4つがみられれば、川崎病と診断されます。

  • 眼が赤くなるが、分泌物はない

  • 赤く乾き、ひび割れた唇とイチゴ舌

  • 手足が赤く腫れ、皮がむける

  • 体幹に赤く斑状の発疹がみられる

  • 首のリンパ節の腫れと圧痛

同様の症状を引き起こすその他の病気(麻疹[はしか]、猩紅熱、若年性特発性関節炎など)を否定するため、血液検査や血液とのどの培養検査も行われます。

しばしば、小児の心疾患の治療を専門とする医師(小児心臓専門医)または小児の感染症の治療を専門とする医師へのコンサルテーションが行われます。

いったん川崎病の診断がつけば、 心電図検査 心電図検査 心電図検査は心臓の電気刺激を増幅して記録する検査法で、手早く簡単に行える痛みのない方法です。この記録は心電図と呼ばれ、以下に関する情報が得られます。 心臓の1回1回の拍動を引き起こしている、ペースメーカーとしての部分(洞房結節、洞結節) 心臓の神経伝導経路 心拍数や心拍リズム 心電図では、心臓が拡大していること(通常の原因は 高血圧)や、心臓に血液を供給する冠動脈の1つが閉塞しているために心臓に十分な酸素が行き届いていないことが示される... さらに読む 心電図検査 と心臓超音波検査(心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。 非侵襲的である 害がない 比較的安価である 広く利用できる さらに読む 心エコー検査とその他の超音波検査 )を行い、冠動脈瘤、心臓弁での逆流、心臓を取り囲む袋の炎症(心膜炎 心膜疾患の概要 心膜疾患とは、心膜という心臓を包んでいる柔軟な2層の袋状の膜が侵される病気です。 心膜は、心臓を本来の位置に保ち、心臓に過度に血液が流入するのを防ぎ、胸部の感染症による影響から心臓を守っています。しかし、心膜は生きていく上で不可欠なものではなく、たとえ心膜が除去されても、心機能への影響はほとんどみられません。... さらに読む 心膜疾患の概要 )、または心臓の筋肉の炎症(心筋炎 心筋炎 心筋炎とは、心臓の筋肉組織(心筋)に炎症が起きた状態であり、組織の壊死につながります。 心筋炎は、感染症、心臓に影響を与える毒素や薬剤、サルコイドーシスといった全身性疾患など、様々な病気によって引き起こされる可能性がありますが、原因が分からないこともよくあります。 症状は様々ですが、疲労、息切れ、腫れ(浮腫)、心拍の自覚(動悸)、突然死などがみられます。 診断は、心電図検査、心筋バイオマーカーの測定、心臓の画像検査、および心筋生検の結果... さらに読む )がないかを確認します。ときに、異常がすぐに現れないこともあるため、症状が現れてから2~3週間後、6~8週間後、そしてできれば6~12カ月後にもこれらの検査を繰り返します。 心電図検査または心エコー検査で異常が見つかれば、 負荷試験 負荷試験 心臓に(運動や心拍を速く強くする薬剤で)負荷をかけると、 冠動脈疾患を特定しやすくなります。冠動脈疾患では、心筋に血液を供給する冠動脈の血流が、部分的に、または完全に遮断されます。冠動脈の一部だけがふさがっている場合、安静時には心臓に十分な量の血液が供給されていても、心臓が激しく働いているときには供給が不足することがあります。したがって、運動中に心臓の検査を行うことで、冠動脈疾患の特定に役立ちます。... さらに読む 負荷試験 を行うことがあります。 心エコー検査で動脈瘤が見つかれば、 心臓カテーテル検査 心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査 心臓カテーテル検査と冠 動脈造影検査は、手術を行わずに心臓とそこに血液を供給する血管(冠動脈)を調べることができる低侵襲検査です。通常、これらの検査は、 非侵襲的な検査では十分な情報が得られない場合や、非侵襲的な検査では心臓や血管の問題が示唆されない場合、患者の症状から心臓や冠動脈の問題が強く疑われる場合に行われます。これらの検査の利点の1つとしては、検査中に 冠動脈疾患など様々な病気の治療も行えることがあります。... さらに読む 心臓カテーテル検査と冠動脈造影検査 を行うことがあります。

予後(経過の見通し)

治療により、病気が始まって8週間以内に冠動脈に異常がみられなければ、完全に回復します。冠動脈に異常がある小児の予後は、病気の重症度によって変わります。しかし米国では、早期に治療すれば川崎病で死亡する小児はほとんどいません。

治療しなかった場合の死亡率は約1%です。死亡する小児のうち、大半は最初の6カ月の間に亡くなりますが、なかには10年も経ってから死亡する例もあります。

動脈瘤の約3分の2は1年以内に消失します。大きな動脈瘤は残る可能性が高くなります。また、たとえ動脈瘤が消失しても、成人してから心臓に異常をきたすリスクが高くなります。

治療

  • 高用量の免疫グロブリンおよびアスピリン

川崎病の治療はできるだけ早く開始されます。症状が現れてから10日以内に治療を行えば冠動脈疾患のリスクは有意に低くなり、発熱、発疹、不快感の消失も早まります。治療では、1~4日間にわたり、高用量の免疫グロブリンを静脈内投与、高用量のアスピリンを経口投与します。4~5日間熱のない状態が続けば、すぐにアスピリンを減量しますが、発症から少なくとも8週間が経過するまでは投与します。冠動脈瘤がない症例では炎症が治まればアスピリンの投与を中止することがありますが、冠動脈に異常がみられる症例では、長期にわたってアスピリンを服用しなければなりません。

インフルエンザまたは水痘の小児にアスピリンを使用すると、 ライ症候群 ライ症候群 ライ症候群は非常にまれな病気ですが、脳の炎症や腫れと、肝機能の低下または喪失をもたらし、生命を脅かすことがあります。 ライ症候群の原因は不明ですが、ウイルス感染症やアスピリンの使用が引き金になると考えられています。 ウイルス感染症の症状に続いて激しい吐き気、嘔吐、錯乱、反応の鈍化がみられるのが典型的で、ときに昏睡に至ることもあります。 診断は、小児の精神状態の急な変化、血液検査および肝生検の結果に基づいて下されます。... さらに読む のリスクが高まるため、アスピリンを長期的に投与している小児では、推奨されている年1回の インフルエンザの予防接種 インフルエンザワクチン インフルエンザウイルスワクチンは インフルエンザの予防に役立ちます。米国では、A型とB型の2種類のインフルエンザウイルスが定期的にインフルエンザの季節的流行を引き起こしています。どちらの種類にも、多くのウイルス株が存在します。インフルエンザの大流行を引き起こすウイルス株は毎年変わります。このため、毎年新しいワクチンが必要になります。それぞれの年のワクチンは、研究者が翌年に流行すると予測した3~4種のウイルス株を標的とします。... さらに読む を受けるようにします。すべての小児は、適切な年齢で 水痘(水ぼうそう)ワクチン 水痘ワクチン 水痘ワクチンは、水痘帯状疱疹ウイルスが引き起こす非常に伝染しやすい感染症である、 水痘(水ぼうそう)の予防に役立ちます。水痘にかかると、皮膚に赤い発疹ができ、その後かゆみのある小さな水疱が生じます。場合によっては、脳、肺、心臓に感染し、重篤な病気や死亡の原因になることがあります。水痘が治った後もウイルスは体内に残ります。何年か後に再び活性化して、 帯状疱疹を引き起こすことがあります。... さらに読む の接種も受けるべきです。また、小児がインフルエンザウイルスまたは水痘ウイルスにさらされたり、インフルエンザまたは水痘にかかった場合は、ライ症候群のリスクを低下させるため、アスピリンの代わりに一時的にジピリダモールを使用することがあります。

大きな冠動脈瘤がある小児は、血栓を予防する薬(抗凝固薬)で治療することがあります。

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