(クロストリジウム感染症の概要 クロストリジウム感染症の概要 クロストリジウム属の 細菌は、健康な成人や新生児の腸内に一般的にみられます。また、動物、土壌、腐敗した野菜中にも存在します。これらの細菌は、生存に酸素を必要としない 嫌気性の細菌です。 クロストリジウム属には多くの種があります。 最も頻度の高いクロストリジウム感染症は 胃腸炎(ウェルシュ菌 Clostridium perfringensによる食中毒)で、これは通常、軽度の感染症で、典型的には自然に治癒します。重篤なクロスト... さらに読む と成人の ボツリヌス症 ボツリヌス症 ボツリヌス症は、ボツリヌス菌(Clostridium botulinum)という嫌気性細菌が作り出す毒素による中毒で、まれな病気ですが発生すると生命を脅かします。 ボツリヌス毒素は通常、食べものと一緒に体内に侵入し、筋力の低下や麻痺を引き起こします。 最初に、口腔乾燥、嚥下困難や発話困難、複視、眼の焦点が合わないなどの症状が現れます。あるいは、下痢、嘔吐、腹部けいれんといった消化管症状が最初に生じることもあります。... さらに読む も参照のこと。)
ボツリヌス菌 Clostridium botulinumは、生存に酸素を必要としない 嫌気性の細菌 嫌気性細菌についての概要 細菌は以下のように、いくつかの観点で分類できます。1つの分類法は、細菌が生きて増殖していくのに酸素が必要かどうかに基づくものです。 好気性細菌:酸素が必要な細菌 嫌気性細菌:酸素の存在がその細菌の生存や生育にとって障害となる細菌 通性嫌気性細菌:酸素があってもなくても生育できる細菌... さらに読む です。
この種の細菌は芽胞を形成します。芽胞とは、細菌が不活性の(休眠)形態になったものです。芽胞になることで、細菌は厳しい環境でも生き延びることができます。環境がよくなったら、芽胞は活性型の細菌に戻ります。ボツリヌス菌の芽胞は、水分と栄養があって、酸素がない環境(腸管など)で活性型の細菌に戻ります。そのため、乳児がボツリヌス菌の芽胞を含んだ食べものを摂取すると、芽胞が腸内で活性型の細菌に変化し、毒素を作るようになります。
乳児ボツリヌス症は、生後6カ月未満の乳児に最も多く起こります。
乳児ボツリヌス症はそのほとんどが原因不明ですが、一部はハチミツの摂取と関連しています。そのため、医師は12カ月未満の乳児にハチミツを与えないよう推奨しています。
症状
乳児ボツリヌス症の乳児の約90%では、便秘が最初の症状です。筋力の低下が起こるのはその後で、顔面と頭部から始まり、最終的に腕、脚、呼吸に関わる筋肉にも起こります。まぶたが垂れ下がり、泣き声が弱々しくなり、よだれが増えることがあります。吸う力が弱くなり、顔の表情が失われます。
症状は多岐にわたり、疲れて見える、乳を飲むのが遅いといった軽いものから、筋緊張が広範囲に消失して呼吸困難が起こるといった重いものまで様々です。筋緊張が消失した乳児は、異常にぐったりして感じられます。
診断
便検査
医師は症状に基づいて乳児ボツリヌス症を疑います。
乳児ボツリヌス症の診断は、乳児の便サンプルからボツリヌス菌またはボツリヌス毒素が検出されると確定します。
治療
ボツリヌス免疫グロブリン
乳児ボツリヌス症が疑われると、検査結果を待たずに直ちに治療が開始されます。
乳児は入院させられ、医師は 人工呼吸器 人工呼吸器 人工呼吸器は、肺への空気の出入りを補助するために用いる機械です。 呼吸不全の患者の一部は、人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)による呼吸の補助を必要とします。人工呼吸器によって命が助かることもあります。 人工呼吸器には、多くの使い方があります。通常は、合成樹脂製のチューブを鼻または口から気管に挿入します。人工呼吸器が数日以上必要な場合は、首の前側を小さく切開して(気管切開)、気管に直接チューブを通すこともあります。人工呼... さらに読む で呼吸を補助するなど、乳児を安定させる(状態の悪化を防ぐ)対策をとります。
乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス免疫グロブリンをゆっくり静脈内投与することによって治療します。この免疫グロブリンは、ボツリヌス毒素に対する抗体レベルが高い人(ドナー)から採取されます。(抗体とは、ボツリヌス毒素のような特定の異物による攻撃から体を守るために免疫系が作り出すタンパク質です。)
細菌によってすでに作られた毒素が主な問題となっているため、抗菌薬は役に立ちません。