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複視

執筆者:

Christopher J. Brady

, MD, Wilmer Eye Institute, Retina Division, Johns Hopkins University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 6月
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複視とは、1つの物が二重に見えることをいいます。複視は片眼だけを開けているときに起こることもありますが(片眼複視)、より一般的なのは、両眼を開けているときに起こる複視(両眼複視)です。両眼複視は、どちらかの眼を閉じるとなくなります。複視の原因によっては、眼痛、眼球の突出、または筋力の低下などの他の症状がみられることもあります。

原因

単眼複視は、眼の表面から網膜(眼の奥にある光を感じる構造物)へ至る光の伝達が何かによってゆがめられたときに起こります。物が三重以上に見えることもあります。複数見える像のうち、1つの像は質(例えば、明るさ、コントラスト、明瞭さ)が正常で、もう1つの像(または残りすべての像)は質が劣っています。

片眼複視の最も一般的な原因は以下のものです。

屈折異常があると、光線が網膜上に像を結ばなくなります。 乱視 乱視とは 乱視とは は、角膜(虹彩と瞳孔の前にある透明な層)の曲率の異常が原因で起こる屈折異常です。

片眼複視のその他の原因には、角膜の瘢痕(はんこん)や水晶体の位置のずれなどがあります。

両眼複視がある場合、両眼が同じ対象物に向いていない可能性があります。正常であれば、それぞれの眼は対象の像を別々に受け取っているにもかかわらず、単一の像しか見えません。単一の像を見るためには、両眼が同時に同じ物に向くようにそろっていなければなりません。両眼がうまくそろっていなければ、2つの像が見えますが、このとき2つの像の質は同じです。ときに、両眼をある方向(例えば、左、右、上、または下)に大きく動かしたときにだけ両眼複視が現れることがあります。

両眼複視の原因となりうるものは数多くあります。最も多いのは以下のものです。

両眼が同じ方向を向かないことの原因として最も一般的なのは、 外眼筋 第3脳神経(動眼神経)麻痺 第3脳神経が麻痺すると、眼球運動、光に対する瞳孔の反応、またはその両方が損なわれます。 そのような麻痺は、神経に圧力がかかったとき、または神経に十分な血液が供給されないときに起こります。 患者は特定の方向を見たときに複視をきたし、まぶたが垂れ下がるほか、瞳孔が広がる(散大する)こともあります。 医師は神経学的診察およびMRIまたはCT検査を行います。 治療法は原因によって異なります。 さらに読む と呼ばれる、眼を動かす筋肉を支配する脳神経の病気です。特定の筋肉だけが麻痺することもあり、原因が分からないこともあります。分かっている原因としては主に、神経による筋肉の制御を阻害する病気などがあります。例えば、 重症筋無力症 重症筋無力症 重症筋無力症は、神経と筋肉の間の信号伝達が妨げられる自己免疫疾患で、筋力低下の発作を引き起こします。 重症筋無力症は、免疫系の機能不全により起こります。 通常、まぶたの下垂と複視が起こり、運動後は筋肉の著しい疲労と筋力低下が起こります。 診断を確定するためには、アイスパックや安静によってまぶたの下垂が軽減するかをみる検査、筋電図検査、血液検査が役立ちます。 筋力を速やかに改善できる薬や、病気の進行を遅らせる薬があります。 さらに読む ボツリヌス症 ボツリヌス症 ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という細菌が作り出す毒素による中毒で、まれな病気ですが発生すると生命を脅かします。 ボツリヌス毒素は通常、食べものと一緒に体内に侵入し、筋力の低下や麻痺を引き起こします。 最初に、口腔乾燥、複視、眼の焦点が合わないなどの症状が現れます。あるいは、下痢、嘔吐、腹部けいれんといった消化管症状が最初に生じることもあります。... さらに読む ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後ゆっくりと自然に回復します。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む などの病気は、全身の筋肉を侵すため、眼を動かす筋肉も影響を受けます。

眼の動きを物理的に妨げるものがあると、両眼がうまくそろわず、複視が生じます。例として、眼窩(がんか)の骨折部に眼の筋肉が挟まって動かなくなること、 バセドウ病 原因 原因 という甲状腺の機能が亢進する病気などで異常な組織が眼窩内に蓄積すること、などが挙げられます。

評価

複視の原因には軽いものもありますが、なかには非常に重篤なものもあります。以下では、どのようなときに医師の診察を受けるべきか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

複視がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • 複視以外に、神経系の機能障害が疑われる症状(例えば、筋力低下もしくは麻痺、しびれ、発話もしくは言語の問題、嚥下[えんげ]困難もしくは歩行困難、回転性めまい、頭痛、失禁、または巧緻[こうち]運動障害[動きのぎこちなさ])

  • 眼痛

  • 眼球の突出(眼球突出)

  • 最近の眼または頭のけが

  • 両眼複視

受診のタイミング

複視がみられる場合は、たとえ一時的なものでも、必ず医師の診察を受ける必要があります。警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに(通常は救急外来で)医師の診察を受ける必要があります。複視があるすべての患者は、たとえ複視が消失した場合でも、できるだけ早く(通常は数日以内に)医師の診察を受けてください。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察の結果から、しばしば複視の原因が示唆されたり、どのような検査を行うべきかの指針が得られたりします( 両眼を開けているときにみられる複視の主な原因 両眼を開けているときにみられる複視の主な原因 両眼を開けているときにみられる複視の主な原因 )。

医師は、症状が片眼のみか両眼にみられるのか、常にあるのか現れたり消えたりするのかを知ろうとします。また、2つの像が横に並んでいるか縦に並んでいるか、特定の方向を見たときにだけ複視が現れるかどうかについて質問します。さらに、眼痛、額または頬のしびれ、顔面の筋力低下、回転性めまい、嚥下または発話の問題などがないかについても尋ねます。これらの症状は、脳神経の病気を示している可能性があるためです。その他の神経系の症状や他の病気の症状がないかについても尋ねられます。

眼の診察は、身体診察の中で最も重要です。医師は患者の視力を確認します。片眼または両眼が突出していないか、まぶたが垂れ下がっていないかよく見て確認し、瞳孔が光にどのように反応するかを評価します。医師は指を上下および左右いっぱいまで動かしながら、患者に眼で指の動きを追わせ、眼の動きを評価します。 そして、 細隙灯(さいげきとう)顕微鏡 細隙灯とは 細隙灯とは (拡大鏡下に眼を診察できる器具)や 検眼鏡 検眼鏡とは 検眼鏡とは を用いて眼の内部の構造を観察します。

症状と診察の結果から、可能性の高い原因に関する有用な情報が得られます。例えば、複視が現れたり消えたりし、神経系の機能障害が疑われる症状があれば、重症筋無力症や多発性硬化症が有力候補に挙げられます。両眼が同じ方向を向かない場合は、どの方向を見たときに複視が起こるかによって、どの脳神経の機能障害があるかが分かることがあります。

検査

片眼に複視がある人は、通常、眼科医(眼の病気の評価と[手術を含む]治療を専門とする医師)に紹介されます。紹介される前の検査は不要です。眼科医は、患者の眼を注意深くに診察して、眼疾患がないかを確認します。

両眼に複視がある人は、たいていの場合、さらなる検査が必要です。両眼複視の原因となりうる病気は数が多いためです。どの検査を行うかは、病歴や身体診察の結果によって異なります。

たいていの人では、MRIまたはCT検査を行い、眼窩、頭蓋骨、脳または脊髄に異常がないかを調べる必要があります。感染症、動脈瘤、または脳卒中が原因と考えられる場合は、直ちに画像検査を行わなければならない可能性があります。

バセドウ病の症状(眼球の突出、眼痛、涙目、甲状腺の腫大など)がある人では、甲状腺の検査(サイロキシン[T4]や甲状腺刺激ホルモン[TSH]の血清濃度測定)が行われます。重症筋無力症や多発性硬化症の検査が必要になることもあり、特に複視が現れたり消えたりする人ではこれらの病気の有無を調べる必要があります。

すべての人に検査が必要なわけではありません。治療をしなくても複視がなくなる例もあります。症状や診察の結果から重篤な原因はないと考えられる場合、医師は検査を勧める前に、数週間待って、その間に複視がなくなっていないか定期的に確認することを勧める場合があります。

治療

  • 原因の治療

複視を治療する最善の方法は、基礎疾患を治療することです。

要点

  • 複視に加え、突然の重度の痛み、けが、または神経系の機能障害の症状がある人は、一般に、救急外来を受診する必要があります。

  • 複視は自然に消失することもありますが、それでも医師の診察を受ける必要があります。

  • 診察で最も重要なのは眼の診察ですが、画像検査が必要なこともあります。

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