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歯肉炎

執筆者:

James T. Ubertalli

, DMD, Hingham, MA

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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歯肉炎は歯ぐき(歯肉)に起こる炎症です。

歯周病に関する序も参照のこと。)

  • 歯肉炎はほとんどの場合、歯磨きやデンタルフロスの使用が不十分なために起こりますが、病気や特定の薬の使用によって起こることもあります。

  • 歯ぐきが赤く腫れて出血しやすくなります。

  • 診断は一般的に、医師による歯肉の診察結果に基づいて下されます。

  • 歯肉炎は、口の中を清潔に保つこと、頻繁に専門的な口腔清掃を受けること、および十分に栄養を摂取することで通常は解消し、一部の洗口液が役に立つことがあります。

歯肉炎は極めて一般的な病気で、歯ぐきが赤く腫れて出血しやすくなります。歯肉炎は初期には痛みがほとんど発生しないため、気がつかないことがあります。しかし、治療せずに放っておくと、より重い歯ぐきの病気で歯を失うこともある歯周炎に進行することがあります。

歯肉炎は以下の2つに分類されます。

  • 歯垢による歯肉炎

  • 歯垢によるものではない歯肉炎

歯垢による歯肉炎

ほぼすべての歯肉炎は歯垢(主に細菌でできたフィルム状の物質)によって起こります。群を抜いて最も一般的な原因は以下のものです。

  • 歯磨きとデンタルフロスの使用が不十分なこと

歯磨きを十分にしていないと、歯肉縁に沿って歯垢が残り、歯と歯ぐきの間にたまります(歯肉炎は歯が抜けている部位には起こりません)。また、不完全な歯の詰めもの(充填物)の表面や、洗浄が不十分な部分入れ歯、ブリッジ、矯正装置に隣接した歯の周囲にも、歯垢がたまります。歯垢は、72時間以上歯面に付着したままにしておくと、硬くなり歯石に変化することがあり、歯石は歯ブラシやデンタルフロスでは完全に取れません。

歯垢で歯ぐきが炎症を起こし、歯と歯ぐきの間に溝(歯周ポケット)ができます。歯根部のう蝕と同様に、歯周ポケットに生息している細菌が歯肉炎の原因となることがあります。歯ぐきが健康なピンク色ではなく赤色に見えます。歯ぐきが腫れて、それまでしっかりと歯についていた歯ぐきが動かせるようになります。歯ぐきから出血しやすくなることがあります(特に歯磨きや食事の際)。通常、痛みはありません。

歯垢による歯肉炎は、毎日欠かさず歯ブラシとデンタルフロスを使い口の中を清潔に保つことで予防できます。一部の洗口液が歯垢除去に役立ちます。いったん歯石ができてしまうと、歯科医師または歯科衛生士に取ってもらうしかありません。一般的には、6~12カ月毎に専門的な口腔清掃(歯石除去および歯面清掃)が必要です。ただし、口の中の衛生状態が悪い人、歯肉炎を引き起こす可能性がある病気の人、普通より早く歯垢ができやすい人は、さらに頻繁に専門的な口腔清掃が必要になる場合があります。歯ぐきには血液が非常に多く通っているため、歯石と歯垢を取り除けば、歯ブラシとフロスをていねいに使う限り、すぐに健康な状態になります。

口内の衛生状態が悪いことに加え、歯垢による歯肉炎は以下によって発生または悪化する可能性があります。

薬による歯肉炎

一部の薬は、歯ぐきの組織の過剰増殖(過形成)を引き起こすことがあり、そのため歯垢が取れにくくなり、しばしば歯肉炎が発生します。そうした過剰増殖を引き起こす薬には、フェニトイン(けいれん発作の治療に使用)、シクロスポリン(臓器移植を受けた人が使用)、ニフェジピンなどのカルシウム拮抗薬(高血圧や不整脈の治療に使用)があります。また、経口避妊薬または注射用避妊薬、化粧品に広く使用されている鉛やビスマス、アクセサリーに含まれるニッケルなどの重金属も、歯肉炎を悪化させます。

歯肉炎を起こしたり悪化させたりする可能性がある病気は、治療するかまたは病状をコントロールする必要があります。歯ぐきの組織の過剰増殖を引き起こす薬の使用が必要な場合は、余分な歯ぐきの組織を手術で除去する必要が生じることがあります。しかし、家庭で入念に口内を清掃し、歯科医師や歯科衛生士による口腔清掃を頻繁に受ければ、組織の増殖が遅くなり、手術の必要性がなくなることがあります。

ビタミン欠乏症による歯肉炎

ビタミン欠乏症はまれに歯肉炎を引き起こします。ビタミンC欠乏症(壊血病)によって歯ぐきが炎症を起こし出血します(歯周炎)。口の中に赤色や紫色の斑点や皮下出血がみられる場合があります。

ナイアシン欠乏症(ペラグラ)でも、歯ぐきの炎症と出血が起こり、鵞口瘡(がこうそう)などの口内の感染症や舌炎(舌の炎症)が起こりやすくなります。また、唇が赤くなりひび割れて、舌が平滑で鮮やかな赤色になり、舌と口の粘膜がただれることがあります。

これらの欠乏症は米国ではまれです。

ビタミンC欠乏症と ナイアシン欠乏症は、新鮮な果物や野菜を増やした食事をするとともに、ビタミンCやナイアシンのサプリメントを摂取することで治療できます。

ホルモンの変化による歯肉炎

妊娠によって軽い歯肉炎が悪化することがあり、その主な理由はホルモンの変化です。妊婦は、朝の吐き気(つわり)や疲労を感じるために口内の衛生状態をおろそかにすることで、知らないうちに歯肉炎が起こりやすくなることがあります。また妊娠中には、軽微な刺激(多くの場合、たまった歯石または縁がとがっている修復した歯)によって、妊娠腫と呼ばれる、柔らかく赤いこぶ状の歯肉組織の過剰増殖が起こることがあります(化膿性肉芽腫)。この膨らんだ組織は傷つくと簡単に出血し、食事の妨げになることがあります。

つわりや疲労のために口の衛生状態がおろそかになる場合は、歯科医師に相談すれば、吐き気を悪化させずに歯と歯ぐきを清掃する方法を指導してくれます。歯磨き剤を使わずにやさしくブラッシングをしたり、ブラッシングの後に塩水でうがいすることも役立ちます。わずらわしい妊娠腫は手術で摘出できます。ただし、妊娠が終わるまで、さらにその後でさえ、繰り返し再発する傾向があります。

閉経によって剥離性歯肉炎が起こることがあり、これは痛みを伴うあまりよく解明されていない病気で、ほとんどは閉経後女性に発生します。この病気では歯ぐきの外側の層が容易に出血し、その下にある組織から剥がれて(剥離)、神経終末が露出します。歯ぐきの表層を綿棒でこすったり、歯科治療用のエアーで噴射したりすると剥がれてしまいます。

剥離性歯肉炎が閉経期に発生した場合、ホルモン補充療法が役に立つことがあります。歯科医師がコルチコステロイドの洗口液や炎症部分に直接塗るコルチコステロイドのペーストを処方することもあります。

白血病による歯肉炎

白血病が歯肉炎を引き起こすことがあります。実際に、白血病の小児の約25%では歯肉炎が最初の徴候となります。白血病細胞が歯ぐきに入り込んでくることで歯肉炎が生じ、感染に対する体の抵抗力が低下しているために、歯肉炎が悪化します。歯ぐきは赤く腫れて痛み、出血しやすくなります。白血病の患者では血液が正常に凝固しないため、出血が数分以上続くことがよくあります。まれに、歯ぐきの組織にがんができ、近くのリンパ節に広がることがあります。

白血病による歯肉炎の患者は、歯ブラシやデンタルフロスの代わりに、歯と歯ぐきをガーゼやスポンジでやさしくふき取ることで、出血を予防できます。歯垢を除去し口の中の感染を予防するために、歯科医師はクロルヘキシジンの洗口液を処方することがあります。白血病が寛解(がんの徴候が消えている)状態にあるときは、十分な口腔ケアによって歯ぐきを健康な状態に戻すことができます。

歯垢によるものではない歯肉炎

歯垢が原因ではない歯肉炎は、ごく一部の人に起こります。原因には、感染症、アレルギー、病気やけがなどがあります。

感染による歯肉炎

ウイルス感染によって歯肉炎が起こります。急性ヘルペス性歯肉口内炎は、歯ぐきやその他の口内の部位がヘルペスウイルスに感染して起こる、痛みを伴うウイルス感染症です。感染すると、歯ぐきが鮮やかな赤色に変化し、口の中に多数の白色や黄色の小さなただれができます。

急性ヘルペス性歯肉口内炎は通常、治療をしなくても2週間で回復します。痛みがある間は、しっかりと歯磨きをしても役に立たないため、やさしく磨きます。飲食中の不快感を和らげるために、歯科医師から麻酔作用のある洗口液の使用を勧められることがあります。

真菌感染も歯肉炎の原因となります。一般的には、真菌は口の中でごく少数だけ生息しています。抗菌薬を使用したり全身の健康状態が変化したりすると、口内の真菌の数が増えることがあります。鵞口瘡(カンジダ症)は真菌感染症の1つで、真菌(特にカンジダ・アルビカンス Candida albicans)の異常増殖が起こり、歯ぐきを刺激する白や赤の斑点ができます。斑点は舌や口角も覆うことがあり、ふき取ると出血します。

鵞口瘡はナイスタチンなどの抗真菌薬を、洗口液や、口の中でゆっくり溶けるようにしたトローチ剤の形で使用することで治療できます。入れ歯は就寝中にナイスタチン溶液に浸しておく必要があります。正しい歯磨きとデンタルフロスの使用によって口の中を清潔に保ち、合わない入れ歯など原因となっている歯科的な問題を治療することも役に立ちます。

埋伏歯による歯肉炎(歯冠周囲炎)

歯肉炎が、埋伏歯(完全には出てきていない歯)の歯冠を取り巻く歯ぐきに起こることがあります。この病態は歯冠周囲炎と呼ばれ、完全に生えていない歯を覆っている歯ぐきが腫れます。一部が生えている歯の歯冠に被さった歯ぐき(歯肉弁)には、液体、食べもののかす、細菌がたまることがあります。

歯冠周囲炎は智歯(親知らず、第3大臼歯)の周囲に最も発生しやすく、特に下あごの智歯によくみられます。上あごの智歯の方が下あごの智歯よりも先に生えると、噛むときに上あごの智歯が下あごの智歯を覆う歯肉弁にあたって、刺激が増大します。感染が起きて、のどや頬へ広がることもあります。歯が完全に生えると歯肉弁はなくなります。

歯冠周囲炎が起きている場合は、歯科医師が歯肉弁の内側に塩水を流し、食べもののかすや細菌を洗い流すことがあります。ときに、塩水、過酸化水素、または消毒薬のクロルヘキシジンを使って家庭でうがいをするように指示されることがあります。X線検査で下あごの歯が完全には生え出てくる可能性が低いことが分かった場合には、歯科医師はこの歯とかみ合う上あごの歯を抜いて、抗菌薬を数日間処方した後に下あごの歯を抜くことがあります。ときに、下あごの歯をすぐに抜くこともあります。

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