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レイプ

執筆者:

Erin G. Clifton

, PhD, Department of Psychiatry, University of Michigan

最終査読/改訂年月 2018年 1月
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レイプ(強姦)とは、脅迫や暴行によって被害者の腟、肛門または口の中に陰茎が挿入されることです。

  • 被害者には性器(腟など)や肛門の裂傷、切り傷や挫傷、感情の乱れ、睡眠障害などがみられることがあります。

  • HIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染症を含む性感染症と妊娠のリスクがあります。

  • レイプを受けた女性または男性は、特別な訓練を受けたスタッフが務める専門施設(レイプセンター)において徹底的な評価を受けるべきです。

  • 身体的な外傷の治療、感染症予防のための抗菌薬投与、緊急避妊、カウンセリングまたは精神療法などがしばしば必要になります。

  • 可能であれば、家族や親しい友人がレイプ被害者支援チームのメンバーと会い、レイプ被害者を支援する方法について話し合いを行うべきです。

レイプは一般的に、望まない、または同意のない腟、肛門、口への挿入と考えられています。ただし被害者が性的同意年齢に達していない場合は、同意の有無にかかわらず、腟、肛門、または口への挿入行為はレイプ(法律上の強姦)とみなされます。

性的暴行という用語はこれよりも広い意味で用いられ、暴力または脅迫によって性的接触を強要した場合も含まれます。被害者は同意していないか、精神障害もしくは身体障害または中毒のために同意ができない(法的に無能力である)人物です。性的暴行には小児に愛情や物品を提供する意思を示して誘惑することや、望まれずに触れる、つかむ、キスをすることなども含まれます。

一度でもレイプされたことのある女性の割合として報告されている数字には、2%から30%近くまで大きなばらつきがみられます。性的虐待を受けている子どもの割合として報告されている数字も、これと同程度の水準です({blank} 性的虐待)。レイプや性的虐待は他の犯罪と比べて警察に通報されることが少ないため、実際の発生率はこれよりも高いと考えられます。

典型的には、レイプは性的な動機ではなく、攻撃性、怒り、力やコントロールへの欲求が表出したものです。レイプ被害者の女性の多くは身体的な暴行または外傷も受けています。

男性もレイプの被害者になることがあります。加害者は男性であることが多く、レイプはしばしば刑務所で発生します。男性の被害者は、女性の場合よりも身体的な外傷を負う可能性が高く、レイプを通報したがらず、加害者が複数いることが多くなっています。

症状

レイプの症状と合併症には以下のものがあります。

  • 身体的外傷

  • 心理的影響

  • 性感染症

  • 妊娠

レイプによる身体的な外傷としては、肛門や性器の外傷(腟上部の裂傷など)のほか、体の他の部位にも挫傷、眼の周囲のあざ、切り傷、ひっかき傷などがみられます。

レイプの心理的な影響はしばしば身体的な影響よりも深刻なものになります。

初期の症状

レイプの直後に、被害者にストレスの症状がみられることがあります(急性ストレス障害)。被害者の行動は、多弁、緊張、号泣、震えといったものから、ショックと不信、感情の欠如、冷静や笑みまで、多岐にわたります。感情の欠如が、関心の欠如を示すことはまれです。むしろ感情の欠如は、起こったことについて考えるのを避けたり、感情をコントロールしたりする手段でしょう。あるいは、身体的な消耗や感情の麻痺のために被害者がほとんどまたはまったく感情を表していない可能性もあります。

レイプの被害者は典型的に、恐怖、不安、いらだちも感じます。怒り、抑うつ、困惑、羞恥心、罪悪感(レイプされるようなことを自分がしたのではないか、回避する手段があったのではないかなどと考える)などを抱くこともあります。被害者の怒りは、彼ら自身に向けられることや、病院スタッフや家族に向けられてしまうこともあります。

睡眠障害や悪夢もよく起こります。

心的外傷後ストレス障害

心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症する被害者もいます。症状が以下に該当する場合に心的外傷後ストレス障害と診断されます。

  • 1カ月を超えて続く

  • 社会生活や仕事に著しい影響を及ぼす

  • 他の医学的問題や薬剤の使用が原因ではない

心的外傷後ストレス障害の症状には、以下のものがあります。

  • 受けた心的外傷を再体験する(例えば、フラッシュバックとしてや、頭の中に割り込んでくるような、動揺をもたらす思考やイメージとして)

  • 受けた心的外傷に関連する状況、思考、感情を避ける

  • 思考や気分に問題が生じている(受けたレイプに責任を感じたり、前向きな気持ちになることができないなど)

  • 危険の徴候に過度に敏感になり、ちょっとしたことで驚く

  • 極度の緊張、興奮、いらだちを感じ、リラックスできない

  • 集中力低下や睡眠障害がある

被害者の多くにはPTSDと抑うつの両方がみられます。

ほとんどの被害者では、数カ月ほど経過すれば症状はかなり薄れていきます。

感染症や妊娠のリスク

レイプの後、被害者には性感染症淋菌感染症トリコモナス症クラミジア感染症梅毒など)、B型肝炎C型肝炎、およびその他の感染症(細菌性腟症など)のリスクがあります。1回の性交で感染する可能性は低いものの、特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症の可能性が懸念されます。

女性が妊娠する可能性もあります。

評価

  • 身体診察

  • 被害者が承諾すれば、レイプの証拠の収集および性感染症の検査

  • 妊娠検査

レイプの後には、徹底的な医学的評価を受けることが重要です。可能な限り、レイプや性的暴行を受けた女性は、性暴力被害者支援看護職(SANE)などの性的暴行後の対応の訓練を受けたスタッフのいる診療センターを受診するようにします。米国ではこのようなセンターは、病院の救急部門にある場合もあれば、別個の施設である場合もあります。地域によっては、医療、法医学、地域のレイプ被害者支援センター、警察、および検察当局で働くメンバーからなる、性暴力被害対応チーム(SART)があります。レイプを受けた男性も医師の診察を受けるべきであり、レイプを受けた女性とほぼ同じ対応を受けます。

レイプの後、被害者は後の起訴を可能にするための手続きに同意するかどうか決めます。被害者にはこのような手続きをとることのメリットとデメリットが説明されるべきです。一般的には同意することが被害者にとって最善の利益となりますが、同意しなければならないというプレッシャーを感じる必要はありません。

米国の法律では、レイプ被害者が手続きに進むことを選択した場合、被害者が受診した医師には警察への通報義務と被害者の診察義務があります。診察では、レイプ犯を起訴するための証拠が得られます。被害者がシャワーを浴びたり、体を洗ったり、歯をみがいたり、爪を切ったり、着替えたりすることなく、可能であれば排尿もしていない状態で、できるだけ早く医療機関を受診した場合に、最良の証拠が得られます。この診察で作成された医療記録は、ときに法廷での証拠として使用されます。ただし医療記録は、被害者が書面で同意するか、提出を求める令状が発行されない限り、公表されることはありません。医療記録はまた、後に被害者の証言が必要になったときにレイプの詳細を思い出す手がかりにもなります。

レイプの直後には、被害者が身体診察を受けることをためらったり、不安を感じたりする場合もあります。診察の前に、被害者は担当医師の性別についての希望を尋ねられます。男性医師が女性を診察する場合、被害者の不安を和らげるために女性の看護師かボランティアが立ち会います。患者には可能な限りプライバシーと静穏が提供されます。

診察を始める前に、医師は診察中に何をするか説明し、被害者に診察を開始することの承諾を求めます。被害者は診察やその目的について、自由に質問するようにします。

医師は診察と治療の参考にするため、経験した出来事を被害者に話してもらうよう依頼します。しかし、被害者がレイプについて話すことに恐怖感を覚え、苦痛を感じることもよくあります。被害者は、詳しい説明は応急処置を受けてからにしたいと要求することもできます。被害者はまずけがの治療を受けて、気持ちを落ち着けることが必要になる場合もあります。

妊娠の可能性を判断するために、医師は最後の月経がいつであったかと避妊法を使用しているかを質問します。精子が検出された場合の分析に備えて、レイプされる前の最近の性交の有無やその時期などについても質問します。

医師は診察では切り傷やすり傷などの身体的な外傷に注意し、性器や肛門に外傷がないかを調べることもあります。外傷は写真に撮っておきます。挫傷による皮下出血などは後になってから現れてくるため、再度写真を撮る場合もあります。

証拠として精液などの体液のサンプルを綿棒で採取します。加害者の毛髪、血液、皮膚(ときに被害者の爪の下から検出される)のサンプルも収集します。加害者を特定するために、これらのサンプルでDNA検査を行うこともあります。被害者の衣類の一部を証拠として保存しておく場合もあります。

被害者の同意があれば、HIV感染症を含めた感染の有無を調べるための血液検査を行います。最初の検査で淋菌感染症、クラミジア感染症、梅毒および肝炎が陰性と判定された場合は、被害者は6週間後に再検査を行います。梅毒と肝炎については、ここで陰性と判定された場合には、さらに6カ月後にも検査を行います。HIV感染症の血液再検査は90日後と180日後にも行うことがあります。女性では、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症について調べるため、6週間後に子宮頸部細胞診(パパニコロウ検査)を行います。

通常は、レイプを受けた女性がその時点ですでに妊娠していたかどうかを調べるため、尿中のヒト絨毛性ゴナドトロピンの濃度を測定する妊娠検査を最初の診察時に行います。結果が陰性であった場合は、6週間以内に再度検査を行い、レイプによる妊娠の可能性を確認します。

治療

  • 身体的外傷の治療

  • 被害者の同意があれば、HIV感染症を含む感染症の予防のための薬剤やときにワクチン

  • 女性の希望があれば緊急避妊

  • 心理的支援または介入

診察の終了後には、必要に応じて被害者に洗浄、着替え、洗口液の使用、排尿などのための設備が提供されます。

身体的外傷があれば治療を行います。性器や肛門の裂傷は、外科的修復が必要な場合があります。

感染症の予防

性感染症の予防のため、被害者には抗菌薬が投与されます。例えば、以下のすべてを投与することがあります。

被害者がB型肝炎のワクチン接種を受けていない場合は接種を行い、1回目の接種の後、1カ月後と6カ月後にあと2回の接種を行います。

HIV検査の結果が陽性であれば、被害者はレイプの前におそらくHIVに感染しています。これは、性交によるHIV感染は一般的に9日~6カ月後まで検出できないためです。HIV検査の結果が陽性となった場合は、直ちにHIV感染症に対する治療を開始します。

HIV検査結果が陰性であった場合は、次の数カ月の間に検査を数回繰り返します。

検査結果にかかわらず、被害者にHIV感染症を予防するための治療が行われることがあります。見知らぬ暴行者からのレイプによってHIV感染症を発症する可能性は低く、平均でわずか約0.2%です。このリスクは以下があった場合に上昇する可能性があります。

  • 肛門への挿入

  • 暴行者または被害者の出血

  • 男性間のレイプ

  • 複数の暴行者によるレイプ(刑務所内の男性間で発生することがある)

  • HIV感染症が通常より多くみられる地域で起きたレイプ

HIV感染症の予防のための治療は、挿入から4時間以内に開始すると最も効果的で、挿入から72時間を超えてからは行うべきではありません。

妊娠の予防

被害を受ける前から妊娠していた場合を除き、女性が望めば緊急避妊のための処置を行います。通常、高用量の経口避妊薬を直ちに服用し、その12時間後にも再度服用します。この処置はレイプの発生から72時間以内に行えば99%の確率で効果があります。

レイプから10日以内に子宮内避妊器具(IUD)を挿入する方法は、さらに効果があります。

レイプにより妊娠した場合は、人工妊娠中絶も検討できます。

心理的支援の提供

医師はレイプを受けた女性に、レイプ後に被害者によくみられる心理的反応(過度の不安、恐怖や罪悪感)について説明します。この情報は、被害者が自らの反応を受け入れ、対処するのに役立ちます。

また、できるだけ早い時期にレイプ被害者への介入の訓練を受けたスタッフによる面談が行われます。米国では、その地域のレイプ被害者支援チームに被害者を紹介します。このチームは、有用な医学的、心理的、法的サポートを被害者に提供することができます。レイプやレイプに対する気持ちについて話すことが、被害者にとって回復の一助となる可能性があります。

心理士、ソーシャルワーカー、精神科医などに紹介してもらうことも可能です。

被害者の家族や友人が不安、怒り、罪悪感など、被害者と同じような感情を抱くことがあります。また、被害者を理不尽に責めてしまうこともあります。友人や家族、警察職員などが被害者に対して否定的(ときには批判的あるいは嘲笑的)な態度をとることもあり、そうした場合、被害者は自己の感情に加えて、こうした人々の反応にも対処しなければならなくなります。周囲のこうした反応により、被害者の回復が妨げられる可能性があります。家族や親しい友人には、レイプ被害者支援チームのメンバーや性的暴行時の評価を専門に行う医療スタッフと面談して、自身の気持ちや被害者を支えていく方法について話し合うことが有益となります。通常は、支持的な態度で被害者の話を聞き、レイプについて強い感情を表さないのが、最も助けになる対応です。被害者を責めたり批判したりすることは回復の妨げになります。

医療従事者、友人および家族による支援ネットワークが被害者にとって大きな助けとなる可能性があります。

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