口腔灼熱症候群には、原因は異なるけれども症状が共通しているいくつかの病態が含まれています。
灼熱感やピリピリ感、麻痺したような感覚が口全体または舌だけに起こり、持続的な場合もあれば間欠的な場合もあります。
口腔灼熱症候群の診断は、症状に基づいて下されるほか、舌の不快感の原因としてより一般的なものがみられない場合に下されます。
根本的な原因があれば、それを治療します。
口を湿った状態に保つと、しばしば灼熱感の緩和に役立ちます。
口腔灼熱症候群は、 閉経 閉経 閉経とは、月経が永久に停止し、妊よう性がなくなることです。 閉経前後の数年間は、エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が起こります。 閉経後は骨密度が低下します。 女性に1年間月経がなければ閉経と診断されますが、確認するため血液検査を行うこともあります。... さらに読む 後の女性に最も多く発生します。
口腔灼熱症候群は、多くの人が刺激のある食べものや酸性の食べものを食べた後に経験する一時的な不快感とは異なります。
口腔灼熱症候群の原因
口の痛みの原因となる病気はいくつかあります。そのような病気にかかっておらず、口の中に明らかな異常が認められない状態で口の痛みがある場合には、医師はこれを口腔灼熱症候群と呼んでいます。口腔灼熱症候群の原因として、痛みと味覚を制御する神経にあまりよく理解されていない異常が生じていることがおそらく関与しているだろうと医師は考えています。
口の痛みの原因となるその他の病気には以下のものがあります。
ビタミンB12欠乏症 ビタミンの概要 ビタミンは健康的な食事に不可欠です。ほとんどのビタミンについて、健康な人の大半が健康を維持するのに必要な1日当たりの量を表した推奨量(RDA)が設定されています。一部のビタミンには、安全な上限量(耐容上限量)が決められています。この上限を超えて摂取すると、有害な影響(毒性)が出るリスクが高まります。... さらに読む や 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症 葉酸欠乏症はよくみられます。体は少量の葉酸しか蓄えていないため、葉酸が少ない食事を続けていると、数カ月以内に葉酸欠乏症になります。 生の葉野菜や柑橘類を十分に摂取しないと、葉酸欠乏症になることがあります。 貧血が生じて、疲労、蒼白、易怒性、息切れ、めまいが現れることがあります。... さらに読む
特定の、しばしば習慣的な口の動き(異常習癖と呼ばれる)(例えば、舌で歯を押したりする癖、歯の噛みしめ、歯ぎしり[ ブラキシズム 歯ぎしり 歯ぎしりとは、歯を噛みしめたり上下の歯を擦り合わせることです。 歯ぎしりは、睡眠中(睡眠時ブラキシズム)と目が覚めているとき(覚醒時ブラキシズム)に起こることがあります。歯ぎしりによって、最終的に歯がすり減ったり損傷したりします。この損傷は、 胃食道逆流症(GERD)や 閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人で悪化することが多くあります。人工のクラ... さらに読む ])
舌や口の中のその他の状態(炎症、自己免疫疾患、がんなど)
口腔灼熱症候群の症状
痛みを伴う灼熱感、ピリピリ感、麻痺したような感覚が口全体(特に舌、唇、口の天井)または舌だけに起こります。この感覚は持続的な場合も間欠的な場合もあり、1日を通して徐々に強くなっていくことがあります。また、飲食することによって緩和する場合もあります。ほかにも次のような症状があります。
口腔乾燥(強いのどの渇きに伴う)
味覚の変化
痛みの起こりうる結果として、食習慣の変化、易怒性、抑うつ、他者を避けることなどが挙げられます。
口腔灼熱症候群の診断
医師による評価
考えられる原因を特定するための検査
医師または歯科医師は、患者の病歴と食習慣を詳細に確認し、口の診察を行います。診断を下すには、通常、痛みがほぼ毎日起こり、1日約2時間以上で3カ月以上にわたって続く必要があります。口の灼熱感の原因となることが分かっているその他の特定の病気を調べるために血液検査や他の検査が行われることもあります。例えば、 口腔乾燥 口腔乾燥 口腔乾燥は、唾液の分泌が減少または停止することで発生します。この状態は、不快感を引き起こし、発話や飲み込みを妨げ、入れ歯の装着を難しくし、 口臭を引き起こし、また口内の酸性度を低下させ細菌の増殖が多くなることで口の衛生状態を悪化させます(これが う蝕発生の一因となります)。長期にわたる口腔乾燥の結果、重度のう蝕や口の... さらに読む が生じていないかどうかを確認するために、唾液の分泌を調べる検査を行うことがあります。口腔灼熱症候群はしばしば診断が難しく、その原因としては、特定の病気による口の痛みでは、それが軽症であるか初期である場合にも口腔内の組織が正常にみえる可能性があることがあげられます。
口腔灼熱症候群の治療
口を湿った状態に保ち、痛みを緩和するための対策
ときに抗うつ薬または抗不安薬
口の痛みの原因がみつかれば、それを治療します。
症状の緩和に役立つ手段はいくつかあります。人工唾液、氷片、頻繁に水を飲むこと、またはチューインガム(シュガーレス)を噛むことが、唾液の分泌を促し口を湿った状態に保つために役立つことがあります。ノルトリプチリンなどの抗うつ薬やクロナゼパムなどの抗不安薬が、ともに起こりうる感情の変化に対してときに役立ちますが、これらの薬は、 口腔乾燥 口腔乾燥 口腔乾燥は、唾液の分泌が減少または停止することで発生します。この状態は、不快感を引き起こし、発話や飲み込みを妨げ、入れ歯の装着を難しくし、 口臭を引き起こし、また口内の酸性度を低下させ細菌の増殖が多くなることで口の衛生状態を悪化させます(これが う蝕発生の一因となります)。長期にわたる口腔乾燥の結果、重度のう蝕や口の... さらに読む を引き起こして痛みの症状を悪化させることがあります。カプサイシンのクリームやガバペンチン、ビタミンサプリメント(BとC)も役に立つ場合があります。 認知行動療法 精神療法(心理療法) 精神障害の治療は大きな進歩を遂げています。その結果、多くの精神障害に関する治療成績が身体的な病気に近い水準まで向上してきています。 精神障害に対する治療法の大半は、以下のいずれかに分類できます。 身体的な治療法 精神療法(心理療法) 身体的な治療法としては、薬物療法と電気けいれん療法のほか、脳を刺激する治療法(経頭蓋磁気刺激療法や迷走神経... さらに読む が、他の治療法で効果がみられない場合に、役立つことがあります。治療を行わなくても症状が自然に消えることがありますが、再発することもあります。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国国立歯科・頭蓋顔面研究所、口腔灼熱症候群(National Institute of Dental and Craniofacial Research, Burning Mouth Syndrome):データと統計、一般向けの出版物の入手、口腔ケアを受けられる場所を見つける方法などの口腔灼熱症候群に関する包括的な情報