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海綿静脈洞血栓症

執筆者:

James Garrity

, MD, Mayo Clinic College of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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海綿静脈洞血栓症は、血液のかたまり(血栓)で海綿静脈洞(頭蓋骨底部にある太い静脈)が閉塞されてしまう非常にまれな病気です。

  • 海綿静脈洞血栓症は通常、顔と眼窩(鼻の皮膚を含む)、眼窩、または副鼻腔の感染症から細菌が広がることにより起こります。

  • 症状には、頭痛、顔面の痛み、視覚障害、突然現れる眼球の突出、高熱などがあります。

  • 診断は、症状とMRI(磁気共鳴画像)検査またはCT(コンピュータ断層撮影)検査の結果に基づいて下されます。

  • たとえ治療をしても、重度の後遺症が残ったり、死に至ったりすることがあります。

  • 高用量の抗菌薬を投与して感染症を根治させます。

海綿静脈洞は、眼の後方、頭蓋骨の基底部にある太い静脈です。この静脈は、顔の静脈から集まる血液を心臓へ送っています。鼻の周りにあるいくつかの空洞(副鼻腔)とは異なるものです。

海綿静脈洞血栓症は、眼を動かしたり、顔の感覚を検知したりする脳神経 脳神経の概要 脳神経は12対の神経で構成され、脳から直接出て頭部、頸部、体幹の様々な部位へと伸びています。脳神経には、特殊な感覚(視覚、聴覚、味覚など)を担うものと、顔の筋肉を制御したり腺を調節したりするものがあります。脳神経は、それぞれの位置に応じて、脳の前から後ろに向かって番号と名前が付けられています。... さらに読む に影響を及ぼすこともあります。また、海綿静脈洞血栓症から、脳の感染症や髄膜(ずいまく)の周りの液体への感染症(髄膜脳炎)、脳膿瘍(のうのうよう)、脳卒中 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む 、失明、下垂体の活動低下(下垂体機能低下症 下垂体機能低下症 下垂体機能低下症は、1種類以上の下垂体ホルモンの不足により下垂体の機能が低下する病気です。 下垂体機能低下症の症状は不足しているホルモンの種類によって異なり、低身長や不妊症、寒さに耐えられない、疲労のほか、乳汁をつくることができなくなる場合もあります。 下垂体によりつくられるホルモンの血中濃度の測定や下垂体に対する画像検査に基づいて、診断が下されます。 治療は主に、不足しているホルモンを合成ホルモンで補充する方法がとられますが、下垂体腫... さらに読む )に至ることもあります。

原因

海綿静脈洞血栓症は通常、顔、歯、または副鼻腔の感染症から細菌(通常は黄色ブドウ球菌 Staphylococcus aureus)が広がることにより起こります。海綿静脈洞血栓症は、鼻の毛包の周りの小さなできもの(せつ)、眼窩蜂窩織炎 眼窩蜂窩織炎 眼窩蜂窩織炎(がんかほうかしきえん)は眼窩内および眼の周囲と後方の組織の感染症です。 鼻の周りの副鼻腔などから感染が眼窩に広がることがあります。 症状には、痛み、腫れ、眼が赤くなる、発熱、眼球の突出、視覚障害、眼球運動の障害などがあります。 通常、眼窩のCT(コンピュータ断層撮影)検査またはMRI(磁気共鳴画像)検査が行われます。 入院し、抗菌薬が静脈から投与されます。 さらに読む 眼窩蜂窩織炎 (ほうかしきえん)、または蝶形骨洞 副鼻腔炎 副鼻腔炎は副鼻腔の炎症で、多くはウイルスや細菌の感染またはアレルギーが原因です。 最もよくみられる症状は痛み、圧痛、鼻づまり、頭痛などです。 診断は症状に基づいて下されますが、ときにCT検査などの画像検査が必要になることもあります。 原因となっている細菌感染症は抗菌薬で根治させることができます。 副鼻腔炎は最も多い病気の1つです。副鼻腔炎は、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞(ぜんとうどう)、蝶形骨洞(ちょうけいこつ... さらに読む (ちょうけいこつどう)炎もしくは篩骨洞(しこつどう)炎などの、一般的な顔の感染症が原因で起こる可能性があります。合併症として海綿静脈洞血栓症が起こる可能性があるため、鼻の周りから眼の縁にかけての領域の感染症は常に深刻なものとみなされます。

症状

海綿静脈洞血栓症の症状として、数日間の間に眼球が異常に突き出る(眼球突出 眼球の突出 眼球が前に飛び出したり押し出されたりすることを、眼球突出と呼びます。 眼球突出という言葉は、甲状腺の活動が過剰になった状態(甲状腺機能亢進症)を引き起こすバセドウ病によって、眼球が前方に飛び出した状態を指して用いられるのが通常です。眼球の突出は、眼が大きいことではありません。 クッシング病や重度の肥満などは、顔貌や眼の外観を変えることがありますが、真の眼球の突出が起こることはありません。... さらに読む 眼球の突出 )、まぶたが腫れる、重度の頭痛、顔面の痛みまたはしびれ、眼球運動の障害(眼筋麻痺)と複視、視力障害、眠気、高熱、瞳孔の過度の散大または左右の瞳孔の大きさの不同などがあります。細菌が脳にまで広がった場合、さらに強い眠気、けいれん発作、昏睡、特定の部位の異常な感覚または筋力低下が生じることがあります。

診断

  • MRIまたはCT検査

  • 血液培養検査

  • 腰椎穿刺(ようついせんし)

海綿静脈洞血栓症の診断では、副鼻腔、眼、脳のMRI検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査 眼の病気を診断したり、その重症度や広がりを特定したりするために、様々な検査が行われます。左眼、右眼それぞれ別に検査します。 血管造影検査は一般に、血管に造影剤を注射し、画像検査で血管を見えやすくするものです。しかし、眼の血管造影検査では造影剤(色素)を使うことで、医師が直接診察するときに血管を見えやすくするものであり、この色素は写真にも写ります。 フルオレセイン蛍光眼底造影検査を行うと、医師は眼底の血管をはっきりと観察できるようになりま... さらに読む またはCT検査 CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査 眼の病気を診断したり、その重症度や広がりを特定したりするために、様々な検査が行われます。左眼、右眼それぞれ別に検査します。 血管造影検査は一般に、血管に造影剤を注射し、画像検査で血管を見えやすくするものです。しかし、眼の血管造影検査では造影剤(色素)を使うことで、医師が直接診察するときに血管を見えやすくするものであり、この色素は写真にも写ります。 フルオレセイン蛍光眼底造影検査を行うと、医師は眼底の血管をはっきりと観察できるようになりま... さらに読む を行います。原因菌を特定するため、血液を採取して、検査室で培養 感染症の診断 感染症は、細菌、ウイルス、真菌、寄生虫などの微生物によって引き起こされます。 医師は、患者の症状や身体診察の結果、危険因子に基づいて感染症を疑います。まず、患者がかかっている病気が感染症であり、他の種類の病気ではないことを確認します。例えば、せきが出て、呼吸が苦しいと訴える人は、肺炎(肺の感染症)の可能性があります。また、喘息や心不全(こ... さらに読む します。腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 神経系の病気(神経疾患)の診断に一般的に用いられる画像検査としては、以下のものがあります。 CT(コンピュータ断層撮影)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 血管造影検査 さらに読む 腰椎穿刺 が行われることもあります。

予後(経過の見通し)

海綿静脈洞血栓症は、たとえ治療したとしても生命を脅かすおそれがあります。患者の約30%、また蝶形骨洞炎を併発する患者の約50%が死亡します。別の30%の患者には、重篤な後遺症(眼球運動の障害と複視、失明、脳卒中による身体障害、下垂体機能低下症など)が残り、これは生涯続く可能性があります。

治療

  • 抗菌薬の静脈内投与

  • 手術により、感染部位から排液する

  • コルチコステロイドとその他のホルモンの補充

海綿静脈洞血栓症では、高用量の抗菌薬の静脈内投与を直ちに開始します。感染した副鼻腔からは、外科的な排液を行うことがあります。特に抗菌薬による治療を24時間行っても状態が改善しない場合はこの手術が検討されます。脳神経に影響があれば、ときにコルチコステロイドを投与します。下垂体機能低下症があれば、コルチコステロイドのほか、通常はその他のホルモンも補充します。

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