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難聴

執筆者:

Lawrence R. Lustig

, MD, Columbia University Medical Center and New York Presbyterian Hospital

最終査読/改訂年月 2017年 3月
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米国では、人口の10%以上に日常のコミュニケーションに影響を及ぼすある程度の難聴があり、最も一般的な感覚障害となっています。発生率は年齢とともに上昇します。永続的な難聴がある18歳以下の小児は2%未満ですが( 小児の聴覚障害)、乳児期と幼児期の難聴は、言語と社会性の発達に支障をきたすことがあります。65歳以上では3分の1以上、75歳以上では半数以上に難聴があります。

大半の難聴は、時間をかけてゆっくりと発生します。ただし、米国では毎年約5千~1万人に1人の割合で突発性難聴が発生しています。

原因

難聴には多くの原因があります( 難聴の主な原因と特徴)。原因となる異常は、音を伝える経路の様々な部分に発生する可能性があり、その部分に応じて難聴は伝音難聴、感音難聴、混合難聴に分類されます。

伝音難聴は、何らかの障害により内耳の感覚器に音が届くのが妨げられている場合に起こります。その原因はおそらく、外耳道、鼓膜、または中耳にあります。

感音難聴は、音は内耳に届いているものの、音を神経インパルスに変換できない(内耳性難聴)か神経インパルスが脳に伝達されない(後迷路性難聴)場合に起こります。内耳性難聴は回復することがあり、生命を脅かすことはめったにないため、内耳性難聴と後迷路性難聴との区別は重要です。後迷路性難聴は、回復することがほとんどなく、生命を脅かしうる脳腫瘍(一般的には小脳橋角部腫瘍)が原因となっていることがあります。

混合性難聴は、伝音難聴と感音難聴の両方を含むものです。激しい頭部外傷、慢性感染症、または多くのまれな遺伝性疾患の1つによって起こることがあります。

難聴の一般的な原因

全体として最も一般的な原因は以下のものです。

  • 耳あか(耳垢[じこう])の蓄積

  • 騒音

  • 加齢

  • 耳の感染症(特に小児と若い成人にみられる)

耳あかの蓄積は、治療可能な難聴の最も一般的な原因で、特に高齢者でみられます。

騒音は、感音難聴を突然または徐々に引き起こすことがあります。1回の極めて大きな騒音(近くでの銃声または爆発)によって、音響外傷と呼ばれる突然の難聴が起こることがあります。音響外傷の患者の一部では耳鳴り(耳鳴)も生じます。音響外傷による難聴は通常1日以内に消失します(ただし、鼓膜または中耳が爆風によって損傷している場合は除く)。しかし、騒音による難聴(騒音性難聴)の大半は、長期間騒音にさらされることによるものです。約85dB(デシベル)以上の騒音に長時間さらされ続けると、難聴が起こることがあります。騒音性難聴の起こりやすさは人によって多少異なりますが、ある程度激しい騒音に長時間さらされれば、ほぼ誰でも聴力が若干低下します。

加齢は、騒音曝露と遺伝的な要因とともに、難聴の一般的な危険因子です。加齢に伴う難聴(老人性難聴)では、低周波の音よりも高周波の音を聞き取る能力が制限されます。

耳の感染症は、軽度から中等度の一時的な難聴(主に小児にみられる)の一般的な原因です。大半の小児は耳の感染症が治ってから3~4週間で正常な聴力を取り戻しますが、難聴が続くケースも少数ながらあります。耳の感染症を繰り返す小児では難聴が続く可能性が高くなります。

あまり一般的でない原因

あまり一般的でない原因としては以下のものがあります。

評価

以下では、どのようなときに医師の診察を受けるべきか、また受けた場合に何が行われるかについて説明しています。

警戒すべき徴候

難聴がみられる場合は、特定の症状や特徴に注意が必要です。具体的には以下のものがあります。

  • 片耳だけの難聴

  • 何らかの神経学的異常(ものをかんだり話したりしづらい、顔面のしびれ、めまい、平衡感覚の喪失など)

受診のタイミング

警戒すべき徴候がみられる人は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。難聴があるものの警戒すべき徴候はみられない場合は、頃合いを見て主治医の診察を受ける必要はありますが、1週間程度の遅れが問題になる可能性は高くありません。

徐々に現れる難聴の場合は患者が気づかないことがあるため、医師は小児と高齢者に対して聴覚検査による定期的なスクリーニングを推奨しています。小児のスクリーニングは、出生時に開始して、言語の発達が妨げられる前に聴力低下を発見し治療できるようにするべきです。高齢者に対しては、医師は通常、特定の状況での聞き取り能力に関する具体的な質問によってスクリーニングを行います( スクリーニング)。治療が有益かもしれない一部の高齢者が、聴力の問題に気づかなかったり、自分がそうだと認めないことさえあるため、こうしたスクリーニングが重要です。

医師が行うこと

医師はまず、症状と病歴について質問します。次に身体診察を行います。病歴聴取と身体診察で得られた情報から、多くの場合、難聴の原因と必要になる検査(聴力検査や必要な場合は耳の画像検査[例えばCTまたはMRI検査]など)を推測することができます。

医師は、患者が難聴に気づいてからどれくらい経過しているか、難聴があるのは片耳か両耳か、難聴になる前に何らかのきっかけ(例えば頭部外傷、急激な気圧の変化、薬の使用開始)があったかどうかを尋ねます。医師は以下のことに注意を払うことも重要です。

  • 耳の症状(耳の痛み、耳が詰まった感じ、耳鳴り[耳鳴]、耳だれなど)

  • 平衡感覚の症状(暗闇で方向を見失う、動いたり回転したりしているような感覚[回転性めまい]など)

  • 神経症状(頭痛、顔面の筋力低下、味覚異常)

小児では、重要な関連症状として言語発達や運動発達の遅れがあります。

医師は患者の病歴を調べて、難聴の原因となりうる病気がないか確認します(繰り返す耳の感染症、大きな騒音に慢性的にさらされる環境、頭部外傷、関節リウマチ全身性エリテマトーデスなどの自己免疫疾患など)。医師は患者の家族に難聴の病歴がある人がいないかに注意を払います。耳に損傷を与える可能性がある薬(聴器毒性のある薬剤)を患者が服用しているかどうかについても質問します。幼児の場合、医師は出生記録を再確認し、出産時の合併症や出生前の感染がないか判断します。

身体診察では耳と聴覚、神経学的診察に重点を置きます。医師は外耳を見て、閉塞、感染、出生時からある(先天)奇形、その他の目に見える異常がないか確認します。鼓膜を診察して、破れ(穿孔)、排液、急性または慢性感染症の徴候がないか確認します。伝音難聴と感音難聴を区別するために、音叉を使ったいくつかの検査を行うことがよくあります。

音の大きさの尺度

音の大きさは対数尺度で表されます。これは、10dB(デシベル)増加すると音の強さは10倍になり、聞こえる大きさは2倍になるということです。同様に、20dBは0dBの100倍の強さで、4倍大きく聞こえ、30dBは0dBの1000倍の強さで、8倍大きく聞こえます。

デシベル(dB)

0

人間が聞き取れる最も小さい音

30

ささやき声、静かな図書館

60

通常の会話、ミシン、タイプライター

90

芝刈り機、工具、トラックの通過音(防音対策なしに耐えられる最大曝露時間は90dBの場合1日8時間*)

100

チェーンソー、エアードリル、スノーモービル(防音対策なしに耐えられる最大曝露時間は1日2時間)

115

サンドブラスト、大音量のロックコンサート、自動車のクラクション(防音対策なしに耐えられる最大曝露時間は1日15分)

140

射撃音、ジェットエンジン(騒音により耳が痛み、防音対策をしていない場合は短時間さらされただけでも耳に損傷が生じ、防音器具を使っていても損傷が生じることがある)

180

ロケットの発射台

*米連邦政府の基準ですが、85dBを超える騒音にさらされるときはごく短時間である場合を除いて、常に防音対策を講じることが推奨されます。

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難聴の主な原因と特徴

原因*

一般的な特徴

検査

外耳(伝音難聴)

閉塞(原因は耳あか、異物、外耳の感染、まれに腫瘍など)

医師による診察で分かる

医師の診察

聴力検査

中耳(伝音難聴)

中耳の感染(急性または慢性

ときにめまい、耳の痛みや詰まった感じ、耳だれ

通常は鼓膜の見た目が異常になる(医師による診察で分かる)

過去に耳の感染症を何度も起こしていることが多い

医師の診察

聴力検査

重度または繰り返す感染症の場合は画像検査

鼓膜の穿孔、外耳道や鼓膜の奥の出血、またはその両方が見える

明らかに最近けがをした人にみられる

医師の診察

聴力検査

CTまたはMRI検査

耳硬化症

家族に同様の難聴があることが多い

難聴が徐々に悪化する

難聴が20代および30代で始まることが多い

医師の診察

聴力検査

腫瘍(がんの場合もそうでない場合もある)

医師による診察の際に腫瘍が見えることが多い

片耳だけの難聴

聴力検査

CTまたはMRI検査

内耳(感音難聴)

遺伝性疾患

家族に同様の難聴があることが多い

他の器官系の病気を伴うことが多い

医師の診察

聴力検査

遺伝子検査

内耳のCTまたはMRI検査

騒音曝露

通常は病歴から明らか

一時的な難聴の可能性あり

医師の診察

聴力検査

高齢(男性では55歳以上、女性では65歳以上)

進行性の両耳の難聴

神経学的診察の結果は正常( 神経学的診察

医師の診察

聴力検査

耳に損傷を与える可能性がある薬(聴器毒性のある薬剤)、以下に挙げるものなど

  • アスピリン

  • アミノグリコシド系薬剤(ゲンタマイシンやトブラマイシンなど)

  • バンコマイシン

  • シスプラチン

  • フロセミド

  • エタクリン酸

  • キニーネ

原因となる薬を最近使った人にみられる

両耳の難聴

ときにめまいおよび平衡感覚の喪失

医師の診察

聴力検査

以下のような感染症

明らかな感染症の病歴

感染症の最中または直後に難聴が現れる

医師の診察

聴力検査

以下のような自己免疫疾患

関節の炎症および発疹

ときに突然の視力の変化または目の刺激感

関節の痛みまたは腫れ

多くの場合、すでに原因疾患は確認されている

血液検査

聴力検査

複数回の難聴(一般的には片耳だけ)

耳が詰まった感じ

ときに耳鳴り(耳鳴)または動いたり回転したりしているような感覚(回転性めまい

聴力検査

造影剤(ガドリニウム)を用いたMRI検査

気圧の変化(ダイビングなどで起こる)§

気圧の急激な変化を生じる活動(例、スキューバダイビング、飛行機の急降下)の最中や、耳への打撃の後に起こる

ときに強い耳の痛みまたは回転性めまい

聴力検査

ティンパノメトリー検査および平衡感覚の検査

回転性めまいが持続する場合は、原因を探すための手術

頭部外傷(頭蓋底の骨折を伴うことが多い)§

明らかに最近大けがをした人にみられる

めまいまたは顔面筋の垂れ下がりの可能性あり

ときに難聴のある耳から液体(血が多少混じっているか、または透明)が出たり、鼓膜の奥で出血があったりする

聴力検査

CTまたはMRI検査

神経系(後迷路性難聴)

以下のような腫瘍

片耳だけの難聴、しばしば耳鳴りを伴う

しばしばめまいまたは回転性めまい、バランスがとれない

ときに顔面筋の垂れ下がりまたは顔面のしびれと味覚異常

聴力検査

造影剤を用いたMRI検査

脱髄疾患、例えば多発性硬化症

片耳だけの難聴

筋力低下やしびれが、体の様々な部位に現れたり消えたりする

聴力検査

造影剤を用いた脳と脊髄のMRI検査

ときに腰椎穿刺

*各グループはおおよそ頻度の高い順に並べられています。

この欄には症状や診察の結果などが示されています。ここに示されている特徴は典型的なものですが、常に当てはまるわけではありません。

聴覚検査はすべての患者に行われます。

§混合難聴と感音難聴がみられることがあります。

CT = コンピュータ断層撮影、MRI = 磁気共鳴画像。

検査

検査には以下のものがあります。

  • 聴覚検査

  • ときにMRIまたはCT検査

医師は、すべての難聴の患者に対して聴覚検査を行います。聴覚検査は、医師が難聴の種類を特定し、ほかに必要な可能性がある検査を判断するのに役立ちます。

聴力検査は最も基本的な聴覚検査です。被験者はヘッドホンを装着し、左右どちらかの耳に入ってくる周波数(高さ)や大きさの異なる音を聞き取ります。被験者は、音が聞こえた場合、通常は対応する側の手を挙げて知らせます。右耳と左耳のそれぞれについて、音の高さ(周波数)別に聞き取れる最小音量を確認します。この結果を正常聴力とされている標準データと比較します。大きな音は、鳴っている側だけでなく反対側の耳でも聞こえてしまうことがあるため、検査を行っていない側の耳には検査音以外の音(通常はホワイトノイズ)を聞かせます。

語音聴取閾値検査は、どの程度の大きさの声で話せば理解できるのかを調べる検査です。米国ではrailroad、stairway、baseballなど2音節のアクセントが等しい強強格の言葉を、音量を変えて被験者に聞かせます。そして、聞かせた言葉の半数を被験者が正しく繰り返すことができたときの音量(強強格閾値)を記録します(訳注:日本では数字などを読み上げてこの検査を行います。半数正解したときの値を語音聴取閾値といいます)。

語音弁別能検査は、音が似た言葉を聞き分ける能力をみるもので、1音節の似た言葉をセットにして聞かせ、検査します。正しく繰り返すことができた言葉の割合が語音弁別能となります。伝音難聴の人では、音量は大きくする必要がありますが、語音弁別能は通常は正常です。感音難聴の人では、音量にかかわらず語音弁別能に異常がみられることがあります。ときに、完全な1文の中で言葉を識別する能力を検査することがあります。この検査は、補聴器を使っても十分な聴力が得られない人のうち、人工内耳が有益となる可能性がある患者を判定するのに役立ちます。

ティンパノメトリー検査は、鼓膜と中耳における音の伝わり具合を調べる検査です。この検査は被験者が積極的に参加する必要がないため、小児の検査によく用いられます。マイクロホンと音源を内蔵した装置を外耳道にぴったりと合わせて入れ、装置で外耳道内の圧力を変化させながら、音波の鼓膜からの跳ね返り具合をみます。この検査の結果が異常なら、伝音難聴が疑われます。

患者の最初の評価で医師が音叉検査を行うことがありますが、より正確な方法で聴覚を評価する専門医や言語聴覚士が行うことはめったにありません。音叉検査は、伝音難聴と感音難聴を識別するのに役立ちます。リンネ試験では、空気中を伝わる音と頭蓋骨を伝わる音がどのくらいよく聞こえるかを比較します。空気伝導による聴力を調べるには、音叉を耳に近づけます。骨伝導による聴力を調べるには、振動している音叉の根元を頭にあて、音が中耳を通らずに内耳の神経細胞に直接伝わるようにします。空気伝導の聴力が低下しており、骨伝導の聴力が正常である場合は伝音難聴です。空気伝導と骨伝導のどちらの聴力も低下している場合は、感音難聴か混合難聴です。感音難聴の場合は、さらに検査を行い、メニエール病や脳腫瘍など、別の病気がないか調べなければならないことがあります。ウェーバー試験では、振動している音叉の根元を頭頂部の中央にあてます。被験者はどちらの耳で音が大きく聞こえるかを伝えます。片側だけの伝音難聴がある場合は、難聴のある側の耳で音が大きく聞こえます。片側だけの感音難聴がある場合は、音叉は両方の内耳に等しく刺激を与え、被験者は正常な耳でその刺激を感知するため、正常な耳の方で音が大きく聞こえます。

聴性脳幹反応は、耳からの音の信号によって起こる脳幹の神経インパルスを測定する検査です。この検査の情報は、脳が耳からどんな種類の信号を受け取っているのかを判断するのに役立ちます。ある種の感音難聴や多くの脳疾患では、検査結果に異常がみられます。聴性脳幹反応は乳児の検査に使われるほか、昏睡状態にある人や脳の手術を受けている人で特定の脳機能をモニタリングするために用いられることもあります。

蝸電図検査(かでんずけんさ)は、電極を鼓膜または鼓室に置いて蝸牛と聴神経の活動を測定する検査です。蝸電図検査と聴性脳幹反応は、音に対して反応できない人や、自発的に反応しようとしない人の聴覚を測定する際に用いることができます。例えば、乳児や非常に年少の小児に重度の難聴(聾[ろう])がないか調べる場合や、難聴のふりをしたり難聴を誇張したりしている(心因性難聴)患者を見極めるために用いられます。

耳音響放射検査では、ある音を用いて内耳(蝸牛)を刺激します。すると耳自体が刺激に対応するごく小さい音を発生させます。この蝸牛からの放射音を高機能の電子装置で記録します。新生児室で新生児の先天性の難聴をスクリーニングしたり、聴器毒性のある薬を使用している人の聴覚をモニタリングしたりする上で、米国ではこの検査が日常的に用いられています。この検査は成人に対しても用いられ、難聴の原因を判定するのに役立ちます。

その他の検査には、音をひずませて聞き取りにくくした会話の解釈力や理解力を評価する検査、片耳のメッセージと競合するメッセージをもう一方の耳に聞かせて理解する能力を測定する検査、左右の耳にそれぞれ聞こえる不完全なメッセージをまとめて意味の通った1つのメッセージにする検査、ある音を両耳で同時に聞かせてどこから音が来たかを判断する能力をみる検査などがあります。神経学的診察の結果に異常があるか、聴覚検査で特定の所見があった人には、ガドリニウム造影剤を用いた頭部のMRI検査も必要です。このMRI検査は、内耳の特定の病気、耳の近くの脳腫瘍、または耳から脳に向かう神経の腫瘍を検出するのに役立ちます。

多くの難聴の遺伝的原因は、他の器官系にも問題を引き起こします。そのため、原因不明の難聴がみられる小児は、眼科検査、QT延長症候群がないか調べる心電図検査、他の臓器のための検査、遺伝子検査など、追加の検査も受けるべきです。

予防

難聴の予防には、大きな騒音にさらされるのを制限することが役立ちます。騒音の長さと強さの両方を制限するべきです。頻繁に大きな騒音にさらされる人は、耳の保護具を付ける必要があります(合成樹脂製の耳栓を外耳道に挿入する、グリセリンで満たされた防音用イヤーマフで耳を覆うなど)。米国労働省の労働安全衛生局およびその他の多くの国の同様の機関が、人が騒音にさらされても差し支えない時間の長さに関する基準を定めています。騒音が大きいほど、さらされてもよい時間は短くなります。

治療

難聴の原因が分かっていれば、それに対する治療が行われます。例えば、良性または悪性の増殖性病変があれば取り除きます。可能な場合は、聴器毒性のある薬の投与は中止します(ただし、難聴が悪化するリスクを冒してでもその薬が必要な場合は除きます)。

難聴の原因の多くは治癒しないため、補聴器( 難聴の管理)や補助を行う様々な方法や技術で難聴を補う必要があります。

補助を行う方法と技術( 難聴の管理: その他の難聴対策

光を使った警報システムは、玄関の呼び鈴や火災報知器が鳴っているときや、赤ちゃんが泣いているときに知らせてくれます。赤外線信号またはFM電波信号を送信する特殊な音響システムは、映画館や教会など競合する雑音がある場所での聞き取りに役立ちます。多くのテレビ番組では表示・非表示を切り替えられる字幕放送が行われています。電話用の器具も利用できます。

重度の難聴がある人の多くは、コミュニケーションの方法として手話を利用しています。その中でも、米国ではASL(アメリカン・サイン・ランゲージ)が最も広く用いられています。視覚的な身ぶりを用いた他の種類の言語には、SE(サインド・イングリッシュ)やSEE(サイニング・イグザクト・イングリッシュ)、キュードスピーチなどがあります(訳注:日本でも日本手話[JSL]、日本語対応手話、キュードスピーチなど各種の手話が使われています)。

片側難聴

片耳だけに難聴(片側難聴[SSD])がある人には、通常は1対1の状況でコミュニケーションが制限されることはありません。しかし、騒々しい環境下や複雑な聞き取り環境(例えば、教室、パーティー、会議)では、SSDがある人は聞き取りやコミュニケーションがうまくできません。さらに、片方の耳からしか聞き取れない人は音の発生源の位置を特定すること(音源定位)ができません。多くの患者にとって、SSDは生活を変えるものであり、仕事や社会的状況で重大な障害につながります。

SSDの治療としては、Contralateral Routing of Signal(CROS)補聴器や埋め込み型補聴器があり、聞こえない側の音を拾って聞こえる側の耳に送ります。これらの技術は、騒々しい環境下での聞き取りを改善しますが、音源定位ができるようにはなりません。人工内耳はSSD患者で使用され成功することが増えています(特にSSDに重度の耳鳴りが伴う場合)。人工内耳については音源定位もできるようになることが示されています。

小児の治療

原因を治療し補聴器を提供することに加えて、難聴の小児には適切なセラピーで言語発達をサポートする必要があります。小児が言語を自然に学習するには、言語が聞き取れなければならないため、ほとんどの聾の小児は特別な訓練をしなければ言語を発達させられません。この訓練は難聴があると分かったらすぐに始めるのが理想です。聾の小児が、流暢に手話を使う聾の親のもとで育てられている場合は例外です。聾の乳児も、話すことを覚える前にコミュニケーションの手段が必要です。例えば、乳児向けに調整された手話は、人工内耳が使えない場合にその後の話し言葉の発達のための基礎になります。しかし、小児が発話や言語の微妙なニュアンスを理解できるようになるには、発話の音声(音素)を聞かせるほかに代わりになる手段はありません。

重度の難聴が両耳にあり、補聴器を使っても音が聞こえない場合は、早くて生後1カ月からでも人工内耳が役立つ可能性があります。人工内耳は、先天性または後天性の難聴がある小児の多くで聴覚を補助しますが、すでに言語が発達している小児に使用した場合は通常はより効果的です。ときに、髄膜炎の後に聾になった小児で、内耳が硬くなって骨になることがあります(骨化)。その場合、人工内耳を早期に使用して最大限の効果を得るべきです。聴神経が腫瘍によって破壊された小児では、脳の底部(脳幹)に電極を埋め込む方法も役立つことがあります。人工内耳を埋め込んだ小児は、そうでない小児や人工内耳を埋め込んだ成人に比べて、髄膜炎のリスクがわずかに高くなる可能性があります。

片耳だけが聾の小児には、教室でFM補聴システムなどの特殊な機器の使用を許可するべきです。そうしたシステムでは、教師がマイクに向かって話し、そこから小児の正常な方の耳に装着した補聴器に信号が送られます。こうすることで、騒々しい環境下で話を聞き取る力が著しく低下している小児でも、教師の話がよりはっきりと聞こえるようになります。

高齢者での重要事項

高齢者では一般的に、進行性の聴力低下(老人性難聴)がみられます。65歳以上では3分の1以上、75歳以上では半数以上の人に聴覚障害があります。それでも、原因が加齢ではない場合があるため、医師は難聴のある高齢者の評価を行うべきです。人によって、腫瘍、神経疾患や自己免疫疾患、または簡単に治せる原因で難聴になっていることがあります。

難聴が軽度であっても話を理解することが難しくなるため、難聴のある高齢者はよくみられる特定の行動を示します。軽度の難聴のある高齢者は会話を避けることがあります。レストランや親族の集まりなど、周囲が騒がしかったり、複数の人が話している状況では特に話を理解することが難しくなります。話している人に大きな声でしゃべってくれるようにいつも頼んでいては、聴き手も話し手もストレスがたまってしまいます。難聴の人が質問を聞き間違えて、明らかに妙な返事をしてしまい、周囲の人に錯乱していると思われることもあります。また、自分の話し声の大きさを誤って見積もり、大声を出し、周囲の人が会話を避けてしまう場合があります。そうして、難聴が社会的孤立や非活動的な生活につながったり、社会的支援を失ったり、抑うつ状態になったりすることもあります。認知症の人に難聴がある場合はさらにコミュニケーションが取りにくくなります。認知症の患者では、難聴を是正すると認知症に対処しやすくなります。難聴を是正すると、身体的健康にも心理社会的健康にも明らかな便益があります。

老人性難聴

老人性難聴は加齢に伴う難聴です。おそらく、加齢に伴う変性と、生涯にわたる騒音への曝露や遺伝学的特徴による影響が組み合わさることで起こると考えられています。

通常、最も高い音の周波数が聞き取りづらくなり、一般的に症状は約55~65歳で始まります(これより早いこともときにあります)。高周波の難聴があると、話し声の全体的な大きさは正常と思われる場合でさえ、話を理解するのが特に難しくなります。これは特定の子音(C、D、K、P、S、Tなど)が高周波の音だからです。話し言葉を理解するにはそうした子音の役割が極めて重要です。例えば、「shoe」、「blue」、「true」、「too」、または「new」という単語が話されたとき、老人性難聴のある人の多くは「oo(ウー)」の音は聞き取れますが、子音が区別できないためどの単語が話されたのか認識できません。患者は一般的に、話し手がもごもご話しているように感じます。話し手が大きな声で話そうとすると、通常は母音(周波数が低い)が強調されるため、言語認識はほとんど改善されません。周囲があまりにもうるさいと、話の理解が特に難しくなります。

スクリーニング

高齢者の多くが自分では難聴に気づかないため、難聴のスクリーニングが重要です。医師は患者に次のような質問をすることがありますが、家族がこのような質問をしてもよいでしょう。

  • 聴力に問題があるために、人と会ったときに気まずい思いをしますか。

  • 聴力に問題があるために、家族と話しているときにいらだちを感じますか。

  • ささやき声が聞き取りにくいですか。

  • 聴力の問題によりハンディキャップを負っていると感じますか。

  • 聴力に問題があるために、友人、親類、近所の人を訪ねたときに困りますか。

  • 聴力に問題があるために、宗教行事に参加したくても参加できないことがありますか。

  • 聴力に問題があるために、家族と口論になりますか。

  • 聴力に問題があるために、テレビやラジオの音が聞き取りにくいですか。

  • 聴力の問題が、私生活や社会生活に支障をきたしていますか。

  • 聴力に問題があるために、親類や友人とレストランにいるときに困りますか。

それぞれの質問に対して、答えが「いいえ」の場合は0点、「ときおり」は2点、「はい」は4点です。スコアが10を超える場合は、明らかな難聴が疑われ、聴覚の専門家によるフォローアップが推奨されます。

要点

  • 耳あか、感染症、加齢、騒音曝露が、難聴の最も一般的な原因です。

  • 難聴がある人は全員、聴覚検査を受けるべきです。

  • 神経症状(めまいや回転性めまい)がある人は通常、画像検査を受けます。

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