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排卵の問題

執筆者:

Robert W. Rebar

, MD, Western Michigan University Homer Stryker M.D. School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 5月
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本ページのリソース

卵巣からの排卵が毎月起こらない状態です({blank} 月経周期)。

  • 排卵の問題は、排卵をコントロールしている脳の一部や内分泌腺の機能障害、あるいは卵巣の機能障害によって起こります。

  • 体温測定や排卵検査薬を用いることで、排卵の有無を調べ、排卵の時期を予測することができます。

  • 超音波検査、血液検査、尿検査を行って排卵の問題を評価します。

  • 通常はクロミフェンやレトロゾールなどの薬剤により排卵を促すことができますが、それで必ずしも妊娠するとは限りません。

不妊症の概要も参照のこと。)

女性では、排卵の問題は不妊症の一般的な原因の1つです。

原因

生殖機能は、視床下部(脳の一領域)、下垂体、卵巣、ほかに副腎、甲状腺といった内分泌腺を含むシステムによりコントロールされています。排卵(卵子の放出)の問題は、このシステムの一部が機能障害を引き起こすことにより生じます。例えば以下のものがあります。

  • 視床下部から下垂体を刺激するゴナドトロピン放出ホルモンが分泌されないことがあります(下垂体は、排卵を起こすよう卵巣を刺激するホルモン[黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモン]を分泌する器官です)。

  • 下垂体から黄体形成ホルモンや卵胞刺激ホルモンがほとんど分泌されないことがあります。

  • 卵巣から エストロゲンがほとんど分泌されないことがあります。

  • 乳汁の分泌を刺激するホルモンであるプロラクチンが下垂体から過剰に分泌されることがあります。プロラクチンの血中濃度の上昇(高プロラクチン血症)により、排卵を促すホルモンの血中濃度が低くなる場合があります。プロラクチンの血中濃度が上昇する原因の1つに、プロラクチノーマという下垂体の腫瘍があり、これはほぼ常に良性です。

  • 他の内分泌腺が機能障害を起こしている場合もあります。例えば、副腎から男性ホルモン( テストステロンなど)が過剰に分泌される場合や、甲状腺から下垂体と卵巣のバランスを保つ甲状腺ホルモンが過剰に分泌されたり、分泌量が不足したりする場合があります。

排卵の問題が、様々な病気によって起こることもあります。最も一般的な原因の1つは以下のものです。

排卵の問題のその他の原因には以下のものがあります。

  • 糖尿病

  • 肥満

  • 過度の運動

  • 特定の薬剤( エストロゲン、プロゲスチン、抗うつ薬など)

  • 体重減少

  • 精神的ストレス

卵子の供給が早く終わってしまう早発閉経が原因の場合もあります。

排卵の問題は、月経不順の女性や月経がない(無月経)女性の多くで不妊症の原因です。まれに、規則的に月経があっても、乳房の圧痛、下腹部の張り、気分の変化といった月経前の症状がない女性の場合、排卵の問題が不妊症の原因であることがあります。

月経周期にみられる変化

月経周期にみられる変化

月経周期は、複数のホルモンの複雑な相互作用によって調節されていて、黄体形成ホルモンおよび卵胞刺激ホルモンと、女性ホルモンである エストロゲンおよび プロゲステロンが関与します。

月経周期は以下の3つの期間に分けられます。

  • 卵胞期(卵子が放出される前)

  • 排卵期(卵子が放出される期間)

  • 黄体期(卵子が放出された後)

月経周期は月経時の出血によって始まり、月経の初日が卵胞期の1日目となります。

卵胞期の始まりでは、 エストロゲン プロゲステロンの血中濃度が低くなっています。その結果、厚くなった子宮内膜(子宮の内側を覆っている組織)が崩れて剥がれ落ち、月経の出血が起こります。これとほぼ同時期に、卵胞刺激ホルモンの血中濃度がわずかに上昇し、それが刺激となって、卵巣でいくつかの卵胞が成長を開始します。1つの卵胞には1つの卵子が入っています。卵胞期の後半には、卵胞刺激ホルモンの血中濃度が低下するにつれて、卵胞のうち1つだけが発育を続けて成熟していきます。この卵胞からは エストロゲンが分泌されるようになります。

排卵期は、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度が急激に上昇して始まります。黄体形成ホルモンは卵子の放出(排卵)を促しますが、排卵は通常、両ホルモンの急激な増加が始まってから16~32時間後に起こります。この時期には エストロゲンの血中濃度がピークに達し、さらに プロゲステロンの血中濃度も上昇し始めます。

黄体期に入ると、黄体形成ホルモンと卵胞刺激ホルモンの血中濃度は低下していきます。破れた卵胞は卵子を放出した後に閉鎖し、黄体に変化して、 プロゲステロンを分泌するようになります。この期間の大半にわたって、 エストロゲンの血中濃度は高いまま維持されます。 プロゲステロン エストロゲンにより子宮内膜が厚くなっていき、妊娠に適した環境が整えられます。受精が起こらなかった場合は、黄体は退化して プロゲステロンを分泌しなくなり、 エストロゲンの血中濃度も低下して、厚みを増していた子宮内膜が崩れて剥がれ落ち、月経の出血が起こります(次の月経周期の始まり)。

診断

  • 女性の月経の様子

  • 毎日の体温測定

  • 排卵検査薬

  • 超音波検査

  • 血液検査または尿検査

医師は女性に月経の様子(月経歴)について尋ねます。この情報に基づいて、医師は女性に排卵が起きているかどうかを判断できることがあります。

排卵が起きているかどうかと、いつ起きているかを知る目的で、安静時の体温(基礎体温)を毎日測定するように指示されることがあります。可能であれば、妊娠を試みている女性用向けの基礎体温計を使用しますが、それがない場合は水銀体温計を使用します。電子体温計は最も精度の低い体温計です。基礎体温の測定には、起床直後が最も適しています。基礎体温が下がったことは、排卵が近いことを示唆しています。0.5℃以上の体温上昇は通常、排卵がちょうど起こったことを示します。しかし、この方法は多くの女性にとって不便で、ストレスになり、信頼性も低く、正確ではありません。

より正確な方法は以下のものです。

  • 排卵検査薬

排卵検査薬は、排卵前24~36時間にみられる尿中の黄体形成ホルモンの増加を検出するものです。より正確な予測のため、 エストロゲンの副産物を併せて測定する排卵検査薬もあります。数日間連続して尿を検査します。

医師は排卵の有無や時期を正確に判断できます。その方法には以下のものがあります。

  • 超音波検査

  • 血液中の プロゲステロンの濃度や尿中に排出されたその副産物の濃度の測定

これらの測定値が大きく上昇していれば、排卵が起きたとみられます。

また、ほかにも排卵の問題を引き起こす病気の有無を調べる検査を行います。例えば、多嚢胞性卵巣症候群が起きていないかチェックするために テストステロンの血中濃度を測定します。

治療

  • 排卵を誘発する薬剤

クロミフェン、レトロゾール(アロマターゼ阻害薬)、ヒトゴナドトロピンなどの薬剤で通常、排卵を誘発できます。具体的な問題に基づいて薬剤を選択します。早発閉経による不妊症の場合には、クロミフェンやヒトゴナドトロピンで排卵を促すことはできません。

クロミフェン

排卵が長期間起きていない場合は、通常クロミフェンが適しています。月経による出血が始まって数日後から、クロミフェンを5日間服用します。クロミフェンの服用を中止すると、普通は5~10日後に排卵が起こり、排卵から14~16日後で月経が始まります。クロミフェンは排卵の問題の原因すべてに有効というわけではありません。最も効果が高いのは原因が多嚢胞性卵巣症候群である場合です。

クロミフェンの治療後に月経がなければ妊娠検査を受けます。妊娠していなければ、治療のサイクルを繰り返します。排卵が起こるまで、または服用可能な最大投与量になるまで1サイクル毎にクロミフェンの量を増やしていきます。排卵を誘発するのに必要な用量が決まったら、その量を最長4サイクルまで服用します。この方法で妊娠できる女性の多くは、排卵が起こる治療サイクルを開始してから4サイクル以内に妊娠に至ります。クロミフェンの治療を受けた女性の約75~80%で排卵が起こりますが、そのうち妊娠に至るのは約40~50%です。妊娠した女性の約5%は同時に複数の胎児を妊娠し、その多くは双子です。

クロミフェンの副作用はホットフラッシュ(ほてり)、腹部膨満、乳房の圧痛、吐き気、視覚障害、頭痛などです。クロミフェン治療を受けた女性の1%未満に卵巣過剰刺激症候群が発生します。この症候群は卵巣が著しく腫大し、血管内の水分が大量に血管外に出て腹水となって貯留します。生命が脅かされることもあります。予防のため、クロミフェンは最小有効量を使用し、卵巣が腫大した場合は服用を中止します。

クロミフェンは、妊娠中に使用すると先天異常を引き起こす可能性があるため、妊娠の可能性が否定された場合にのみ使用されます。

レトロゾール

レトロゾールはアロマターゼ阻害薬の一種です。アロマターゼ阻害薬はエストロゲンの産生を阻害します。これらは通常、閉経した女性の乳がん治療に用いられる薬剤ですが、レトロゾールは排卵の誘発に使用されることもあります。

多嚢胞性卵巣症候群の女性では、クロミフェンよりもレトロゾールの方が排卵を誘発できる可能性が高いことがあります。多嚢胞性卵巣症候群がみられない女性では、クロミフェンよりもレトロゾールの方が効果的であることを示唆する科学的根拠はありません。

クロミフェンのように、レトロゾールは月経による出血が始まって数日後に開始し、5日間服用します。排卵が起こらなければ、排卵が起こるか、服用可能な最大投与量になるまで1サイクル毎にクロミフェンの量を増やしていきます。

レトロゾールにはクロミフェンほど多くの副作用がありません。レトロゾールの最も一般的な副作用は疲労とめまいです。

レトロゾールは、妊娠中に使用すると先天異常を引き起こす可能性があるため、妊娠の可能性が否定された場合にのみ使用されます。

ヒトゴナドトロピン

クロミフェンまたはレトロゾールによる治療で排卵や妊娠が起こらない場合は、ヒトゴナドトロピンを筋肉内または皮下注射で投与するホルモン療法を試みることができます。ヒトゴナドトロピンには卵胞刺激ホルモンや、ときに黄体形成ホルモンが含まれています。これらのホルモンは卵巣内の卵胞を刺激して成熟させ、排卵を可能にします。卵胞は液体で満たされ、中に卵子が1個入っています。まず、卵胞の成熟時期を超音波検査で調べます。次に別のホルモンであるヒト絨毛性ゴナドトロピンを注射して、排卵を促します。ヒト絨毛性ゴナドトロピンは妊娠中に分泌され、黄体形成ホルモン(正常な状態では月経周期の半ばに放出される)と類似したホルモンです。あるいは、排卵の誘発にゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストを使用することができます(特に卵巣過剰刺激症候群のリスクが高い女性の場合)。GnRHアゴニストは、本来体内で作られるホルモン(GnRH)を人工的に合成したものです。

ヒトゴナドトロピンを適切に使用すれば、治療を受けた女性の95%以上で排卵が起こりますが、そのうち妊娠に至るのは50~75%です。ヒトゴナドトロピン治療で妊娠する女性の約10~30%は同時に複数の胎児を妊娠し、その多くは双子です。

ヒトゴナドトロピンは高価で、重い副作用を引き起こすことがあるため、治療期間中、医師は患者の状態を注意深くモニタリングします。ヒトゴナドトロピン治療を受けた女性の約10~20%に中等度から重度の卵巣過剰刺激症候群がみられます。

多胎妊娠のリスクや、卵巣過剰刺激症候群の発生リスクが高い場合、排卵誘発のために薬剤を使用しないほうが安全です。ただし排卵を誘発する必要がある場合、ヒト絨毛性ゴナドトロピンを使用するよりも、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニストを使用するほうが安全です。

その他の薬剤

多嚢胞性卵巣症候群の女性の一部では、排卵を誘発するためにときにメトホルミン(糖尿病の治療に用いられる薬剤)が用いられます(通常はクロミフェンと併用)。このような女性に含まれるのは、著しい過体重(BMI[ボディマスインデックス]が35を超える)の女性や、糖尿病または前糖尿病(血糖値が高いが、糖尿病とみなされるほどは高くない状態)の女性です。しかしこういった女性においてさえも、排卵を誘発するのにクロミフェンは通常、メトホルミンよりも効果的であり、メトホルミンとクロミフェンを併用する場合と同等の効果があります。

視床下部からゴナドトロピン放出ホルモンが分泌されていない場合は、このホルモンの合成薬である酢酸ゴナドレリンの静注が有用となる場合があります。この薬剤は、天然のホルモンと同様に下垂体を刺激して、排卵を促すホルモンを分泌させます。この治療による卵巣過剰刺激症候群のリスクは低いため、注意深いモニタリングの必要はありません。ただし、米国ではこの薬剤は承認されていません。

プロラクチン(乳汁の分泌を促すホルモン)の血中濃度が高いことが不妊症の原因になっている場合は、ドパミン作動薬と呼ばれる、 ドパミンに似た作用を示す薬剤(ブロモクリプチン、カベルゴリンなど)の使用が最も適しています。( ドパミンは一般にプロラクチンの分泌を阻害する化学伝達物質です。)

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