妊娠は、最終月経の開始日から平均して280日間(40週間)続きます。妊娠がわずかに超過した41~42週まで続いても、たいてい問題は生じません。しかしそれを過ぎると、しばしば胎盤が胎児に十分な栄養を届け続けることができなくなり、問題が生じることがあります。この状態を 過熟 過期産児 過期産児とは、在胎42週以上で生まれた新生児のことです。 妊娠満期の終わり近くにさしかかると、胎盤の機能が低下し胎児への栄養や酸素の供給が少なくなります。 低血糖は過期産児において特に問題です。 妊娠の終わり頃に十分な栄養を受けていないことから、過期産児の皮膚は乾燥し、剥がれ、たるんだ状態で、異常にやせているようにみえることもあります。 診断は新生児の外観と分娩予定日に基づいて下されます。 さらに読む と呼びます。
過期妊娠により以下の問題が生じるリスクが上昇します。
帝王切開 帝王切開 帝王切開では、母親の腹部と子宮を切開して胎児を外科手術により取り出します。 米国では分娩の最大30%が帝王切開で行われています。 以下のような場合には帝王切開が母体や胎児、あるいはその両方にとって経腟分娩よりも安全であると考えられるため、帝王切開を行います。 遷延分娩(分娩の進行が長引く) 胎児の 姿勢が異常な場合(骨盤位など) さらに読む や 吸引・鉗子分娩 吸引・鉗子分娩 吸引器または鉗子を使用して行う分娩を、吸引・鉗子分娩といいます。 吸引器は、ゴムのような素材でできた小さなカップが吸引器につながった構造になっています。このカップを腟に挿入し、胎児の頭皮に吸着させます。吸引分娩を試みてうまくいかない場合は、 帝王切開が行われます。まれに、吸引器によって胎児の頭皮に挫傷ができたり、胎児の両眼に出血を起こしたり(網膜出血)することがあります。吸引分娩はまた、... さらに読む (吸引器や鉗子を使用する分娩)の必要性
胎児の異常な発育(例えば、 胎児が異常に大きい 在胎不当過大児 同じ在胎期間で生まれた新生児の90%が占める体重分布よりも体重が重い(90パーセンタイル以上)新生児は、在胎期間に比べて大きい(在胎不当過大)とみなされます。 両親が大柄である、あるいは母親が糖尿病や肥満であることが原因で、新生児が正常より大きい場合があります。 母親の腹部を測定し、超音波検査を利用して胎児を測定して、胎児の体重の推定に役立てます。 糖尿病の母親から生まれた在胎不当過大の子どもは、成人になっても過体重になる可能性が高くな... さらに読む 、または 胎児が異常に小さい 在胎不当過小児 同じ在胎期間で生まれた新生児の90%が占める体重分布よりも体重が軽い(10パーセンタイル未満)新生児は、在胎期間に比べて小さい(在胎不当過小)とみなされます。 両親が小柄である、胎盤が正常に機能しなかった、母親に病気がある、母親が薬を飲んでいる、母親が妊娠中に喫煙した、飲酒したなどの場合に、新生児の体重が小さくなります。 感染症や遺伝性疾患がない限り、在胎不当過小の新生児のほとんどは、ほかには症状がみられず健康です。... さらに読む など)
胎児への血流に問題が生じ、胎児や新生児の酸素が欠乏する
分娩前の胎便(胎児の最初の便)の排出
新生児に新生児集中治療室でのケアが必要になる
胎児または新生児の死亡
腟口と肛門の間の部分(会陰部)の裂傷
分娩前や分娩中に胎児が胎便を飲み込んでしまうと、出生直後に呼吸困難になることがあります。この病気は 胎便吸引症候群 胎便吸引症候群 胎便吸引症候群とは、出生前または周産期に、肺に胎便(暗緑色の、無菌の便)を吸い込んだ新生児に呼吸困難(呼吸窮迫)がみられることをいいます。 胎児はものを食べることはありませんが、その腸内には胎便と呼ばれる無菌物質が含まれています。 胎児は出生前に羊水中に胎便を排泄することがあります。これは正常でもみられる現象ですが、酸素不足などのストレスに誘発されることもあります。 ストレスによって胎児は反射的にあえぐため、胎便を含む羊水を肺に吸い込ん... さらに読む と呼ばれています。
過熟の胎児の状態としては、皮膚が乾燥してはがれている、爪が長くなりすぎている、頭髪が多い、手掌と足底に深いしわがみられる、体脂肪が少ない、胎便によって皮膚が緑色や黄色に染まっているなどの場合があります。
過期妊娠を診断するために、医師は正確に 出産予定日 出産予定日 妊娠は卵子が精子と受精した瞬間から始まります。およそ9カ月間、妊娠した女性の体は受精卵が胎児へと成長していく過程を守り育む環境となります。新生児の誕生である出産とともに妊娠は終了します。 月経周期が規則的な女性では、月経が通常の予定日よりも1週間以上遅れていれば、妊娠の可能性があります。典型的な症状から妊娠に気づくこともあります。具体的に... さらに読む を決定しなければなりません。女性の月経周期が規則的であれば、医師は最終月経の時期に基づいて出産予定日を計算することができます。しかし、妊娠時期を推定する最も正確な方法は超音波検査で、とりわけ妊娠の初期の12週間に行われた超音波検査は正確です。
通常、妊娠41週から検査を開始して、胎動や胎児の心拍数、羊水(胎児の周囲を満たしている液体)の量を評価します。羊水は過期妊娠になると大幅に減少します。医師は 超音波検査 超音波検査 超音波検査は、周波数の高い音波(超音波)を用いて内臓などの組織の画像を描出する検査です。プローブと呼ばれる装置で電流を音波に変換し、この音波を体の組織に向けて発信すると、音波は体内の構造で跳ね返ってプローブに戻ります。これは再度、電気信号に変換されます。コンピュータが、この電気信号のパターンをさらに画像に変換してモニター上に表示するとともに、コンピュータ上のデジタル画像として記録します。X線は使用しないため、超音波検査で放射線にさらされ... さらに読む を行い、 分娩監視装置 胎児モニタリング 陣痛とは、胎児を子宮の下部(子宮頸部)から産道(腟)を経て徐々に外側に押し出すために発生する、規則的で次第に強まっていく一連の子宮の収縮のことです。 ( 陣痛と分娩の概要も参照のこと。) 分娩は大きく3つの段階に分けられます。 分娩第1期:陣痛が生じます(第1期には潜伏期と活動期があります)。子宮の収縮によって子宮口(子宮頸部)が徐々に開いて(開大)薄く引っ張られ(展退)、子宮の残りの部分と一体化します。このような変化によって、胎児が腟... さらに読む を使用して胎児の状態をモニタリングする場合もあります。
胎児に問題がみられたり、羊水が減少しすぎている場合は、陣痛を開始させます(陣痛誘発 陣痛誘発 陣痛の誘発とは、人工的に陣痛を開始させることです。 通常は子宮の収縮を強めて収縮回数を増加させる、オキシトシンを投与します。このオキシトシンは脳下垂体から分泌されるオキシトシンと同じものです。オキシトシンの用量を正確にコントロールできるように注入ポンプを使って、静脈内に投与します。 子宮の収縮を誘発する前に、胎児の娩出ができるよう子宮頸部が薄くなり(展退)、開き始める(開大)状態になっている必要があります。ときに、子宮頸部の展退と開大を... さらに読む )。明らかな問題がみられない場合でも、医師は41週になると陣痛誘発を検討します。一般的に、42週を過ぎると陣痛誘発が行われます。
帝王切開 帝王切開 帝王切開では、母親の腹部と子宮を切開して胎児を外科手術により取り出します。 米国では分娩の最大30%が帝王切開で行われています。 以下のような場合には帝王切開が母体や胎児、あるいはその両方にとって経腟分娩よりも安全であると考えられるため、帝王切開を行います。 遷延分娩(分娩の進行が長引く) 胎児の 姿勢が異常な場合(骨盤位など) さらに読む が必要になる場合もあります。