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閉経

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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閉経とは、月経が永久に停止し、妊よう性がなくなることです。

  • 閉経前後の数年間は、 エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が起こります。

  • 閉経後は骨密度が低下します。

  • 女性に1年間月経がなければ閉経と診断されますが、確認するため血液検査を行うこともあります。

  • ホルモン療法やその他の薬剤による対策により、症状を和らげることができます。

生殖可能年齢の間は、月経は通常ほぼ1カ月に1回起こり、月経の最初の日から約2週間後に卵巣から卵子が放出されます(排卵)。この周期が規則的であるためには、卵巣から十分なホルモン( エストロゲン プロゲステロン)が分泌される必要があります。

閉経は、加齢により卵巣からの エストロゲン プロゲステロンの分泌が停止することで起こります。閉経前の数年間は、 エストロゲン プロゲステロンの分泌が減少し始め、月経と排卵の頻度が変動します。最終的には月経と排卵が永久に停止し、以降は自然な妊娠はできなくなります。少なくとも1年間月経が起こらなかった後で初めて、最後の月経であったことが確定できます。(妊娠を望まない場合は最終月経の後も1年間は避妊を行うべきです。)

最後の月経の前の数年間およびその後の1年間は、閉経期と呼ばれます。最後の月経の何年前から閉経期に入るかには大きなばらつきがあります。閉経期には体内の エストロゲンおよび プロゲステロンの濃度が大きく変動します。この変動によって、多くの女性が40代に経験する更年期症状が起こると考えられています。

閉経移行期は、閉経期の中で最終月経が起こるまでの時期で、月経のパターンに変化がみられるのが特徴です。

最後の月経の後が、閉経後と呼ばれる時期です。

米国では、平均閉経年齢は約52歳です。しかし、正常でも45歳(40歳という若さの場合もある)という低年齢から、高齢では55歳で閉経することもあります。以下に該当する女性では、若い年齢で閉経が始まる可能性が比較的高くなります。

  • 喫煙習慣がある

  • 高地に住んでいる

  • 栄養不良である

40歳未満で起きた閉経は早発閉経とみなされます。早発閉経は、早発卵巣不全または原発性卵巣不全とも呼ばれます。

知っていますか?

  • 閉経の症状(更年期症状)は、月経が停止する数年前から始まります。

  • 米国での平均閉経年齢は約52歳ですが、40~55歳以上の間に迎える閉経は正常とみなされます。

症状

閉経期の症状

閉経期の症状は様々で、無症状の人や軽い症状の人もいれば、重い症状に悩まされたり、あるいはその中間の場合もあります。症状は6カ月から約10年間、ときにそれより長く続きます。

月経不順が閉経期の最初の症状になる場合もあります。典型的には月経が頻回になった後減少しますが、どんなパターンも起こりえます。月経周期が短くなったり長くなったり、軽くなったり重くなったりします。月経が数カ月途絶え、その後また規則的になることもあります。女性の中には閉経するまで周期が規則的な人もいます。

75~85%の女性がホットフラッシュを経験します。ホットフラッシュは通常、月経が停止する前に始まります。平均で7年半近く続きますが、10年を超えて続くこともあります。通常、時間とともにホットフラッシュは軽くなり、回数も少なくなっていきます。

ホットフラッシュの原因は不明ですが、体温調節を担っている脳の部分(視床下部)で自動的な体温調節機構がリセットされることが関係している可能性があります。そのため、ごくわずかな体温の上昇でも暑く感じることがあります。ホットフラッシュはホルモンの変動に関係している可能性があります。香辛料の効いた食品やアルコール飲料がホットフラッシュの誘因になるという科学的根拠はありません。

ホットフラッシュの際、皮膚表面に近い血管が拡張します。その結果血流が増えるため、特に頭頸部などで皮膚の赤みが増して温かくなります(紅潮)。本人は暖かい、または暑いと感じ、ひどく汗をかきます。ホットフラッシュは「flash(ぴかっと光る)」と綴られますが、顔が紅潮することから、「flush(紅くなる)」と綴られることもあります。

1回のホットフラッシュは30秒~5分程度続き、その後に悪寒を感じることもあります。寝汗は、夜間に起こるホットフラッシュの症状です。

閉経の前後にはその他の症状もみられます。この時期に起こるホルモン量の変化が、以下に寄与する可能性があります。

  • 乳房の圧痛

  • 気分のかわりやすさ

  • 月経の前後あるいは月経中に起こる片頭痛(月経時片頭痛)の悪化

抑うつ、易怒性(いらだち)、不安、神経過敏、睡眠障害(不眠など)、集中力低下、頭痛、疲労なども起こることがあります。多くの女性が閉経期にこういった症状を経験し、閉経が原因と考えています。しかし、閉経とこれらの症状との関連を支持する科学的根拠は様々です。これらの症状に、閉経とともに起きる エストロゲン濃度の低下との直接的な関連は認められません。他の多くの要因(加齢そのものや病気など)も症状の原因になることがあります。

寝汗は睡眠を妨げ、疲労、易怒性(いらだち)、集中力の低下、気分の変化を助長することがあります。この例では、症状が間接的に(寝汗を介して)閉経と関連しているかもしれません。しかし更年期では、ホットフラッシュがない女性にも睡眠障害がよくみられます。中年期のストレス(青年期の子どもについての悩み、加齢への不安、高齢の親の世話、夫婦関係の変化など)も睡眠障害に寄与している可能性があります。このように、閉経と疲労、易怒性(いらだち)、集中力の低下、気分の変化との関連は、それほど明確ではありません。

閉経後の症状

閉経期の様々な症状は不快なものですが、その多くは閉経以降には頻度も強さも低下していきます。しかし、 エストロゲン濃度の低下は骨粗しょう症のリスクを高めるなど、健康に良くない影響を与え続けます。このような変化は、予防策をとらないと悪化することもあります。以下のような影響が現れることがあります。

  • 生殖器:腟の粘膜が薄くなって乾燥し、弾力を失っていきます(これは腟萎縮と呼ばれる状態で、ときに萎縮性腟炎と呼ばれることもありますが、これは適切ではありません)。このような変化により性交時に痛みが生じることがあります。小陰唇、陰核、子宮、卵巣などの他の生殖器もサイズが小さくなります。加齢とともに性的欲求(性欲)の低下もよくみられます。ほとんどの女性では変わらずオルガスムを得ることができますが、オルガスムに達するのに時間がかかるようになる女性もいます。

  • 尿路:尿道の粘膜が薄くなり、尿道が短くなります。このような変化によって微生物が体内に入りやすくなり、尿路感染症を起こしやすくなる女性もいます。尿路感染症の女性は、排尿時に灼熱感を感じます。閉経後には、急に耐えがたい尿意を覚える(尿意切迫)ことがあり、これはときに尿失禁(意図せず排尿してしまうこと)につながります。尿失禁は加齢とともに多くなり、重度になります。しかし、閉経がどの程度失禁に関与しているかは不明です。出産、肥満、ホルモン療法の影響など、他の多くの要因も失禁に関与します。

  • 皮膚: エストロゲンの減少と加齢そのものが原因となり、皮膚を強くするタンパク質であるコラーゲンや、皮膚に弾力を与えるタンパク質であるエラスチンの量も減少します。このため皮膚が薄くなって乾燥し、弾力を失い、傷つきやすくなります。

  • 骨: エストロゲンの減少はしばしば骨密度の低下につながり、ときに骨粗しょう症になることがあります。これは、 エストロゲンに骨量を維持する働きがあるからです。骨の密度が低下して弱くなると、骨折を起こしやすくなります。閉経後の最初の5年間には、骨密度が急速に低下します。その後は男性に起こるのとほぼ同じ速度(年に約1~3%)で減少していきます。

  • 脂質値:女性の閉経後、低比重リポタンパク(LDLまたは悪玉)コレステロールの血中濃度が上昇します。高比重リポタンパク(HDLまたは善玉)コレステロールの血中濃度は閉経前とほぼ同じにとどまります。閉経後の女性に動脈硬化が多く、そのため冠動脈疾患が多いのも、このようなLDLの上昇が一因ではないかといわれています。しかし、このような変化が加齢によって起こるのか、あるいは閉経後の エストロゲン濃度の低下によって起こるのかは不明です。閉経までは エストロゲンの濃度が高く、冠動脈疾患から保護されていると考えられています。

閉経関連性器尿路症候群(genitourinary syndrome of menopause)は、閉経によって引き起こされる腟や尿路の症状(腟の乾燥、性交時の痛み、尿意切迫、尿路感染症など)をより正確に指し示す新しい用語です。

知っていますか?

  • 閉経関連性器尿路症候群(genitourinary syndrome of menopause)は、閉経によって引き起こされる腟や尿路の症状(腟の乾燥、性交時の痛み、尿意切迫、尿路感染症など)を指す新しい用語です。

診断

  • 医師による評価

  • まれにホルモンを測定する血液検査

約4分の3の女性では、閉経は明らかです。このため、臨床検査は通常必要になりません。

50歳になる数年前に閉経が起こった場合、あるいは症状がはっきりとしない場合は、検査を行い、月経周期を乱している病気がないか調べます。まれですが、閉経または閉経期を確認する必要がある場合、血液検査を行い、卵胞刺激ホルモン(卵巣を刺激して エストロゲンおよび プロゲステロンを分泌させるホルモン)を測定します。

何らかの治療を始める前に、医師は以下を行います。

  • 女性に病歴および家族歴について質問する

  • 乳房の診察や内診を含む身体診察および血圧の測定を行う

内診では、腟内の典型的な変化の有無を調べ、それが閉経の診断の裏付けになります。生殖器に異常がないかどうかも確認します。

女性の病歴と家族歴は、閉経後に特定の病気を発症するリスクを医師が判断するのに役立ちます。

最近受けていない場合は、通常の診療の一環としてマンモグラフィーも行います。血液検査が行われることもあります。

以下に該当する女性では、骨密度を測定します。

治療

  • 一般的な対策

  • 特定の薬剤

  • 補完代替医療

  • ホルモン療法

閉経期に何が起こるか理解しておくと、症状への対処に役立ちます。閉経を経験した女性や主治医と話し合うことも役に立つでしょう。

閉経の治療はホットフラッシュや腟乾燥などの症状を緩和することに焦点が置かれます。一般的な対策が役立ちますが、他の治療が必要な場合に最も効果的であるのは以下のものです。

  • ホルモン療法(エストロゲン、プロゲストーゲン、またはその両方)

プロゲストーゲンは、プロゲステロン(女性ホルモン)のうち、人工的に合成されたものと自然由来のもの両方を指します。別の用語であるプロゲスチンは、人工的に合成されたもののみを指します。

ホルモン療法以外の効果的な対策には、以下のものがあります。

  • ホットフラッシュの軽減に役立てるため、資格をもった医療従事者による催眠

  • 認知行動療法

  • 2種類の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬またはセロトニン- ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)または抗てんかん薬のガバペンチン

認知行動療法は、閉経移行期および閉経期において利用できるように応用されており、女性がホットフラッシュや寝汗に対処するのに役立つ可能性があります。

一般的な対策

以下の対策がホットフラッシュの軽減に役立つことがあります。

  • 暑いときは脱ぎ、寒いときは着られるような重ね着がホットフラッシュへの対処に役立ちます。

  • 衣類は綿素材の下着や寝間着のような通気性の高いものや、一部の下着や運動着のような水分を逃すものを使用すると、快適に過ごせます。

  • 暑い環境や明るい光を避けることも役立ちます。

  • 扇風機を使用したり、設定温度を下げたりするのもよいでしょう。

定期的な運動やリラクゼーション法は概して女性に有益ではありますが、ホットフラッシュは軽減しないと考えられています。

睡眠障害の対処には、就寝前および寝汗で目が覚めたときに、心を落ち着けるための決まった行動をとるようにします。適切な睡眠習慣を身につけることや、運動することも睡眠の改善に役立ちます。

膀胱のコントロールケーゲル体操で改善することがあります。ケーゲル体操では、尿を途中で止めるときのように骨盤部の筋肉を引き締めます。骨盤部の筋肉のコントロールの習得に役立てるため、バイオフィードバック法の利用について指導されることもあります。バイオフィードバック法は、無意識に進行する体内の生物学的プロセスを意識下に置くことを試みる方法です。測定機器を用いて対象のプロセスに関する情報を収集して、それを本人が意識できる形で提示します。

腟の乾燥による性交痛がある場合は、市販されている腟用の潤滑剤が役立つ場合があります。1日~3日毎に腟の保湿剤を塗布すると緩和の助けになることもあります。性的に活動的であり続けることや、自慰を行うことが、腟や周囲の組織の血流を刺激して組織の柔軟性を保つのに役立ちます。

薬剤

閉経に伴う症状を軽減するのに役立つ薬剤がいくつかあります。

抗てんかん薬のガバペンチンや、抗うつ薬(デスベンラファキシン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、ベンラファキシン)はホットフラッシュの軽減に一定の効果がありますが、ホルモン療法ほどの効果は得られません。抗うつ薬は、抑うつ、不安、易怒性(いらだち)にも効果があります。

不眠を軽減するために、ときに睡眠補助薬が勧められます。

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更年期症状と閉経の影響に対する治療に用いられる主な薬剤

薬剤

利点

欠点

女性ホルモン

*エストロゲン療法(プロゲストーゲンとの併用療法または単独療法)

ホットフラッシュ、寝汗、腟乾燥、性交時の痛みの緩和

骨粗しょう症の予防および骨折リスクの低下に役立つ

併用療法:

*エストロゲン単独療法:

  • 脚や肺の血栓、脳卒中、胆嚢の病気、尿失禁のリスク上昇

  • 子宮内膜がんのリスク上昇

  • 乳がんのリスクがわずかに上昇する可能性(おそらく何年も使用した後)

プロゲストーゲン(酢酸メドロキシプロゲステロンや微粒子化プロゲステロン[合成ではない天然プロゲステロン])

エストロゲン単独療法に伴う子宮内膜がんリスクが低下する

ホットフラッシュの緩和には、エストロゲンほど効果的ではない

腟乾燥は軽減しない

腹部膨満、乳房の圧痛、乳腺密度の上昇、気分障害、頭痛の原因になる可能性

LDL(悪玉)コレステロールの増加

脚や肺の血栓のリスク上昇の可能性

その他の病気のリスクへの影響は明らかではない

微粒子化プロゲステロン:合成プロゲスチンに比べて、気分とLDLコレステロールに対する負の影響が少ない可能性がある

眠気が生じることがある(そのため通常は夜間に使用する)

ほかのプロゲストーゲンに比べて副作用が少ないと考えられる

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)

オスペミフェン(ospemifene)

性交時の痛みの軽減

一時的にホットフラッシュが悪化する可能性がある

結合型エストロゲンとバゼドキシフェンの併用

結合型エストロゲンとバゼドキシフェン(SERM)の併用

ホットフラッシュの緩和、睡眠の改善、骨量減少の予防、腟萎縮(腟が弾力を失い、萎縮し乾燥する)の軽減

乳房の圧痛および出血の発生率が減少

乳腺密度の上昇や乳がん発生率の増加はないとみられる

プロゲストーゲンを必要とせずに子宮を保護できる

脚や肺の血栓のリスク上昇の可能性

抗うつ薬

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)(デスベンラファキシン、フルオキセチン、セルトラリン、低用量パロキセチン、徐放性パロキセチンなど)

セロトニン- ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(ベンラファキシンなど)

抑うつ、不安、易怒性(いらだち)、不眠などの軽減

ホットフラッシュの軽減に一定の効果

薬剤によっては、性機能障害、吐き気、下痢、体重減少(短期的)、体重増加(長期的)、眠気(鎮静状態)、口腔乾燥、錯乱、血圧上昇、血圧低下などの副作用がある

抗てんかん薬(1種類のみ)

ガバペンチン

ホットフラッシュの軽減に一定の効果があり、寝汗の緩和に役立つ可能性がある

眠気、めまい、頭痛、発疹、体重増加、脚のむくみなどの副作用がある

*ある病気のリスクがエストロゲンの単独療法により上昇するのか、エストロゲンとプロゲストーゲンの併用療法により上昇するのかを判断することは困難です。

HDL = 高比重リポタンパク(HDL);LDL = 低比重リポタンパク(LDL)

補完代替医療

ホットフラッシュ、易怒性(いらだち)、気分の変化、記憶障害への対処法として薬用ハーブやその他のサプリメント(栄養補助食品)を利用する人もいます。しかしながら、ブラックコホシュや他の薬用ハーブ(ドンクアイ[当帰]、イブニングプリムローズ[月見草]、薬用ニンジン[高麗ニンジン]、セントジョーンズワート[セイヨウオトギリソウ]など)、および市販薬はプラセボよりも効果が高いとはみられていません(プラセボは、約50%の割合で効果があります)。また、このような治療法は薬剤のように法的な規制を受けていません。そのため製造業者はその安全性や有効性を証明する必要がなく、製品に含まれる成分や、各成分の含有量も標準化されていません({blank} 薬用ハーブと機能性食品の概要 : 安全性と有効性)。

大豆タンパクに関する研究は結果が様々です。大豆エクオールという大豆製品がホットフラッシュを緩和するのに役立つ場合があります。

カヴァなど有害になりうる栄養補助食品もあります。さらに、サプリメントの種類によっては、他の薬剤と相互作用を起こし、病気を悪化させるおそれがあります。

標準的なホルモン療法に対する懸念から、ヤムイモや大豆などの植物に由来するホルモンの使用に関心が集まっています。それらのホルモンは体内で作られるホルモンと分子構造がほぼ同じで、バイオアイデンティカルホルモンと呼ばれています。標準的なホルモン療法で使用されるホルモンの多くは、いわゆる植物由来のバイオアイデンティカルホルモンです。ただし、標準的なホルモン療法で使用されるホルモンは試験を行って承認されたもので、使用は綿密にモニタリングされます。

ときに薬剤師が医療従事者の処方せんに従い、個々の患者に合わせてバイオアイデンティカルホルモンを調合することもあります。これは調合バイオアイデンティカルホルモンと呼ばれ、その製造には十分な規制が整備されていません。そのため、様々な用量、組合せ、剤形が可能で、製品の純度、濃度、力価にはばらつきがあります。調合バイオアイデンティカルホルモンは、しばしば標準的なホルモン療法の代替品として市販され、標準的なホルモン療法より優れた安全な治療法であることもあります。しかし、調合された製品の方が安全で、効果が高いという科学的根拠はなく、標準的なホルモン療法と同程度の効果があるかどうかすら分かっていません。ときに、調合バイオアイデンティカルホルモン製品は標準的なホルモンと同じリスクをもつという説明を受けていない女性もいます。

こういったサプリメントを服用しようと考えている人は、まず医師と話し合うことが勧められます。

閉経に対するホルモン療法

ホルモン療法によって、ホットフラッシュ、寝汗、および腟乾燥のような中等度から重度の更年期症状を軽減することができます。しかし、ホルモン療法によって発生リスクが高くなる重篤な病気もあります。

ホルモン療法は症状を緩和することで多くの女性の生活の質を改善しますが、症状がない女性の生活の質を改善することはありません。そのため、閉経後女性に決まってホルモン療法が行われるわけではありません。ホルモン療法を行うべきかどうかは、本人と医師がよく相談した上で一人ひとりの状態に応じて決定する必要があります。

多くの女性ではリスクの方が潜在的な便益を上回るため、ホルモン療法は勧められません。しかし、医学的状態や危険因子によっては、潜在的な便益の方がリスクを上回る女性もいます。

例えば、骨量減少または骨折のリスクが高く、かつ以下のいずれかに該当する女性にホルモン療法が推奨される場合があります。

  • 60歳未満である。

  • 閉経と診断されてからの経過期間が10年未満である。

  • 骨量減少および骨折の予防のための他の薬剤(ビスホスホネート系薬剤など)を使用できない。

こういった女性では、ホルモン療法により骨量減少および骨折のリスクが抑えられます。

通常、女性が以下に該当する場合には、ホルモン療法の開始は推奨されません。

  • 60歳以上である。

  • 閉経と診断されてから10~20年以上経過している。

このような女性では、冠動脈疾患脳卒中脚の血栓肺の血栓、および認知症のリスクがより高くなっています。

ホルモン療法を用いる場合、症状をコントロールできる最低の量で、最短の期間だけホルモン剤が処方されます。

ホルモン療法には以下が含まれることがあります。

  • エストロゲン

  • プロゲストーゲン(プロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンなど)

  • その両方

ホルモン療法で使用されるホルモンは、すべて研究室で作られています。体内で作られるホルモンと同一のものもあれば、異なるものもありますが、体内ではほぼ同じように作用します。プロゲストーゲンは、体内で作られる女性ホルモンである プロゲステロンに似ています。

エストロゲンとプロゲストーゲンにはいくつかのタイプがあります。エストラジオールと結合型エストロゲン(何種類かのエストロゲンを混合したもの)は、一般的に使用されるタイプの エストロゲンです。

エストロゲン単独での投与では子宮内膜がんのリスクが高くなるため、子宮のある女性ではエストロゲンとプロゲストーゲンを併用する治療(併用ホルモン療法)を行うのが通常です。プロゲストーゲンはこのがんの予防に役立ちます。子宮を摘出している女性では、 エストロゲン単独療法を行うことができます。

ホルモン療法の便益とリスクは、単独療法か併用療法かによって異なります。

エストロゲンの単独療法とプロゲストーゲンとの併用療法:潜在的な便益とリスク

エストロゲンにはいくつかの便益があります:

  • ホットフラッシュおよび他の症状: エストロゲンはホットフラッシュに最も効果がある治療法です。

  • 腟や尿路の組織の乾燥と萎縮: エストロゲンによって、これらの組織が乾燥し薄くなることを防げます。このため性交時の痛みも軽減できます。問題がこれらの組織の乾燥と萎縮だけである女性には、医師は腟に挿入するタイプのエストロゲンを勧めることがあります。そのような剤形としては、低用量の エストロゲンの錠剤、低用量の エストロゲンリング、低用量の エストロゲンクリームなどがあります。低用量のエストロゲンを使用する場合は、子宮を摘出していない女性がプロゲストーゲンを併用する必要はありません。

  • 尿意切迫感と繰り返す尿路感染症:腟に挿入するタイプの エストロゲン(クリーム、錠剤、またはリング)が問題の解消に役立ちます。

  • 骨粗しょう症 エストロゲンは、プロゲストーゲン併用の有無にかかわらず、骨粗しょう症を予防したり、進行を遅らせる効果があります。ただし、骨粗しょう症の予防だけを目的にホルモン療法を行うことは通常勧められていません。骨粗しょう症の予防のためには、大半の女性はビスホスホネート系薬剤または他の薬剤を服用できます(ただしこれらの薬剤には独自のリスクがあります)。ビスホスホネート系薬剤は、骨を再形成する際に体が分解する骨の量を減らすことによって骨量を増加させます。常に骨を分解、再形成し続けることで、体は骨にかかる負担の変化に対応しています。加齢に伴い、再形成されるよりも分解される骨の方が多くなっていきます。

プロゲストーゲンと併用せずにエストロゲンを使用すると、子宮のある女性では子宮内膜がんのリスクが上昇します。発がんのリスクはエストロゲンの用量が高いほど、また使用期間が長くなるほど高くなります。プロゲストーゲンとエストロゲンを併用すると、子宮内膜がんの発生リスクへの影響はほとんど消失し、ホルモン療法を受けていない女性よりもむしろリスクが低くなります。

エストロゲンを単独で、またはプロゲストーゲンと併用して使用すると以下のリスクが高くなります:

  • 乳がん: エストロゲンをプロゲストーゲンと併用し始めて3~5年後に乳がんのリスクがごくわずかに上昇し始めます。ただし、閉経期が始まった時点で エストロゲンを単独で使用し始めると、リスクは10年後まで、あるいは15年後でさえ上昇し始めない可能性があります。

  • 脳卒中

  • 脚および肺の血栓

  • 胆嚢の病気(胆石など)

  • 尿失禁 エストロゲンは尿失禁のリスクを高め、すでに失禁がある場合は悪化させます。

一部の病気では、リスクが エストロゲン単独の使用で上昇するのか、 エストロゲンとプロゲストーゲンとの併用療法で上昇するのかを見極めることが困難です。

ホルモン療法を受けることで上記すべての病気のリスクは高まりますが、閉経期あるいは閉経期直後に短期間ホルモン療法を受けた健康な女性では、それでもリスクは低くなっています。これらのほとんどの病気のリスクは加齢とともに上昇し、特に閉経から10年以上経てば、ホルモン療法を受けているかどうかにかかわらず上昇します。高齢女性では、 エストロゲンとプロゲストーゲンの使用により、冠動脈疾患のリスクも上昇する可能性があります。

低用量の エストロゲンの使用では、ホルモン療法のリスクは低いと考えられています。腟に挿入するタイプの エストロゲン エストロゲンクリーム、 エストロゲンを含有する腟錠やリングなど)は多くの場合、内服する錠剤よりも低用量です。

皮膚パッチ剤(経皮製剤)として投与するエストロゲンは、経口薬よりも血栓、脳卒中、および胆嚢の病気(胆石など)のリスクが低いとみられています。

一般に、乳がん、冠動脈疾患、または脚の血栓症のある女性、脳卒中の既往のある女性、またはこれらの病気の危険因子のある女性は、 エストロゲン療法を受けるべきではありません。

併用ホルモン療法は、以下のリスクを低下させます。

  • 骨粗しょう症

  • 大腸がん

プロゲストーゲン:便益とリスク

プロゲストーゲンにはいくつかの便益があります:

  • 子宮内膜がん:子宮のある女性では、プロゲストーゲンと エストロゲンの併用により子宮内膜がんのリスクがほぼ消失します。

  • ホットフラッシュ:高用量のプロゲストーゲンはホットフラッシュを軽減します。しかし、これらの薬剤はエストロゲンほど効果的ではありません。

プロゲストーゲンによって以下のリスクが高くなります:

  • LDL(悪玉)コレステロールの血中濃度の上昇:プロゲストーゲンにはこの作用がある場合があります。ただし、微粒子化プロゲステロン(合成ではない天然プロゲステロン)では、合成プロゲスチンと比べてLDLの血中濃度に対する負の影響が少ないようです。

  • 脚および肺の血栓

プロゲストーゲン単独療法が他の病気のリスクに及ぼす影響は不明です。

副作用

エストロゲンおよびプロゲストーゲンを特に高用量で服用すると、吐き気、乳房の圧痛、頭痛、体液貯留、気分の変動といった副作用が起こることがあります。

ホルモン療法の形態

エストロゲンおよび/またはプロゲストーゲンの投与には、いくつかの方法があります。

  • エストロゲンまたはプロゲストーゲンの錠剤を内服(経口薬)

  • エストロゲンのクリーム、腟に挿入する錠剤やリング(経腟剤)

  • エストロゲンローション、スプレー、ジェルなど、皮膚に外用するもの(外用剤)

  • エストロゲンまたはエストロゲン‐プロゲストーゲン混合の皮膚パッチ(経皮製剤)

経口錠の場合、 エストロゲンおよびプロゲストーゲンをそれぞれ1つずつの錠剤または1錠の配合錠として服用します。一般的には エストロゲンとプロゲストーゲンを毎日服用します。この用法では、治療開始から1年間またはそれ以上の期間にわたって不定期に性器出血が起こります。(ただし、出血が1年を超えて続く場合は、主治医の診察を受ける必要があります。)あるいは、 エストロゲンを毎日服用しながら、プロゲストーゲンを毎月12~14日間だけ併用します。この用法では多くの女性に、毎月プロゲストーゲンを服用した期間の後に性器出血が起こります。

エストロゲン経腟剤は腟に挿入して使用します。このタイプには以下のものがあります。

  • プラスチック製のアプリケーターを使用して挿入するクリーム

  • プラスチック製のアプリケーターを使用して挿入する腟錠

  • エストロゲンを含有するリング(ペッサリーと同様のもの)

製品の種類は多く、用量や含まれる エストロゲンの種類も様々です。クリームやリングは、含まれる エストロゲンが低用量である場合も高用量である場合もあります。経腟剤に高用量の エストロゲンが使用されている場合は、子宮内膜がんのリスクを抑えるために、プロゲストーゲンも投与します。通常、腟の症状には低用量のもので十分です。

腟の乾燥や萎縮などの症状には、 エストロゲンの経腟剤が経口 エストロゲンよりも効果的な場合があります。このような治療は、性交時の痛みの予防、尿意切迫の緩和、および膀胱の感染リスク低減に役立ちます。

エストロゲンローション、スプレー、ゲルは皮膚につけて使用します。

エストロゲンまたは エストロゲンとプロゲストーゲン混合のパッチ剤も、皮膚に貼って使用します。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)

SERM(ラロキシフェンやタモキシフェンなど)は、ある面では エストロゲンと同じ作用を示す一方、別の面では エストロゲンと逆の作用を示します。ラロキシフェンは骨粗しょう症の治療や乳がんの予防に使用される薬剤です。タモキシフェンは乳がんの治療に使用されます。オスペミフェン(ospemifene)は、腟乾燥を軽減するために使用されます。

SERMを使用する女性では、ホットフラッシュが一時的に悪化することがあります。

バゼドキシフェンは エストロゲンとの配合錠として投与されるSERMです。ホットフラッシュや腟萎縮の症状を軽減し、乳房の圧痛を和らげ、睡眠を改善し、骨量の減少を予防します。 エストロゲンと同様に、この薬剤は脚や肺の血栓のリスクを高めますが、子宮内膜がんのリスクを抑えるとともに、乳房への影響はエストロゲンより少ない可能性があります。

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、副腎で分泌されるステロイドで、性ホルモン( エストロゲンとアンドロゲン)に変換されます。腟に挿入する坐薬として使用できます。DHEAは腟の乾燥などの腟萎縮の症状を和らげるようです。腟萎縮による性交時の痛みを軽減するためにも使用されます。

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