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陣痛と分娩

執筆者:

Haywood L. Brown

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2017年 6月
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陣痛とは、胎児を子宮の下部(子宮頸部)から産道(腟)を経て徐々に外側に押し出すために発生する、規則的で次第に強まっていく一連の子宮の収縮のことです。

陣痛と分娩の概要も参照のこと。)

分娩は大きく3つの段階に分けられます。

  • 分娩第1期:陣痛が生じます(第1期には潜伏期と活動期があります)。子宮の収縮によって子宮口(子宮頸部)が徐々に開いて(開大)薄く引っ張られ(展退)、子宮の残りの部分と一体化します。このような変化によって、胎児が腟の方へ移動できるようになります。

  • 分娩第2期:胎児が娩出されます。

  • 分娩第3期:胎盤が娩出されます。

陣痛は通常、出産予定日の前後2週間以内に始まります。陣痛が始まるきっかけが何かはまだ分かっていません。妊娠の末期(36週以降)になると、医師はいつ陣痛が始まるかを予測するために子宮頸部を診察します。

分娩にかかる時間は初産婦で平均12~18時間、経産婦は初産婦より短く平均6~8時間です。

分娩の段階

分娩第1期

陣痛の開始から子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10センチメートル)までの期間。

潜伏期

  • 初めは不規則な子宮の収縮がだんだん強く規則的になる。

  • 不快感はほとんどない。

  • 子宮頸部が薄くなり約4センチメートルに開く。

  • この段階は、初産婦では平均8時間(最長20時間)、経産婦では5時間(最長12時間)続く。

分娩の段階

活動期

  • 子宮口(子宮頸部)が約4センチメートルから完全(約10センチメートル)に開く。子宮頸部は薄く引っ張られ(展退)、子宮の残りの部分と一体化する。

  • 胎児の体の先進部(通常は頭部)が妊婦の骨盤を通過し始める。

  • 胎児が下降するにつれ妊婦にいきみたいという感覚が生じるが、まだ我慢する。いきむのが早すぎると子宮頸部が裂傷し、体力を無駄にしてしまう可能性がある。

  • この段階は、初産婦では平均5~7時間、経産婦では2~4時間続く。

分娩の段階

分娩第2期

子宮口(子宮頸部)が完全に開いてから胎児の娩出まで:この段階は、初産婦では通常約2時間、経産婦では約1時間続く。硬膜外麻酔または鎮痛薬を投与された場合、さらに1時間以上続く場合もある。この段階で妊婦はいきむ。

分娩の段階

分娩第3期

胎児の娩出から胎盤の娩出まで:この段階は通常、数分間で終わるが、最長30分ほどかかることもある。

分娩の段階

陣痛の開始

妊娠したら、陣痛開始の主な徴候を頭に入れておきましょう。

  • 一定の間隔で起こる下腹部の収縮

  • 背部痛

過去の妊娠で分娩時間が短かった場合は、分娩が始まりそうなときはすぐに医師に知らせるようにします。下腹部に感じる収縮は、始めは弱く不規則で間隔が長いことがあります。月経痛のように感じることもあります。時間が経つにつれて下腹部の収縮が長く強くなり、間隔も短くなります。収縮と背部痛が生じる前、あるいは同時に、以下のことが起こる場合があります。

  • 産徴:粘液が混じった少量の血液が腟から排出されると、分娩開始が近いというしるしです。早い人では陣痛が始まる72時間前に産徴がみられることもあります。

  • 卵膜の破裂:陣痛が始まると(胎児と羊水を包む膜)が破れ、羊水が腟から流れ出ることがあります。これを「破水」といいます。ときに、陣痛が始まる前に破水が起こります。陣痛が始まる前に起こる破水は、前期破水と呼ばれます。前期破水の生じた妊婦は、腟から液体が噴出した後、液体が漏れ続けているのを感じます。

陣痛が始まる前に破水が起こったら、直ちに主治医か助産師に連絡します。予定日直前の破水では、約80~90%が24時間以内に自然に陣痛が始まります。予定日近くに破水して数時間経っても陣痛が始まらない場合はたいてい入院となり、感染症のリスクを減らすために陣痛を人工的に誘発します。破水後は細菌が腟から子宮に入りやすくなり、母体や胎児、あるいは双方が感染しやすくなります。

オキシトシン(子宮を収縮させる)や、同様の作用をもつプロスタグランジンなどの薬剤を使用して、陣痛を誘発します。しかし、予定日の6週間以上前(胎児が未熟なうち、または妊娠34週以前)に破水が起きた場合は、一般的に胎児が成熟するまで陣痛の誘発を控えます。

病院や出産センターへの入院

以下のいずれかが起こったら、病院か出産センターに行きます。

  • 破水

  • 強い陣痛の間隔が6分間より短くなり、30秒以上続く

破水が疑われたり、子宮口(子宮頸部)が4センチメートル以上開いている場合には、入院となります。陣痛が始まったかどうかが医師または助産師に不明な場合、通常1時間ほど妊婦を観察し、胎児をモニタリングします。その間に陣痛が確認されなければ、妊婦を自宅に帰すことがあります。

入院すると、陣痛の強さ、持続時間、頻度を記録します。また体重、血圧、心拍数、呼吸数、体温を測定し、尿検査と血液検査を行います。腹部を診察して、胎児の大きさ、胎児が後ろ向きか前向きか(胎向)、胎児は頭、顔、殿部、肩のどこが下になっているのか(胎位)を調べます。

胎向と胎位は、胎児がどのように産道(腟)を通過するかに影響します。最も一般的で安全な胎向と胎位の組合せは次のような状態です。

  • 頭が下になっている

  • 胎児が後ろ(胎児の顔が母体の背中側)を向いている

  • 顔や体が右もしくは左に傾いている

  • 首を前に曲げている

  • あごを引いている

  • 両腕が胸の前で組まれている

頭が下になった胎位を頭位といいます。分娩前の1~2週間になるとほとんどの胎児は向きを変え、後頭部から生まれてくるような胎位になります。胎向または胎位の異常(殿部が下になっている場合[骨盤位]や肩が下になっている場合、あるいは胎児が前向きになっている場合など)があると、母子や医師にとってはるかに困難な分娩となります。このような場合は帝王切開が勧められます。

正常な胎向と胎位

妊娠の末期に胎児は分娩に備えて体の向きを変えます。正常な状態では、胎向は後ろ向き(母体の背中を向いた状態)で、顔と体が左右どちらかにやや傾き、首を前に曲げ、胎位は頭位(頭を下にした状態)になります。

正常な胎向と胎位

内診を行って、破水の有無や、子宮口(子宮頸部)の開大(センチメートルで記録)と展退(百分率またはセンチメートルで記録)の程度を調べますが、出血があったり自然に破水した際には内診を行わないこともあります。羊水の色も確認します。羊水は通常、透明で強い匂いはありません。破水して流れ出た羊水が緑色に変色している場合は、胎便(胎児の最初の便)が混じっていることを示しています。

病院での分娩時には通常、母親の腕に点滴用のチューブ(静脈ライン)を留置します。これは脱水を起こさないように水分を補給したり、必要が生じたら薬を投与するためのものです。

静脈から水分が補給される場合、分娩中に飲食の必要はありませんが、分娩の初期には水分を摂取したり軽食をとっても構いません。胃を空にしておくと、分娩中に嘔吐することがなくなります。かなりまれですが、吐いたものが気管に入ることがあります(通常は全身麻酔後に起こる)。吐いたものを吸い込むと肺に炎症が生じることがあるため、生命を脅かすおそれがあります。一般的に帝王切開の場合は、吐いたものを吸い込んでしまった場合に肺に損傷が起きるリスクを減らすため、制酸薬を投与します。

胎児モニタリング

入院したらすぐに、医師もしくは医療従事者は手持ち式のドプラ超音波装置で胎児の心音を定期的に確認します。あるいは、分娩監視装置を使用して胎児の心拍を継続的にモニタリングする場合もあります。

分娩の第1期には、超音波装置を用いて定期的に、あるいは分娩監視装置を用いて継続的に、胎児の心拍数をモニタリングします。胎児心拍数のモニタリングは、胎児が十分な酸素を受け取っているかどうかを最も容易に確認できる方法です。心拍数の異常(速すぎるまたは遅すぎる)および心拍数の変化(時間による変化または陣痛に反応した変化)は胎児ジストレスを示唆している可能性があります。産婦の心拍数も定期的にモニタリングします。

分娩の第2期には、各陣痛の後に必ず胎児の心拍数をモニタリングします。分娩監視装置を使用している場合は、胎児の心拍数が継続的にモニタリングされます。妊婦の心拍数と血圧は定期的にモニタリングされます。

胎児のモニタリング

医療従事者が胎児の心拍数をモニタリングし、心拍数が正常であるかどうか、胎児ジストレスになっていないどうかを確認します。これを電子的胎児モニタリングといいます。陣痛時に胎児の心拍数にみられる特定の異常な変化は、胎児が十分な量の酸素を受け取っていないことを示している可能性があります。

胎児の心拍数のモニタリングには以下の方法があります。

  • 外測法:超音波装置(超音波を発したり受信したりする装置)を妊婦の腹部に取り付けます。

  • 内測法:腟から電極(ワイヤーのついた小さな円形のセンサー)を挿入して胎児の頭皮に取り付けます。内測法は、通常は分娩中に問題が起こりそうな場合や、外測法でうまく測定できない場合に行われます。この方法は、胎児を包む膜が破れた後(「破水」といいます)にのみ用いられます。

分娩監視装置は子宮の収縮を継続的にモニタリングする装置です。ハイリスク妊娠の場合には事実上全例に用いられますが、多くの病院ではすべての分娩に使用されています。

ハイリスク妊娠の場合はノンストレステストの中で分娩監視装置を用いることがあります。ノンストレステストでは、胎動があるときと胎動がないときの胎児の心拍数をモニタリングします。20分以内に2回、胎動に伴って心拍数が期待されるように上がらないと、胎児の心拍は不応性(nonreactive)と表現されます。その場合は、超音波検査によるバイオフィジカルプロファイルの評価を行って、胎児の状態(well-being)を調べることがあります。

超音波検査によるバイオフィジカルプロファイルの評価では、超音波を使って胎児の画像をリアルタイムに得て、胎児を観察します。30分間観察して、以下についてそれぞれ0もしくは2を加算していきます。

  • ノンストレステストの結果(反応性[reactive]または不応性[nonreactive])

  • 羊水量

  • 規則的な呼吸様運動がみられる期間があるかどうか

  • はっきりとした胎動(3回以上)の有無

  • 指、四肢、あるいは体幹を伸ばしたり曲げたりする動きで示される胎児の筋緊張

最高スコアは10点です。

医師は結果に基づいて、分娩を継続するか直ちに帝王切開に切り替えるかを判断します。

痛みの緩和

妊娠中から医師や助産師の助言を参考にして、分娩時の痛みを和らげる方法について、陣痛が始まるかなり前から検討しておきます。以下のうち1つを選ぶことができます。

  • 自然分娩(リラクゼーション法や呼吸法によって痛みに対処する)

  • 鎮痛薬(静脈内投与)

  • 必要があれば、特定の麻酔薬(局所麻酔や区域麻酔)

陣痛が始まってから、分娩の経過、痛みの程度、医師や助産師の勧めによって計画を変更することもあります。

分娩中にどの程度の痛みの緩和が必要であるかは人によってかなり異なり、妊婦の不安の強さによってもある程度変わってきます。マタニティークラスに参加すると陣痛および分娩に向けた心構えをする上で役立ちます。こういった準備や分娩に立ち会う人からの精神的な支えがあると分娩への不安が和らぎます。

鎮痛薬を用いることがあります。陣痛が始まってから鎮痛薬の使用を求めた場合も、通常は応じてもらえます。しかし、鎮痛薬の中には新生児の呼吸やその他の機能を抑制するものもあるため、投与量はできる限り少なくします。痛みの緩和に最もよく使用されるのはフェンタニルまたはモルヒネで、静脈内投与します。これらの薬剤は分娩第1期の潜伏期の進行を遅らせるため、通常は第1期の活動期に入ってから使用します。また、これらの薬剤の効果が最大になるのは投与後の30分間であるため、娩出の間際には通常投与しません。娩出の間際に投与すると新生児への鎮静作用が強すぎて、子宮から外に出たときの適応が困難になることがあります。このような薬剤の鎮静作用を中和するため、出生直後の新生児にナロキソンを投与することがあります。

局所麻酔は腟と腟口の周辺組織の感覚をなくします。生殖器下部の感覚を支配する神経(陰部神経)の周辺に腟壁から局所麻酔薬を注入して、腟と腟口周囲の感覚をなくします。陰部神経ブロックと呼ばれるこの処置が用いられるのは、胎児の頭が腟から現れようとしている分娩第2期の後期だけです。多くの場合、この麻酔の代わりに硬膜外麻酔が用いられるようになっています。効果は劣るものの、より一般的に行われる処置として、腟口に局所麻酔薬を注射する方法もあります。いずれの麻酔法でも産婦の意識は保たれるため、いきむことができ、胎児の機能は影響を受けません。これらの方法は合併症がない分娩に適した麻酔法です。

区域麻酔では、より広い範囲の感覚をなくします。この方法は分娩時の痛みを確実に抑えたい妊婦に使用され、以下のような処置があります。

  • 腰部硬膜外麻酔が、鎮痛が必要な場合にはほぼ常に用いられます。麻酔薬を腰部の脊椎と脊髄を覆う組織の外層との間(硬膜外腔)に注入します。あるいは、硬膜外腔にカテーテルを留置し、カテーテルから局所麻酔薬(ブピバカインなど)をゆっくりと持続的に投与する方法もあります。オピオイド(フェンタニル、スフェンタニルなど)もしばしば投与されます。硬膜外麻酔は陣痛および分娩中に用いても、妊婦のいきみを妨げることはなく、帝王切開が必要になる可能性が高くなることもありません。硬膜外麻酔は帝王切開でも用いられることがあります。

  • 脊椎麻酔は、脊髄を覆う組織の中層と内層の間(くも膜下腔)に麻酔薬を注入します。脊椎麻酔は合併症がなければ、一般的に帝王切開に用いられます。

硬膜外麻酔、脊椎麻酔のどちらを用いても血圧低下が生じることがあります。したがって、どちらの麻酔を用いる場合にも妊婦の血圧測定を頻繁に行います。

全身麻酔では一時的に妊婦の意識がなくなります。全身麻酔が必要になることはまれで、胎児の心臓、肺、脳の機能を抑制するおそれがあるため、めったに用いられません。通常、麻酔薬のこの作用は一時的ですが、胎児が子宮から外に出てからの適応を妨げるおそれがあります。全身麻酔は一般的に緊急帝王切開で用いられますが、これは最も迅速に麻酔効果が得られるためです。

自然分娩

自然分娩ではリラクゼーション法と呼吸法によって分娩中の痛みをコントロールします。

自然分娩に備えるため、妊婦はパートナーとともにマタニティークラス(数週間にわたり6~8回講習を受けるコースが一般的です)に参加してリラクゼーション法と呼吸法を学びます。マタニティークラスでは陣痛および分娩中の各段階でどのようなことが起こるかも学びます。

リラクゼーション法では、意識的に体の一部を緊張させてから力を抜きます。この方法を習得すると、陣痛(子宮の収縮)が起きている間は子宮以外の体の力を抜き、陣痛と陣痛の間には体全体の力を抜くことができるようになります。

呼吸法では、分娩の経過に合わせて呼吸の方法を変えていきます。いきみ始める前の分娩第1期では、次のように呼吸をするとよいでしょう。

  • 陣痛の初めと終わりに深い呼吸をしてゆっくり息を吐き出すと、体の力を抜きやすくなります。

  • 陣痛がピークに達したら、胸の上部で速く浅く呼吸します(浅速呼吸)。

  • 子宮口(子宮頸部)が完全に開き(全開大)、引っ張られる(展退)前にいきみたくなったら、浅速呼吸と大きく息を吐き出す呼吸を組み合わせて、いきみたい感覚をやり過ごします。

妊娠中はパートナーと一緒に定期的にリラクゼーション法と呼吸法を練習するようにします。分娩中、パートナーは精神的なサポートだけでなく、分娩の経過に合わせてすべきことを思い出させたり、体に力が入っているときは教えてあげることによって、妊婦を助けることができます。妊婦がリラックスできるように体をマッサージするとよいでしょう。

自然分娩法の中で最も広く知られているのはラマーズ法でしょう。このほかにルボワイエ法もあります。ルボワイエ法では暗くした部屋で出産し、娩出後すぐに新生児をぬるま湯に入れます。

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