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嗅覚と味覚の障害の概要

執筆者:

Marvin P. Fried

, MD, Montefiore Medical Center, The University Hospital of Albert Einstein College of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 1月
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嗅覚と味覚の障害は、生命を脅かすことがほとんどないために、あまり入念に医学的な処置が行われないことがあります。しかし、このような障害は食べものや飲みもの、よい香りを楽しむ能力に影響を及ぼすことがあるため、ときに苛立たしいものです。また、有害となりうる化学物質やガスに気づく能力が阻害され、深刻な結果につながる可能性もあります。ときには嗅覚や味覚の障害が、腫瘍などの重篤な病気によって引き起こされていることもあります。

嗅覚と味覚は、密接に結びついています。舌の味蕾(みらい)は味を識別し、鼻の神経は匂いをかぎ分けます。これらの感覚はともに脳へと伝達され、脳がその情報を統合することにより風味として認識し、味わうことができます。塩味、苦味、甘味、酸味など一部の味覚は、嗅覚がなくても認識できます。しかし、例えばラズベリーのような複雑な風味を味わうには、味覚と嗅覚の両方が認識される必要があります。

人はどのように風味を感じるのか

大半の風味は、識別するために味覚と嗅覚の両方の情報が脳に必要です。これらの感覚は鼻と口から脳に伝達されます。脳のいくつかの部分がその情報を統合することで、人間は風味を認識し、楽しむことができます。

鼻の内側を覆う粘膜(嗅上皮)に存在する小さな領域に、嗅覚受容器と呼ばれる特殊な神経細胞があります。この受容体には、匂いを感知する毛のような小突起(線毛)があります。空気中を運ばれ鼻腔に入った分子がこの線毛を刺激し、近くにある神経線維に神経インパルスが発生します。この神経線維は鼻腔の天井部分を形成する骨(篩板[しばん])にある多数の小孔を通り、その上方にある神経細胞の膨らみ(嗅球)につながっています。この嗅球が匂いの脳神経(嗅神経)を形成しています。インパルスは嗅球を通り、嗅神経を伝って脳へ伝わります。脳はこのインパルスを特定の匂いとして解釈します。さらに、匂いの記憶が保存されている脳の領域(側頭葉の中央領域にある嗅覚と味覚の処理中枢)も刺激されます。記憶が、それまでの人生で経験した様々な匂いを区別して特定することを可能にしています。

舌の表面の大部分は、何千個もの小さな味蕾に覆われています。1つの味蕾には線毛を備えた数種類の味覚受容体が含まれています。それぞれの種類の味覚受容体が5つの基本の味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味[グルタミン酸ナトリウムの味])を感知します。これらの味は舌のどの部分でも感知できますが、特定の部分がそれぞれの味に対してより敏感になっています。甘味は舌の先で最も感じやすい一方で、塩味は舌の前方の横側で最も敏感に感じ取られます。酸味は舌の横側で最もよく感じられ、苦味は舌の後ろ側3分の1でよく感じられます。

口に入れた食べものによって線毛が刺激され、近くにある神経線維に神経インパルスが生じ、この神経線維は味覚をつかさどる脳神経(顔面神経と舌咽神経)につながっています。発生したインパルスは、これらの脳神経を伝って脳へ進み、脳は異なる種類の味覚受容体から来たインパルスを組み合わせて解釈し特定の味として認識します。食べものを口に入れて噛むと、食べものの匂い、味、食感、温度に関する感覚情報が脳で処理され、それぞれの風味となります。

人はどのように風味を感じるのか

嗅覚や味覚の障害で最も多いのは、嗅覚が部分的になくなる嗅覚低下と、嗅覚が完全になくなる嗅覚脱失です。風味の識別は主に嗅覚に基づいているため、多くの場合、食べものが味気なく感じられるようになって初めて嗅覚の低下に気づきます。

嗅覚

嗅覚は、鼻に生じた変化、鼻から脳につながる神経に生じた変化、または脳に生じた変化の影響を受けます。例えば、かぜを引いて鼻腔が詰まると、匂いが嗅覚受容器(鼻の内側を覆う粘膜にある特殊な神経細胞)に届くのが妨げられるため、嗅覚が低下することがあります。嗅覚は味覚にも影響を及ぼすため、かぜを引いていると食べものの味が正しく分からないことがよくあります。インフルエンザウイルスにより嗅覚受容器に一時的な障害が起こることがあります。インフルエンザの後、数日から数週間にもわたって、匂いや味が分からなくなることがあり、まれに嗅覚や味覚の消失が永続的なものになることもあります。

知っていますか?

  • ときには嗅覚や味覚の障害の原因が、腫瘍などの重篤な病気である場合もあります。

  • 嗅覚と味覚は加齢とともに低下していくため、高齢者では食事量が減って低栄養になることもあります。

加齢に関連する注意点

50歳を過ぎると、嗅覚と味覚は徐々に低下し始めます。鼻の内側を覆う粘膜が薄くなって乾燥し、嗅覚に関わる神経が衰えます。それでも高齢者は、匂いが強ければ感知することができますが、微妙な匂いは感じ取りにくくなります。

年齢が上がるにつれ、味蕾の数も減り、残った味蕾の感覚も鈍くなります。この変化では、酸味や苦味よりも甘味や塩味を感じ取る能力が低下する傾向がみられます。このため多くの食べものが苦く感じられるようになります。

加齢につれて嗅覚と味覚が低下するため、多くの食べものが味気なく感じられます。口が乾燥することが多くなり、ますます味覚と嗅覚が低下します。また、高齢者は口腔乾燥の一因になる病気にかかっていたり、そうした薬を服用していることがよくあります。このような味覚と嗅覚の低下により、高齢者では食事量が減ることがあります。すると、必要な栄養がとれなくなることや、すでに何らかの病気がある場合に病状が悪化することがあります。

嗅覚に影響を及ぼす他の病気については後述します( 嗅覚の消失)。

匂いに過敏になる嗅覚過敏は、嗅覚の消失よりはるかにまれです。妊婦は匂いに過敏になることがよくあります。また嗅覚過敏は、原因が精神的なものである場合もあります(心因性)。つまり、心因性の嗅覚過敏がある人には、明らかな体の病気がみられません。演技性パーソナリティ障害(わざと目立つ振る舞いをして人の目を引こうとすることを特徴とする病気)の人では、通常より心因性の嗅覚過敏がよくみられます。

一部の病気によって嗅覚がゆがめられ、無害な匂いが不快に感じられることがあります(嗅覚異常)。そのような病気には以下のものがあります。

  • 副鼻腔の感染症

  • 嗅神経の部分的損傷

  • 歯の衛生状態の不良

  • 口内の感染症

  • うつ病

  • ウイルス性肝炎(嗅覚異常が生じることがあり、本来は無害なはずの匂いで吐き気を催すことがある)

嗅覚記憶が保存されている脳の側頭葉の中央領域を起源とするけいれん発作が起こると、一時的に実際にはない不快な匂いが鮮明に感じられることがあります(幻嗅)。この匂いはけいれん発作が始まる直前に感じられる強い感覚の一部であり(前兆)、嗅覚の障害を示すものではありません。ヘルペスウイルスによる脳の感染症(ヘルペス脳炎)でも幻嗅が引き起こされることがあります。

味覚

味がよく分からない味覚低下や味がまったく分からない味覚脱失は通常、舌に影響を与える病態の結果として現れ、多くは強い口腔乾燥によって起こります。そのような病態には、シェーグレン症候群、大量喫煙(特にパイプ喫煙)、頭頸部への放射線療法、脱水状態、薬の使用(抗ヒスタミン薬や抗うつ薬のアミトリプチリンなど)などがあります。亜鉛、銅、ニッケル濃度の低下などの栄養不良によって味覚と嗅覚の両方が変化することがあります。

ベル麻痺(顔面の半分が麻痺する病気)では、舌の麻痺が生じている側の前方3分の2の部分で味覚が損なわれることがよくあります。しかし残りの部分の味覚が正常であったり、感覚が鋭くなったりするために、この障害が気づかれないこともあります。舌の熱傷(やけど)によっても味蕾が一時的に破壊される場合があります。うつ病やけいれん性疾患などの神経疾患も味覚を障害することがあります。

味覚のゆがみ(味覚異常)の原因は、歯ぐきの炎症(歯肉炎)の場合もあり、また、うつ病やけいれん性疾患など、味覚や嗅覚の消失原因と同じものも多くあります。以下のような薬でも味覚異常が起こることがあります。

  • 抗菌薬

  • 抗てんかん薬

  • 抗うつ薬

  • 特定の化学療法薬

  • 利尿薬

  • 関節炎の治療薬

  • 甲状腺の薬

嗅覚の障害の診断と治療については、後述します( 嗅覚の消失)。味覚は、甘いもの(砂糖)、酸っぱいもの(レモン汁)、塩からいもの(塩)、苦いもの(アスピリン、キニーネ、またはアロエ)を使って検査することができます。

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