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妊娠中の薬の使用

執筆者:

Ravindu Gunatilake

, MD, Valley Perinatal Services;


Avinash S. Patil

, MD, Center for Personalized Obstetric Medicine, Valley Perinatal Services, Phoenix

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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妊婦の50%以上が、妊娠中に処方薬や市販薬(処方なしで購入できる薬剤)を服用したり、社会的薬物(タバコやアルコール)または違法薬物を使用しており、妊娠中の薬の使用は増えてきています。一般に、薬の多くは胎児に害を及ぼす可能性があるため、妊娠中は、必要な場合を除いて、薬剤を使用すべきではありません。先天異常の約2~3%は、病気や症状の治療に使用された薬剤が原因で発生しています。

母体と胎児の健康にとって薬が不可欠な場合もあります。そのような場合には薬剤を使用するリスクと効果について、医師や医療従事者から十分に説明を受けるべきです。妊娠中はすべての薬剤(市販薬を含む)や栄養補助食品(薬用ハーブを含む)について、服用する前に必ず医療従事者に相談すべきです。妊娠中は特定のビタミン剤やミネラルの服用を医療従事者から勧められることがあります。

妊婦が服用した薬は、胎児の成長と発達に必要な酸素や栄養と同様に、主に胎盤を通過して胎児に達します。妊娠中に妊婦が使用した薬は、以下のように様々な形で胎児に影響を及ぼす可能性があります。

  • 胎児に直接作用して、障害、発達異常(および、その結果起こる先天異常)、死亡の原因になることがあります。

  • 胎盤の機能に影響を与えることがあり、これは通常、血管が収縮し、母体から胎児への酸素と栄養の供給が減少することによるものです。これにより、ときに胎児の低体重や発育不全が生じます。

  • 子宮の筋肉を強く収縮させることもあり、それにより血液の供給が減ったり、早期の陣痛を誘発して早産になったりすることで、胎児に間接的な悪影響を及ぼします。

  • 胎児に間接的に影響を与えることもあります。例えば、母体の血圧を下げる薬剤は胎盤への血流を減少させ、それにより胎児への酸素と栄養の供給が減少します。

薬が胎盤を通過する仕組み

胎児の血管の一部は、胎盤から子宮壁内に伸びた毛髪様の微細な突起(絨毛)の中を通っています。母体の血液は絨毛の周囲の空間(絨毛間腔)を流れています。絨毛間腔にある母体の血液と絨毛内を流れる胎児の血液は、ごく薄い膜(胎盤膜)で隔てられているだけです。母体の血液中の薬がこの膜を通って絨毛内の血管へ移行し、臍帯を経て胎児に到達する可能性があります。

薬が胎盤を通過する仕組み

薬が胎児に与える影響は、以下によって異なります。

  • 胎児の発達段階

  • 薬の作用の強さおよび用量

  • 母親の遺伝子構成(薬物の活性と利用可能な量に影響する)

  • 母体に関連するその他の要因(例えば、妊婦に嘔吐があると吸収する薬の量が少なくなり、胎児がさらされる薬の量も少なくなる)

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妊娠中の時期と薬の影響

時期

考えられる薬*の影響

胎児の状態

受精後20日以内

全か無の作用(胎児が死亡するか、まったく影響しない)

胎児には先天異常に対する強い抵抗力がある。

受精後3~8週間

場合によっては影響なし

明らかな先天異常

出生してから気づく永続的だがわずかな欠陥

小児がんのリスク上昇(母親への放射性ヨード投与[甲状腺がんの治療のため]や、画像検査の際の放射性物質の使用[核医学検査など]などに起因する可能性)

胎児の器官が形成される時期で、胎児の先天異常が特に発生しやすくなる。

第2トリメスターおよび第3トリメスター(訳注:第2トリメスターは日本の妊娠中期に、第3トリメスターは妊娠後期にほぼ相当)

正常に形成された胎児の器官や組織の発達および機能を変化させる

明らかな先天異常は起こりにくい

長期的な影響は不明

器官の形成が完了する。

*有害な作用をもつ可能性が高い薬は一部のものだけです。

最近まで、米国食品医薬品局(FDA)は、妊娠中の使用が胎児に及ぼすリスクに応じて、薬剤を5つのカテゴリーに分類していました。薬剤の分類は、最もリスクが低いものから、非常に毒性が強く重度の先天異常を引き起こすために妊娠中は絶対に使用してはならないものまでに分かれていました。サリドマイドは非常に毒性が強い薬剤の1例です。この薬剤は、妊娠中に服用した女性から生まれた子どもに四肢の著しい発育不全や腸、心臓、血管の異常を引き起こしました。

FDAの分類システムは、大半が動物試験の情報に基づくもので、こういった情報はしばしば、人間に適用できないものです。例えば、一部の薬剤(メクリジンなど)は動物に先天異常を引き起こすものの、人間には同様の影響が認められていません。吐き気と嘔吐のために妊娠中にメクリジンを使用することによって、先天異常の子どもが生まれるリスクが上昇することはないとみられています。妊婦を対象とする適切なデザインによる研究はほとんど行われていないため、FDAの分類がこのような研究に基づいているのは、かなりまれな場合です。したがって、この分類システムを個々の状況に適用するのは困難でした。

この問題のため、FDAは5つのリスク分類を撤廃しました。現在FDAは、薬剤のラベルに以下を含むより具体的な情報を表示するよう義務づけています。

  • 妊娠中および授乳中の薬剤使用におけるリスク

  • このようなリスクを特定した科学的根拠

  • 医療従事者が妊娠中に薬剤を使用すべきであるかを判断し、薬剤を使用することのリスクと便益を妊婦に説明するために役立つ情報

典型的に、医療従事者は以下の一般的原則に従います。

  • 潜在的便益が知られているリスクを上回る場合にのみ、病気の治療のために妊婦に薬剤を投与することを検討する。

多くの場合、妊娠中に害を及ぼす可能性が高い薬剤の代わりに、安全性の高い薬剤が利用できます。血栓予防のための抗凝固薬には、ワルファリンよりヘパリンが選択されます。抗菌薬にもペニシリンなど、感染症の治療に安全に使用できるものがいくつかあります。

薬剤の中には、使用を中止した後も影響が続くものがあります。例えば皮膚疾患の治療に使用されるイソトレチノイン(isotretinoin)は、皮下脂肪に蓄積されて時間をかけて少しずつ放出されます。イソトレチノインの場合、使用を中止してから2週間以内に妊娠すると先天異常を引き起こすことがあります。このため女性は薬剤の使用中止後、少なくとも3~4週間は妊娠を控えた方がよいと助言されます。

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妊娠中に問題を引き起こす可能性がある主な薬剤 *

薬剤名

起こりうる問題

抗不安薬

ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、アルプラゾラム、ロラゼパムなど)

妊娠の後期に服用すると、新生児に非常に遅い呼吸や薬物離脱症候群(易刺激性、ふるえ、反射亢進を起こす)

抗菌薬

アミノグリコシド系薬剤(アミカシン、ゲンタマイシン、ネオマイシン、ストレプトマイシン、トブラマイシンなど)

胎児の耳に障害を与え(聴器毒性)、難聴をもたらす

妊婦や胎児がG6PD欠損症である場合、赤血球の破壊

グレイ症候群(重篤でしばしば死に至る)の可能性あり

フルオロキノロン系薬剤(シプロフロキサシン、オフロキサシン、レボフロキサシン、ノルフロキサシンなど)

骨と関節に異常が生じる可能性(動物でのみみられる)

妊婦や胎児がG6PD欠損症である場合、赤血球の破壊

妊婦や胎児がG6PD欠損症である場合、赤血球の破壊

スルホンアミド系薬剤(サラゾスルファピリジンやトリメトプリム-スルファメトキサゾールなど)

妊娠の後期に投与すると新生児に黄疸が生じ、治療をしなければ脳が損傷する(核黄疸

サラゾスルファピリジンでは問題のリスクははるかに低い

妊婦や胎児がG6PD欠損症である場合、赤血球の破壊

骨成長の遅れ、歯が永久に黄色っぽいままになる、う蝕のリスクが小児期に上昇する

ときに妊婦の肝不全

二分脊椎などの脳や脊髄の欠損(神経管閉鎖不全)

第Xa因子阻害薬(リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンなど)

妊婦または胎児に出血リスクの可能性

ヘパリン

妊婦の血小板減少症(血液凝固を助ける血液細胞である血小板数の減少)、これにより過剰出血が生じる可能性

ワルファリン

胎児の先天異常、知的障害、白内障、その他の眼の問題

胎児や妊婦の出血

抗うつ薬

ブプロピオン(bupropion

動物において有害な作用がみられるが、新生児における先天異常のリスクに関する科学的根拠は相反している

シタロプラム

第1トリメスター(訳注:日本の妊娠初期にほぼ相当)中にシタロプラムが使用された場合、先天異常のリスク上昇(特に心臓の異常のリスクが上昇)

第3トリメスター(訳注:日本の妊娠後期にほぼ相当)中にシタロプラムが使用された場合、離脱症候群(めまい、不安、易怒性、疲労、吐き気、悪寒、筋肉痛など)および新生児遷延性肺高血圧症(肺につながる動脈が出生後も狭い状態が続くことが原因で、肺に十分な量の血流が行きわたらず、結果的に血流中の酸素量が不足する)

エスシタロプラム

第3トリメスター中にエスシタロプラムが使用された場合、離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

フルオキセチン

第3トリメスター中にフルオキセチンが使用された場合、離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

パロキセチン

第1トリメスター中にパロキセチンが使用された場合、先天異常のリスク上昇(特に心臓の異常のリスクが上昇)

第3トリメスター中にこの薬剤が使用された場合、離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

セルトラリン

第3トリメスター中にセルトラリンが使用された場合、離脱症候群および新生児遷延性肺高血圧症

ベンラファキシン

第3トリメスター中にベンラファキシンが使用された場合、離脱症候群

制吐薬(吐き気を抑えるために用いられる)

ドキシラミン(doxylamin)およびピリドキシン(ビタミンB6

先天異常のリスク上昇なし

メクリジン

先天異常が動物でのみみられる

オンダンセトロン

動物において先天異常の科学的根拠なし

第1トリメスター中にオンダンセトロンが使用された場合、先天性心疾患のリスクの可能性

プロメタジン

動物において先天異常の科学的根拠なし

新生児の出血リスクの可能性

抗真菌薬

アムホテリシンB

先天異常のリスクは上昇しないが、妊婦を対象とした適切なデザインによる研究は行われていない

フルコナゾール

低用量単回投与後の先天異常のリスク上昇なし

高用量を第1トリメスターの大部分または全期間で使用した場合、先天異常(心臓、顔面、頭蓋、肋骨、四肢の異常など)のリスク上昇

ミコナゾール

皮膚に塗布する場合、先天異常のリスク上昇なし

テルコナゾール(terconazole

先天異常のリスク上昇なし

降圧薬

アルドステロン拮抗薬(ホルモンのアルドステロンの作用を遮断する薬剤)、スピロノラクトン、エプレレノンなど

スピロノラクトンでは、男子胎児に女性的特徴が発達する可能性

エプレレノンでは、動物において先天異常のリスクは上昇しないが、妊婦を対象とした適切なデザインによる研究は行われていない

妊娠の後期の使用により、胎児に腎損傷が起こったり、発育中の胎児を包む液体(羊水)の量が減少したり、顔面、四肢、肺の異常が生じる

妊娠中に一部のベータ遮断薬を使用すると、胎児の心拍が遅くなったり血糖値が下がったりし、発育不全(出生前に胎児が十分に成長しない)や早産の可能性がある

母体の低血圧

第1トリメスター中にカルシウム拮抗薬が使用された場合、手足の指の先天異常

それより後に使用されると、出生前に胎児が十分に成長しない

胎児の血液中の酸素レベル、ナトリウム量、カリウム量、および血小板数の低下

出生前に胎児が十分に成長しない

抗精神病薬

ハロペリドール

動物において有害な作用

第1トリメスター中にハロペリドールが使用された場合、四肢の先天異常の可能性

第3トリメスター中にハロペリドールが使用されると、以下のリスクが上昇する

  • 反復性の不随意運動(錐体外路症状)

  • 新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(胎盤を通じた母体からの薬物の移動が出生時に止まるために起こる、薬物からの離脱症状)

ルラシドン

動物における有害な作用の科学的根拠はない

第3トリメスター中にルラシドンが使用されると、以下のリスクが上昇する

  • 反復性の不随意運動

  • 新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(胎盤を通じた母体からの薬物の移動が出生時に止まるために起こる、薬物からの離脱症状)

オランザピン

第3トリメスター中にオランザピンが使用されると、以下のリスクが上昇する

  • 新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(胎盤を通じた母体からの薬物の移動が出生時に止まるために起こる、薬物からの離脱症状)

リスペリドン

先天異常のリスク上昇に関する科学的根拠はないが、妊婦を対象とした適切なデザインによる研究は行われていない

第3トリメスター中にリスペリドンが使用されると、以下のリスクが上昇する

  • 反復性の不随意運動

  • 新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(胎盤を通じた母体からの薬物の移動が出生時に止まるために起こる、薬物からの離脱症状)

カルバマゼピン

先天異常の多少のリスク:神経管閉鎖不全(二分脊椎など)を含む

新生児に出血が生じる(新生児出血性疾患)が、妊婦が分娩前の1カ月間に毎日ビタミンKを経口摂取したり、分娩直後の新生児にビタミンKを注射したりすることで予防できる

ラモトリギン

先天異常のリスク上昇なし

レベチラセタム

動物において軽微な骨の異常がみられる

妊婦を対象とした研究は行われていない

フェノバルビタール

カルバマゼピンと同様

フェニトイン

先天異常(口唇裂、心臓の異常など)のリスク上昇

新生児の出血

トリメタジオン

先天異常の高いリスク(口蓋裂、心臓、頭蓋、顔面、手、腹部の異常など)

流産のリスク

バルプロ酸

先天異常の多少のリスク:口蓋裂、神経管閉鎖不全(脊髄髄膜瘤など)、心臓、顔面、頭蓋、脊椎、および四肢の異常

化学療法薬

アクチノマイシン

先天異常の可能性(動物でのみみられる)

ブスルファン

下顎の発育不全、口蓋裂、頭蓋骨の発達異常、脊椎の欠損、耳の欠損、内反足などの先天異常

出生前に胎児が十分に成長しない(発育不全

クロラムブシル

ブスルファンと同様

コルヒチン

先天異常の可能性(動物で発現)

男児における精子の異常

シクロホスファミド

ブスルファンと同様

ドキソルビシン

心臓の異常(用量に依存)

先天異常

メルカプトプリン

ブスルファンと同様

メトトレキサート

ブスルファンと同様

ビンブラスチン

先天異常の可能性(動物でのみみられる)

ビンクリスチン

先天異常の可能性(動物でのみみられる)

気分安定薬

第1トリメスター中にリチウムが使用された場合、先天異常(主に心臓)のリスク上昇

それより後に使用された場合、新生児の嗜眠、筋緊張低下、哺乳不良、甲状腺機能低下、腎性尿崩症

アスピリンとその他のサリチル酸系薬剤

イブプロフェン

ナプロキセン

高用量での使用により、可能性として第1トリメスターの流産、陣痛開始の遅れ、胎児の動脈管(大動脈と肺動脈をつなぐ管)の早期閉鎖、黄疸壊死性腸炎(腸の粘膜の損傷)、および(ときに)胎児の脳損傷(核黄疸)、分娩中や分娩後の母体または新生児の出血

妊娠の後期の使用により、発育中の胎児の周囲を満たしている液体(羊水)の減少

低用量アスピリンが使用された場合、先天異常の重大なリスクなし

ブプレノルフィン

先天異常のリスク上昇に関する科学的根拠はないが、胎児や新生児にほかの有害な作用を及ぼす可能性がある

新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(胎盤を通じた母体からの薬物の移動が出生時に止まるために起こる、薬物からの離脱症状)

コデイン

ヒドロコドン

ヒドロモルフォン

ペチジン

モルヒネ

新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(薬物からの離脱症状)

分娩前1時間以内に高用量が投与されると、新生児に眠気が起こったり、心拍が遅くなったりする可能性

メサドン

新生児の不穏、易刺激性、ふるえ、呼吸困難、哺乳困難(薬物からの離脱症状)

クロルプロパミド

グリベンクラミド

メトホルミン

トルブタミド

新生児の血糖値の極端な低下

通常、インスリンが選択される

性ホルモン

ダナゾール

妊娠のごく初期の使用により、女子胎児の性器が男性化し、元に戻すために手術が必要になる場合がある

合成プロゲスチン(低用量の合成プロゲスチンが含まれる経口避妊薬は除く)

ダナゾールと同様

皮膚治療薬

イソトレチノイン(isotretinoin

心臓の異常、小耳症、水頭症などの先天異常

知的障害

流産のリスク

甲状腺薬

チアマゾール

胎児の甲状腺の腫大または機能低下

新生児の頭皮欠損

プロピルチオウラシル

胎児の甲状腺の腫大または機能低下

母親の肝傷害

放射性ヨード

胎児の甲状腺の破壊

第1トリメスターの終わり近くの使用により、胎児の甲状腺機能が過剰に亢進し、甲状腺が腫大する

小児がんのリスク上昇

トリヨードサイロニン

胎児の甲状腺機能が過剰に亢進し、甲状腺が腫大する

ワクチン

胎盤や発育中の胎児に感染する可能性

リスクの可能性はあるが不明

その他の薬

コルチコステロイド

第1トリメスターでの使用により、口唇裂の可能性

ヒドロキシクロロキン

通常使用される用量におけるリスク上昇なし

イソニアジド

肝臓への有害な作用または末梢神経の損傷(異常な感覚または脱力を引き起こす)の可能性

ロラタジン

男児において、尿道が違った場所に開口する先天異常(尿道下裂)の可能性

プソイドエフェドリン(鼻閉改善薬)

胎盤の血管が狭くなり胎児が受け取る酸素と栄養が減少する可能性があり、出生前に胎児が十分に成長しない

腹壁の欠損リスクの可能性があり、これにより腸管が体外に突出する(腹壁破裂

ビタミンK

妊婦や胎児がG6PD欠損症である場合、赤血球の破壊(溶血)

*医学的に必要でない限り、妊娠中に薬剤を使用すべきではありません。しかし、母体と胎児の健康維持のために薬剤が不可欠になる場合もあります。そのような場合には使用している処方薬を中止する前に、医療従事者からその薬剤のリスクと有益性について十分に説明を受けるようにします。自己判断で服用を中止すべきではありません。

オピオイドは痛みの緩和に使用されます。ただし、オピオイドは過度の幸福感ももたらし、使いすぎると依存症や嗜癖を引き起こす可能性があります。

G6PD = グルコース-6-リン酸脱水素酵素。

妊娠中のワクチン

予防接種は、妊娠していない女性と同様に妊婦においても効果的です。

生きたウイルスを使って製造される生ワクチン風疹ワクチン水痘ワクチンなど)は、妊娠している場合や妊娠の可能性がある場合には投与されません。

その他のワクチン(コレラA型肝炎、B型肝炎A型肝炎ワクチン、ペスト、狂犬病腸チフスのワクチンなど)も、その感染症の発症リスクが非常に高い場合を除いて、妊婦には投与されません。

ただしインフルエンザの流行期には、第2トリメスターまたは第3トリメスターの妊婦は全員、インフルエンザワクチンの接種を受けるべきです(訳注:第2トリメスターは日本の妊娠中期に、第3トリメスターは妊娠後期にほぼ相当)。すべての妊婦は、ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン(Tdap)を各妊娠中、27週~36週の間に受けるべきです。このワクチンは、百日ぜきを予防します。

妊娠中に心臓と血管の病気の治療のために用いられる薬剤

妊娠前から高血圧があった場合や、妊娠中に高血圧が生じた場合には、血圧を下げる薬剤(降圧薬)が必要になることがあります。どちらの場合も高血圧により母体の問題(妊娠高血圧腎症など)および胎児の問題が生じるリスクが高まります(妊娠中の高血圧のページを参照)。しかし妊婦の血圧が降圧薬により急速に低下すると、胎盤に流れ込む血液量が大幅に減少する可能性があります。このため妊婦が降圧薬を服用しなければならない場合には、注意深くモニタリングします。

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やサイアザイド系利尿薬など、いくつかのタイプの降圧薬は通常、妊婦には投与されません。これらの薬剤は、腎障害、発育不全(出生前に胎児が十分に成長しない)、先天異常など、胎児に深刻な問題を引き起こすことがあります。スピロノラクトンも妊婦には投与されません。この薬剤は、男子胎児において女性的特徴の発達(女性化)を生じさせる可能性があります。

妊娠中のサイアザイド系利尿薬の使用については、議論があります。サイアザイド系利尿薬は最初に用いられる降圧薬ではありません。

心不全や一部の不整脈の治療薬であるジゴキシンは胎盤を通過しやすい薬剤ですが、通常の用量では、出生前、出生後ともに ジゴキシンの胎児への影響はほとんどみられません。

妊娠中の抗うつ薬

抗うつ薬、特にパロキセチンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、妊娠中によく使用されます。よく使用されるのは、約7~23%の妊婦にうつ病がみられるためです。妊婦にとっては、通常、うつ病を治療する有益性の方がリスクを上回ります。

パロキセチンは心臓の先天異常のリスクを高めるようです。そのため、妊婦が パロキセチンを服用している場合、胎児の心臓を評価するために心エコー検査を行う必要があります。しかし、その他のSSRIではこのリスクは上昇しません。

妊婦が抗うつ薬を服用していると、分娩後の新生児に離脱症状(易刺激性、ふるえなど)を起こすことがあります。この症状を予防するため、医師は第3トリメスター中(訳注:日本の妊娠後期にほぼ相当)に抗うつ薬の用量を徐々に減らし、分娩前に薬剤を中止することがあります。ただし、妊婦にうつ病の顕著な徴候がみられたり、用量を減らすにつれ症状が悪化する場合には、抗うつ薬を継続すべきです。妊娠中のうつ病は、気分の大きな変動を伴い治療の必要がある産後うつ病につながる可能性があります。

妊娠中の社会的薬物

妊娠中の喫煙(タバコ)

喫煙は母体と胎児の双方に有害であるにもかかわらず、妊娠中に禁煙できるのは喫煙習慣のある女性の20%程度にとどまっています。

喫煙が胎児に及ぼす影響のうち最も一貫して生じるのは、以下のものです。

妊娠中の喫煙量が多ければ多いほど、出生時の体重は軽くなる可能性が高くなります。妊娠中に喫煙していた女性から生まれた新生児の平均出生体重は、喫煙しない妊婦から生まれた新生児と比べて170グラムほど軽くなります。

心臓、脳、顔面の先天異常は、喫煙習慣のない女性の子どもより喫煙習慣のある女性の子どもに多くみられます。

また、以下のリスクも上昇します。

さらに喫煙習慣のある女性の子どもには、身体の成長や知能と行動の発達において、わずかながら無視できない程度の遅れがみられます。このような影響の原因は一酸化炭素およびニコチンであると考えられています。一酸化炭素は身体組織への酸素の供給を減少させます。 ニコチンが子宮や胎盤に血液を供給する血管を収縮させるホルモンの分泌を促すため、胎児に届く酸素や栄養が減少します。

妊娠中の喫煙は有害な影響を及ぼす可能性があるため、妊婦は主治医と対策を話し合うなどして、妊娠中に喫煙しないようあらゆる努力をすべきです。

受動喫煙でも胎児に同様の害が生じる可能性があるため、妊婦は副流煙も避けるべきです。

妊娠中のアルコール

原因が分かっている先天異常の中で、最も多いのが妊娠中の飲酒によるものです。胎児性アルコール症候群を引き起こす飲酒量は不明であるため、妊娠中はすべてのアルコールについて定期的な飲酒および大量飲酒を控えることが勧められます。一切の飲酒をしない方が、より安全です。

知っていますか?

  • 原因が分かっている先天異常の中で、最も多いのが妊娠中の飲酒によるものです。

妊娠中の飲酒により流産のリスクはほぼ倍増します。この影響はアルコールの種類と無関係であり、とりわけ飲酒量が多い場合にはリスクが高まります。

妊娠中に定期的に飲酒をしていた女性から生まれた新生児の出生体重は、正常をはるかに下回ることが多くなります。米国における平均出生体重は約3200グラムですが、大量のアルコールにさらされた新生児では約1800グラムです。妊娠中に飲酒していた女性から生まれた新生児は、正常な発育が得られないことがあり、出生後まもなく死亡する可能性が高くなります。

胎児性アルコール症候群は、妊娠中の飲酒によって生じる最も深刻な結果の1つです。1日にわずか3ドリンクの大量飲酒で胎児アルコール症候群が生じる可能性があります。米国では出生児1000人当たりおよそ2人の割合で発生しています。この症候群では、以下がみられます。

妊娠中に飲酒していた女性から生まれた乳児や小児には、反社会的行動や注意欠如・多動症(注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)などの重大な行動面の問題が生じることがあります。こうした問題は、身体的に明らかな先天異常がなくても生じることがあります。

妊娠中のカフェイン

妊娠中のカフェイン摂取が胎児に害を及ぼすかどうかは明らかでありません。これまでに示唆されている科学的根拠によると、妊娠中に少量のカフェイン(1日にコーヒー1杯など)を摂取しても胎児へのリスクはないか、影響があってもごくわずかであるようです。

カフェインはコーヒー、茶、一部の炭酸飲料、チョコレート、一部の薬剤などに含まれる刺激物で、胎盤を容易に通過して胎児に到達します。

1日に7杯を超えるコーヒーを飲んだ場合に死産未熟児の出産低体重児の出産流産のリスクが上昇する可能性を示した科学的根拠があります。

コーヒーの摂取量を抑え、可能なときにはカフェインが除去された飲料を摂取することを勧める専門家もいます。

妊娠中のアスパルテーム

人工甘味料のアスパルテームは、食品や飲料に甘味料として通常使用されている程度の少量であれば、妊娠中に摂取しても安全とみられています。例えば、妊婦は1日に摂取するダイエットソーダを1リットル以下にすべきです。

まれな病気であるフェニルケトン尿症の妊婦は、アスパルテームを一切摂取すべきではありません。

妊娠中の違法薬物

妊娠中に違法薬物(特にオピオイド)を使用すると、妊娠中に合併症を引き起こしたり、発育中の胎児や新生児に深刻な問題が生じるおそれがあります。妊婦が違法薬物を注射すると、胎児に影響を与えたり胎児に感染したりするおそれのある感染症のリスクが高まります。このような感染症には肝炎性感染症(エイズを含む)があります。また妊婦が違法薬物を使用すると、胎児の発育不全が生じやすくなり、未熟児として生まれる可能性が高くなります。

妊娠中のアンフェタミン

妊娠中にアンフェタミンを使用すると、先天異常(特に心臓の)が生じたり、出生前に胎児が十分に成長しない可能性があります。

妊娠中のバスソルト

バスソルトは様々なアンフェタミンに類似した様々な物質から作られる合成麻薬の一群を指します。これらの薬物を使用する妊婦が増えてきています。

胎児の血管を収縮させ、胎児が受け取る酸素の量を減らす可能性があります。

また、これらの薬物は以下のリスクを高めます。

妊娠中のコカイン

妊娠中に摂取したコカインが原因で、子宮と胎盤へ血液を供給する血管が狭くなる(収縮)ことがあります。つまり、胎児への酸素と栄養の供給が少なくなります。

妊婦がコカインを習慣的に使用すると、以下のリスクが上昇します。

ただし、コカインがこうした問題の原因であるかどうかは不明です。例えば、コカインを使用する女性に多くみられる危険因子が原因である可能性もあります。こういった危険因子としては、喫煙、コカイン以外の違法薬物の使用、不十分な出生前ケア、貧困などがあります。

妊娠中の幻覚剤

幻覚剤は、薬剤の種類により以下のリスクを上昇させる可能性があります。

幻覚剤にはメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA、通称エクスタシー)、ロヒプノール、ケタミン、メタンフェタミン、LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)などがあります。

妊娠中のマリファナ

妊娠中のマリファナの使用が胎児に害を及ぼすかどうかは分かっていません。マリファナの主成分であるテトラヒドロカンナビノールは胎盤を通過するため、胎児に影響を及ぼす可能性があります。しかし、少量のマリファナの使用が先天異常のリスクを高めたり、胎児の成長を遅らせたりすることはないようです。

マリファナは妊娠中に大量に使用しない限り、新生児に行動面の問題が生じることはありません。

妊娠中のオピオイド

オピオイドは痛みの緩和に使用されますが、過度の幸福感ももたらし、使いすぎると依存症や嗜癖になる可能性があります。

ヘロイン、メサドン、モルヒネなどのオピオイドは胎盤を容易に通過します。このため胎児が中毒となり、生後6時間から8日間に離脱症状が起こることがあります。しかしオピオイドの使用が原因で先天異常が生じることはめったにありません。

妊娠中にオピオイドを使用すると以下のような妊娠中の合併症のリスクが高くなります。

ヘロイン使用者から生まれた子どもは体が小さいことが多いです。

陣痛・分娩時に使用される薬剤

妊娠中の痛みの緩和に用いられる薬剤(局所麻酔薬やオピオイドなど)は通常、胎盤を通過するため、新生児に影響を及ぼす可能性があります。例えば、新生児が呼吸しようとする衝動を弱めてしまう場合があります。したがって、分娩の際にこのような薬物が必要になった場合は、最小有効量を使用します。

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