肝斑では、皮膚に濃い色の斑が生じます。
診断は通常、皮膚の診察結果に基づいて下されます。
治療としては、日光に対する防御やクリーム剤による皮膚の脱色などを行います。
肝斑の原因として最も多いのはメラニン色素の過剰生産です。メラニンはメラノサイトと呼ばれる特殊な皮膚細胞によって作り出されます(皮膚の色素の概要 皮膚の色素の概要 メラニンは、人の皮膚、毛髪、眼に様々な色合いをもたらしている色素です。どのような色になるか(色素の沈着)は、その人の皮膚に含まれるメラニンの量によって決まります。メラニンがなければ、皮膚は青白くなり、同時に皮膚から透けて見える血流のためにピンク色がかって見えます。皮膚の色が薄い人ではメラニンの生産量が非常に少なく、皮膚の色がやや濃い人では... さらに読む を参照)。皮膚の色素が多すぎる状態は色素沈着 色素沈着 色素沈着とは皮膚の色が濃くなることで、その原因として最も多いのはメラニン(皮膚の色素)の異常な増加です。 日光にさらされると、メラノサイト(皮膚の色素の概要を参照)と呼ばれる特殊な皮膚細胞が色素であるメラニンを多く作り出すようになり(色素沈着)、その結果として皮膚の色が黒っぽくなります。皮膚の色の薄い人の中には、日光に反応して一部のメラノサイトが他のメラノサイトより多くのメラニンを作り出すことがあります。この不均衡なメラニンの生産のため... さらに読む
と呼ばれます。肝斑は妊婦(妊娠性肝斑 皮膚
と呼ばれます)や経口避妊薬 経口避妊薬 避妊のためのホルモン剤は、以下の方法で投与することができます。 内服(経口避妊薬) 腟への挿入(腟リングまたはバリア式の避妊具) 皮膚への貼り付け(パッチ剤) 皮下インプラント さらに読む
を服用している女性にできやすい傾向がありますが、誰にでも生じます。皮膚の色が濃い人ではこの病気がよくみられ、症状が長く続きます。症例の10%は妊娠していない女性と皮膚の色が濃い男性に生じます。
日光にあたる時間が多い人では肝斑を生じるリスクが高くなります。その他の危険因子として、自己免疫性甲状腺疾患や、一部の人で皮膚を日光の作用に敏感にさせる薬剤などがあります。
症状
肝斑では、不規則な形をした濃い色の斑状の部位が皮膚に、多くの場合、顔面の左右両側にできます。この色素沈着は、主に顔面の中央部、頬、額、こめかみ、上唇、鼻に多くみられます。顔面の片側だけに色素沈着斑ができることもあります。まれですが、前腕部に生じることもあります。肝斑はかゆみも痛みもなく、見た目が気になるだけです。
診断
医師による評価
ウッド灯検査
肝斑の診断は皮膚の診察結果に基づいて下されます。
治療
日光に対する防御
皮膚脱色用のクリーム
ときにケミカルピーリング
肝斑ができている場合は、症状がさらに悪化するのを防ぐため、患部に日焼け止めを塗り、日光にあたらないようにします(日焼けの予防 予防 日焼けは、強い紫外線を短時間で浴びた(急性曝露)結果として起こります。 紫外線を浴びすぎると、日焼けが生じます。 日焼け(サンバーン)が起こると、皮膚は赤くなって痛み、ときに水疱が現れたり、発熱や悪寒が生じたりすることもあります。 日光を浴びすぎないようにし、日焼け止めを塗ることで、日焼けを予防することができます。 冷水湿布、保湿剤、および非ステロイド系抗炎症薬により、日焼けが治るまで痛みを和らげることができます。 さらに読む を参照)。
皮膚に塗る治療薬が有効なのは、色素沈着が皮膚の最上層にのみ生じている場合だけです。ハイドロキノン、トレチノイン、またはアゼライン酸(Azelaic acid)を含有する皮膚脱色用のクリーム剤が、肝斑の色を薄くするのに役立ちます。処方薬のレチノイドやコルチコステロイドのクリームを脱色用のクリームとともに使用することもあります。ハイドロキノンは、長期間使用すると逆に永続的な色素沈着を生じさせる可能性がありますので、必ず医師の指導を受けながら使用する必要があります。
皮膚脱色用のクリームで効果がみられない患者に対しては、グリコール酸やトリクロロ酢酸によるケミカルピーリングを試すこともあります。
将来的には、レーザー治療が一般的になってくる可能性があります。
治療した皮膚は日焼けを起こしやすくなるため、治療中と治療後は日光に対する防護をしっかり行う必要があります。また、治療を行った部位では日光を数時間浴びるだけでも再び色素沈着が始まる可能性があり、数カ月に及ぶ治療の成果が台無しになることもあります。
皮膚を日光から防御しておけば、多くの場合、妊娠が終わった後や経口避妊薬の服用を中止した後に色が薄くなっていきます。男性では、肝斑が薄くなることはまれです。