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嗅覚の消失

(嗅覚脱失)

執筆者:

Marvin P. Fried

, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine

最終査読/改訂年月 2020年 4月
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嗅覚脱失とは、嗅覚が完全になくなることです。嗅覚低下とは、嗅覚が部分的になくなることです。嗅覚脱失のある人の大半は、塩味、甘味、酸味、苦味を感じることはできますが、特定の風味の違いを区別することができません。風味の違いを区別する能力は、舌にある味覚受容器ではなく、実際には嗅覚に依存しています。そのため、嗅覚脱失のある人は、味覚が損なわれて食べものの味を楽しめないと訴えることがよくあります。

加齢により嗅覚受容器が減少することで、高齢者では匂いを感じる能力が低下していきます。一般的には、患者は60歳までに嗅覚の変化に気づきます。70歳を過ぎると変化がかなり大きくなります。

原因

加齢によるものではない嗅覚脱失は、腫れなどで鼻腔がふさがれることで匂いが嗅覚の受容部に届かなくなった場合や、嗅覚の受容部の一部、またはそこから脳につながる部分が破壊された場合に起こります(表「嗅覚脱失の主な原因と特徴」を参照)。嗅覚の受容部は匂いを感知する部位であり、鼻の上の方に位置します(人はどのように風味を感じるのかを参照)。

一般的な原因

最も一般的な原因としては以下のものがあります。

永続的に嗅覚が失われる原因として多いのは、自動車事故で起きるような頭部外傷です。頭部外傷によって、嗅神経(嗅覚受容器と脳をつないでいる一対の脳神経)の神経線維が鼻腔の天井部を通過するところで損傷したり破壊されることがあります。ときに、頭部外傷によって鼻腔と脳を隔てている骨(篩板[しばん])に骨折が起きることがあります。嗅神経の損傷は、篩板の近くで生じた感染(膿瘍など)や腫瘍が原因で起こることもあります。

上気道感染症(特にインフルエンザ)も一般的な原因です。嗅覚低下や嗅覚脱失の患者のうち、最大で4分の1はインフルエンザが原因と考えられます。アルツハイマー病など脳の変性疾患の一部(多発性硬化症など)で嗅神経が損傷されることがあり、嗅覚の消失がよく起こります。

あまり一般的でない原因

薬が、感受性の高い人の嗅覚脱失の一因になることがあります。ポリープや腫瘍、その他の鼻の感染症、季節性アレルギー(アレルギー性鼻炎)も嗅覚を阻害することがあります。ときに、副鼻腔の深刻な感染症やがんの放射線療法によって嗅覚や味覚が数カ月失われることがあり、ときには永続的になることもあります。これらの状態によって、嗅覚受容器が損傷されたり破壊されたりすることがあります。タバコが果たす役割についてははっきりしません。ごくわずかに、生まれつき嗅覚がない人がいます。

嗅覚脱失または嗅覚低下は、COVID-19の初期症状である可能性があります。COVID-19は、正式にはSARS-CoV2と命名された新型コロナウイルスによって引き起こされ、重症化する可能性がある急性呼吸器疾患です。

評価

以下では、医師の診察を受ける必要があるか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

以下の所見がみられる場合は、特に注意が必要です。

  • 最近の頭部外傷

  • 神経系の機能障害の症状、例えば筋力低下、平衡感覚の問題、ものを見たり、話したり、飲み込んだりするのが難しい

  • 症状が突然始まる

  • COVID-19の地域的または世界的流行

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。それ以外の人は、可能なときに医師の診察を受けるべきです。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問し、次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、原因と必要になる検査を推測することができます(表「嗅覚脱失の主な原因と特徴」を参照)。

医師は嗅覚脱失の発症と持続期間、かぜやインフルエンザ、頭部外傷との関連について質問します。鼻水や鼻づまりといった他の症状と、鼻水があれば水っぽいか、血が混じっているか、濃いか、悪臭を放つかについて注意を払います。医師は神経症状、特に精神状態の変化を含むもの(例えば短期記憶の障害)や脳神経を障害するもの(例えばものが二重に見えたり、話したり飲み込んだりするのが難しい)がないかを探し求めます。患者の病歴についての質問としては、副鼻腔の病気、頭部の損傷や手術、アレルギー、使用した薬、化学物質やガスにさらされた経験などがあります。

医師は身体診察時に鼻腔を見て、腫れや炎症、鼻水、ポリープがないか確認します。さらに、精神状態と脳神経に特に焦点を置いた徹底的な神経学的診察を行います。

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嗅覚脱失の主な原因と特徴

原因

一般的な特徴*

検査

鼻の中の閉塞

アレルギーの慢性症状(鼻づまりや透明な鼻水など)がある人にみられる

痛みはない

特定の季節や特定の物質にさらされた後に症状が出ることが多い

医師の診察

鼻茸(鼻ポリープ)

通常は診察時にポリープが見える

医師の診察

嗅覚受容器の破壊

悪臭を放つ濃い鼻水が、ほとんど常に、または常にある

過去の副鼻腔感染症

医師の診察

通常はCT検査

COVID-19(2019年に初めて確認された新型コロナウイルス感染症)†

嗅覚の喪失は、しばしば感染症の他の症状(例えば、発熱やせき)に続いてみられます。

可能ならウイルス検査

一部のウイルスによる上気道感染症(インフルエンザなど)

感染症の後に嗅覚の喪失が起こる

医師の診察

腫瘍(まれな原因)

視覚障害がみられる場合もあれば、嗅覚の問題だけの場合もある

CT検査

MRI検査

薬(アンフェタミン、エナラプリル、エストロゲン、ナファゾリン、フェノチアジン系薬剤、レセルピン、または長期間の鼻閉改善薬の使用など)

通常はそうした薬の服用を報告する人にみられる

医師の診察

毒性物質(カドミウムやマンガンなど)

通常はそうした毒性物質にさらされたことを報告する人にみられる

医師の診察

脳内の嗅覚経路の破壊

進行する錯乱と最近の記憶の欠如

MRI検査

連続的な記憶検査

頭部に外傷を負った人にみられる

CTまたはMRI検査

神経変性疾患(多発性硬化症など)

間欠的に現れる他の神経系の機能障害の症状、例えば筋力低下、しびれ、話したり見たり飲み込んだりするのが難しい

MRI検査

ときに腰椎穿刺

脳外科手術または脳感染症

脳外科手術または脳感染症があった人にみられる

CTまたはMRI検査

ときに頭痛や神経系の機能障害の症候

CTまたはMRI検査

* この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここでは典型的な特徴を示していますが、常に認められるわけではありません。

† 嗅覚脱失のメカニズムが嗅覚受容器の破壊であるとはまだ確認されていません。

検査

嗅覚の検査では、医師は患者の鼻の下に片方ずつ、香りがする一般的な物質(石けん、バニラビーンズ、コーヒー、チョウジなど)をあてがいます。そして患者に何の匂いか尋ねます。標準的な市販の嗅覚検査キットを使ってより正式に検査することもできます。あるキットでは、患者に様々なサンプルをひっかいて匂いをかがせ、何の匂いか当てさせます。別のキットには、悪臭を放つ化学物質を薄めたサンプルが含まれています。医師は、どの程度サンプルを薄めると、患者がその化学物質の匂いを感じられなくなるかを確認します。

COVID-19が疑われる場合は、ウイルス検査が行われ、その人は隔離のガイドラインを含む現地のプロトコルに従って管理されます。

嗅覚脱失の明らかな原因がない場合は、構造的な異常(腫瘍、膿瘍、骨折など)がないかを調べるために、副鼻腔を含む頭部のCTまたはMRI検査を行います。

治療

医師は嗅覚脱失の原因を治療します。例えば副鼻腔の感染症や刺激の患者に対しては、スチーム(蒸気)吸入、鼻腔スプレー、抗菌薬などで治療し、ときには手術をすることもあります。しかし、副鼻腔炎の治療が成功した後でさえ、嗅覚が必ずしも戻るわけではありません。腫瘍は手術で切除するか放射線で治療しますが、通常これらの治療では嗅覚は回復しません。鼻の中のポリープは切除し、それによって嗅覚が戻ることもあります。喫煙者は禁煙するようにします。

嗅覚脱失そのものに対する治療法はありません。嗅覚の一部が残っている人は、食べものに高濃度の香味料を加えると食べる楽しみが増すと感じることもあります。煙感知器はどの家庭でも重要ですが、煙の匂いを感じられない嗅覚脱失の患者には、よりいっそう不可欠です。嗅覚脱失の患者は食品の腐敗やガス漏れに気づくことが難しいため、医師は患者に対して、保存してあった食品を食べる前や、料理や暖房のために天然ガスを使用する前には注意するよう推奨します。

要点

  • 嗅覚の喪失は正常な老化の一部として起こる場合があります。

  • 一般的な原因としては、上気道感染症、副鼻腔炎、頭部外傷などがあります。

  • 原因が明らかでない限り、一般的にはCT検査やMRI検査などの画像検査が必要です。

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