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緑内障

執筆者:

Douglas J. Rhee

, MD, University Hospitals/Case Western Reserve University

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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概要
本ページのリソース

緑内障とは、視神経の損傷が進行していく病気で(眼圧の上昇を伴うことが多いものの、常に伴うわけではありません)、不可逆的な視力障害につながります。

  • 眼の内部の圧力(眼圧)が上昇すると視神経が損傷されることがあります。

  • 通常、視力障害は徐々に生じるため、長い間気づかれないことがあります。

  • リスクのある人は眼圧の測定および周辺視野の検査を含む、詳細な眼の検査を受けるべきです。

  • 眼圧は、生涯を通じてコントロールする必要があります。眼圧のコントロールには、通常は点眼薬、ときに眼の手術が用いられます。

緑内障にかかっている人は、米国では約300万人、世界中では64万人に上ります。緑内障は、失明の原因として世界および米国で2番目に多く、アフリカ系およびヒスパニック系アメリカ人における失明の原因の第1位です。しかし実際には患者全体の半数しか、緑内障にかかっていることに気づいていません。緑内障はどの年齢層でも起こりえますが、60歳以上の人では発生率が6倍に高まります。

最もリスクが高いのは以下のいずれかに該当する人です。

緑内障は、眼の中の液体(房水)の産生量と排出量のバランスが崩れ、眼圧が異常なレベルにまで上昇すると起こります。正常であれば、眼に栄養を与えている房水は、虹彩の裏側にある毛様体(後房内)でつくられ、瞳孔を通って眼の前方(前房)に流れていき、虹彩と角膜の間の排出管(隅角)から排出されます。うまく機能していれば、このシステムはちょうど水道の蛇口(毛様体)とシンクの排水口(隅角)のように働きます。房水の産生と排出のバランス、つまり蛇口の開きと排水口からきちんと排水される量のバランスが保たれることによって、房水が自由に流れ、眼圧の上昇が防止されているのです。

正常な房水の排出

房水は、虹彩の裏側(後房内)にある毛様体でつくられ、後房から眼球の前方(前房)へと流れ込み、そこから排出管を通って外へと流れ出ていきます。

正常な房水の排出

緑内障では、房水を排出する管が詰まったりふさがったり、覆われたりします。そのため、後房で新しい房水が産生されても、眼から外に出ていくことができません。言い換えると、水道の蛇口が開いたままなのに、排水口は詰まった状態になるわけです。こうして房水が眼の中で行き場を失い、その結果、眼圧が上昇します。眼圧が高くなって視神経が耐えられる限度を超えてしまうと、視神経に損傷が生じます。この状態を緑内障と呼びます。

ときに、眼圧の上昇は正常範囲内にとどまっているにもかかわらず、視神経がその圧に耐えられない場合があります(低眼圧緑内障または正常眼圧緑内障といいます)。米国で発生する緑内障の約3分の1が、低眼圧緑内障です。低眼圧緑内障は、アジア系によくみられます。

ほとんどの場合、原因は不明です。原因が分からない緑内障は、原発緑内障と呼ばれます。原因が分かっている緑内障は、続発緑内障と呼ばれます。続発緑内障の原因には、感染症、炎症、腫瘍、大きな白内障、白内障の手術、薬、またはその他の病気などがあります。これらの原因により液体が眼から自由に排出されなくなると、眼圧が上昇し、視神経が損傷を受けます。

成人と小児の緑内障には多くの種類があります。ほとんどの緑内障は、以下の2種類に分類されます。

  • 開放隅角緑内障

  • 閉塞隅角(狭隅角)緑内障

開放隅角緑内障は、閉塞隅角緑内障より一般的です。開放隅角緑内障では、眼の液体を排出する管が数カ月から数年かけて微小な蓄積物によって徐々に詰まっていきます。このタイプの緑内障が「開放」隅角といわれるのは、(細隙灯[さいげきとう]顕微鏡などの拡大鏡下に)目で見ても排出管の詰まりはないにもかかわらず、うまく液体が排出されないことに由来します。房水は正常な速度で産生されているのに排出が少しずつしか行われないため、眼圧が徐々に上昇します。

閉塞隅角緑内障は、開放隅角緑内障よりも頻度の低い病気です。閉塞隅角緑内障では、虹彩と角膜との間の隅角が狭すぎるために、眼の中の排出管が詰まるか、覆われてしまいます。このタイプの緑内障は、隅角が目に見えて閉塞しているため、「閉塞」隅角と呼ばれます。隅角の閉塞は突然起こることもあれば(急性閉塞隅角緑内障)、徐々に起こることもあります(慢性閉塞隅角緑内障)。閉塞が突然起こった場合は、眼圧が急速に上昇します。閉塞が徐々に起こった場合は、眼圧が開放隅角緑内障と同様にゆっくりと上昇します。

緑内障の症状

開放隅角緑内障

開放隅角緑内障は痛みがなく、最初のうちは症状も出ません。通常、両方の眼に現れますが、普通は左右の眼で差があります。開放隅角緑内障の主な症状は、数カ月から数年以上かけて視界の中に盲点(ものが見えない部分)ができることです。盲点は徐々に大きくなり、やがて互いに融合します。通常は最初に周辺部の視野が失われます。患者は階段を見落としたり、読書中に見えない字があることに気づいたり、運転に困難を感じたりします。視力障害はゆっくりと進行していくため、かなりの視野が失われるまで本人が気づかないこともめずらしくありません。中心部の視野は最後まで残ることが多いため、多くの人が真正面は問題なく見えるのにそれ以外の方向は見えない状態(視野狭窄[きょうさく])に陥ります。緑内障を治療せずに放置していると、最後には中心部の視野も失われて完全に失明します。

閉塞隅角緑内障

急性閉塞隅角緑内障では、眼圧が急速に上昇し、一般に激しい眼痛や頭痛、眼が赤くなる、かすみ目 かすみ目 かすみ目は、最も一般的な視覚症状です。かすみ目とは、一般に、徐々に進行する見え方の鮮明さの低下をいいます。 片眼または両眼に突然起こる完全な視力の喪失(失明)は、別の症状とみなされます。 かすみ目が起こる仕組みは、主に4つあります。 網膜(眼の奥にある光を感じる構造物)の病気 正常なら透明であるはずの眼の構造物(角膜、水晶体、硝子体[しょ... さらに読む かすみ目 、光の周りに虹のような輪が見える(光輪視 グレアとハロ 奥行き感覚とは、空間内で物の相対的な位置関係を判定する能力のことです。奥行き感覚が損なわれると、2つの物体のうちどちらが自分に近い位置にあるのかが分かりにくくなります。 網膜は、眼の奥にある光を感じる構造物です。カメラのフィルムのような2次元面であり、2次元の像のみを作り出すことができます。脳は左右の眼からの2次元の像を統合し、3次元の感... さらに読む )、突然の視力障害 突然の視力障害 突然の視力障害とは、数分から数日以内に発生する視力障害のことです。片眼にのみ現れることもあれば両眼に現れることもあり、視野の一部のみが侵されることもあれば視野のすべてが侵されることもあります。視野の小さな一部分だけが欠ける(例えば、小さな網膜剥離によるもの)と、かすみ目のような症状が現れます。視力障害の原因によっては、眼痛など、その他の症... さらに読む といった症状がみられます。眼圧の上昇により吐き気や嘔吐(おうと)が生じることもあります。症状が現れてすぐに治療しないと、2~3時間以内に視力が失われるおそれがあるため、急性閉塞隅角緑内障は緊急の治療を要する事態とされています。

慢性閉塞隅角緑内障では、眼圧が徐々に上昇し、症状は開放隅角緑内障のように始まります。眼が赤くなる、眼の不快感、かすみ目、または頭痛といった症状がみられることもあり、睡眠中はこれらの症状が軽減します。眼圧が正常なこともありますが、異常のある方の眼は正常な方に比べて眼圧が高くなっています。

開放隅角緑内障または閉塞隅角緑内障が、片方の眼に発生した場合は、もう片方の眼も同じ病気にかかる傾向があります。

緑内障の診断

  • 医師による眼の診察

緑内障が疑われる場合(例えば、眼の定期検査の所見に基づいて)、医師は緑内障の有無を調べるために包括的な眼の診察を行います。緑内障に関する総合的な検査には、5種類あります。

  • 眼圧の測定

  • 視神経の評価

  • 視野検査

  • 隅角鏡検査

  • 角膜の測定

特殊なレンズで排出管の状態を調べる隅角鏡検査(ゴニオスコピー)と呼ばれる方法が用いられることもあります。この検査により、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障のどちらであるかを判定できます。

角膜の厚みも測定します。角膜が厚いと、緑内障が起こりやすくなります。しかし、角膜が薄いからといって、緑内障にならないわけではありません。

知っていますか?

  • 抗コリン作用のある薬(例えば、抗ヒスタミン薬を含有するアレルギー薬、かぜ薬、または睡眠薬)は瞳孔を広げるため、高齢者はこれらの薬を服用する前に眼の検査を受け、閉塞隅角緑内障を起こす可能性が高くないかをチェックしてもらうべきです。

スクリーニング

最も多くみられるタイプの緑内障では、何年もかかって症状もなく視力障害が徐々に進行していくため、早期に発見することが非常に大切です。緑内障のリスクが高い人(危険因子のリスト 緑内障とは、視神経の損傷が進行していく病気で(眼圧の上昇を伴うことが多いものの、常に伴うわけではありません)、不可逆的な視力障害につながります。 眼の内部の圧力(眼圧)が上昇すると視神経が損傷されることがあります。 通常、視力障害は徐々に生じるため、長い間気づかれないことがあります。... さらに読む を参照)は、1~2年毎に総合的な眼の定期診察を受けるべきです。

緑内障の治療

  • ときに手術

緑内障で失われた視力は、二度と回復しません。しかし、早期に診断され適切な治療を受ければ、それ以上の視力障害を防ぐことができます。そのため、緑内障治療の目標は、眼圧を下げることによって、さらなる視神経の損傷と視力障害を防ぐことにあります。

緑内障の治療は生涯続けなければなりません。治療では、眼球からの房水の排出を増やすか、房水の産生量を減らすことで眼圧を下げます。眼圧は高いものの視神経には損傷の徴候が出ておらず、緑内障の疑いにとどまる段階では、治療せずに慎重に経過をモニタリングすることもあります。

緑内障の主な治療は、薬(通常は点眼薬)と手術です。緑内障のタイプと重症度によって、行うべき治療が決まります。

  • ほとんどの開放隅角緑内障はこれらの薬によく反応します。

  • 閉塞隅角緑内障にもこのような薬が使われますが、閉塞隅角緑内障の治療は、点眼薬ではなく、手術が中心となります。

緑内障治療の点眼薬としては、ベータ遮断薬(チモロールなど)、プロスタグランジン関連薬、アルファ作動薬、または炭酸脱水酵素阻害薬などを含む点眼薬がよく用いられます。以前はコリン作動薬(ピロカルピンなど)も使用されていましたが、最近ではあまり使われなくなっています。

緑内障用の点眼薬は一般に安全ですが、様々な副作用を引き起こすこともあります。緑内障患者はこれらの点眼薬を一生継続して使う必要があるため、眼圧、視神経、視野の検査を定期的に受けなくてはなりません。通常、薬は最初は片眼にのみ使用するか(片眼トライアルと呼ばれます)か、両眼に使用します。1~4週間治療を続けた方の眼に改善がみられれば、両眼への治療を開始します。

急性閉塞隅角緑内障は、緊急の処置を要するため、急速に眼圧を下げる強力で即効性のある薬を組み合わせて用いることがあります。まずは点眼薬(チモロール、ブリモニジン、ピロカルピンなど)から開始し、同時に複数の薬を使用することもあります。それでも眼が高眼圧に耐えられないと考えられる場合は、アセタゾラミドの錠剤や、グリセリンもしくはイソソルビドなどの利尿薬の服用、またはマンニトールなどの静脈内投与を用いることがあります。できるだけ早く、両眼に緊急レーザー手術を施します。両眼に治療を施すのは、そうしなければ、正常な方の眼にも緑内障が発生するおそれがあるためです。

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手術

手術の対象となるのは、眼圧が極めて高い人、点眼薬でうまく眼圧をコントロールできない人、点眼薬を使用できない人、点眼薬の副作用に耐えられない人、または初診時にすでに重度の視野欠損がある人などです。

開放隅角緑内障では、レーザー線維柱帯形成術というレーザー手術により房水の排出を増加させ、急性または慢性閉塞隅角緑内障では、レーザー周辺虹彩切開術というレーザー手術により虹彩に穴を開けます。レーザー手術は、病院または診療所で行われます。痛みを防ぐため点眼薬で麻酔をかけます。通常、患者は処置当日に帰宅できます。

緑内障のレーザー手術で最もよくみられる合併症は、一時的な眼圧の上昇ですが、これは緑内障の点眼薬で治療できます。まれに、レーザーにより角膜に熱傷が生じることがありますが、通常は速やかに治ります。

緑内障治療のための手術にはこのほかに、ろ過手術と呼ばれる方法もあります。従来のろ過手術は、新しい排出経路をつくり(線維柱帯切除術またはチューブシャント手術)、房水が閉塞した管を迂回して眼から排出されるようにするものです。従来のろ過手術は一般的に病院で行われます。通常、患者はその日の内に帰宅できます。

部分ろ過手術(ビスコカナロストミー、深部強膜切除術、シュレム管形成術)は新しいろ過手術であり、流出路の一部だけを切除して房水の排出を高めるために用いられます。これらの手技は病院で行われることもあれば、外来の手術センターで行われることもあります。患者は通常、その日のうちに帰宅できます。

続発緑内障

他の病気によって起こった緑内障の治療は、原因によって異なります。

感染または炎症が原因の場合は、抗菌薬、抗ウイルス薬、またはコルチコステロイドの点眼薬で完治することがあります。

腫瘍が房水の排出を妨げている場合や、白内障が広範囲にわたるために眼圧が上がっている場合は、それぞれを治療する必要があります。白内障手術によって眼圧が高くなった場合は、眼圧を下げる緑内障用の点眼薬を用います。点眼薬で効果がない場合、ろ過手術を行うことがあります。

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