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破傷風

(開口障害)

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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破傷風は、嫌気性細菌の破傷風菌 Clostridium tetaniが作り出す毒素によって引き起こされる病気です。この毒素によって筋肉が不随意に収縮し、硬くなって動かせなくなります。

  • 破傷風は米国においてはまれですが、発展途上国ではよくみられます。

  • 診断は症状に基づいて下されます。

  • ワクチン接種と適切な創傷ケアにより破傷風を予防できます。

  • 治療では、破傷風免疫グロブリンを投与して毒素を中和し、治まるまで症状を治療します。

クロストリジウム感染症の概要も参照のこと。)

破傷風菌 Clostridium tetaniは、生存に酸素を必要としない嫌気性の細菌です。

破傷風は米国においてはまれですが、発展途上国ではよくみられます。

破傷風菌 Clostridium tetaniは動物の糞や土の中に存在し、そこで何年も生き延びます。破傷風菌は次の経路で体内に入ります。

  • 土や糞で汚染された傷口(特に傷が十分に洗浄されていない場合)

  • 滅菌していない針で刺された皮膚(違法薬物の注射や、刺青またはボディーピアスの施術時など)

けがをしても傷が小さいために患者が医師の診察さえ受けないことがあります。皮膚が壊死しかねない傷害(熱傷、凍傷、壊疽[えそ]、挫傷など)を負ったときは、破傷風になりやすい状態です。

ときに、破傷風は人工中絶や出産で子宮が損傷された際にも起こります。発展途上国では、へその緒の切除面が土に汚染され、新生児に破傷風が起こることがあります。

破傷風菌は芽胞を形成します。芽胞とは、細菌が不活性の(休眠)形態になったものです。芽胞になることで、細菌は厳しい環境でも生き延びることができます。環境がよくなったら、芽胞は活性型の細菌に戻ります。破傷風菌 Clostridium tetaniは破傷風毒素を作り、それが体中を移動して、特定の神経から別の神経への信号伝達を妨げます。その結果、筋肉が不随意に収縮します。

小児期の予防接種と成人期の10年毎の追加接種を受ければ、破傷風は予防できます。そのため、破傷風は主に予防接種を受けていない人やワクチンの効果が切れている人で起こります。この状況は発展途上国でより多くみられます。米国では、以下のような人で破傷風を発症するリスクが高くなります。

  • 注射薬物を使用している人

  • 60歳以上の人(加齢に伴い免疫力が低下するため)

  • 破傷風ワクチン(小児の定期予防接種に含まれます)の初回接種を一通り済ませていない人

症状

通常は負傷してから5~10日で破傷風の症状が始まりますが、最長で50日後に始まることもあります。

筋肉のけいれんは破傷風の特徴の1つです。筋肉が無意識に収縮(けいれん)し、硬くなって動かせなくなります。けいれんは通常、あごとのどから始まり、あごに起こると開口障害が生じ、のどに起こるとものを飲み込みにくくなります。その後、首、肩、顔に起き、さらに腹部と腕や脚に起こります。こうしたけいれんは呼吸にも影響を及ぼし、ひどい場合は顔面が青白くなります。まゆがつり上がり、笑ったような顔で表情が固まります。また背中の筋肉が収縮して、背中と首と脚が後方に反ります。括約筋のけいれんにより、便秘と排尿困難が起こります。物音、すきま風、ベッドのきしみといったささいな刺激が引き金となって、全身に筋肉のけいれんが起こります。

まれに、傷の近くの筋肉だけにけいれんが起こる場合もあります。このように破傷風の症状が特定の部位にとどまり、何週間も続くことがあります。

他の症状は、破傷風が神経系に影響を及ぼし、心拍の速さなど体内プロセスを調整する部分を侵すと起こります。破傷風になると、心拍数の増加と発熱がみられることがあります。大量に発汗することもあります。血圧は上がったり下がったりします。患者は口の中にあるものを肺に吸い込んで(誤嚥して)しまい、その結果肺炎になることがあります。

患者は落ち着きをなくし、いらだつことがあります。しかし、意識は通常、重症の場合でも完全に保たれます。

新生児では、通常は破傷風が全身に影響を及ぼし、死に至ることがしばしばあります。生存した小児が難聴になることもあります。

世界的にみると破傷風患者の約50%が死亡し、その通常の原因はのど、胸部、腹部の強い痛みを伴うけいれんによる呼吸障害です。一方、米国で適切な処置が行われた場合の死亡率は、わずか6%ほどです。しかし、重症の破傷風で治療が遅れた場合の死亡率は、60%にも上ります。注射薬物の使用者、非常に年齢の低い小児、および非常に高齢の人では、破傷風によって死亡する可能性が高くなっています。症状が直ちに現れて急速に進行する場合や治療が遅れた場合には、経過の見通しは悪くなります。

治療により、ほとんどの人が回復します。

知っていますか?

  • 汚れた傷口をすぐ念入りに洗うことで破傷風を予防できます。

診断

  • 医師による評価

医師は特定の筋肉(あごや背中の筋肉)に硬直やけいれんがみられる場合に破傷風を疑いますが、特に患者がけがをしている場合、その疑いが強くなります。

傷口から採取したサンプルを用いて、細菌を増殖させる検査(培養検査)を行うこともあります。しかし、ときに培養検査では、細菌がいないのに破傷風を示す結果(偽陽性)が出る場合や、実際に破傷風であるのに破傷風菌が検出されない場合(偽陰性)もあります。そのため、培養検査の結果だけで破傷風の診断を下すことはできません。

予防

破傷風は治療するより、予防することの方がはるかに効果的です。

ワクチン接種

最初の破傷風ワクチン接種(筋肉内に3回以上)と推奨される10年毎のワクチン接種が行われていれば、破傷風が発生することはまれです。破傷風ワクチンは、細菌が出す毒素を中和する抗体を作るように体を刺激しますが、ワクチンを接種してから抗体が作られるようになるまでには、数週間ほどかかります。

幼い小児には、ジフテリア、百日ぜき、破傷風の3種混合ワクチンとして接種されます( 乳児と小児のための定期予防接種)。

破傷風ワクチンの初回接種を一通り済ませた成人は、10年に1回追加接種を受ける必要があります。

妊婦には、妊娠のたびにジフテリア・破傷風・無細胞百日ぜき混合ワクチン(Tdap:成人用3種混合)が接種されます。これは妊婦や新生児を破傷風から守るためです。妊婦にワクチンを接種すると、妊娠中に破傷風に対する抗体が母親から胎児に移るので、新生児は破傷風に対する抗体をもって出生します。

負傷した後

負傷した場合は、汚れた傷口をすぐ念入りに洗うことで破傷風を予防できます。

受傷した患者に対し、破傷風の発病を抑えるために破傷風ワクチンを使用することもあります。ワクチン接種を受けたことがない人には、1回目の接種から1カ月後に2回目の接種を、1回目の接種から2カ月後に3回目の接種を行います。

ワクチンの効果が現れるまでに数週間かかるため、場合によっては破傷風の免疫グロブリンを追加します。この免疫グロブリンは、破傷風毒素に対する抗体のレベルが高い人(ドナー)から採取されます。この抗体は毒素を速やかに中和します。(抗体とは、破傷風毒素のような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパクです。)

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けがをした後:破傷風の予防注射はどのような人に必要か?

これまでのワクチン接種の回数

清浄で軽微な傷

深い傷または汚れた傷*

不明または3回未満

破傷風ワクチンと破傷風免疫グロブリン

3回以上§

破傷風ワクチン(最後に接種を受けてから10年以上経過している場合)

破傷風ワクチン(最後に接種を受けてから5年以上経過している場合)

*ちりやほこり、糞便、土壌、または唾液で汚染された傷や、刺し傷、組織が欠損した傷、何かが貫通してできた傷や挫滅、熱傷(やけど)、凍傷も含まれます。

破傷風ワクチンの接種回数が推奨回数に満たない人は、不足している分の接種を受けるべきです(これをキャッチアップ接種といいます)。

どの形態の破傷風ワクチンを使用するかは、その人の年齢によって異なります。7歳以上の人には、破傷風・ジフテリアトキソイドワクチン(Td)を使用します。Tdapの接種を一度も受けたことのない成人には、Td(2種混合)よりTdapが選択されます。7歳未満の小児には、ジフテリア・破傷風・無細胞百日ぜきワクチン(DTaP:3種混合)を使用します。百日ぜきワクチンが使用できない場合(例えば、けいれん発作や何らかの脳または神経の障害がある場合)は、ジフテリアと破傷風ワクチン(DT:2種混合)を使用します。

§破傷風ワクチンの接種回数が3回の人には、4回目の接種を行います。

治療

  • 傷口の洗浄と壊死した組織や異物の除去

  • 抗菌薬

  • 破傷風免疫グロブリン

  • 症状を改善する治療(対症療法)、ときに人工呼吸器の使用を含む

破傷風の患者は集中治療室で治療を受けます。筋肉のけいれんの引き金となりうる騒音の発生を抑え、部屋は静かに使用します。傷口は十分に洗浄し、壊死した組織や異物を取り除きます。

抗菌薬(通常はメトロニダゾール)を静脈から投与して細菌を死滅させ、毒素がそれ以上作られないようにします。しかし、抗菌薬はすでに作られた毒素には効果がないため、そうした毒素によって、引き続き筋肉のけいれんが発生します。すでに作られた毒素を中和するためには、通常は破傷風免疫グロブリンを筋肉内への注射で1回投与します。破傷風免疫グロブリンが利用できない場合、医師は非特異的な免疫グロブリンを投与することがありますが、これには破傷風に対する防御抗体だけでなく様々な抗体が含まれています。

以前のワクチン接種の効果が切れている場合には、破傷風ワクチンが接種されます。回復した人には、ワクチンが1回接種され、その後1カ月毎にさらに2回接種されます。そして、10年毎に追加接種が行われます。

症状の管理

筋肉のけいれんや硬直には、ジアゼパムやミダゾラムなどの鎮静薬が投与されることがあります。このような薬剤は、不安の緩和にも役立ちます。

筋肉の硬直が呼吸に影響を及ぼしている場合は、気道にチューブを挿入して(気管挿管)、筋肉を麻痺させる薬を投与することで、筋肉のけいれんを止めます。その後、チューブを人工呼吸器に接続します。

血圧と心拍数が不安定な場合は、モルヒネの静脈内投与や、マグネシウム、短時間作用型ベータ遮断薬、その他の薬剤の投与を行うことがあります。

ものを飲み込むことが困難になった場合は、栄養と水分を点滴で静脈から注入します。まれに鼻から胃へチューブを通して補給することもあります。

便秘はよくみられますが、その場合、便軟化剤を投与し、直腸にチューブを挿入してガスの発生に処理します。

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