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皮膚の壊死性感染症

(壊死性蜂窩織炎;壊死性筋膜炎)

執筆者:

Wingfield E. Rehmus

, MD, MPH, University of British Columbia

レビュー/改訂 2021年 4月
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本ページのリソース
  • 患部の皮膚は赤くなって触れると熱く感じられ、ときに腫れることもあり、また皮膚の下に気泡が生じることがあります。

  • 通常、患者は強い痛みを感じて非常に具合が悪くなり、高熱が出ます。

  • 医師の診察、X線検査および臨床検査の結果に基づいて診断されます。

  • 治療としては、壊死した皮膚を取り除き(広範囲の手術が必要になることもあります)、抗菌薬を静脈から投与します。

ほとんどの皮膚感染症では、感染した皮膚や付近の組織が壊死することはありません。しかし、ときに細菌感染が起きた部分の皮膚にある微小な血管に血栓ができて詰まることがあります。血管が詰まると、その血管から栄養を受けている組織に血液が流れなくなり、組織が壊死してしまいます。組織が死ぬことを壊死と言います。血流を介して全身を保護している免疫系の要素、つまり 白血球 白血球 人間の体には、異物や危険な侵入物から体を守る仕組みとして、免疫系が備わっています。侵入物としては以下のものがあります。 微生物( 細菌、 ウイルス、 真菌など) 寄生虫(蠕虫[ぜんちゅう]など) がん細胞 移植された臓器や組織 さらに読む 抗体 抗体 体の防衛線( 免疫系)の一部には 白血球が関わっていて、それらの白血球は血流に乗って体内を移動して組織の中に入り込み、微生物などの異物を見つけ出して攻撃します。( 免疫系の概要も参照のこと。) この防衛線は以下の2つの部分で構成されています。 自然免疫 獲得免疫 獲得免疫(適応または特異免疫)は、生まれたときには備わっておらず、後天的に獲得されるものです。獲得のプロセスは、免疫系が異物に遭遇して、非自己の物質(抗原)であることを認識した... さらに読む 抗体 なども、その部分に行き届かなくなるため、感染が急速に広がって、コントロールするのが困難になります。こうなると、適切な治療を行っても死に至る可能性があります。

皮膚の壊死性感染症の中には、筋肉を覆う結合組織の表面(筋膜)に沿って皮膚の深部で壊死が広がっていくものがあり、これを壊死性筋膜炎といいます。皮膚の外側の層に沿って壊死を伴う感染が広がるものもあり、これは壊死性蜂窩織炎と呼ばれます。皮膚の壊死性感染症を引き起こす細菌には、レンサ球菌属(Streptococcus)やクロストリジウム属(Clostridia)など、いくつかの種類がありますが、この種の感染症の多くは複数の細菌が同時に感染することによって起こります。特にレンサ球菌による皮膚の壊死性感染症は、俗に「人喰いバクテリア」による感染症と呼ばれていますが、ほかのものとの違いはほとんどありません。

皮膚の壊死性感染症は刺し傷や裂傷から起こる場合もありますが、その傷が土や破片で汚れた場合に特にそうなりやすいです。また、外科的な処置のため切開した部分や、さらには正常な皮膚から感染が始まることもあります。憩室炎(けいしつえん)、腸穿孔、または腸の腫瘍がある人では、腹壁、性器周辺、太ももの皮膚に壊死性感染症が発生することがあります。これらの感染症は、ある種の細菌が腸内から外へ出て皮膚まで広がることで起こります。そのような細菌は、まず腹腔内に膿瘍(膿がたまった空洞)を形成し、それから皮膚表面へと直接広がるか、血流を介して皮膚や他の臓器に広がります。糖尿病の人では、皮膚の壊死性感染症のリスクが特に高くなっています。

皮膚の壊死性感染症の症状

皮膚の壊死性感染症の症状は多くの場合、一般的な皮膚感染症である 蜂窩織炎 蜂窩織炎 蜂窩織炎(ほうかしきえん)は、皮膚とそのすぐ下の組織に生じる、広がりやすい細菌感染症です。 この感染症の最も一般的な原因はレンサ球菌またはブドウ球菌です。 患部の皮膚に発赤、痛み、圧痛がみられるほか、しばしば皮膚を触ると熱く感じたり、一部の人では発熱や悪寒が生じたり、より重篤な症状が現れたりすることもあります。 医師の診察や、ときに臨床検査の結果に基づいて診断されます。 この感染症の治療には抗菌薬が必要です。 さらに読む 蜂窩織炎 とほぼ同様に始まります。感染部の皮膚は最初は青白く見えますが、すぐに赤くなるか日焼けしたような色になり、触れると熱く感じられ、ときに腫れることもあります。その後、皮膚は紫色に変色しますが、そこに液体の詰まった大きな水ぶくれ(水疱)ができることがよくあります。この水疱の中にある液体は、茶色くて水っぽく、悪臭がすることもあります。皮膚組織が壊死した部分は黒くなります(壊疽 ガス壊疽 ガス壊疽(えそ)は、嫌気性細菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)をはじめとするクロストリジウム属の細菌によって筋肉組織に起こる、生命を脅かす感染症です。 ガス壊疽は特定の手術を受けた後やけがをした後に発生することがあります。 気泡を伴う水疱が感染部位の周辺に発生するとともに、発熱や心拍数と呼吸数の増加がみられ、感染部位はしばしば痛みを伴います。... さらに読む )。クロストリジウム属(Clostridia)や複数の細菌が原因であるものなど、一部の種類の感染症では、ガスが発生します。そのガスは皮膚の下やときに水疱の中で気泡を作るため、その部分の皮膚を押すとパチパチとはじけるように感じられます。当初は感染を起こした部分に極めて強い痛みを感じますが、皮膚の組織が壊死すると、神経が機能しなくなり、その部分は何も感じなくなります。感染が悪化するにつれて、筋肉が侵されることもあります。

通常は、非常に具合が悪くなり、高熱と頻脈がみられ、精神機能が低下して混乱や意識消失をきたします。細菌から分泌された毒素と感染に対する体の反応の両方が原因になって、血圧が低下することがあります(敗血症性ショック 敗血症と敗血症性ショック 敗血症は、 菌血症やほかの感染症に対する重篤な全身性の反応に加えて、体の重要な臓器に機能不全が起きている状態です。敗血症性ショックは、敗血症のために生命を脅かすほどの血圧の低下( ショック)と臓器不全が起きている病態です。 通常、敗血症は特定の細菌に感染することで起こり、病院内での感染が多くみられます。 免疫系の機能低下、特定の慢性疾患、人工関節や人工心臓弁の使用、特定の心臓弁の異常といった特定の条件に当てはまると、リスクが高くなります... さらに読む )。 毒素性ショック症候群 毒素性ショック症候群 毒素性ショック症候群とは、発熱、発疹、危険なレベルの低血圧、複数の臓器不全など、進行が速い重度の症状の一群を指します。これは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やA群レンサ球菌といった グラム陽性球菌(図「 細菌の形状」を参照)が作る毒素によって引き起こされます。 高吸水性のタンポンの使用や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus... さらに読む を発症することもあります。

皮膚の壊死性感染症の診断

  • 医師による評価

  • 臨床検査

皮膚の壊死性感染症の診断は、感染部の皮膚の外観、特に皮膚の下に気泡が発生しているかどうかに基づいて下されます。X線検査でも皮下のガスの発生が分かる場合があります。

血液検査では通常、白血球数の増加がみられます(白血球増多症)。感染症を引き起こしている細菌を、血液や組織のサンプルを検査室で分析すること(培養検査)によって特定します。ただし、医師はその検査結果が判明するのを待たずに治療を開始します。

皮膚の壊死性感染症の予後(経過の見通し)

全体での死亡率は約30%です。高齢者、ほかの病気にもかかっている人、感染がかなり進行している人では、さらに経過の見通しが悪くなります。診断や治療が遅れたり、壊死した組織の外科的切除が不十分だったりした場合にも、予後は悪くなります。

皮膚の壊死性感染症の治療

  • 壊死組織の外科的切除

  • 抗菌薬

  • 必要に応じて切断手術

壊死性筋膜炎の治療としては、外科手術により壊死した組織を切除するとともに、抗菌薬を静脈から投与します。皮膚、皮下組織、筋肉を大量に切除しなければならない場合も多く、感染した腕や脚を切断せざるを得なくなることもあります。

また、手術の前後で大量の輸液(静脈から水分を補給すること)が必要になることがあります。高圧酸素室での治療を推奨している医師もいますが、この方法がどれほど有用かはよく分かっていません。 毒素性ショック症候群 治療 毒素性ショック症候群とは、発熱、発疹、危険なレベルの低血圧、複数の臓器不全など、進行が速い重度の症状の一群を指します。これは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やA群レンサ球菌といった グラム陽性球菌(図「 細菌の形状」を参照)が作る毒素によって引き起こされます。 高吸水性のタンポンの使用や黄色ブドウ球菌(Staphylococcus... さらに読む を併発した人では、免疫グロブリン製剤の静脈内投与を行うことがあります。

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