避妊は、妊娠の回数や時期をコントロールする方法(家族計画)の1つです。ほかの方法には、不妊手術(永久的に妊娠を避けるために行う)や、中絶(避妊に失敗した場合や避妊を行わなかった場合の意図しない妊娠を終了させるために行う)などがあります。
避妊にはいくつかの方法があります。100パーセント有効な方法はありませんが、他の方法と比べて非常に信頼性が高い方法はあります。有効性は、使用方法にどれほど忠実に従うかにしばしば左右されます。方法によっては、使用法に従うことが他の方法より簡単なものがあります。このため、典型的な使用(大多数の人の使用の仕方)と正確な使用(使用法に確実に従った場合)での有効性の差は、それぞれの避妊法で大きく異なります。例えば、経口避妊薬は正確に使用すれば非常に効果的ですが、服用を忘れる女性が数多くいます。したがって、平均的な使用例での経口避妊薬の有効性は、正確に使用された場合と比べてはるかに低くなります。対照的に、避妊用インプラントは、一度挿入されれば交換が必要になるまで、それ以上何もする必要はありません(そのため正確に使用されます)。したがって、インプラントの交換が必要になるまで、典型的な使用例と正確な使用例では有効性に差はありません。ただ、1つの方法に慣れるにつれて、その使用方法に忠実に従うようになる傾向がみられるため、結果として多くの場合、正確な使用例と典型的な使用例との有効性の差は時間とともに少なくなります。
避妊法の有効性
方法 |
正確な使用を開始して最初の1年間に妊娠する女性の割合* |
典型的な使用を開始して最初の1年間に妊娠する女性の割合* |
ホルモン剤による方法(エストロゲンおよび/またはプロゲスチン) |
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避妊用インプラント(皮下に挿入) |
0.05% |
正確な使用の場合と同じ |
0.3% |
9% |
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0.2% |
6% |
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レボノルゲストレル放出子宮内避妊器具(IUD) |
タイプにより、0.2~0.5% |
正確な使用の場合と同じ |
0.3% |
9% |
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0.3% |
9% |
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バリア法による避妊 |
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— |
8%(子どもを産んだことがある女性ではより高い) |
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男性用コンドームで2% 女性用コンドームで5% |
男性用コンドームで18% 女性用コンドームで21% |
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避妊用スポンジ(殺精子剤を持続的に放出する) |
9%(子どもを産んだことがない女性の場合) 20%(子どもを産んだことがある女性の場合) |
12%(子どもを産んだことがない女性の場合) 24%(子どもを産んだことがある女性の場合) |
ペッサリーと殺精子剤の併用 |
6% |
12% |
その他の方法 |
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0.6% |
正確な使用の場合と同じ |
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その種類に応じて4%以上 |
24% |
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抜去法(性交中絶法、腟外射精) |
4% |
22% |
*避妊をせず頻繁に性交を行った場合に1年間で妊娠する女性の割合は約85%です。 |
有効性の程度の違いに加えて、どの避妊法にも利点と欠点があります。例えば、ホルモン剤による方法には特定の副作用があり、卵巣がんや子宮体がんを含む一部の病気の発生リスクを上昇させたり、低下させたりします。避妊方法は、個人のライフスタイルや好み、必要とする信頼性の程度によって選択します。
避妊に失敗した場合、望まない妊娠を防ぐために緊急避妊が役立つことがあります。緊急避妊は、通常の避妊法として用いるべきではありません。
避妊法の比較
方法 |
簡便性 |
副作用 |
ほかに考慮すべき点 |
ホルモン剤による方法 |
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避妊用インプラント(皮下に挿入) |
インプラントによる避妊では、3年に1回の頻度で処置を受ければよい。 プロゲスチンを含有する小さな棒状のインプラントを医師が対象者の腕の内側の皮膚の下に挿入する。 |
月経不順または無月経(最初の年) 頭痛と体重増加 |
使用に関する制限事項は、全般的にエストロゲンを使用する避妊法よりも少ない。 インプラントの抜去には切開が必要である。 |
3カ月に1回の頻度で医師が注射する。 |
不正出血(月経の回数が多いまたは少ない、時間経過とともに頻度は減少) 2年後、しばしば注射使用中の無月経 体重増加、頭痛、一時的な骨密度の低下 |
この方法により、子宮体がん(子宮内膜がん)、骨盤内炎症性疾患、鉄欠乏性貧血のリスクが低下する。 |
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レボノルゲストレル放出子宮内避妊器具(IUD) |
レボノルゲストレル放出IUDは、種類に応じて3年または5年に1回の頻度で処置を受ければよい。 挿入および抜去は医師が行う。 |
不正出血または無月経 まれに子宮穿孔 |
IUDが脱落することがある。 |
通常は毎日服用する必要がある。 混合型経口避妊薬(エストロゲンとプロゲスチン)の場合は、3週間にわたり毎日服用した後、1週間にわたり活性のない錠剤を毎日服用する。 プロゲスチン単独の経口避妊薬の場合は、毎日同じ時間に服用する。 次の新しい処方を受けるため定期的に受診する必要がある。 |
混合型経口避妊薬:破綻出血(通常は使用して最初の数カ月間のみ) 吐き気、腹部膨満、体液貯留、血圧の上昇、乳房の圧痛、頭痛、体重増加 血栓リスクの上昇 プロゲスチン単独の経口避妊薬:避妊用インプラントと同様の副作用 |
喫煙習慣のある35歳以上の女性は経口避妊薬を服用してはならない。 一部の病気でも使用禁止である(経口避妊薬の使用を禁止する条件を参照)。 |
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3週間にわたり毎週新しいパッチ剤を貼り、その後1週間は貼らない。 次の新しい処方を受けるため定期的に受診する必要がある。 |
経口避妊薬と同様 貼り付けた部位の皮膚の刺激感 |
制限事項は経口避妊薬と同様。 パッチ剤の使用を始める時期によっては、使用して最初の1週間は他の避妊法を併用する必要がある。 |
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3週間に1回、女性が自分でリングを挿入する。その後取り出し、1週間は使用しない。あるいは、4週間または5週間までリングを入れておき、その後取り出して新しいものを入れることも可能。リングは毎回新しいものに交換する。 次の新しい処方を受けるため定期的に受診する必要がある。 |
大体は経口避妊薬と同じ(ただし一般的に腟リングでは不正出血の頻度は少ない) |
制限事項は経口避妊薬と同様。 リングの使用を始める時期によっては、使用して最初の1週間は他の避妊法を併用する必要がある。 リングは脱落することもある。脱落しても3時間以内に再び挿入すれば、他の避妊法は必要ない。 |
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バリア法 |
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性交の最大40時間前に女性が子宮頸管キャップを挿入することができる。性交後少なくとも6時間は入れておく必要があるが、48時間を超えてはいけない。 |
アレルギー反応や皮膚の刺激感 |
この方法は月経中は使用できない。 |
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毎回性交の直前に男性がコンドームを装着する。 女性用のコンドームは腟に挿入し、その中に陰茎(ペニス)を慎重に導き入れる。 コンドームは1回使用したら廃棄する。 コンドームは市販されている。 |
アレルギー反応や刺激感 |
ラテックス製のコンドームは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症を含むすべての一般的な性感染症(STD)の予防策にもなる唯一の避妊法である。ポリウレタン、ポリイソプレン、シリコンゴムなどの合成素材でできたコンドームにも感染を予防する効果はある程度あるが、ラテックス製よりも薄いため裂けやすいという欠点がある。 コンドームで避妊効果を得るには、正しく使用する必要がある。 セックスパートナーが正しい使用方法を守り、協力することが必要である。 |
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性交前に女性がスポンジを挿入する。スポンジは、前もって挿入しておくことができ24時間効果がある。性交後6時間以上はそのままにしておき、1回使用したら廃棄する。 スポンジは市販されている。 |
アレルギー反応や腟の乾燥または刺激感 |
スポンジを取り出すのが難しいことがある。30時間後に取り出さなければならない。 スポンジはペッサリーほど効果的ではない。 |
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ペッサリーと殺精子剤(精子を殺す作用のある薬剤)のクリームまたはゼリーを併用する |
性交前に女性がペッサリーを挿入する。ペッサリーは少なくとも6~8時間入れておく必要があり、24時間まで入れておいてもよい。ほとんどのペッサリーでは、少なくとも1年に1回および出産後に医師がペッサリーを調整し、合っているかチェックする。SILCSペッサリーは例外で、このペッサリーは、医師による調整が不要の1サイズのみのバリア式避妊具である。 ペッサリーと殺精子剤のクリームやゼリーを併用すると、ペッサリーの挿入時に周囲がクリームやゼリーで汚れることがある。 |
アレルギー反応、刺激感、尿路感染症 |
ペッサリー挿入後の2回目以降の性交時には、そのたびにクリームやゼリーを追加してから挿入する。 |
その他の方法 |
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銅付加IUD |
銅付加IUDの種類に応じて10年に1回の頻度で処置を受ければよい。 挿入および抜去は医師が行う。 |
出血または痛み まれに子宮穿孔 |
IUDが脱落することがある。 |
女性が以下の方法により妊娠可能日の記録をつけていく |
なし |
この方法では女性がしっかりとチェックを行うことが重要になる。また、1カ月のうち数日間は性交を避ける必要がある。月経周期が不規則な女性では効果が低下する。 |
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抜去法(腟外射精) |
男性が射精前に陰茎を腟から抜去する。 自制と正確なタイミングが必要である。 |
なし |
精子は射精前にも放出される可能性があり、また男性が射精前に抜去しないこともあるため、この方法は他の方法より効果が低い。 |