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多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

執筆者:

JoAnn V. Pinkerton

, MD, University of Virginia Health System

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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多嚢胞性卵巣症候群は軽度の肥満、月経不順または月経がないこと、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高いことにより引き起こされる症状を特徴とします。月経周期が乱れ、男性ホルモン(アンドロゲン)の濃度が高くなる傾向がみられます。

  • 典型的には、患者は肥満で、にきびができたり、声が低くなる、乳房が小さくなる、体毛が過度に増えるといった男性的な特徴がみられます。

  • 多くの場合、症状に基づいて診断を行いますが、血液検査でホルモンを測定したり、超音波検査を実施することもあります。

  • 運動と減量を行うとともに、 エストロゲンとプロゲスチンまたはプロゲステロンを併用投与するか、プロゲスチンを単独投与することで、症状(過剰な体毛を含む)を軽減し、ホルモンの血中濃度を正常化します。

  • 妊娠を希望する女性では、減量とクロミフェンの投与(ときにメトホルミンとの併用投与)により、排卵を促すことができます。

多嚢胞性卵巣症候群は、女性の約5~10%にみられます。米国では、最も一般的な不妊症の原因となっています。

この症候群は、液体で満たされた袋状の病変(嚢胞)が卵巣に多数生じ、卵巣が腫れて大きくなることにちなんで名づけられました。

知っていますか?

  • 米国では、多嚢胞性卵巣症候群は最も一般的な不妊症の原因となっています。

多嚢胞性卵巣症候群の女性の多くでは、 インスリンの作用に対する細胞の反応性が低下した状態( インスリン抵抗性または前糖尿病[Prediabetes]と呼ばれます)がみられます。 インスリンは、細胞が糖(グルコース)を取り込み、エネルギーとして利用するのを助けます。細胞がインスリンの作用に抵抗性を示すと、血液中に糖が蓄積するため、それを減らすために膵臓からの インスリンの分泌量が増加します。 インスリン抵抗性が中等度または重度になると、糖尿病と診断されます。

原因

多嚢胞性卵巣症候群の原因は分かっていません。男性ホルモンの分泌をコントロールする酵素がうまく働いていないことを示唆する科学的根拠があります。その結果、男性ホルモン(アンドロゲン)の分泌量が増加します。

男性ホルモンの血中濃度が高いと、メタボリックシンドローム(高血圧、血中コレステロール濃度の上昇、 インスリン作用への抵抗性がみられる状態)のリスクが高まります。男性ホルモンの血中濃度が高い状態が持続すると、糖尿病、心臓と血管の病気、高血圧のリスクが高まります。また、男性ホルモンの一部が エストロゲンに転換され、 エストロゲンの濃度が高まります。 エストロゲンの濃度が高まっても、それとバランスを取れるだけの プロゲステロンは分泌されません。この状態が長く続くと子宮内膜が異常に厚くなることがあります(子宮内膜増殖症)。また、子宮内膜がんのリスクも高くなります。

症状

多嚢胞性卵巣症候群の症状は典型的には思春期に現れ、時間とともに悪化していきます。症状は人によって異なります。

一般的に、思春期に月経が始まらず、卵巣からの卵子の放出がない(排卵がない)か、排卵が不規則に起こります。不規則な性器出血があるか、月経がありません。

また、男性ホルモンの血中濃度が高くなることに関係した症状も女性に現れ、それらは男性化といいます。症状には、にきびができる、声が低くなる、乳房が小さくなる、筋肉の量が増える、体毛が濃くなる(男性型多毛症)などがあります。体毛は、胸や顔など男性と同じ部位で濃くなり、こめかみの髪が薄くなる場合もあります。

ほとんどの多嚢胞性卵巣症候群の女性は軽度の肥満ですが、やせている女性もいます。これは、 インスリンの過剰が体重増加の一因になり、減量が難しくなるためです。また、 インスリンの過剰によって、うなじの皮膚や、わきの下など皮膚がこすれ合う部分が黒ずみ、厚みが増すこともあります(黒色表皮腫と呼ばれる病気)。

診断

  • 医師による評価

  • ホルモンの測定

  • 超音波検査

多くの場合、多嚢胞性卵巣症候群の診断は症状に基づいて下されます。

妊娠検査が決まって行われます。卵胞刺激ホルモンや男性ホルモンなどのホルモンを測定する血液検査も行います。

超音波検査で卵巣に多数の嚢胞があるかどうかや、卵巣や副腎の腫瘍の有無を調べます。これらの腫瘍は男性ホルモンを過剰に分泌することがあるため、多嚢胞性卵巣症候群と同じような症状が起こります。

多嚢胞性卵巣症候群の女性では、血圧および血糖値と通常はコレステロールなどの脂肪(脂質)を測定し、メタボリックシンドローム(冠動脈疾患のリスクを上昇させる)がないか調べます。

また、クッシング症候群(同様の症状を起こす可能性がある)がないか確認する血液検査を行うこともあります。

がんがないことを確認するため、多くは子宮内膜生検を行います(特に女性に異常な性器出血がみられる場合)。

治療

  • 運動、食事の変更、および減量

  • メトホルミン、経口避妊薬、スピロノラクトンなどの薬剤

  • 過剰な体毛およびにきびの治療

以下に基づいて、多嚢胞性卵巣症候群の治療法を選択します。

  • 症状の種類と程度

  • 女性の年齢

  • 妊娠の予定

一般的な対策

インスリンの血中濃度が高い場合は、その値を下げる治療が役立つことがあります。運動(1日30分以上)を行い、炭水化物(米、パン、パスタ、イモ類、菓子など)の摂取量を減らすことは、 インスリンの血中濃度の低下につながります。減量によって インスリンの血中濃度が十分低下し、排卵が始まる人もいます。また減量により体毛の成長を抑制したり、子宮内膜が厚くなるリスクが低下します。

薬剤

2型糖尿病の治療に用いられるメトホルミンは、 インスリンに対する感受性を高めることで、体が大量の インスリンを分泌しなくてもよくなります。この薬剤は減量に効果があり、排卵や月経が再開することがあります。そのため、妊娠を望まない女性がメトホルミンを服用する場合は、避妊を行うべきです。

妊娠を希望している場合には、減量が役立ちます。減量で効果が得られない場合には、クロミフェン(排卵誘発薬)による治療を試みます。この薬剤は排卵を促す作用があります。クロミフェンに効果がなく、 インスリン抵抗性がみられる場合は、 インスリンの血中濃度を下げることで排卵を誘発できる場合があるため、メトホルミンが役立つことがあります。これらの薬剤で効果が得られない場合は、他の排卵誘発薬が試されます。例えば、卵胞刺激ホルモン製剤(卵巣を刺激する)、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト(卵胞刺激ホルモンの放出を促す)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン製剤(排卵を誘発する)などがあります。

妊娠を希望していない場合は、プロゲスチンのみを含有する経口避妊薬か、 エストロゲンとプロゲスチンを含有する経口避妊薬(混合型経口避妊薬)を使用する方法があります。いずれの治療法も、 エストロゲンの血中濃度が高いことによる子宮内膜がんのリスクを減少させ、月経を規則的にし、男性ホルモンの血中濃度を低下させる可能性があります。ただし、エストロゲンは脳卒中および脚や肺の血栓のリスクを上昇させます。そのため、エストロゲンを含有する経口避妊薬は、閉経した女性や、心臓もしくは血管の病気の重要な危険因子または血栓の重要な危険因子をもつ女性には投与されません。プロゲスチンを放出する子宮内避妊器具(IUD)を使用すると子宮内膜がんのリスクが低下しますが、月経がより規則的になることはありません。

過剰な体毛

過剰な体毛が気になる場合は、脱色するか、電気分解法、毛抜き、脱毛用ワックス、各種の脱毛剤(液体やクリーム状のもの)、レーザーなどで脱毛します( 多毛 : 治療)。男性型多毛症を治療できる薬剤に理想的なものや、完全な効果が得られるものはありませんが、以下のものが役立ちます。

  • エフロルニチン(eflornithine)クリームは顔の不要な毛を除去するのに役立つ場合があります。

  • 経口避妊薬が役立つ場合もありますが、効果が現れるまで数カ月間服用する必要がある上、ほとんどの場合わずかな効果しか得られません。

  • スピロノラクトンは男性ホルモンの分泌と作用を阻害する薬剤で、不要な体毛が減少することもあります。副作用には尿量の増加や低血圧(ときに失神を引き起こす)などがあります。また、スピロノラクトンは胎児の発達に対して安全ではない可能性があるため、性的に活動的な女性がこの薬剤を使用する場合は、有効な避妊法を用いるよう助言されます。

  • シプロテロンは男性ホルモンの作用を抑える強力なプロゲスチンであり、50~75%の女性で不要な体毛を減らす効果を示します。この薬剤は多くの国で使用されていますが、米国では承認されていません(訳注:日本では2000年5月に販売を中止)。

現在、不要な体毛の治療薬として、ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニストとゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストの研究が行われています。どちらの薬剤も卵巣による性ホルモンの分泌を抑制します。しかし、どちらも骨量を減少低下させ、骨粗しょう症の原因になる可能性があります。

にきび

にきびは、過酸化ベンゾイル、トレチノインクリーム、皮膚に塗布する抗菌薬、内服する抗菌薬などの薬剤により通常通りに治療します。

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