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卵巣がん

執筆者:

Pedro T. Ramirez

, MD, The University of Texas MD Anderson Cancer Center;


David M. Gershenson

, MD, The University of Texas MD Anderson Cancer Center

前回の詳細なレビュー/9月 2013
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本ページのリソース
  • 卵巣がんでは、病巣が大きくなるか、範囲が広がるまで、症状がみられないことがあります。

  • 卵巣がんの疑いがある場合は、超音波検査、MRI検査、CT検査などを行います。

  • 通常は、左右の卵巣および卵管と子宮を切除します。

  • 多くの場合、手術後に化学療法が必要になります。

卵巣がんは50~70歳の女性に最も多く発生します。女性の約70人に1人の割合でみられます。米国では、婦人科がんの中で2番目に多いがんです。しかし死亡数は他のどの婦人科がんよりも多くなっています。女性のがんによる死亡原因の中では、第5位を占めています。

卵巣がんのリスクが増大する要因には、例えば以下のものがあります。

  • 加齢(最も重要な要因)

  • 子どもがいない

  • 高齢で第1子を出産した

  • 初潮が早かった

  • 閉経が遅い

  • 子宮体がん、乳がん、結腸がんの既往がある、また家系内にこれらのがんになったことがある人がいる

経口避妊薬を使用すると卵巣がんのリスクは著しく減少します。

卵巣がんの約5~10%はBRCA1およびBRCA2遺伝子に関係しており、これらの遺伝子は一部の乳がんにも関与しています。これらの遺伝子または他のまれな遺伝子に変異がある家系では、卵巣がんと乳がんが遺伝する傾向があります。このようながんは、ときに遺伝性乳がん・卵巣がん症候群と呼ばれます。これらの遺伝子または変異のうちの1つをもつ女性では、卵巣がんの生涯発生リスクが15~40%になります。BRCA1およびBRCA2遺伝子は、アシュケナージ系ユダヤ人の女性で特に多くみられます。

卵巣がんには様々な種類があり、それぞれ卵巣中の異なる種類の細胞から発生します。卵巣がんの80%以上は卵巣の表面に発生するがん(上皮性の卵巣がん)です。残りのほとんどは卵子を生じる細胞から発生するがん(胚細胞腫瘍)と結合組織に発生するがん(間質細胞腫瘍)です。胚細胞腫瘍は30歳未満の若い女性に特に多く発生します。ときには、体内の別の部位に生じたがんが卵巣に転移することもあります。

卵巣がんは、周辺の部位に直接広がるだけでなく、リンパ系を介して骨盤内や腹部の他の部位に転移することがあります。また血流に乗って、主に肝臓や肺など、離れた部位に転移することもあります。

症状

卵巣がんができると、できた側の卵巣が腫れて大きくなります。若い女性の卵巣腫大は、液体で満たされた良性の袋状の構造物(嚢胞— 機能性嚢胞)が原因である可能性が高いです。これに対し、閉経後の卵巣腫大は卵巣がんの徴候として現れます。

このがんは進行するまでほとんど症状が現れません。最初の症状は、消化不良に似た、下腹部の漠然とした不快感などです。このほか、腹部膨満、食欲不振(胃が圧迫されるため)、ガス痛(胃腸内のガスによる痛み)、背部痛などの症状がみられます。卵巣がんでは性器出血はめったにみられません。

卵巣が腫大し、腹部に水分がたまるため、次第に腹部が膨らんでくることがあります。この段階になると、骨盤部の痛み、貧血、体重減少がみられるようになります。まれに胚細胞腫瘍や間質細胞腫瘍が エストロゲンを分泌し、このため子宮内膜組織が過度に増殖したり、乳房が大きくなったりすることがあります。あるいは、これらの腫瘍から男性ホルモン(アンドロゲン)が分泌されて体毛が過度に増えたり、甲状腺ホルモンに似たホルモンが分泌されて甲状腺機能亢進症が生じたりすることもあります。

診断

卵巣がんは通常、かなり大きくなるか、他の部位に転移するまで何の症状もみられないため、早期診断が困難で、またそれほど重篤でない多くの病気と症状が似ていることも、早期発見を困難にしています。

身体診察で卵巣の腫大が見つかると、まず超音波検査を行います。卵巣嚢胞なのかがんによる充実性の腫瘤なのかを判別するために、CT検査やMRI検査を行うことがあります。進行がんが疑われる場合は、手術前にCT検査やMRI検査でがんの広がりを調べるのが通常です。

がんでないと思われる場合は、定期的に診察を受けて経過をみます。

医師ががんを疑う場合や検査結果がはっきりしない場合は通常、血液検査を行い、がん抗原125(CA125)など、がんの存在を示す物質(腫瘍マーカー)の濃度を測定します。腫瘍マーカーは、その測定値が異常を示したからといって、それだけでがんの診断が確定するものではありませんが、他の検査結果と総合することで診断の裏付けになることがあります。診断を確定するために、医師は以下の2つのうちいずれかの方法で卵巣を調べます。

  • 腹腔鏡検査:医師はへそのすぐ下を小さく切開し、柔軟性のある観察用の細い管状の機器(腹腔鏡)を挿入して調べます。特にがんが進行していないと考えられるときは、この方法が用いられます。腹腔鏡の内部を通した器具を用いて(ときにロボットによる支援下で)様々な組織のサンプルを採取し、卵巣と他の臓器を観察します。こうして得た情報を参考にして、医師はがんが広がっているかどうかや、広がりの程度を判定します(病期診断)。腹腔鏡を用いて卵巣がんの治療のため卵巣を摘出することもできます。

  • 開腹手術:がんが進行していると考えられる場合は、腹部を切開して、卵巣とその周囲の組織を直接観察します。がんの病期を判定して、がんをできる限り多く切除します。

病期分類は、がんの大きさや体内での広がりに基づきます。

  • I期:がんが片側または両側の卵巣のみに限局している。

  • II期:がんが子宮、卵管、または骨盤内(内性器、膀胱、および直腸がある部分)で近くの組織に広がっている。

  • III期:がんが骨盤外のリンパ節、肝臓の表面、小腸、または腹膜に広がっている。

  • IV期:がんが腹腔外や肝臓の内部に広がっている。

予後(経過の見通し)

予後(経過の見通し)は病期に応じて変わってきます。診断と治療から5年後に生存している人の割合は、以下の通りです。

  • I期:70~100%

  • II期:50~70%

  • III期:20~50%

  • IV期:10~20%

がんの進行が速い場合や、目に見える異常組織を手術で取り切れなかった場合には、予後は悪くなります。III期またはIV期では、70%の人でがんが再発します。

予防

卵巣がんまたは乳がんが家系に多い場合は、遺伝子の異常を調べるべきだと考える専門家もいます。第1度または第2度の近親者がこれらのがんにかかった場合、特にアシュケナージ系ユダヤ人の家系では、BRCA遺伝子の異常を調べる遺伝子検査について主治医に相談すべきです。BRCA遺伝子に特定の変異がみられる女性で妊娠を希望しない場合は、がんがなくても、左右の卵巣と卵管の切除を勧められることがあります。この手術により、卵巣がんのリスクがなくなり、乳がんのリスクも軽減します。詳細については、米国立がん研究所のがん情報サービス(National Cancer Institute Cancer Information Service)に問い合わせるか(1-800-4-CANCER、米国のみ)、女性がん基金(Foundation for Women's Cancer)のウェブサイト(www.foundationforwomenscancer.org)をご覧ください。

知っていますか?

  • 第1度または第2度の近親者に卵巣がんまたは乳がんにかかったことのある人がいる場合は、BRCA遺伝子の異常を調べる遺伝子検査について主治医に尋ねるべきです。

治療

手術の範囲は卵巣がんの種類と病期によって異なります。ほとんどの場合、左右の卵巣と卵管、子宮を切除します。がんが卵巣外まで広がっている場合は、卵巣がんが広がりやすい近くのリンパ節と周辺組織も切除します。この方法は、目に見えるがんをすべて除去することをねらいとしています。I期のがんの人で、片側の卵巣のみに腫瘍があり、妊娠を希望している場合は、がんのある側の卵巣と卵管のみを切除することもあります。

体内の別の部位まで広がった進行がんでは、生存期間を延長させるために、がんをできる限り多く切除するのが通常です。がんがどこに広がっているかによって、手術の代わりに、または術前に化学療法を行うこともあります。

I期の上皮性卵巣がんでは通常、手術後にそれ以上の治療は必要ありません。I期でも上皮性以外の卵巣がんの場合や、病期が進んだ卵巣がんでは、小さながんが残っている可能性があるため、それに対する治療として化学療法を行います。化学療法では、パクリタキセルとカルボプラチンの併用投与を6回行うのが典型的です。胚細胞腫瘍の多くは、がんがある方の卵巣と卵管を切除し、さらに多剤併用化学療法(通常はブレオマイシン、シスプラチン、エトポシド)を行うことで根治させることが可能です。放射線療法はめったに行われません。

進行した卵巣がんの多くは再発するため、化学療法が終了した後に、腫瘍マーカー(CA125など)の濃度を継続的に測定します。がんが再発した場合は、化学療法を行います。使用される薬剤には、ベバシズマブ、カルボプラチン、シスプラチン、ドセタキセル、リポソーマルドキソルビシン、エトポシド、ゲムシタビン、パクリタキセル、ノギテカンなどがあります。

卵巣嚢胞とは

卵巣嚢胞とは、卵巣の内部や表面にできる内部が液体で満たされた袋状の病変で、比較的よくみられます。そのほとんどは良性(がんではない)で、自然に消失します。悪性の嚢胞(がん)は40歳以上の女性で多くみられる傾向があります。

良性の卵巣嚢胞のほとんどは症状を引き起こしません。しかし、ときに圧迫感や痛みが生じたり、腹部が重く感じられたりすることがあります。性交中に痛みを感じることもあります。嚢胞が破裂したりねじれたりすると腹部に刺すような激しい痛みが生じます。吐き気や発熱を伴うこともあります。卵巣嚢胞の中には月経に影響を及ぼすホルモンを分泌するものもあります。そのため月経周期が不規則になったり、月経の出血や症状が重くなることがあります。閉経後の女性では、卵巣嚢胞が性器出血を引き起こすことがあります。こうした症状がある場合は医師の診察を受ける必要があります。

嚢胞は、普段の内診の際に発見されるか、または症状から疑われることもあります。まず妊娠検査を行い、妊娠していないことを確認します。診断を確定するため、超音波装置を腟から子宮の中に入れて観察することもあります(経腟超音波検査)。

嚢胞が良性と推測される場合は、消失するまで定期的に内診を行います。嚢胞が悪性(がん)と推測される場合は、CTまたはMRI検査を実施することがあります。これらの検査でもがんが疑われる場合は、へその下を小さく切開して腹腔鏡を挿入し、卵巣を観察します。血液検査もがんの診断または除外に役立ちます。

良性の嚢胞は特に治療の必要はありません。ただし、直径が約5センチメートル以上あり、自然に消失しない嚢胞は、切除が必要になることもあります。がんの可能性を否定できない場合は、卵巣を切除します。悪性の嚢胞がある場合は、同じ側の卵巣と卵管も摘出します。

手術は、腹部の1カ所を小さく切開して腹腔鏡を挿入して行う場合と、大きく切開する開腹手術として行う場合があります。

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