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小児の脱水

執筆者:

Christopher P. Raab

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

レビュー/改訂 2021年 8月
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やさしくわかる病気事典

脱水は体からの水分の喪失であり、通常は嘔吐または下痢が原因です。

脱水 脱水 脱水は体内の水分が不足している状態です。 嘔吐、下痢、大量発汗、熱傷(やけど)、腎不全、利尿薬の使用により、脱水になる場合があります。 脱水が進むとのどの渇きを感じ、発汗や排尿も少なくなります。 脱水がひどくなると、錯乱やめまいを感じるようになります。 水を飲むか、場合によっては水分を静脈内投与して、失われた水分と血液中に溶けているナトリウムやカリウムなどの無機塩(電解質)を補給する治療が行われます。 さらに読む は、摂取する水分よりも失う水分が多い場合に起こります。 電解質 電解質の概要 人の体内の水分量は体重の2分の1をはるかに上回ります。体内の水分は様々な空間(体液コンパートメントと呼ばれています)に制限されて存在していると考えられています。主に次の3つのコンパートメントがあります。 細胞内の体液 細胞の周囲の体液 血液 体が正常に機能するには、これらの各領域で体液量が偏らないようにする必要があります。 さらに読む という物質も失われます。電解質は血流中と細胞内のミネラルで、生命に不可欠なものです。 ナトリウム 体内でのナトリウムの役割の概要 ナトリウムは体内の 電解質のうちの1つで、体内で比較的大量に必要とされる ミネラルです。電解質は血液などの体液に溶けると電荷を帯びます。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内のナトリウムは、ほとんどが血液中または細胞の周囲の体液中に存在しています。ナトリウムには体液のバランスを正常に保つ働きがあります( 体内の水分についてを参照)。ナトリウムはまた、神経と筋肉が正常に機能するのに重要な役割を果たしています。... さらに読む カリウム 体内でのカリウムの役割の概要 カリウムは体内に存在する電解質の1つであり、血液などの液体に溶け込むと電荷を帯びる ミネラルです。( 電解質の概要も参照のこと。) 体内のカリウムのほとんどは細胞内に存在しています。 カリウムは、細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要な物質です。 血液中のカリウム濃度は、狭い範囲内に維持する必要があります。血液中のカリウム濃度が高すぎたり( 高カリウム血症)、低すぎたり( 低カリウム血症)すると、不整脈や心停止などの重大な結果を招くこ... さらに読む 、塩化物、重炭酸塩などが電解質の例です。

原因

脱水は通常、以下が原因です。

脱水のあまり一般的でない原因は、以下のものです。

ただし、嘔吐、下痢、またはその両方があっても、必ずしも脱水が起こるわけではありません。

症状

脱水を起こした乳児に以下がみられる場合、すぐに治療が必要です。

  • 頭部の柔らかい部分がへこんでいる

  • 両目がくぼんでいる

  • 泣いているのに涙が出ない

  • 口の中が乾燥している

  • 尿の量が少ない

  • 覚醒レベルおよび活動性が低下している(嗜眠)

軽度の脱水では典型的に口の中や唇が乾燥し、のどの渇きが強くなり、小児の排尿回数が少なくなることもあります。

中等度の脱水では、相互に関わることや遊びの量が減り、口の中が乾燥し、排尿回数が少なくなります。中等度から高度の脱水では、心拍数の上昇およびふらつきがみられる可能性があります。

重度の脱水では、うとうとした状態(嗜眠)になり、これはすぐに医師の評価を受けるか、救急医療機関に搬送される必要がある徴候です。涙は出なくなります。皮膚が青みがかった色(チアノーゼ チアノーゼ チアノーゼは、血液中の酸素の不足が原因で、皮膚が青っぽく変色することです。 酸素が枯渇した血液(脱酸素化血液)は、赤色というより青みがかっており、これが皮膚を循環している場合にチアノーゼがみられます。肺または心臓の重い病気の多くは、血液中の酸素レベルを低下させるため、チアノーゼの原因となります。また、血管や心臓にある種の奇形があると、血液が空気中から酸素を取り込む場所である肺胞(肺にある小さな空気の袋)を通らず、直接心臓に流れるために、... さらに読む )になり、呼吸が速くなります。ときに、脱水によって、血液中の塩分濃度が異常に低くなったり高くなったりすることがあります。この塩分濃度の変化は、脱水の症状や嗜眠状態を悪化させる可能性があります。重症例では、 けいれん発作 小児のけいれん発作 けいれん発作とは、脳の電気的活動が周期的に乱れることで、一時的にいくらかの脳機能障害が起きる現象です。 年長の乳児や幼児にけいれん発作が起きた場合には、全身または体の一部がふるえるなどの典型的な症状が多くの場合みられますが、新生児の場合は、舌を鳴らす、口をもぐもぐさせる、周期的に体がだらんとなるなどの変化しかみられない場合があります。 この病気の診断には脳波検査が用いられ、さらに原因を特定するために血液検査、尿検査、脳の画像検査のほか、... さらに読む 昏睡 昏迷と昏睡 昏迷とは、反応がなく、激しい物理的な刺激によってのみ覚醒させることができる状態です。昏睡とは、反応がなく、覚醒させることができず、刺激を受けても眼は閉じたままになっている状態です。 昏迷や昏睡の原因は通常、脳の左右両側の広い領域または意識の維持に特化した領域に影響を及ぼす病気、薬、またはけがです。 身体診察、血液検査、脳の画像検査、家族や友人への問診は、原因を特定する上での助けになります。... さらに読む が生じたり、脳の損傷が起こり死亡することがあります。

診断

  • 医師による診察

  • ときに血液検査と尿検査

医師は、小児の診察時に、体重が減少したかどうかを確認します。たった数日の間に体重が減少した場合は、脱水によるものである可能性が非常に高くなります。どの程度体重が減少したかがもし分かれば、脱水の重症度(軽度、中等度、または重度)を判定する上で役立ちます。

中等度から重度の脱水の小児では通常、血液検査と尿検査を行い、体内の電解質濃度、脱水の程度、および必要な補液の量を把握します。

治療

  • 失われた水分の補給

脱水は、ナトリウムや塩化物などの電解質を含む水分を与えることで治療します。脱水が軽度であれば、一般に水分は口から与えます。特別な経口補水液も利用できますが、軽度の下痢または嘔吐のみがある小児では、必ずしも必要ではありません。どの年齢の小児でも、嘔吐による脱水には、まずは水分を少量ずつ頻回に与えることを約10分おきに繰り返すことで、その後の治療効果が高まります。小児が飲んだ水分を吐かないようになったら、与える水分の量を徐々に増やして、与える回数を減らします。下痢が唯一の症状であれば、1回に与える水分をより多めに、回数をより少なめにします。嘔吐と下痢の両方がみられる場合は、電解質を含む水分を少量ずつ頻回に与えます。この治療により下痢が増えた場合は、静脈からの水分補給(輸液)のために小児の入院が必要になることがあります。

乳児や小児が水分をまったく受けつけない場合、またはぐったりするなどの深刻な脱水の徴候が現れた場合は、静脈からの水分および電解質補給や、鼻から胃または小腸に挿入したチューブ(経鼻胃管)を通して電解質溶液を与えるなどの集中治療が必要になることがあります。

乳児

乳児の脱水は、電解質を含む液体を飲ませることで治療します。母乳は乳児が必要とする水分と電解質のすべてを含んでいるため、可能なときにはこれを与えるのが最善の治療です。母乳で育てていない乳児の場合は、経口補水液(ORS)を与えます。ORSには、一定量の糖分と電解質が含まれています。ORSには水に混ぜる粉末のものとあらかじめ混ぜられている液体のものとがあり、薬局またはスーパーマーケットで処方せんなしで購入することができます。小児に与えるORSの量は体重によりますが、一般に小児の体重1キログラムに対しておよそ100~165ミリリットルのORSを24時間で与えます。したがって、9キログラムの小児には24時間で900~1500ミリリットル与えることになります(10キログラムの小児は24時間で1000~1650ミリリットルを摂取する必要があります)。

年長児

1歳以上の小児には、透明な出汁やスープ、透明な炭酸飲料、ゼラチン、水で2倍に薄めたジュース、アイスキャンデーなどを1口ずつ与えます。真水、薄めていないジュース、スポーツドリンクは、どの年齢でも脱水の治療には理想的ではありません。これらは塩分の含有量が非常に低い上に、ジュースには多くの糖分のほか、消化管を刺激する成分が多く含まれているからです。ORSがこの代わりになります(特に中等度の脱水に対して)。12~24時間、小児が水分摂取に耐えられれば、通常の食事を再開します。

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