Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

乳がん

執筆者:

Mary Ann Kosir

, MD, Wayne State University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2019年 10月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

乳がんは、乳房の細胞が異常をきたし制御不能に分裂することで発生します。通常は、乳汁を作る乳腺(小葉)または乳腺から乳頭(乳首)へ乳汁を運ぶ乳管にがんが発生します。

  • 乳がんは、女性がかかるがんの中で発症数が最も多く、がんによる死亡の中では第2位を占めています。

  • 通常、最初に現れる症状は痛みのないしこりで、自分で気づくことがほとんどです。

  • 乳がんスクリーニングの推奨は様々で、定期的なマンモグラフィー、医師による乳房の診察、乳房自己検診などが含まれます。

  • 充実性のしこりが見つかった場合、医師は中空の針を使用して組織サンプルを採取するか、切開によりしこりの一部または全部を切除して、組織の顕微鏡検査を行います(生検)。

  • 乳がんでは、ほぼ常に手術が必要になるほか、ときに放射線療法、化学療法、その他の薬剤、これらの併用療法も用いられます。

  • 治療の結果を予測することは難しく、がんの特徴や広がりによっても異なります。

乳房の病気の概要も参照のこと。)

乳房の病気には、良性のもの(がんではない)もあれば、悪性(がん)のものもあります。ほとんどは良性で、生命を脅かすものではありません。多くは治療を必要としません。一方、乳がんの場合は乳房を失ったり、命を落としたりすることもあります。そのため多くの女性が乳がんを最も怖い病気だと考えています。しかし、定期的に自己検診を行い、定期的に主治医の診察を受け、勧めに従ってマンモグラフィー(乳房X線撮影)検査を受けることにより、問題があれば多くは早期に発見することができます。乳がんの早期発見は、治療の成功のために大変重要です。

乳がんは、米国の女性にみられるがんの中で最も多く、ヒスパニック系女性では最も多い死因であり、他の人種の女性では2番目に多い死因(肺がんに次ぐ)です。専門家による2019年の米国の状況予測は以下の通りです。

  • 約26万8600人の女性が浸潤性乳がんと診断される。

  • 6万2930人近くの女性が非浸潤性乳がんと診断される。

  • 4万1760人近くの女性が乳がんにより死亡する。

男性の乳がんは全乳がんのおよそ1%を占めます。

多くの女性が乳がんに恐怖を抱いており、その理由の1つは、乳がんがよくある病気であるということです。しかし、乳がんに対するおそれの一部は誤解に基づいています。例えば、よく引き合いに出される「女性の8人に1人は乳がんになる」という数字は、誤解を生みます。この数字は女性の出生時から95歳までの推定値です。つまり95歳以上まで生きる女性が8人いれば、そのうち1人は乳がんを発症するという理論上の値なのです。これに対し、40歳の女性が乳がんを10年以内に発症する確率はおよそ70分の1です。ただし、このリスクは年齢を重ねるにつれて上昇します。

icon

乳がん発生のリスク

年齢(歳)

10年間の発生リスク(%)

20年間の発生リスク(%)

30年間の発生リスク(%)

30

0.5

2.0

4.3

40

1.5

3.8

7.1

50

2.4

5.7

9.1

60

3.5

7.1

9.2

70

4.1

6.4

Based on the seer.cancer.gov web site.Accessed on 10/16/19.

乳がんの危険因子

乳がんの発生リスクに影響を与える要因は複数あります。したがって、リスクが平均を大幅に上回る女性もいれば、平均より低い女性もいます。年齢や特定の異常遺伝子など、リスクを増大させる要因の多くは、避けることができません。ただし、定期的な運動(特に青年期から若年成人期の)により、乳がんの発生リスクが低下する可能性はあります。

しかし乳がんの場合には危険因子の是正よりも、早期発見を常に心がけることの方がはるかに大切で、早期に診断と治療を行えば、治癒の可能性も高くなります。マンモグラフィーを定期的に行うことで、乳がんを早期発見できる可能性が高くなります。定期的な乳房自己検診も医師によっては推奨されていますが、これにより乳がんによる死亡リスクが低下することは示されていません。

年齢

加齢は乳がんの最も重要な危険因子です。乳がんのほとんどは50歳以上の女性に発生しています。75歳を過ぎると最もリスクが高くなります。

乳がんの既往歴

乳がんの既往がある場合には、乳がんのリスクが高くなります。がんができた方の乳房を切除した後に反対側の乳房にがんが発生するリスクは、1年当たり約0.5~1.0%です。

乳がんの家族歴

第1度近親者(母親、姉妹、娘)に乳がんの人がいる女性では乳がんの発生リスクが2~3倍になりますが、それよりも遠い親族(祖母、おば、従姉妹)に乳がんの人がいる場合は、リスクはわずかに高くなる程度です。第1度近親者の中に乳がんの人が2人以上いる場合はリスクが5~6倍になります。

乳がん遺伝子の変異

2つの乳がん遺伝子(BRCA1およびBRCA2)の変異が特定されています。これらの遺伝子変異をもつ女性は1%未満です。乳がんの女性のおよそ5~10%はこれらの遺伝子変異の1つをもっています。これらの遺伝子変異のうち、いずれか1つをもつ女性が乳がんになるリスクは高く、生涯で46~72%もの確率でがんが発生するとみられています。しかしこのような女性が乳がんを発症した場合、乳がんのために死亡する確率は、他の乳がんの女性と比べて必ずしも高いというわけではありません。

これらの変異は、アシュケナージ系ユダヤ人に最もよくみられます。

近親者(通常は第1度近親者)の少なくとも2人に乳がんまたは卵巣がんの人がいる女性の場合、これらの変異のうちの1つをもっている可能性が高くなります。このため、こうした家族歴がある女性を除いては、これらの変異の有無を調べるスクリーニング検査を必ず行う必要はないとみられます。

乳がん遺伝子の変異のいずれか1つをもっていると、卵巣がんのリスクも高くなります。

BRCA2遺伝子変異をもつ男性は乳がんのリスクが高くなります。

いずれか1つの変異をもつ女性は、乳がんの検診をより頻繁に受けた方がよいでしょう。タモキシフェンまたはラロキシフェン(タモキシフェンの類似薬)を使用したり、ときに両側の乳房を切除する(両側乳房切除術と呼ばれます)ことで、がんの発症を予防する場合もあります。

知っていますか?

  • 乳がん遺伝子の変異をもっている女性の割合は1%未満です。

乳房の良性の変化

乳房の変化により、乳がんのリスクが上昇する場合があるようです。具体的には以下のものがあります。

  • がんの可能性を否定するために生検が必要になるような乳房の変化

  • 複雑な線維腺腫、過形成(組織の異常増殖)、乳管または乳腺の異型過形成(異常な組織構造を伴う過形成)、硬化性腺症(乳腺組織の増殖)、乳頭腫(指状の突起がある良性腫瘍)など、乳房組織の構造を変化させたり、細胞の数を増加させたり、しこりなどの異常を引き起こしたりする病態

  • マンモグラフィーで乳房組織の密度が高くみえる

乳房組織の密度が高いと、医師が乳がんを特定するのも難しくなります。

このような変化が認められる場合でも、生検で組織の構造の異常が見つかったり、乳がんの家族歴がなければ、乳がんのリスクはわずかに高くなるだけです。

初潮、最初の妊娠、および閉経の年齢

初潮が早い(特に12歳まで)人ほど乳がんの発生リスクは高くなります。

また、最初の妊娠時の年齢が高いほど、また閉経が遅いほどリスクが高くなります。1度も出産していない場合には、乳がんの発生リスクが高くなります。ただし、最初の妊娠が30歳を過ぎていた女性では、1度も出産していない女性よりもリスクが高くなります。

これらの要因によってリスクが増大するのは、ある種のがんを増殖させる作用がある エストロゲンにさらされる期間が長くなるためと考えられています。(なお、妊娠は エストロゲンの血中濃度を上昇させるものの、乳がんのリスクを低下させるといわれています。)

経口避妊薬またはホルモン療法

経口避妊薬を長期にわたり服用すると、ほんのわずかではありますが、後に乳がんを発症するリスクが高くなります。経口避妊薬の使用を中止すると、リスクはその後10年間に徐々に同世代の女性と同じ程度まで下がっていきます。

閉経後数年、あるいはもっと長い期間にわたって併用ホルモン療法(エストロゲンとプロゲスチンの併用)を受けると、乳がんのリスクが高くなります。エストロゲン単独の使用が乳がんのリスクを上昇させるとは考えられていません。

食事と肥満

食事が乳がんの発生または増殖に寄与する可能性はありますが、特定の食事(高脂肪食など)の影響に関しての科学的根拠はありません(食事とがんも参照)。

閉経後の肥満女性では、乳がんの発生リスクがやや高くなります。脂肪細胞は エストロゲンを分泌しますが、これがリスク上昇に寄与する可能性があります。しかし、高脂肪食が乳がんの発生に関係しているという証拠や、食生活を変えるとリスクが低くなるという証拠はありません。また、まだ月経がみられる肥満の女性は、むしろ乳がんが発生する可能性が低いことを示唆した研究もあります。

生活習慣

喫煙と定期的な飲酒は乳がんのリスクを高める可能性があります。専門家は、女性はアルコール摂取を1日1ドリンクに制限することを推奨しています。ここでの1ドリンクとは、ビールなら約360ミリリットル、ワインなら約150ミリリットル、ウイスキーのようなさらにアルコール度数の高い酒類なら約45ミリリットルです。

放射線曝露

30歳未満で放射線を浴びた場合(がん治療のための放射線療法や、大量のX線曝露)、乳がんのリスクが増大します。

乳がんの種類

乳がんは通常、以下により分類されます。

  • がんが最初に発生した組織の種類

  • がんの広がりの範囲

  • がん細胞に発現する受容体のタイプ

組織の種類

乳房には様々な種類の組織があります。がんは以下を含む、これらの組織のほとんどに発生します。

  • 乳管(乳管がん)

  • 乳腺または小葉(小葉がん)

  • 脂肪組織または結合組織(肉腫と呼ばれる):このタイプはまれ

乳管がんは全乳がんのおよそ90%を占めます。

乳頭パジェット病は乳管がんの一種で、乳頭とその周辺の皮膚が侵されます。最初の症状は、乳頭がただれてかさぶた状やうろこ状になる、乳頭から分泌物が出るなどです。このがんができた女性の半数よりやや多くに、乳房のしこりを触知します。乳頭パジェット病の女性は、他のタイプの乳がんにもかかっている場合があります。不快感をほとんど生じないため、症状に気づいてからもなかなか医師の診察を受けず、1年以上放置してしまう人もいます。予後(経過の見通し)はがんの大きさ、周囲組織への浸潤度、リンパ節転移の有無によって決まります。

乳房の葉状腫瘍は比較的まれで、乳がん全体に占める割合は1%未満です。およそ半数が悪性(がん)です。乳管および乳腺の周囲にある乳房組織から発生します。腫瘍の他の部位への広がり(転移)は、約10~20%の患者でみられます。乳房への再発は、約20~35%の患者でみられます。腫瘍が転移していない限り、予後は良好です。

広がりの程度

乳がんは乳房内にとどまることもあれば、リンパ管や血流を介して体内の別の部位に転移することもあります。がん細胞は乳房内のリンパ管から移動する傾向があります。乳房のリンパ管はほとんどがわきの下のリンパ節(腋窩リンパ節)へ流れ込みます。リンパ節の機能の1つは、がん細胞などの異常細胞や外来細胞をろ過して捕らえ、破壊することです。がん細胞がこうしたリンパ節を通過してしまうと、体内の別の部位に転移する可能性があります。

乳がんは骨や脳に転移しやすい傾向がありますが、肺、肝臓、皮膚、頭皮など、どの部位にも転移する可能性があります。乳がんが最初に診断されて治療を受けてから数年後から数十年後にもなって初めて、こうした部位にがんの転移が見つかることもあります。ある部位でがんの転移が発見された場合には、その時点では検出されないとしても、おそらくは他の部位にも転移していると考えられます。

乳がんは以下に分類されます。

  • 非浸潤がん

  • 浸潤がん

非浸潤がんは、局所にとどまっているがんです。乳がんの最も初期の段階です。がんが大きい場合や、乳房内の大部分を占めるほど増大する場合もありますが、周囲の組織への浸潤や他の部位への転移はありません。

非浸潤性乳管がんは乳管内に限局したがんです。このがんは周囲の乳房組織には浸潤していませんが、乳管に沿って広がり、乳房内でかなり大きくなることもあります。このタイプは非浸潤がんの85%、乳がんの20~30%を占めています。ほとんどの場合、マンモグラフィーで発見されます。浸潤がんになることもあります。

非浸潤性小葉がんは乳腺の内部(小葉)で発生します。両側の乳房の複数の部位に生じることもよくあります。非浸潤性小葉がんの女性では、罹患している乳房または反対側の乳房に浸潤がんが発生する確率は1年間で1~2%です。非浸潤性小葉がんは乳がんの1~2%を占めています。通常、非浸潤性小葉がんはマンモグラフィーでは発見できず、生検によってのみ発見されます。非浸潤性小葉がんには、古典型と多形型の2種類があります。古典型は浸潤性ではありませんが、発症している場合は、左右どちらの乳房においても浸潤がんが発生するリスクが高くなります。多形型は浸潤がんに進行します。発見されれば手術により切除します。

浸潤がんは以下のように分類されます。

  • 限局性のがん:周囲の組織に浸潤しているものの、乳房内にとどまっているがん

  • 周囲に広がったがん:胸壁やリンパ節など乳房付近の組織にも浸潤しているがん

  • 遠隔転移したがん:乳房から他の部位に転移したがん

浸潤性乳管がんは乳管内で発生しますが、管壁を越えて周囲の乳腺組織に浸潤したがんです。乳房以外の部位にも転移することがあります。このがんは浸潤性乳がんの約80%を占めています。

浸潤性小葉がんは乳腺内で発生して周囲の乳房組織に浸潤し、さらに乳房以外の部位にも広がります。他のタイプの乳がんと比べて、両側の乳房に発生する可能性が高くなります。このがんは残りの浸潤性乳がんのほとんどを占めています。

まれな浸潤性乳がんとして以下があります。

  • 髄様がん

  • 管状がん

  • 化生がん

  • 粘液がん

粘液がんは高齢の女性に発生しやすく、ゆっくりと増殖します。これらのまれながんは一般に、他の浸潤がんよりも予後がずっと良好です。

腫瘍受容体

乳がんの細胞も含め、あらゆる細胞の表面には受容体と呼ばれる分子があります。受容体には特定の物質だけが結合できる構造をもった部分があり、ここにその物質が結合することで細胞の活動に影響を及ぼします。乳がん細胞が特定の受容体をもつかどうかが、転移の速さや治療法に影響します。

腫瘍受容体には以下のものがあります。

  • エストロゲン受容体およびプロゲステロン受容体:乳がん細胞の中には エストロゲンに対する受容体をもつものがあります。 エストロゲン受容体陽性のがんは、 エストロゲンによって刺激されると増殖または転移します。このタイプのがんは若い女性よりも閉経後女性に多くみられます。閉経後女性のがんの約3分の2が、 エストロゲン受容体陽性のがんです。また、 プロゲステロンに対する受容体をもつ乳がん細胞もあります。 プロゲステロン受容体陽性のがんは、 プロゲステロンによって刺激されます。 エストロゲン受容体が陽性の乳がん、そして可能性としては プロゲステロン受容体が陽性の乳がんも、陰性の乳がんよりも増殖が遅く、予後も良好です。(エストロゲンとプロゲステロンは女性ホルモンです。)

  • HER2(HER2/neu)受容体:正常な乳腺細胞には、その増殖を助けるHER2受容体があります。(HERは、ヒト上皮成長因子受容体[human epithelial growth factor receptor]の略称で、この分子は細胞の増殖、生存、分化に関与します。)乳がん全体のおよそ20%に、HER2というタンパクの過剰発現が認められます。このようながんは非常に速く増殖する傾向があります。

その他の特徴

がんはその他の特徴に基づいて分類されることもあります。

炎症性乳がんはその一例です。この名称は、がんが発生した組織ではなくがんの症状を指します。炎症性乳がんは増殖が速く、多くの場合、致死的です。がん細胞が乳房の皮膚のリンパ管を閉塞させるため、乳房が炎症を起こしたように赤く腫れて熱をもちます。通常、炎症性乳がんはわきの下のリンパ節に転移します。リンパ節に触れると硬いしこりが感じられます。ただし、このがんは乳房全体に分布するため、しばしば乳房自体にはしこりを触知しません。炎症性乳がんは乳がんのおよそ1%を占めています。

症状

乳がんは最初のうちは無症状です。

乳がんの最初の症状として最も多いのはしこりで、通常は触れたときの感触が周囲の乳腺組織と明らかに異なります。多くの乳がん患者が、自分でしこりを発見しています。一方の乳房だけが硬く厚くなっている場合、しこりはがんの可能性があります。通常、しこりのようなものが散在している場合、特に乳房の外側上部にある場合は、がんではなく線維嚢胞性変化を示唆しています。

乳房の痛みは通常、乳がんの初期症状ではありません。

早期がんでは、しこりを指で押すと皮膚の下で自由に動くことがあります。

進行すると、通常はしこりが胸壁や皮膚に癒着します。癒着を起こしたしこりはまったく動かなくなったり、皮膚と一緒であれば動いたりするようになります。鏡の前に立って腕を頭の上へ上げることで、胸壁や皮膚にたとえわずかでも癒着しているがんがあるかどうかが分かる場合があります。胸壁や皮膚に癒着したがんが乳房内にあると、この動作を行うことで皮膚にしわやくぼみができたり、片方の乳房がもう一方の乳房と違う様子に見えることがあります。

非常に進行したがんでは皮膚表面にしこりが突出したり、化膿したようなただれができることがあります。しこりの上の皮膚はへこみができて革のようになり、色以外はミカンの皮のような状態(橙皮状)になることもあります。

しこりは痛みを伴うことがありますが、痛みはがんの徴候としてはあまりあてになりません。痛みだけでしこりがない場合には、がんであることはめったにありません。

がんが広がっている場合、わきの下(特に乳がんがある側)のリンパ節が硬く小さなしこりとして触れることがあります。複数のリンパ節が融合したり、皮膚や胸壁に張り付いていることもあります。リンパ節自体は痛みませんが、軽い圧痛がみられることはあります。

ときに、がんが他の臓器に転移して初めて最初の症状が現れることがあります。例えばがんが骨に転移すれば、骨が痛んだり弱くなったりし、骨折を引き起こすことがあります。肺に転移した場合は、せきや呼吸困難が起こることがあります。

炎症性乳がんでは、乳房が赤く腫れて熱をもち、まるで感染を起こしたような状態になります(実際に感染しているわけではありません)。皮膚は毛穴がへこんで革のようになり、ミカンの皮のような状態になったり、すじ状の隆起が生じることがあります。乳頭が陥没することもあります。乳頭からの分泌物もよくみられる症状です。多くの場合、乳房にしこりは認められませんが、乳房全体が大きくなります。

スクリーニング

乳がんは早期に自覚症状が出ることがまれで、早期に治療すれば治癒する可能性が高くなることから、スクリーニングが重要になります。スクリーニングとは、症状が現れる前に病気を探し出すことです。

乳がんのスクリーニングには以下のものがあります。

  • 毎月の乳房自己検診

  • 医療従事者による毎年の乳房の診察

  • マンモグラフィー

  • 乳がんのリスクが高い場合、MRI検査

乳がんのスクリーニングに関する懸念事項

重篤な病気を診断できる検査であれば何でも受けるべきだと考える人がいるかもしれません。しかし、この考えは正しくありません。スクリーニングは多大な有益性をもたらしますが、問題も生み出します。例えば、ときに乳がんのスクリーニング検査では、がんがないにもかかわらずがんの存在が示唆されることがあります(偽陽性と呼ばれる)。スクリーニング検査の結果が陽性である場合、乳房生検が通常行われます。偽陽性の結果のために、必要のない生検を行い、必要のない不安、痛み、費用を被ることになります。

反対に、スクリーニング検査により存在しているがんが検出されないこともあります(偽陰性と呼ばれる)。偽陰性の結果により患者は間違って安心させられ、偽陰性でなければ受診するであろう後の症状が放置される可能性があります。

また、乳房生検で特定された悪性(がん)と思われる異常の中には、治療の必要がないものが含まれていることも分かってきています。

こういった懸念のため、医師はスクリーニング検査の使用を限定するよう試みていますが、医師や医療機関により、どのスクリーニング検査をいつ行うべきかについて様々な意見があります(表「乳がん:スクリーニングマンモグラフィーを開始すべき時期」を参照)。患者は個々のリスクについて主治医と話し合い、あるとすればどのようなスクリーニングが適しているかを主治医と一緒に判断すべきです。

乳房自己検診

以前は多くの医師が、乳房自己検診を毎月行い、しこりがないか確認することを推奨していました。これは、定期的な自己検診により早期のがんである可能性のあるしこりを検出できるとの考えからでした。

しかし、自己検診のみでは乳がんによる死亡率が下がるわけではなく、マンモグラフィーによる定期的なスクリーニングと同じレベルで早期がんを発見できるわけでもありません。自己検診ですべてのしこりを発見できるわけではないため、しこりが見つからなかった場合にも受診を継続し、推奨された方法でマンモグラフィーを受けるべきです。

乳房の自己検診の方法

1.鏡の前に立ち、乳房を観察します。左右の乳房の大きさがわずかに違うのは正常です。大きさの差に変化はないか、乳頭(乳首)が奥にめりこむ(陥没乳頭)などの変化がないか、分泌物が出ていないかを調べます。しわやへこみがないかも調べます。

乳房の自己検診の方法

2.鏡に映った乳房をよく見ながら、両手を上げて頭の後ろで手を組み合わせ、後頭部に押しつけます。この姿勢を取ることによって、がんによる微妙な変化が見つけやすくなります。乳房の形と輪郭に変化がないか、特に乳房の下側をよく観察します。

乳房の自己検診の方法

3.手を腰にしっかりと置き、わずかに鏡の方に前かがみになり、肩と肘を前の方に押し出します。その姿勢でもう1回、乳房の形と輪郭に変化がないか観察します。

乳房の自己検診の方法

以下の項目は、ぬれた手を皮膚の上で滑らせやすいようにシャワーを浴びながら行うとよいでしょう。

乳房の自己検診の方法

4.左腕を上げます。右手の指を3~4本そろえ、指の腹で左の乳房をくまなく調べます。乳頭から乳房の周囲に向かって徐々に指で小さな円を描くように触れていきます。皮膚の下の異常なしこりや腫瘍を感じ取れるように、優しく、しっかりとなでるように探ります。乳房全体を調べるように注意します。わきの下や、乳房とわきの下の間にもしこりがないか注意深く調べます。

乳房の自己検診の方法

5.左の乳頭を軽くつまみ、分泌物が出ていないか調べます。(乳房自己検診のときに限らず、分泌物がみられた場合は必ず医師の診察を受けるようにします。)

続いて右の乳房についても同様に、右腕を上げて左手を使って4と5のステップを行います。

6.あお向けに寝て、枕か畳んだタオルを左肩の下に入れ、左腕を頭上に伸ばします。この姿勢を取ることにより、乳房が平らになって調べやすくなります。4と5の要領で左の乳房を調べます。右の乳房にも同じことを繰り返します。

乳房の自己検診の方法

自己検診を行うと決めた場合は、この方法を毎月同じ時期に行います。月経のある女性では、月経が終わってから2~3日後がよく、この時期ならば、乳房に圧痛や張りがあることが少ないからです。閉経後女性は毎月1日などの覚えやすい日を選ぶとよいでしょう。

Adapted from a publication of the National Cancer Institute.

医療従事者による乳房の診察

乳房の診察は、女性の定期的な身体診察の一部として行われることがあります。ただし、乳房自己検診と同様、医師の診察でもがんが見逃される可能性があります。女性にスクリーニングが必要であるか、本人が希望する場合には、医師による診察で異常が発見されていないとしても、より感度の高い検査であるマンモグラフィーなどを行うべきです。多くの医師や医療機関は、もはや医師による毎年の乳房の診察については必須としていません。

診察では、医師は乳房が不規則な形をしていないか、皮膚のへこみやひきつりがないか、しこりや分泌物がみられないかを観察します。次に、平らに広げた手のひらで左右の乳房を触診し、ほとんどの乳がんが最初に浸潤するわきの下のリンパ節や、鎖骨の上のリンパ節が腫れていないか調べます。正常なリンパ節は皮膚の上から触知できることはないため、この方法で触知できるリンパ節は腫大していると判断されます。ただし、リンパ節腫大はがん以外の良性疾患でもみられることがあります。リンパ節が触知された場合は、それが異常であるかどうかを確認します。

マンモグラフィー

マンモグラフィーではX線を用いて、乳房に異常のある領域がないかを調べます。放射線技師はフィルム台の上に乳房を乗せます。合成樹脂製の板の高さを調整して乳房を上からしっかり押さえます。乳房を平らに圧迫することで、組織を最大限に撮影して調べることができます。乳房の上から下に向けてX線を照射し、乳房のX線写真をとります。それぞれの乳房について、この状態での撮影を2回行います。続いてフィルム台を縦に回転させて乳房の両側に置き、横からX線を照射します。この位置で乳房の側面像を撮影します。

マンモグラフィー:乳がんのスクリーニング

マンモグラフィー:乳がんのスクリーニング

マンモグラフィーは、乳がんの早期発見に最も適した方法の1つです。がんのおそれがある病変を早期の段階で検出できるよう設計された高感度の検査法であり、ときには触知可能となる何年も前に発見することが可能です。マンモグラフィーは非常に感度が高いため、実際にはがんがないのにがんの疑いが示されることもあります(偽陽性)。スクリーニング(何も症状やしこりがない女性を対象とする)で検出される異常の約85~90%はがんではありません。マンモグラフィーの結果が陽性であった場合には、確認のためさらに詳しい検査(通常は乳房生検)が行われます。マンモグラフィーで乳がんが見落とされる確率は最大15%といわれています。乳房組織の密度が高い女性では、精度が下がります。

マンモグラフィーの際に乳房トモシンセシス(3次元マンモグラフィー)を用いると、高解像度で鮮明な乳房の3次元画像が得られます。この方法は、がんの検出をいくらか容易にします(特に乳房組織の密度が高い女性において)。しかしこのタイプのマンモグラフィーは、従来のマンモグラフィーと比べて曝露する放射線量がほぼ2倍になります。

マンモグラフィーによる定期的なスクリーニングについての推奨は様々です。専門家の意見は以下の点で分かれています。

  • いつ開始すべきか

  • どのくらいの頻度で行うべきか

  • いつ止めるべきか、または止めるべきか否か

スクリーニングマンモグラフィーはすべての女性に50歳から推奨されますが、一部の専門家は40歳または45歳から推奨しています。開始年齢にかかわらず、マンモグラフィーはその後1~2年毎に繰り返します。40~49歳の女性においてはスクリーニングの有益性はそれほど明らかでないため、定期的なマンモグラフィーをいつ開始するかについての専門家の推奨は分かれています。専門家はまた、スクリーニングの開始が早すぎることや、スクリーニングを頻繁に行いすぎることも懸念しています。これは放射線への曝露が増えることや、女性の生涯の間に浸潤がんに進行しない腫瘍に対し不必要な治療が行われる可能性があるためです。

乳がんの危険因子がある女性は、マンモグラフィーを50歳より前から開始するメリットの方が大きいでしょう。スクリーニングマンモグラフィーのリスクと便益について、主治医と話し合うべきです。

女性の期待余命や、スクリーニング継続希望の有無により、定期的なマンモグラフィーは75歳で止めてよいでしょう。

異常組織は他の種類の乳房組織とよりも脂肪組織との方が区別しやすく、加齢とともに乳房の脂肪組織は増加するため、マンモグラフィーは高齢の女性ほど正確になります。

知っていますか?

  • マンモグラフィーによる定期的なスクリーニングで検出される異常のうち、がんであるのはわずか10~15%程度です。

使用する放射線の量は極めて少なく、安全とされています。

撮影時に多少の不快感を伴うことがありますが、不快感が続くのはほんの数秒です。マンモグラフィーは、乳房の圧痛が比較的少ない月経の期間中に受けるとよいでしょう。

制汗用の消臭剤やパウダー(デオドラント剤)はマンモグラフィーの画像に影響することがあるため、検査の日は使わないようにします。検査全体にかかる時間は約15分です。

乳がん:スクリーニングマンモグラフィーを開始すべき時期

マンモグラフィーによる定期的なスクリーニングを開始すべき時期について専門家の意見が分かれることがあります。スクリーニングはがんを見つけるためのもので、がんは致死的になりうることから、遅い時期(50歳)ではなく早い時期(40歳)から始めるべきだと考える人もいるかもしれません。しかし、スクリーニングにはデメリットもあり、若い女性にとってのメリットは、高齢の女性にとってのメリットほど明らかではありません。

以下は、意見が分かれる理由の一部です。

  • スクリーニングは特に若い女性で、がんではない可能性のある異常を検出します。異常が発見されるとしばしば、生検を行い、異常を詳しく確認することになります。このようにスクリーニングにより乳房生検の実施が増え、ときに不必要な不安や費用を被るだけでなく、検査のために乳房内に組織の瘢痕化が起こる可能性もあります。

  • 非浸潤性乳がん(まだ広がっていないがん)など、一部の乳がんは致死的ではありません。成長が遅く、生涯を通じて死亡の原因になることがない乳がんもあります。しかし、増殖し続け、他の組織に浸潤する乳がんもあります。スクリーニングで見つかったがんのどれだけが、最終的に死亡につながるのかは明らかではありません。しかし現在のところ医療従事者は、どのがんは治療すべきで、どのがんは治療すべきでないかを判断するための十分な科学的根拠をもっていないため、見つかったがんはすべて治療されます。

  • マンモグラフィーは年齢が若いと、精度が下がります。このためスクリーニングで、死に至る可能性があるものも含め、がんが見落とされることがあります。

  • 1つの命を救うために、たくさんの女性をスクリーニングしなければなりません。女性が高齢になると、1つの命を救うためにスクリーニングする必要のある女性の数は減ります。50歳以上の女性では、スクリーニングで多くの命を救うことができるため、推奨されます。

MRI検査

BRCA変異をもつなど、乳がんのリスクが高い女性のスクリーニングには通常、MRI検査が用いられます。これらの女性では、スクリーニングにマンモグラフィーと医療従事者による乳房の診察も含めるべきです。

診断

  • マンモグラフィー

  • 乳房の診察

  • 生検

  • ときに超音波検査

身体診察やスクリーニングの検査で乳房にしこりなどの異常が見つかった場合は、さらに検査を行う必要があります。

マンモグラフィー以外の方法で異常が見つかった場合には、通常まずマンモグラフィーを行います。マンモグラフィーでは将来比較するための参考情報が得られます。切除して顕微鏡検査(生検)を行う必要のある組織を特定するのに役立てることもできます。

医師が身体診察の結果に基づき進行がんを疑う場合、生検がまず行われます。そうでなければ、評価の方法は乳房のしこりの評価と同じです。

液体で満たされた嚢胞と充実性のしこりを判別するため、超音波検査を行うこともあります。嚢胞は通常は悪性(がん)ではないため、両者の判別は重要です。嚢胞の場合は特に治療せずにモニタリングするか、あるいは中にたまった液体を細い針の付いたシリンジで抜き取ります(吸引)。以下いずれかの場合にのみ、嚢胞から吸引した液体にがん細胞が含まれていないかを検査します。

  • 液体に血が混じっている、または濁っている

  • ほとんど液体が抜き取れない

  • 液体を抜き取った後もしこりが残る

これらがなければ、4~8週間後に再度受診します。このときに嚢胞が触知できなければ、良性と考えられます。また嚢胞ができていれば再度液体を抜き取り、顕微鏡で検査します。3回目に嚢胞がまたできている場合、または吸引してもなくならない場合は、生検を行います。まれですが、がんが疑われる場合には嚢胞を切除します。

乳房生検

充実性のしこりの場合はがんの可能性が高いため、組織サンプルの生検を行いがん細胞がないか調べます。

医師は以下のタイプの生検のうち1つを行います。

  • コア針生検:先端が特殊な中空の太い針を使用して、乳房組織のサンプルを採取します。

  • 直視下(外科的)生検:医師が皮膚および乳房組織を小さく切開し、しこりの一部または全部を切除します。このタイプの生検は、針生検ができない場合(しこりが触知できないなど)に行われます。針生検でがんが検出されなかった後に、針生検でがんを見逃していないことを確かめるために行われる場合もあります。

医師が生検の針を刺す位置を決めるため、生検の際にはしばしば画像検査が行われます。画像ガイド下の生検により、コア針生検の精度が向上します。

例えば充実性のしこりが触知できるとき、コア針生検の際に超音波を用いて、異常組織の位置の特定に役立てることができます。

MRI検査でのみ異常が認められる場合、MRI画像を頼りに位置を確認しながら生検の針を挿入します。

定位生検がますます頻繁に行われています。これは医師が異常組織の位置を正確にとらえてサンプルを採取するのに役立ちます。定位生検では、医師は2つの角度からマンモグラフィーを撮影し、それらの2次元画像をコンピュータに送ります。コンピュータが画像を比較して異常組織の正確な位置を3次元で計算します。

生検の際に画像ガイドを用いて針を刺す場合、その位置にマーク付けるため、クリップが一般に使用されます。

生検で得られた組織をX線撮影し、そのX線画像を生検前のマンモグラフィーと比較し、異常組織がすべて取り除かれたかどうか確認します。生検の6〜8週間後にマンモグラフィーを行い、見逃された異常組織が少しでもないかどうかを確認します。

ほとんどの場合、これらの検査のために入院する必要はありません。通常は、局所麻酔のみで行われます。

乳頭パジェット病が疑われる場合、通常は乳頭組織の生検を行います。このがんは、乳頭からの分泌物サンプルを顕微鏡で検査することによって診断がつくこともあります。

生検では、採取した組織を病理医が顕微鏡で観察してがん細胞の有無を判断します。一般に、マンモグラフィーで異常が見つかった人のうち、生検によってがんと確定されるのは、ほんのわずかです。

がん細胞が検出された場合、生検サンプルを分析し、以下のようながん細胞の特徴を調べます。

  • 乳がん細胞の中に エストロゲンまたは プロゲステロンに対する受容体があるかどうか

  • HER2受容体の数

  • がん細胞の分裂速度

  • 一部の種類の乳がんについては、がん細胞の遺伝子検査(多遺伝子パネル検査)

これらの情報は、がんが広がる速さや、どの治療法がより有効になりそうかを医師が推定するのに役立ちます。

がん診断後の評価

がんが診断されれば、医師は通常、外科医、抗がん剤治療の専門医、放射線科医を含むがんの専門医(腫瘍医)のチーム(腫瘍委員会)と相談して、行うべき検査について決定し、治療を計画します。

検査には以下のものがあります。

  • がんの広がりの有無を調べるための胸部X線

  • 血算、肝機能検査、カルシウム濃度の測定を含む血液検査(これもがんの広がり有無を調べるため)

  • BRCA遺伝子の危険因子をもつ女性では、これらの遺伝子がないか確認するための血液または唾液の分析

  • ときに骨シンチグラフィー(全身の骨の画像検査)、腹部と胸部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、およびMRI検査

病期診断

がんと診断された場合は、病期を決定します。病期は0からIVまでの数字で示され(下位分類が文字で示されることもあります)、がんの程度と進行度を反映しています。

  • 非浸潤性乳管がんなどの非浸潤性乳がんは0期に分類されます。非浸潤性とは、局所にとどまっているがんを意味します。周囲の組織に浸潤したり、体の別の部位に広がったり(転移)していないがんのことです。

  • 乳房内または乳房付近の組織に広がったがん(限局性乳がんまたは所属リンパ節転移を起こした乳がん)はI〜III期に分類されます。

  • 転移性乳がん(乳房とわきの下のリンパ節から体の他の部位に転移したがん)はIV期に分類されます。

がんの病期診断は、医師が適切な治療法を決定し、予後を予測する上で役立ちます。

TNM分類システムなど、乳がんの病期の決定には多くの要素が関係します。

TNM分類では以下の情報に基づいて病期が決定されます。

  • 腫瘍の大きさ(T):がんの大きさ、0~4で示される

  • リンパ節転移(N):がんがリンパ節に広がっている範囲、1〜3で示される

  • 転移(M):がんが他の臓器に広がっているか(転移しているか)、0(なし)または1(転移あり)で示される

その他の重要な病期診断の要素としては、以下のものがあります。

  • グレード:顕微鏡下でのがん細胞の異常の程度、1〜3で示される

  • ホルモン受容体の状態:がん細胞の中に エストロゲン プロゲステロンまたはHER2に対する受容体があるかどうか

  • がんの遺伝子検査(Oncotype DX検査など):一部の乳がんで、がんにどの異常遺伝子がいくつ存在するか

すべてのがん細胞は異常にみえますが、そのなかでも一部のがん細胞は他のがん細胞よりもさらに異常にみえるため、グレードは一様ではありません。がん細胞が正常な細胞と大きく異なっていないようにみえる場合、がんは高分化型とみなされます。がん細胞が極めて異常に見える場合、それらは未分化型または低分化型であるとみなされます。高分化型のがんは、未分化型または低分化型のがんよりもゆっくりと成長し、広がる傾向があります。顕微鏡下で観察されたこのような違いに基づいて、医師はほとんどのがんのグレードを決定します。

がん細胞内に存在するホルモン受容体異常な遺伝子が、がんが様々な治療にどのように反応するか、また予後がどうなるかに影響します。

主治医はがんの病期について患者に話し、それが治療と経過の見通しに関して意味するところを説明します。

予後(経過の見通し)

一般的に、予後は以下によって決まります。

  • がんの浸潤度および大きさ

  • がんのタイプ

  • リンパ節転移の有無

がん細胞が存在するリンパ節の数および位置は、がんが治癒可能かどうか、そうでない場合に女性がどれくらい生存できるかを決定する主な要因の1つです。

乳がんの5年生存率(診断から5年後に生存している女性の割合)は以下の通りです。

  • がんが最初にできた部位にとどまっている場合(限局性)は98.8%

  • がんが付近のリンパ節に転移しているが、それ以上の広がりはない場合(周囲に広がったがん)は85.5%

  • がんが遠く離れた場所に転移している場合(転移性)は27.4%

  • がんの病期が診断されていない集団では54.5%

以下の場合に乳がんの女性の予後は悪くなる傾向にあります。

  • 20代や30代で乳がんと診断される

  • 腫瘍が大きい

  • がん細胞の分裂が速い(明確な境界がない腫瘍や乳房全体に分布しているがんなど)

  • 腫瘍に エストロゲンまたは プロゲステロンに対する受容体がない

  • 腫瘍にHER2受容体の過剰発現が認められる

  • BRCA1遺伝子変異がある

BRCA2遺伝子変異のために、今あるがんが悪い結果につながることはおそらくありませんが、BRCA遺伝子変異のいずれかをもっていることで、乳がんの再発リスクが上昇します。

予防

以下の女性には、乳がんのリスクを低下させる薬剤(化学予防)の使用が勧められることがあります。

  • 年齢が35歳以上で非浸潤性小葉がん、または乳管や乳腺の異常な組織構造(異型過形成)の既往がある女性

  • BRCA1またはBRCA2遺伝子の変異がある女性

  • 現在の年齢、月経開始(初潮)年齢、初産年齢、第1度近親者に乳がんの人がいる場合のその数、およびこれまでの乳房生検の結果から、乳がんの発生リスクが高い女性

化学予防の薬剤には以下のものがあります。

  • タモキシフェン

  • ラロキシフェン

化学予防を始める前に、起こりうる副作用について主治医に質問すべきです。

タモキシフェンのリスクには以下があります。

これらのリスクは、高齢になるほど高くなります。

ラロキシフェンは、閉経後女性にはタモキシフェンと同じ程度の効果があり、子宮内膜がんや血栓、白内障のリスクはより低いと考えられています。

どちらの薬剤も骨密度を増加させるため、骨粗しょう症の女性には有益です。

治療

  • 手術

  • 放射線療法

  • ホルモン遮断薬、化学療法、またはその両方

通常、乳がんの治療は、患者の病状が十分に評価された後に開始されるため、開始までには生検から1週間かそれ以上かかることもあります。

治療の方法は乳がんの病期と種類、がんがもつ受容体によって異なります。がんの種類によって増殖の速さ、転移のしやすさ、様々な治療に対する反応などの特徴が大きく異なるため、治療方法は複雑です。また、乳がんには未解明の部分が多くあります。結果として、ある患者への最適な治療法について医師の間でも意見が分かれることがあります。

患者と主治医の考え方も、治療上の意思決定を左右します。患者は、乳がんに関してどんな事実が判明しているか、未解明のことは何か、また選択可能な治療法としてどのような方法があるかを、はっきりと分かりやすく説明してもらうべきです。そうすれば、様々な治療法の利点と欠点を考慮したり、勧められた治療法を受け入れる、あるいは断ることができるようになります。乳房の一部あるいは全体を失う治療は、心に傷を残すこともあります。こうした治療は心身の健康にかかわる感情やセクシュアリティについての考え方に大きく影響する可能性があり、自分自身がその治療に対してどのような気持ちを抱いているかをよく検討する必要があります。

医師はときに、乳がん患者に、新しい治療法の研究への参加を求めることもあります。新しい治療法は、生存率や生活の質を改善することを目的としています。新しい治療法と従来の有効な治療法とを比較するため、研究に参加した人は全員いずれかの治療を受けることになります。研究への参加にはどのようなリスクが伴い、どのような有益性が期待できるのか、主治医によく説明を聞き、十分に情報を得た上で参加するかどうかを決定すべきです。

乳がんの治療では通常手術が行われ,放射線療法や化学療法またはホルモン遮断薬による治療などもしばしば行われます。手術では,がんの切除と乳房再建を同じ手術で行うことができる形成外科または再建外科医に紹介される場合があります。

手術

手術では悪性腫瘍(がん)といくらかの周辺組織を切除します。腫瘍の切除には主に2つの選択肢があります。

  • 乳房温存術

  • 乳房切除術

浸潤がん(I期以上)では、乳房温存術で腫瘍全体を切除できさえすれば、乳房温存術と放射線療法の併用療法より乳房切除術の方が有効だとはいえません。乳房温存術では、腫瘍に加え、がんを含む可能性がある組織が残るリスクを抑えるために周囲の正常な組織の一部も切除します。

腫瘍を切除する前に、腫瘍を縮小させるために化学療法を行うこともあります。この方法を用いれば、乳房切除術ではなく乳房温存術が選択できるようになる場合もあります。

乳房温存術

乳房温存術では、乳房のできるだけ多くの部分をそのまま残します(外観上の理由による)。しかし医師にとって重要なのは、がんを含む組織を残すリスクを冒さず、がんをすべて確実に切除することです。

乳房温存術では、医師はまず、腫瘍の大きさおよび切除が必要な周囲の組織の範囲(断端と呼ばれます)を判断します。断端の大きさは、乳房に対する腫瘍の大きさに基づきます。手術により断端とともに腫瘍を切除します。断端の組織は顕微鏡で検査し、腫瘍の外に広がったがん細胞がないか調べます。このような所見は、さらなる治療が必要かどうかを医師が決定するのに役立ちます。切除する乳房組織の範囲を説明するのに、様々な用語(例えば、腫瘤摘出術、乳房円状部分切除術、乳房扇状部分切除術)が用いられます。

通常、乳房温存術後には放射線療法を行います。

乳房温存術の主な利点は、術後も乳房の外観が保たれるため、自分の体に対するイメージ(身体像)を大きく損なわずに済むことです。しかし、乳房に対して腫瘍が大きい場合には乳房温存術はあまり有用ではなくなります。このような例では、腫瘍と周辺の正常組織を切除するだけでも、結局は乳房の大部分を切除することになります。乳房温存術は腫瘍が小さい場合により適しています。乳房温存術を受ける女性の約15%では周辺組織の切除範囲が少なくて済むため、治療していない乳房と比べても形や大きさにほとんど違いが生じません。しかし、大部分の女性では治療した乳房がいくぶん縮むため、形が変わる可能性があります。

乳房切除術

もう1つの手術の主な選択肢として乳房切除術があります。乳房切除術にはいくつかの種類があります。どの種類でも乳房の組織はすべて切除しますが、切除する他の組織、およびそれをどの程度切除するか、あるいは残すかの程度が異なります。

  • 皮下乳腺全摘術では、乳房の下の筋肉と傷を覆うだけの皮膚を残します。これらの組織を残すことで、乳房の再建が非常に容易になります。わきの下のリンパ節は切除しません。

  • 乳頭乳輪温存乳房切除術は皮下乳腺全摘術と同様であり、加えて乳頭と乳頭の周囲の色素に富んだ皮膚(乳輪)を温存します。

  • 単純乳房切除術では、乳房の下の筋肉(胸筋)およびわきの下のリンパ節を残します。

  • 非定型的乳房切除術では、わきの下のリンパ節の一部を切除しますが、乳房の下の筋肉は残します。

  • 定型的乳房切除術では、わきの下のリンパ節、乳房の下の筋肉をすべて切除します。この方法は乳房の下の筋肉にがんが浸潤していない限り、現在ではほとんど行われません。

リンパ節の評価

乳腺組織(や体の他の部位)からのリンパ液は、リンパ管とリンパ節のネットワーク(リンパ系)を通じて排出されます。リンパ節はリンパ液に含まれている異物や異常細胞(細菌やがん細胞など)を捕らえる働きをしています。したがって、乳がん細胞はわきの下などの乳房付近のリンパ節に行き着くことがよくあります。通常は、その際に外来細胞や異常な細胞が破壊されます。しかし、ときにがん細胞はリンパ節内で成長し続けるか、またはリンパ節を通り抜けてリンパ管に入り、体内の他の部位に転移することがあります。

医師はリンパ節を評価し、がんのわきの下のリンパ節への転移を判断します。リンパ節内でがんが検出された場合は、他の部位にも転移している可能性が高くなります。この場合、異なる治療が必要になることがあります。

医師はまず、わきの下を触診して、リンパ節の腫れがないか調べます。所見によって、以下の1つ以上を行うことがあります。

  • 超音波検査で腫大しているリンパ節がないか調べる

  • 生検(リンパ節を切除するか超音波の画像で針の位置を確認しながら針で組織サンプルを採取する)

  • 腋窩リンパ節郭清:わきの下の多くのリンパ節(一般的に10~20)を切除する

  • センチネルリンパ節郭清術:がんが転移している可能性の高いリンパ節(1つまたは複数)だけを切除する

医師がわきの下のリンパ節腫大を触知した場合やリンパ節が腫れているか分からない場合には、超音波検査を行います。リンパ節の腫れが見つかれば針を挿入し、組織のサンプルを採取して検査します(穿刺吸引細胞診またはコア針生検)。超音波の画像を見ながら、針を目的の位置まで進めます。

生検でがんが検出されれば、通常、腋窩リンパ節郭清が行われます。わきの下からリンパ節を多数切除することは、たとえリンパ節にがんがあったとしても、がんの治癒には役立ちません。しかし、わきの下からがんを取り除き、医師が治療法を決定するのには役立ちます。

超音波検査後の生検でがんが見つからないときには、センチネルリンパ節生検が行われますが、これは生検サンプルにがん細胞が含まれていなくても、リンパ節の他の部分にがん細胞が存在する可能性があるためです。

医師がわきの下のリンパ節の腫れを触知できない場合、がんを切除する手術の一環としてセンチネルリンパ節生検を行います。

センチネルリンパ節生検は通常、正常にみえているリンパ節を評価するために腋窩リンパ節郭清の代わりに行われます。センチネルリンパ節生検では、青い色素や放射性物質を乳房の腫瘍に近い位置に注入します。これらの物質が通過する経路により、乳房から最初にたどり着くわきの下のリンパ節(複数の場合もあります)を特定できます。医師はそれからわきの下を小さく切開し、腫瘍の周囲が見えるようにします。そして青色をしているか、放射線(手持ち式の装置で検出)を発しているリンパ節を探します。これらのリンパ節は、がんが転移した可能性が最も高いもので、これらのリンパ節は、がんの広がりを最初に警告するリンパ節であることから、センチネルリンパ節と呼ばれます(「センチネル」とは見張りという意味です)。医師はこれらのリンパ節を切除し、検査室に送ってがんがないかを調べます。

センチネルリンパ節にがん細胞が検出されなかった場合は、それ以上リンパ節を切除することはありません。

センチネルリンパ節にがんがあれば、以下のような要因によっては腋窩リンパ節郭清が行われることがあります。

  • 乳房切除術の計画があるかどうか

  • センチネルリンパ節がいくつあるか、またがんがそれらの外に広がっているかどうか

ときに腫瘍の切除手術中に、がんがリンパ節に広がっており、腋窩リンパ節郭清が必要であることが判明する場合があります。患者は手術の前に、もしがんがリンパ節に転移していれば、外科医がより広範囲にわたる手術を行ってもよいかを尋ねられるかもしれません。そうでなければ、必要であれば後から2回目の手術が行われます。

リンパ節を切除すると組織内の水分の排出に影響を与えるため、多くの場合、問題が起こります。腕や手に水分がたまって慢性的なむくみを生じることがあります(リンパ浮腫)。腕や肩の動きが制限されることもあります。切除するリンパ節の数が多いほど、浮腫はひどくなります。センチネルリンパ節生検では腋窩リンパ節生検よりもリンパ浮腫が生じにくくなります。

リンパ浮腫は特別な訓練を受けた療法士が治療します。療法士から、たまった液体の排出をうながすマッサージの方法や、液体が再びたまらないよう包帯を巻く方法を教えてもらいます。浮腫が生じている腕は、重い物を持ち上げるときは浮腫がないほうの腕を使う以外は、できる限り普段通りに使うようにします。指導通りに毎日、浮腫が生じている腕の運動を行い、夜はずっと包帯を巻くようにします。

リンパ節を切除した場合、患者は、医療従事者に切除した側の腕の静脈にカテーテルや針を入れないよう、また血圧を測定しないよう頼んだ方がよいと勧められることがあります。これらの手技により、リンパ浮腫が生じやすくなったり、悪化したりする可能性が高くなります。また、手術した側の手や腕を引っかいたりけがをしたりする可能性のある仕事をするときには、常に手袋をつけることも勧められます。けがおよび感染を避けることは、リンパ浮腫の発生リスク低下に役立ちます。

リンパ節切除後に起こりうる他の問題として、一時的あるいは慢性的なしびれ、慢性的な灼熱感、感染症などがみられることもあります。

センチネルリンパ節とは

乳腺組織からのリンパ液は、リンパ管とリンパ節のネットワークを通じて排出されます。リンパ節はリンパ液に含まれている異物や異常細胞(細菌やがん細胞など)を捕らえる働きをしています。ときに、がん細胞がリンパ節を通り抜けてリンパ管に入り、体内の他の部位に転移することがあります。

乳腺組織からのリンパ液はやがては多くのリンパ節にたどり着きますが、最初に流れ込むのは通常1つか数個の近くのリンパ節です。これらのリンパ節は、がんの広がりを最初に警告するリンパ節であることから、センチネルリンパ節と呼ばれます(「センチネル」とは見張りという意味です)。

センチネルリンパ節とは

乳房再建術

乳房再建術は乳房切除術と同時に行われることも、後から行われることもあります。

乳房再建術を計画するために、患者と主治医は治療中の早い時期に形成外科医に相談すべきです。再建を行う時期は患者の希望だけでなく、ほかに必要な治療によっても決まってきます。例えば再建術の前に放射線療法が行われる場合、再建術の選択肢は限られます。

ほとんどの場合、手術は以下により行われます。

  • インプラント(シリコンまたは生理食塩水でできている)の挿入

  • 患者の体の別の部位から採取した組織を使用した乳房の再建

外科医はしばしば下腹部の筋肉から乳房再建のための組織を採取します。あるいは、下腹部の皮膚と脂肪組織(筋肉ではなく)を用いて乳房を再建することもできます。

インプラントの挿入前に、医師はティッシュ・エキスパンダーを使用します。これは風船のようなもので、残っている胸の皮膚と筋肉を伸ばし、乳房インプラントのためのスペースを作ります。ティッシュ・エキスパンダーは乳房切除術中に胸筋の下に入れます。エキスパンダーには医療従事者が皮膚に針を刺してアクセスする小さな弁が付いています。入れてからの数週間、生理食塩水をこの弁から定期的に注入し、エキスパンダーを一度に少しずつ拡張していきます。拡張が完了すると、手術によりエキスパンダーを取り出し、インプラントを挿入します。

ほかには、患者の体の他の部分の組織(皮膚の下の筋肉や組織など)を再建に使用することもできます。これらの組織は、腹部、背中、殿部などから採取し、乳房を形づくるように胸部に移植します。

乳頭と周囲の皮膚は通常、後で行われる別の手術で再建されます。様々な手法が用いられます。例えば体の他の部位の組織や刺青が使用されます。

左右の乳房が釣り合うように反対側の乳房に何らかの手術を施す(豊胸、縮小、挙上)こともあります。

乳房の再建

外科医が乳がんと乳腺組織の切除(乳房切除術)を終えた後に、形成外科医が乳房を再建します。シリコンか生理食塩水の入った乳房インプラントが使用されます。より複雑な手術になりますが、腹部、殿部あるいは背中など体の別の部分から組織を移植する場合があります。

乳房再建を乳房切除術と同時に行う場合は麻酔時間が長くなり、後から行う場合は麻酔を再びかけることになります。

乳頭と周辺組織の再建は後で、しばしば診療所の外来で行われます。全身麻酔は必要ありません。

一般に、放射線療法で治療した乳房よりも再建した乳房の方が見た目には自然で、腫瘍が大きかった場合には特にその傾向があります。

シリコンや生理食塩水の入ったインプラントを使用し、残された皮膚で表面を十分に覆うことができる場合は、インプラント上の皮膚の感覚は比較的正常に保たれます。ただし、どちらのインプラントも触れたときの感覚は乳房とは異なります。体の他の部分から採取された皮膚で乳房を覆う場合は、感覚がかなり失われます。しかし、体の他の部位から採取された組織を用いれば、シリコンまたは生理食塩水の入った乳房インプラントよりも乳房組織に近い感触が得られます。

シリコンのインプラントではときに、中身のシリコンが漏れ出すことがあります。その結果、インプラントが硬くなって不快感を生じたり、外観が損なわれることがあります。また、シリコンが血流に入ることもあります。

漏れ出したシリコンによって体の他の部位にがんが発生したり、全身性エリテマトーデスなどのまれな病気にかかるのではないかと心配する人もいます。シリコンの漏出がこのような深刻な影響を及ぼすことを示す科学的根拠はほとんどありませんが、その可能性を完全に否定することもできないため、シリコン製インプラントの使用は減る傾向にあり、特に乳がんにかかっていない女性が美容整形のために使うことは少なくなってきています。

乳房の再建

妊よう性の温存

乳がんの治療を受けている間、女性は妊娠してはいけません。

治療後に出産(妊よう性の温存)を希望する場合、治療を開始する前に生殖内分泌科医に紹介されます。そして、治療後の出産を可能とする方法について知ることができます。

妊よう性を温存するための選択肢として、卵巣刺激法や卵子または胚の凍結による生殖補助医療などがあります。

妊よう性温存のための方法の選択は以下によって決まります。

  • 乳がんの種類

  • 計画されている乳がんの治療の種類

  • 患者の希望

生殖補助医療は、 エストロゲン受容体陽性のがんの患者では副作用が生じる可能性があります。

がんのない乳房の切除

特定の乳がんの女性は、反対側の乳房(がんのない方の乳房)にがんが発生するリスクが高くなります。医師は、がんが発生する前に乳房を切除するよう勧める場合があります。この手術は、予防的対側乳房切除術と呼ばれます。この予防的手術は、次のいずれかに該当する女性に適しています。

  • 乳がんの発生リスクを高める遺伝子変異(BRCA1またはBRCA2)がある

  • 乳がんまたは卵巣がんを患ったことのある近親者(通常は第1度近親者)が少なくとも2人いる

  • 胸部に対する放射線療法を30歳未満で受けた

  • 非浸潤性小葉がん(非侵襲型)がある

片方の乳房に非浸潤性小葉がんがある女性では、どちらかの乳房に浸潤性乳がんが発生する可能性が同程度あります。したがって、このような場合に乳がんのリスクを排除する唯一の方法は、両方の乳房を切除することです。一部の女性、特に浸潤性乳がんの発生リスクが高い女性では、この治療法を選ぶこともあります。

予防的対側乳房切除術の利点は次のとおりです。

  • 乳がんの女性とBRCA1またはBRCA2の変異がある女性における生存期間の延長のほか、50歳未満で乳がんと診断された女性における生存期間延長の可能性がある

  • 治療後にフォローアップのための厄介な画像検査を受ける必要性が減少する

  • 一部の女性では、不安が減少する

この手術の欠点は次のとおりです。

  • 合併症のリスクが2倍になる

予防的対側乳房切除術を行う代わりに、がんについて主治医に乳房を注意深く観察してもらうこと(例えば、画像検査によって)を選択する女性もいます。

放射線療法

放射線療法は、腫瘍の切除部位に残っているがん細胞や近接のリンパ節など周辺組織のがん細胞を殺す目的で行われます。乳房温存術または乳房切除術の後に放射線療法を行うと、手術部位の近くや近接のリンパ節にがんが再発するリスクが低くなります。大きな腫瘍が複数ある場合や、近接の複数のリンパ節にがんが転移している場合に生存の可能性が向上します。その他の場合にも生存の可能性が向上する可能性があります。

放射線療法の副作用として、乳房の腫れ、照射部位の皮膚の発赤や水疱、疲労などがあります。通常、これらの副作用は数カ月からおよそ1年以内に解消します。放射線療法を受けた女性の5%未満に、肋骨の骨折とそれに伴う軽い不快感が生じます。また約1%の女性に、放射線療法を終えて6~18カ月経ってから軽度の肺炎がみられます。肺の炎症に伴い空せきや運動時の息切れがみられ、この症状は最長で6週間ほど続きます。放射線療法後にリンパ浮腫が生じることがあります。

放射線療法を改善するために、いくつかの新しい方法が研究されています。これらの方法の多くは、より正確にがんに放射線を照射し、乳房の他の部分に放射線の影響を与えないことを目的としています。

薬剤

化学療法やホルモン遮断薬による治療により、全身でがん細胞の増殖を抑えることができます。

浸潤性乳がんの患者では、通常は化学療法またはホルモン遮断薬が、手術直後から開始されます。これらの薬は数カ月から数年継続します。タモキシフェンなど一部の薬剤は最長5~10年間継続します。腫瘍が5cmを超える場合には、手術前から化学療法やホルモン遮断薬を開始することもあります。薬物療法はほとんどの患者でがんの再発を遅らせたり、予防したりする効果があり、一部の患者の生存期間を延ばします。ただし、腫瘍が小さく、リンパ節が侵されていない場合では(特に閉経後の女性の場合)、すでに予後が非常に良好であるため、これらの薬は必要ないと考える専門家もいます。

がんの遺伝物質を分析すると(予測遺伝子検査)、どのがんが化学療法やホルモン遮断薬に反応するかを予測するのに役立ちます。

化学療法

化学療法は、がん細胞のように急速に増殖している細胞を殺したり、増殖を遅らせるために行われます。化学療法だけでは乳がんを完治させることはできません。手術や放射線療法と組み合わせる必要があります。化学療法薬は通常は静脈投与で、投与サイクルを何回か繰り返します。経口投与の場合もあります。1日投与したら2週間以上の回復期間をおく方法が典型的です。化学療法薬は単独で使用するよりも数種類を併用した方が効果的です。どの薬剤を使用するかは、近くのリンパ節からがん細胞が検出されたかどうかによってある程度決まります。

よく使用される薬剤には、シクロホスファミド、ドキソルビシン、エピルビシン、フルオロウラシル、メトトレキサート、パクリタキセルなどがあります(化学療法を参照)。

副作用(吐き気や嘔吐、脱毛、疲労など)は使用する薬剤によって異なります。化学療法薬は卵巣内にある卵細胞を破壊するため、不妊症や早期閉経の原因になる可能性があります。また化学療法によって骨髄での血球の増加が抑制されるために、貧血または出血を引き起こしたり、感染症のリスクが上昇します。そこで、骨髄を刺激して血球を増加させるために、フィルグラスチムやペグフィルグラスチムなどの薬剤が使用される場合があります。

ホルモン遮断薬

ホルモン遮断薬は、 エストロゲンまたは プロゲステロンの作用を阻害することにより、これらのホルモンに対する受容体をもつがん細胞の増殖を抑えます。 がん細胞にこれらの受容体がある場合に、ときに化学療法に代わってホルモン遮断薬が使用されます。ホルモン遮断薬によって得らえる恩恵はがん細胞の中に エストロゲンおよび プロゲステロンに対する受容体が両方ある場合に最も高くなります。

ホルモン遮断薬には以下のものがあります。

  • タモキシフェン:タモキシフェンの内服薬は、選択的 エストロゲン受容体モジュレーターの一種です。 エストロゲン受容体に結合し、乳房組織の増殖を阻害します。 エストロゲン受容体陽性のがんがある女性にタモキシフェンを5年間使用すると、生存率が約25%上昇します。10年間の治療ではさらに効果がある可能性があります。タモキシフェンは エストロゲンに関係があり、閉経後に行うエストロゲン療法の便益とリスクと同様の便益とリスクが一部みられます。例えば、骨粗しょう症や骨折のリスクが低下します。脚や肺に血栓が生じるリスクが高まります。また、子宮体がん(子宮内膜がん)が発生するリスクも高まります。タモキシフェンを服用中に少量の性器出血または性器出血があった場合には、主治医の診察を受ける必要があります。しかし、乳がん手術後の生存率向上という便益は、この子宮内膜がんの発生リスクを大幅に上回ります。タモキシフェンは エストロゲン療法とは異なり、閉経に伴う腟の乾燥やホットフラッシュ(ほてり)を悪化させることがあります。

  • アロマターゼ阻害薬:アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールなどの薬剤はアロマターゼ(一部のホルモンを エストロゲンに転換させる酵素)の作用を阻害するため、 エストロゲンの分泌量を減らす効果があります。閉経後女性には、タモキシフェンより効果があることもあります。アロマターゼ阻害薬はタモキシフェンの代わりに投与するか、タモキシフェンでの治療が完了した後に投与します。アロマターゼ阻害薬は骨粗しょう症のリスクを上昇させることがあります。

モノクローナル抗体

モノクローナル抗体は、体の免疫系の一部を構成する天然の物質を人工的に複製したもの(またはやや修飾したもの)です。この薬剤はがんと闘う免疫系の能力を高めます。

トラスツズマブペルツズマブは抗HER2薬と呼ばれるモノクローナル抗体の一種です。これらはがん細胞に過剰な数のHER2がみられる場合にのみ、転移性乳がんに対して化学療法とともに使用されます。これらの薬剤には、HER2に結合することで、がん細胞の増殖を阻止する働きがあります。ときにこれら両方の薬剤が使用されます。トラスツズマブの投与は通常1年間です。どちらの薬剤によっても心筋が弱くなることがあります。そのため治療の間、心機能をモニタリングします。

非浸潤がん(0期)の治療

非浸潤性乳管がんの治療は通常、以下のいずれかになります。

  • 乳房切除術

  • 腫瘍とともに周辺の正常組織を広範囲に切除(乳房円状部分切除術)し、放射線療法を併用または非併用

非浸潤性乳管がんでは治療の一部としてホルモン遮断薬も投与される場合があります。

非浸潤性小葉がんの治療は通常、以下を含みます。

  • 古典型非浸潤性小葉がん:がんがないか調べるための外科的切除の後、がんが発見されなければ、注意深い経過観察および、ときに浸潤がんの発生リスクを軽減するためにタモキシフェン、ラロキシフェン、またはアロマターゼ阻害薬

  • 多形型非浸潤性小葉がん:異常のある領域の外科的切除および、ときに浸潤がんの発生リスクを軽減するためにタモキシフェンまたはラロキシフェン

経過観察では、最初の5年間は身体診察を半年から1年に1回、以後は年1回行い、併せてマンモグラフィーを年1回行います。浸潤性の乳がんが発生する可能性はありますが、発生しても通常は増殖速度が遅く、多くの場合は効果的に治療できます。また、非浸潤性小葉がんの場合、浸潤性乳がんが反対側の乳房に生じる可能性も同程度にあり、そのリスクを排除するには左右の乳房を両方とも切除するしか方法がありません(両側乳房切除術)。一部の女性、特に浸潤性乳がんの発生リスクが高い女性では、この治療法を選ぶこともあります。

非浸潤性小葉がんの女性には多くの場合、ホルモン遮断薬であるタモキシフェンが5年間投与されます。これにより浸潤性乳がんの発生リスクは低下しますが、リスクを完全になくすことはできません。閉経後女性には代わりにラロキシフェンまたはときにアロマターゼ阻害薬が投与されることもあります。

限局性のがんと周囲に広がったがん(I期~III期)の治療

がんが近接するリンパ節を越えて広がっていなければ、ほとんどの場合、可能な限り腫瘍を切除する手術を行います。がんの病期を決定するために、以下のいずれかも行われます。

  • 腋窩リンパ節郭清(わきの下から多くのリンパ節を切除する)

  • センチネルリンパ節生検(乳房に最も近い1つまたは複数のリンパ節を切除する)

乳管内に広範囲に広がっている浸潤がん(浸潤性乳管がん)の場合は通常、乳房切除術または乳房温存術を行います。腫瘍全体に加えて周囲の正常組織を切除しなければならないため、乳房温存術は腫瘍が大きすぎない場合にのみ実施します。腫瘍が大きくなると、腫瘍と周辺の正常組織を切除するだけでも、結局は乳房の大部分を切除することになります。最初の手術時に腋窩リンパ節郭清も行うことがあり、術後は通常、放射線療法を行います。

また、乳房温存術を行うには腫瘍が大きすぎる場合には、腫瘍を小さくする目的で手術の前に化学療法を行うこともあります。化学療法によって腫瘍が小さくなれば、乳房温存術を実施できる場合があります。

手術後に放射線療法、化学療法、あるいはその両方を行うかどうかは、以下のような多くの要因によって決まります。

  • 腫瘍の大きさ

  • 閉経しているか

  • 腫瘍にホルモン受容体があるか

  • がん細胞が検出されたリンパ節の数

手術と放射線療法後に、通常は化学療法を行います。がんが エストロゲン受容体陽性である場合には、通常まだ月経のある女性であればタモキシフェン、閉経後であればアロマターゼ阻害薬が投与されます。

転移したがん(IV期)の治療

リンパ節を越えて転移した乳がんの場合、完治することはまれですが、ほとんどの人が2年以上生きることができ、なかには10~20年生きる人もいます。治療による延命効果はわずかですが、症状を軽減し生活の質を改善することはできます。しかし、治療には深刻な副作用を伴うものもあります。このため、治療を行うかどうかの決断や、どの治療を選択するかは極めて個人的な問題になります。

治療の選択は以下によって決まってきます。

  • がんに エストロゲンまたは プロゲステロンに対する受容体があるかどうか

  • がんが広がる前の寛解期間の長さ

  • がんが広がっている臓器および体内の部位(転移した部位)の数

  • 女性が閉経後であるか、まだ月経があるか

ほとんどの女性は、化学療法またはホルモン遮断薬による治療を受けます。しかし多くの場合、化学療法、特に不快な副作用があるレジメンについては、症状(痛みや他の不快感)が発現するか、がんが急速に悪化し始めるまで実施を控えます。痛みは鎮痛薬で治療します。症状を軽減するために他の薬剤も使用することがあります。化学療法薬やホルモン遮断薬は、延命よりはむしろ、症状を軽減し生活の質を改善することを目的に使用されます。

転移した乳がんに対して最も効果的な化学療法は、カペシタビン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ゲムシタビン、パクリタキセル、ビノレルビンなどを組み合わせる投与法(レジメン)です。

なかには、ホルモン遮断薬による治療の方が化学療法よりも適している場合があります。例えば、がんが エストロゲン受容体陽性である場合や、診断および初回治療後2年以上再発していない場合、あるいはがんにさし当たり生命を脅かす危険性がない場合などにはホルモン遮断薬が適していることがあります。以下のように状況によって使用するホルモン遮断薬を選択します。

  • タモキシフェン:女性にまだ月経がある場合、通常はタモキシフェンがまず使用されるホルモン遮断薬です。

  • アロマターゼ阻害薬:閉経後女性で エストロゲン受容体陽性乳がんの場合は、タモキシフェンよりもアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタンなど)の方が初回治療として有効とみられています。

  • プロゲスチン:メドロキシプロゲステロンやメゲストロール(megestrol)などの薬剤は、アロマターゼ阻害薬やタモキシフェンの効果が得られなくなった後に使用されることがあります。

  • フルベストラント:タモキシフェンで効果が得られなくなった場合に、この薬剤が使用されることがあります。この薬剤はがん細胞の エストロゲン受容体を破壊します。

あるいは、まだ月経のある女性では エストロゲンの生成を止めるために、卵巣の摘出手術、卵巣を破壊する放射線療法、卵巣の機能を阻害する薬物療法(ブセレリン、ゴセレリン、リュープロレリンなど)などを行うこともあります。これらの治療法はタモキシフェンと併用されることがあります。

トラスツズマブ(抗HER2薬と呼ばれるモノクローナル抗体の一種)は、HER2受容体が過剰に発現しているがんや全身に広がっているがんの治療に使用できます。トラスツズマブの単剤療法か、トラスツズマブと化学療法薬(パクリタキセルなど)、ホルモン遮断薬、またはペルツズマブ(別の抗HER2薬)との併用療法を用いることができます。トラスツズマブ+化学療法+ペルツズマブを併用することで、HER2受容体が過剰に発現している乳がんの増殖を遅らせ、トラスツズマブ+化学療法の併用よりも生存期間が長くなります。 エストロゲン受容体陽性乳がんの治療にも、トラスツズマブとホルモン遮断薬を併用することができます。

別のタイプの抗HER薬であるチロシンキナーゼ阻害薬(ラパチニブやネラチニブ[neratinib]など)は、HER2の活性を阻害します。HER2受容体が過剰に発現しているがんに対しては、このような薬の使用が増えてきています。

場合によっては、薬物療法の代わりに、あるいは薬物療法の前に放射線療法を行うことがあります。例えば、1カ所だけにがんが見つかり、それが骨である場合には、骨への放射線照射だけを行う場合があります。放射線療法は骨に転移したがんに最も効果的な治療法で、増殖を数年間にわたって抑制できることもあります。脳に転移したがんに対しても、多くの場合、放射線療法が最も効果的な治療法です。

体の別の部位(脳など)にできた単独の腫瘍を摘出する手術を行う場合もあります。このような手術を行うことで症状を軽減できます。症状の緩和に役立てるために乳房切除術(乳房の切除)が行われることがあります。しかし、他の部位にがんが転移していて、それを治療しコントロールできている場合には、乳房の切除が延命に役立つのかどうかは明らかではありません。

パミドロン酸やゾレドロン酸などのビスホスホネート系薬剤(骨粗しょう症の治療薬)を投与することで、骨の痛みや骨量減少が軽減し、骨への転移が原因で起こる骨の問題を予防したり、遅らせることができる場合もあります。

icon

タイプ別の乳がんの治療

種類

考えうる治療

非浸潤性乳管がん(乳管内に限局したがん)

乳房切除術

ときに乳房温存術(乳房のできるだけ多くの部分をそのまま残して腫瘍を切除)に放射線療法を併用または非併用

ときにホルモン遮断薬

非浸潤性小葉がん、古典型(乳腺に限局したがん)

ときにがんの有無を調べるための手術

がんが発見されなければ、経過観察に加え、定期的な診察およびマンモグラフィー

浸潤がんのリスク低下のため、タモキシフェンまたは一部の閉経後女性に対してラロキシフェンもしくはアロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールなど)の投与

浸潤がん予防のため、両側乳房切除術(まれ)

非浸潤性小葉がん、多形型(古典型と異なり浸潤がんに進行する)

異常のある部分とその周囲の組織の一部を切除する手術

ときにタモキシフェンまたはラロキシフェンによりがんの進行防止を試みる

I期およびII期(早期)のがん

乳房温存術ができる可能性を高めるため、腫瘍が5センチメートルより大きいか、胸壁に張り付いている場合は、手術前の化学療法

乳房温存術で腫瘍と周囲の組織の一部を切除し、その後、放射線療法を実施

乳房切除術単独または乳房切除術と乳房再建

手術後に化学療法、ホルモン遮断薬、抗HER2薬(トラスツズマブなど)、またはそれらの併用療法(一部の閉経後女性で腫瘍が0.5~1.0センチメートルより小さく、リンパ節にがんがみられない場合を除く)

III期のがん(局所進行がん)(炎症性乳がんを含む)

腫瘍を縮小させるため、手術前に化学療法またはときにホルモン療法を実施

腫瘍が完全に切除できるほど小さい場合は、乳房温存術または乳房切除術

通常、手術後に放射線療法

ときに手術後に化学療法、ホルモン遮断薬またはこれらの併用療法

炎症性乳がんでは乳房切除術、化学療法、および放射線療法

IV期(転移性)のがん

がんが複数の部位に発生し症状を伴っている場合は、ホルモン遮断薬、卵巣機能抑制療法*または化学療法

がん細胞中にHER2受容体の過剰発現が認められる場合、トラスツズマブにときにペルツズマブを併用

以下の場合は放射線療法を実施:

  • 脳への転移

  • 皮膚に転移したがんの再発

  • 骨の一部に転移(症状を伴う)

骨に転移している場合は、骨の痛みや骨量減少を軽減するため、静注にてビスホスホネート系薬剤(ゾレドロン酸やパミドロン酸など)を投与

乳頭パジェット病

乳がんも存在する場合、そのタイプに基づいた治療

ときに乳頭のみを周囲の正常組織とともに手術で切除(局所切除)

乳房や近くの構造に再発した乳がん

乳房切除術(事前に化学療法またはホルモン遮断薬の投与を行う場合もある)

ときに放射線療法

化学療法またはホルモン療法

葉状腫瘍

腫瘍とともに周辺の正常組織を切除(乳房円状部分切除術)

腫瘍ががんの場合、放射線療法

腫瘍が大きい場合や異常細胞の分析からがんが示唆される場合は乳房切除術

*卵巣機能抑制療法では、卵巣を切除するか、または薬剤を用いて、卵巣からの エストロゲンの分泌を抑制します。卵巣は、閉経前の女性においてエストロゲンの主要な分泌源です。

特殊なタイプの乳がんの治療

炎症性乳がんの治療では通常、化学療法と放射線療法を併用し、乳房切除術を行います。

乳頭パジェット病の治療は、他のタイプの乳がんの治療と同様です。ほとんどの場合、単純乳房切除術または乳房温存術とリンパ節の切除を行います。通常、乳房温存術後には放射線療法を行います。これよりまれですが、乳頭のみを周囲の正常組織とともに切除することもあります。別のタイプの乳がんも存在する場合、治療はそのがんのタイプに基づきます。

葉状腫瘍の治療は通常、腫瘍ががんであるかどうかにかかわらず、腫瘍とともに周辺の正常組織を広範囲に切除します(乳房円状部分切除術)。腫瘍が乳房と比べて大きい場合は、単純乳房切除術を行うこともあります。この腫瘍の約20~35%で、腫瘍の切除後に同じ部位近くでの再発がみられます。腫瘍の約10~20%で、遠く離れた場所に転移します。腫瘍ががんの場合、放射線療法を行います。

治療後のフォローアップ

治療の完了後は、がんが診断されてから2年間は3カ月毎に受診し、その後5年間は6カ月毎に受診して、乳房、胸部、首、わきの下などのフォローアップの身体診察を受けます。定期的なマンモグラフィーと乳房自己検診も重要です。以下の症状がみられたら、速やかに主治医に報告する必要があります。

  • 乳房の変化(どのようなものでも)

  • 痛み

  • 食欲不振や体重減少

  • 月経の変化

  • 性器出血(月経に関連しない場合)

  • かすみ目

  • その他異常と思われる症状や長く続く症状

胸部X線検査、血液検査、骨シンチグラフィー、CT検査といった診断のために行う検査は、がんの再発を疑わせる症状がみられない限り行う必要はありません。

乳がんの治療はその後の生活に様々な影響を及ぼすことがあります。家族や友人、支援団体による援助が支えとなります。カウンセリングも役に立つことがあります。

終末期の問題

転移性乳がんの女性では、生活の質が損なわれたり、さらなる治療を行っても生存期間が延長する可能性が低い場合があります。最終的には、延命を試みるより、快適な状態を保つことの方が重要になる場合もあります。

がんの痛みは、適切な薬剤を使用することで十分にコントロールできます。痛みがある場合は、和らげるための治療を行うよう主治医に頼むべきです。また、治療を行えば、便秘、呼吸困難、吐き気などの煩わしい症状も緩和されます。

心理カウンセリングや、スピリチュアルカウンセリングなども利用するとよいでしょう。

転移性乳がんの女性は、医療に関する意思決定ができなくなった場合に備えて、自分自身がどのような治療やケアを望むかをまとめた事前指示書をあらかじめ用意しておくようにします。また、遺言書を作成したり、ときおり見直したりすることも重要です。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP