結核
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結核は結核菌が空気で運ばれることによって伝染する感染症です。
通常、結核は肺を侵しますが、ほぼすべての臓器に影響が及ぶ可能性があります。
結核は結核菌と呼ばれる細菌によって引き起こされます。ウシ型結核菌やマイコバクテリウム・アフリカナムのような他の関連菌(抗酸菌)も、似たような病気を起こすことがあります。これらの細菌と結核菌、さらに他のいくつかの細菌をあわせて結核菌群と呼びます。
結核に関する世界的状況
結核は長い間、公衆衛生上の深刻な問題であり続けています。1800年代の欧州では、死者数全体の30%以上が結核によって死亡していました。1940年代後半に抗結核用の抗菌薬が登場したことで、人類は結核との闘いに勝利を収めたかのようにみえました。しかし、公衆衛生対策の不備、エイズによる免疫反応の低下、薬剤耐性の出現、世界各地に残る極度の貧困などの要因により、結核は今もなお世界中で命を脅かす病気です。2013年の統計によると、次のような状況があります。
世界人口の約3分の1が結核菌に感染しているとみられています。そのほとんどは休眠型(潜在性)の結核感染症です。こうした感染者のうち、およそ5~10%の人だけが活動性結核を患います。世界中で常に約1100万人が活動性結核を患っています。
世界的にみると、感染症による死亡の原因として、結核はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症に次ぐ第2位の位置を占めています。この両方の感染症が流行している地域では、HIV感染症やエイズにかかることが、結核にかかるリスクとそれによる死亡のリスクを大幅に引き上げています。
結核で亡くなる人の割合には大きな地域差があります。西欧、北米、オーストラリア、ニュージーランドのほとんどでは10万人に1人未満の割合ですが、アフリカの大部分では10万人に40人を超えています。
米国における結核
米国では、過去20年間で結核の新規患者の発生率が低下しました。2014年には、9412件(10万人当たり約3件)が報告されています。しかし発生率は、10万人当たりで上はハワイの9.6件、下はバーモント州の0.3件と、大きなばらつきがあります。
また米国の新規患者の半数以上は、結核が比較的よくみられる米国外の地域(アフリカ、アジア、中南米など)で生まれた人でした。さらに、米国生まれの黒人、ホームレス、拘置所や刑務所の収容者、その他の公民権をはく奪されたマイノリティの人々も、感染リスクが高い状態にあります。このような高リスク群での新規患者の発生率は高く、世界でも結核が比較的よくみられる地域に匹敵するほどです。
米国では、結核患者の約10%が結核やそれに関連する病気によって死亡していますが、海外の結核が多発している地域の死亡率は、それをはるかに上回っています。
結核はどのように起こるのか
レンサ球菌咽頭炎や肺炎をはじめとする感染症のほとんどでは、微生物が体内に侵入した直後から体調が悪くなり、1~2週間以内にはっきりした症状が出ます。しかし、結核はこのような経過をたどりません。
結核は次の段階を経て発生します。
非常に年少の小児や免疫系の機能が低下した人を除いて、結核菌が体内に入ってすぐに体調が悪くなる人はほとんどいません(この段階は初感染と呼ばれます)。ほとんどの場合、肺に侵入した結核菌は体の防御機能によって直ちに死滅し、生き残った菌はマクロファージと呼ばれる白血球に飲み込まれます。飲み込まれた菌は、何年も休眠状態で生き続けることができます(この段階は潜伏感染と呼ばれます)。感染しても90~95%は生涯問題を起こしませんが、残りの約5~10%ではやがて菌が増殖し始め、活動性結核を引き起こします。この段階になると、感染者は実際に体調が悪くなり、他者に結核をうつす可能性があります。
初感染
潜伏感染
活動性結核
感染者の約5~10%で、休眠していた結核菌がやがて増殖し始め、活動性結核を引き起こします。この段階になると、感染者は実際に体調が悪くなり、他者に結核をうつす可能性があります。
休眠状態の細菌が再活性化する場合、その半数以上が初感染から2年以内に起きていますが、非常に長く休眠が続き、数十年後に再活性化するケースもあります。
休眠状態の菌が再活性化する理由についてはよく分かっていません。しかし、次のような要因のために免疫系の機能が低下している人に起こりやすいようです。
ほかにも次のような場合に、再活性化が起こりやすくなります。
他の多くの感染症と同じく、免疫系の機能が低下していると、結核は急速に広がり、危険性が大幅に高まります。そうした人の場合、結核が生命を脅かすこともあります。
感染経路
結核菌は人間にのみ感染します。この菌は通常、動物、虫、土、または他の無生物によって運ばれることはありません。ほぼすべての感染は、活動性結核にかかっている人によって汚染された空気を吸い込むことで発生します。結核菌の感染経路はほぼ例外なく空気感染であるため、活動性結核の患者に触れただけでは感染しません。
ただし、動物に感染し、ときに類似した病気を引き起こすウシ型結核菌は別です。発展途上国では、小児が、感染したウシの乳を低温殺菌されていない状態で飲んだ場合に、感染が起こっています。先進国では、ウシに対する結核の検査と牛乳の殺菌が行われているため、このタイプの結核はもはや問題となっていません。しかしながら、感染したウシの乳を低温殺菌せずに原料にしたチーズが、ときおり不法に米国にもち込まれ、病気の原因になることがあります。
肺の活動性結核の患者は、せきやくしゃみによって、さらには話すだけでも、しばしば空気を細菌で汚染します。この菌は空気中で数時間生存するため、別の人がこれを吸い込むと、感染する可能性があります。このため、活動性結核の人と接触する人々(家族や患者を治療する医療従事者)は、感染するリスクが高くなります。しかし、患者が効果的な治療を受け始めると、感染が広がるリスクは急速に低下します。潜伏感染や肺以外の結核の場合は、菌が空気中に放出されないため、感染が広がることはありません。
感染症の進行と伝染
結核の潜伏感染から活動性結核への進行の仕方は、人によって大きく異なります。HIVに感染している人や免疫系の機能が低下している人(薬を使用しているなど)では、活動性結核へ進行する可能性がはるかに高く、より速くもなります。エイズ患者が結核菌に感染すると、活動性結核に進行する確率は毎年10%にのぼります。一方、潜在性の結核を患い、エイズにかかっていない人の場合、活動性結核を発症する確率は、生涯で5~10%にすぎません。
免疫系の機能が健全であれば、通常は肺にのみ活動性結核が発生します(肺結核)。
肺外結核は、肺結核の細菌が血液を介して肺の外に広がり、他の部位に感染することで起こります。この場合も肺結核と同様に、菌が病気を起こさず、ごく小さな瘢痕組織の中で休眠したままとどまることがあります。このように休眠している菌は後に再活性化し、その臓器に症状を引き起こすことがあります。
粟粒結核は、多数の細菌が血流を介して移動し、全身に広がることで発生します。この種の結核は生命を脅かすことがあります。
結核の症状と合併症
肺結核
結核で最もよくみられる症状はせきです。結核はゆっくりと発生するため、感染者は最初、せきの原因を喫煙や最近かかったインフルエンザ、かぜ(感冒)、喘息のせいと考えることがあります。朝起きたときなどに、せきに黄色または緑色のたんが少量混じることがあります。やがてたんに血が混じるようにもなりますが、大量の出血はまれです。
夜中に大量の寝汗をかき目が覚めることがあり、その際に発熱を伴うことも伴わないこともあります。結核患者は寝間着やシーツさえ取り換えなければならないほど汗をかくこともありますが、必ず寝汗をかくわけではなく、また寝汗の原因となる病気は、ほかにもたくさんあります。
また体調がすぐれず、活力や食欲が低下します。少し経ってから体重が落ちてくることもよくあります。
肺外結核
肺以外では、次の部位に結核がよく生じます。
また骨、脳、腹腔、心膜(心臓の外側を覆っている膜)、関節(特に股関節や膝などの体重を支える関節)、生殖器にも生じます。このような部位の結核は診断が難しくなりがちです。
肺外結核の症状は漠然としており、疲労、食欲減退、断続的な発熱、発汗がよくみられ、場合によっては体重が減少します。
以下のように、侵されている部位によって、痛み、不快感、膿の蓄積(膿瘍)などの症状がみられます。
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リンパ節:新しい結核感染症の場合、菌が肺から付近のリンパ節まで移動することがあります。体に本来備わっている防御機能が感染症を制御できれば、そこで感染症は止まり、菌は休眠状態になります。しかし、非常に年少の小児の場合は防御機能が万全ではありません。そのため、肺につながるリンパ節が大きく腫れて気管支を圧迫し、金属的な音のせきが出て、場合によっては肺虚脱が起こります。菌がリンパ管をつたって、首のリンパ節に広がることもあります。首のリンパ節が感染すると、皮膚が破れて膿が出ることがあります。ときとして、細菌が血流を介して他の部位のリンパ節に移動することがあります。
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腎臓:腎臓の感染症は発熱、背部痛、血尿を引き起こします。感染症が膀胱に広がることも多く、その場合、頻尿や排尿時の痛みが生じます。
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性器:結核は性器に広がることもあります。男性では、性器結核により陰嚢が大きくなります。女性では、骨盤痛や月経不順が生じ、異常な位置での妊娠(異所性妊娠)のリスクが増大します。
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脳:脳や脊髄を覆う組織に感染する結核(結核性髄膜炎)は生命を脅かす病気です。米国をはじめとする先進国では、結核性髄膜炎は高齢者や免疫系の機能が低下している人によくみられます。発展途上国では、出生後から5歳までの小児に最も多くみられ、症状としては、発熱、頻発する頭痛、項部硬直、吐き気、昏睡に至ることもある眠気などがあります。結核が脳そのものに感染し、結核腫というかたまりができる場合があります。結核腫は、頭痛、けいれん発作、筋力低下などの症状を引き起こします。
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心膜:結核性心膜炎では、心膜が厚くなり、心膜と心臓の間のすき間に体液が漏れてたまることがあります。こうなると、心臓のポンプ機能が損なわれ、首の静脈が膨張し(頸静脈怒張)、呼吸が苦しくなります。世界の結核が多い地域で、結核性心膜炎は心不全の一般的な原因の1つとなっています。
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腸:腸結核は主にウシの結核が問題になっている発展途上国でみられます。汚染されていて、低温殺菌されていない乳製品を飲食することで感染します。この感染症では、症状が起こらないこともありますが、過敏性腸症候群を発症し、痛みや下痢、腸の閉塞、肛門から鮮血が排出されることもあります。腹部の組織が腫れ、この腫れががんと間違われることがあります。
結核の診断
ときとして、スクリーニング検査で陽性の結果が出るまで結核が示唆されないことがあります。結核のスクリーニング検査は、結核のリスクが高い人に対して定期的に行われます。
結核が疑われる症状がある人には、最初に以下の検査が行われます。
それでも診断がはっきりしない場合は、次の検査が行われます。
結核についての胸部X線検査
結核についてのたんの検査
たんのサンプルを対象として、結核菌の有無を顕微鏡で調べ、菌の培養検査を行います。顕微鏡で観察すると、培養検査に比べてはるかに早く結果が得られますが、精度は劣り、培養検査で確認される結核の半分程度しか発見できません。しかし結核菌は増殖が遅いため、従来の培養検査では結果が出るまでに何週間もかかります。このため結核にかかっている可能性のある人には、たんの観察や培養検査の結果を待つ間に治療を始めることがよくあります。広く用いられている培養検査では、結核菌の増殖を通常21日以内に確認することができます。
結核菌の遺伝物質の量を増加させる検査(核酸増幅検査)は、24~48時間で結核菌の存在を確認することができます。たんのサンプルがよく使用されますが、必要に応じて、リンパ節などの他の組織をサンプルとすることもできます。
また、遺伝子検査も通常の結核治療薬に耐性をもつ菌をすばやく確認でき、効果的な治療薬の選択に役立ちます。この種の検査では、菌に特定の治療薬に対する耐性をもたせる遺伝子突然変異を検出します。
結核についての皮膚テスト
ツベルクリン検査(マントー試験または精製ツベルクリン[PPD]とも呼ばれます)では、結核菌の菌体から調製したタンパクを皮膚内(通常は前腕部)に少量注射し、約2日後に注射した部分を調べます。触れると硬く感じられ、ある大きさ以上に腫れていれば、陽性と判定されます。赤くなるだけで腫れのない場合は陽性とはみなされません。
非常に体調が悪かったり、免疫系の機能が低下していたりする人(HIV感染症の人など)では、結核に感染していてもツベルクリン検査に反応しないことがあります。
ツベルクリン検査は結核を診断する上で最も有効な検査の1つですが、過去に結核菌による感染症が生じたことが分かるだけで、その感染症が現在活動性かどうかまでは分かりません。
また、結核菌に近い種であっても一般的に害のない菌( 結核に似た他の感染症)に感染していたり、最近結核の予防接種を受けた場合( 結核のワクチン接種)は、結核に感染していないのに感染が示される場合もあります(偽陽性)。実際は結核菌が存在しているのに、結核ではないという判定が出ることもあります(偽陰性)。しかし、偽陰性の結果が出るのは通常、発熱がみられる人や重症の人、HIV感染者、または高齢者に限られます。
結核についての血液検査
その他の検査
たんのサンプルで十分なことが多いのですが、診断のために肺の体液や組織のサンプルを採取しなければならない場合もあります。これには気管支鏡という器具を口か鼻から気道へと挿入し、気管支を観察して肺の体液や組織のサンプルを採取します。これは肺がんなど他の病気の疑いがあるときに最もよく行われる手法です。
結核性髄膜炎を疑わせる症状があるときは、腰椎穿刺を行って髄液のサンプルを採取して分析しなければならないことがあります。髄液中に結核菌を見つけるのは難しく、また培養には通常何週間もかかるため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を使うことがあります。これは遺伝子のコピーを多数作るもので、菌のDNAが確認しやすくなります。検査結果はすぐに得られますが、結核性髄膜炎の疑いが少しでもある場合、通常は抗菌薬で治療をすぐに開始します。早期に治療を行うことで死を回避し、脳の損傷を最小限に食い止めることができます。
結核のスクリーニング検査
結核のリスクが高い人には、特定の検査が定期的に行われます。そのような検査には、ツベルクリン検査とインターフェロンガンマ遊離試験(IGRA)があります。
以下に該当する人は、結核のリスクが高いといえます。
皮膚テストまたは血液検査の結果が陽性だった人は、医師による評価と胸部X線検査を受けます。胸部X線検査の結果が正常で、結核を疑わせる症状のない人は、おそらく潜在性結核です。潜在性結核の人は、抗菌薬による治療を受けます( 初期感染症の治療)。胸部X線検査で異常が見つかった人は、活動性結核についての評価を受けます( 結核 : 結核の診断)。
結核の治療
ほとんどの感染者は治療のために入院する必要はありません。以下に当てはまる人は入院が必要です。
隔離
抗菌薬
結核に対して効果的な抗菌薬はいくつかあります。しかし結核菌の増殖は大変遅いため、抗菌薬の投与は6カ月以上という長期にわたって行う必要があります。治療は、患者自身が完全によくなったと思った後も長期にわたって継続しなければなりません。これを怠ると、細菌が完全に死滅せず、病気が再発しがちです。また、結核菌が抗菌薬に対する耐性を獲得する可能性もあります。
そのような長期間にわたって、毎日忘れずに薬を服用することは、ほとんどの人にとって困難です。様々な理由から、具合がよくなるとすぐに治療をやめてしまう人もいます。このような問題があるため、結核患者が医療従事者から薬を受け取り、その監視のもとで服薬することを多くの専門家が推奨しています。この方法は直接服薬確認療法(DOT)と呼ばれます。DOTでは患者が確実に薬を服用できるため、最初の2週間以降は、薬の投与が週に2~3回で済むこともよくあります。
1種類の薬だけで治療すると、その薬に耐性をもつ菌が少数残る可能性があるため、必ず作用の異なる2種類以上の抗菌薬が用いられます。他の細菌の大半では、少数の菌では再発しませんが、結核の治療を1種類の薬だけで行うと、結核菌はすぐにその薬に対する耐性を獲得します。
以前に治療を受けたことのない患者には、通常、次の2段階で治療を行います。
以下の抗菌薬がよく使用されます。
一般的には、これら4種類の薬を同時に、最初に使用します(第1選択薬と呼ばれます)。このレジメン(投薬計画)にストレプトマイシンを加えることもあります。これらの薬にはいずれも副作用がありますが、95%の結核患者は、これらの薬で重篤な副作用を生じることなく根治します。
結核の治療に用いられる薬剤
薬 |
投与経路 |
副作用 |
第1選択薬* |
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イソニアジド |
経口 |
1000人に1人の割合で肝臓に障害が生じ、疲労、食欲減退、吐き気、嘔吐、黄疸(おうだん)が現れる 腕や脚にしびれが生じることがある(末梢神経障害) |
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リファンピシン(および関連する薬のリファブチンとリファペンチン[rifapentine]) |
経口 |
肝臓の障害、特にリファンピシンをイソニアジドと組み合わせた場合に多い(服薬をやめると消失) 尿、涙、汗が赤褐色に変色する 腎不全 まれに白血球数や血小板数が低下する |
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ピラジナミド |
経口 |
肝臓の障害、消化不良、ときに痛風 |
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エタンブトール |
経口 |
かすみ目や色覚の低下(視神経に作用するため) |
第2選択薬† |
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ストレプトマイシン、アミカシン、カナマイシンなどのアミノグリコシド系薬剤 |
筋肉内注射 |
腎臓の障害、めまいや難聴(内耳の神経が損傷されるため) |
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フルオロキノロン系(レボフロキサシン、モキシフロキサシンなど) |
経口 |
腱の炎症や断裂 神経過敏、振戦(ふるえ)、けいれん発作 抗菌薬関連の下痢と大腸の炎症(大腸炎) |
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カプレオマイシン |
筋肉内注射 |
副作用はアミノグリコシド系薬剤と同様(ただし長期間の治療が必要な場合は、患者にとってカプレオマイシンの方が耐えやすい) |
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*第1選択薬とは、通常の場合に治療薬として最初に選択される薬です。 |
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†第2選択薬とは、結核の原因菌が第1選択薬に対する耐性をもっているか、患者が第1選択薬のいずれかに耐えられない場合に使用される薬です。 |
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これらの薬には、様々な組合せや投与スケジュールがあります。イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミドの3つを1つのカプセルに入れることもあり、これは、毎日服用しなければならない錠剤の数を減らし、薬剤耐性を生じにくくするのに役立ちます。他の抗菌薬とは異なり、結核治療用の薬は、通常すべてをまとめて1日に1回、または週に2、3回服用します。
薬剤耐性
結核菌は抗菌薬に対する耐性を獲得しやすい細菌であり、特に患者が服薬のスケジュールや指示された期間を守らなければ、耐性をもった菌が現れる可能性が高くなります。
抗菌薬に対する耐性をもつ菌によって引き起こされる結核(薬剤耐性結核)は、次第に増加しています。2013年には、48万人が薬剤耐性結核にかかったと推定されています。
薬剤耐性結核には非常に長期間の治療が必要になるため、薬剤耐性は深刻な問題です。そうした結核の患者には、4~5種類の薬を18~24カ月にわたって投与しなければなりません。また、薬剤耐性結核の治療に使用される薬は、しばしば効果が低く、毒性が強く、費用もかさみます。
抗菌薬に耐性を示す結核菌は、次のように分類されます。
数種類の新しい結核治療薬(ベダキリン、デラマニド、ステゾリド[sutezolid]など)は結核菌の耐性株に有効であり、薬剤耐性の流行を制御するために役立つと考えられます。
その他の治療
結核の予防
予防には次の3つの面があります。
感染の予防
結核菌は空気感染するため、換気を十分に行い新鮮な空気を取り入れることで、空気中の菌の量を減らし、感染を抑えることができます。またホームレスの保護施設、刑務所、病院や救急外来の待合区域など、感染リスクの高い人々が集まる建物には、紫外線殺菌灯を設置して空気中の結核菌を死滅させることも予防策になります。感染組織や体液のサンプルを扱う医療従事者や、感染している可能性のある人と接触する人は、空気フィルターの付いた特殊マスク(レスピレーター)を着用すると予防に役立ちます。
ツベルクリン検査や血液検査で陽性であった場合でも、症状がなければ予防措置は不要です。
活動性結核の患者のほとんどに入院は必要ありません。ただし、結核の感染拡大を予防するために、以下の行動をとることが推奨されます。
治療が効いてせきが出なくなるまで、上記の点を守る必要があります。適切な抗菌薬で1~2週間治療するだけで、人に結核をうつす可能性は低下します。ただし、幼児やエイズ患者といった感染リスクの高い人と暮らしていたり一緒の職場で働いていたりする場合は、繰り返したんのサンプルの検査を受け、感染させる危険がなくなったことを確認する必要があります。また、治療を受けてもせきが続く場合、指示通りに薬を服用しない場合、薬剤耐性の強い結核にかかっている場合も、結核の感染拡大を防ぐために、より長期にわたって上記の予防策を守る必要があります。
直接服薬確認療法(DOT)も感染の拡大を予防する手段の1つです。処方薬を指示通りに服用することを徹底すれば、細菌が根絶される可能性が高まります。
公衆衛生スタッフは結核患者から感染した疑いのある人を特定し、結核の検査を受けるよう勧めます。
初期感染症の治療
結核のうち感染力をもつのは活動性結核だけであるため、潜在性結核を早期に発見し治療することが、感染拡大を抑止する上で最も重要な対策の1つです。
ツベルクリン検査や血液検査で陽性の結果が出た人は、まだ発症していなくても治療を受ける必要があります。抗菌薬のイソニアジドは、活動性結核になる前に進行を阻止する上で非常に効果的です。この薬は9カ月間、毎日服用します。一部の患者には、リファンピシンのみを4カ月間にわたって毎日投与することもあります。国によっては、イソニアジドとリファペンチン(rifapentine)の併用をDOTで週1回、3カ月間行います。
予防治療は、ツベルクリン検査で陽性が出た若年層には確実に有益な方法です。また、結核のリスクが高い高齢者にとっても助けになる可能性が高く、その例としては、以下のいずれかに当てはまる人が挙げられます。
長い間結核が潜伏感染の状態にある高齢者では、抗菌薬の毒性による害を受けるリスクが、結核が活動性に転じるリスクを上回る場合があります。このような場合、医師は予防治療を行うかどうかを判断する前に、この問題の専門家に相談することがよくあります。
ツベルクリン検査や血液検査で陽性と判定された人は、以下の状況におかれると、活動性結核の発生リスクが高くなります。
一般にこのような人では、潜伏している結核感染症を治療する必要があります。
結核のワクチン接種
発展途上国の多くでは、以下の目的でBCG(カルメット-ゲラン桿菌)と呼ばれるワクチンが使用されています。
通常、医師は米国に住む人にBCGワクチンを推奨しません。しかしこのワクチンは、医療従事者や2種類以上の薬に耐性をもつ結核にさらされている人に対して、予防面で一定の役割を果たすと考えられます。現在、より効果の高いワクチン開発に向けて研究が行われています。
生後すぐにBCGを接種した場合、15年後にツベルクリン検査を行うと、約10%の人が結核菌に感染していなくても陽性を示します。BCGワクチン接種が皮膚テストに及ぼす影響は、時間が経過するにつれて小さくなります。BCGワクチン接種から約15年後の検査で陽性と判定された場合は、BCGワクチン接種の影響よりも結核が原因である可能性がはるかに高いと考えられます。にもかかわらず、生後すぐに接種を受けた人が後年のツベルクリン検査で陽性になると、誤ってBCGワクチンのせいにされることがよくあります。ほとんどの国で、結核には差別を招くイメージがつきまとっているため、多くの人は潜在性結核でさえ感染していることを認めたがらず、活動性結核ではなおさらです。
なお、ツベルクリン検査とは異なり、インターフェロンガンマ遊離試験はBCG接種による影響を受けません。
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