ガス壊疽は筋肉組織に急速に広がるクロストリジウム感染症で、治療しないとすぐに死に至ります。
米国では、年間数千例のガス壊疽が発生しています。
クロストリジウム属細菌は、酸素がない環境に生息する嫌気性の細菌です。そのため、ひどく損傷した軟部組織や非常に深い傷の中でよく増殖します。そうした組織は血流が乏しく、酸素レベルも低下しているためです。
ガス壊疽を含む軟部組織のクロストリジウム感染症の大半は、ウェルシュ菌 Clostridium perfringensが原因です。軟部組織のクロストリジウム感染症は、たいていはけがをしてから数時間または数日以内に現れますが、感染症が現れるまでに何日もかかることもあります。
その他の軟部組織のクロストリジウム感染症としては、以下のものがあります。
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皮膚の浅い部分の感染症(蜂窩織炎[ほうかしきえん]):あまり痛みがない場合もある
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筋肉に至るより深部の感染症(筋炎):通常は痛みを伴う
まれに、皮膚の感染症が広がって重篤化することがあります。
軟部組織に感染した細菌が老廃物として多量のガスを出すことがあります。このガスによって、組織内に気泡や水疱ができます。また感染によって細い血管がふさがれることもよくあります。その結果、感染組織が壊死し、壊疽を起こします。組織が壊疽していると、クロストリジウム感染症はさらに速く広がります。感染が皮膚のみにとどまる場合より筋肉にも及んでいる場合の方が、壊疽が発生する可能性は高くなります。
原因
症状
ガス壊疽は、感染部に激しい痛みを生じます。最初、患部は腫れて色が白っぽくなりますが、やがて赤くなり、次に褐色、最終的に黒緑色になります。患部は硬く圧痛を伴います。しばしば大きな水疱ができます。水疱の中の液体に気泡が見えたり、皮膚の下にガスがたまっている感触が感じられたりすることがあり、これは通常は感染症が進行してからみられます。傷から排出された液体は腐敗臭を放ちます。
患者はたちまち汗が増え、激しい不安を覚えます。嘔吐することもあります。心拍や呼吸が速くなります。皮膚が黄色になり、黄疸が起こることもあります。これらの影響は細菌が作る毒素によるものです。
一般的に、危険な低血圧(ショック)と昏睡が起こる病気の後期まで意識があります。その後すぐに腎不全と死に至ります。
治療しないで放置すると、感染者の100%が死に至ります(通常は48時間以内)。治療を行っても、約4分の1の人が死亡します。
診断
ガス壊疽は、症状と身体診察の結果から疑われます。
X線検査を行って筋肉組織の気泡を確認したり、CT検査やMRI検査で壊死した筋肉組織の領域を調べたりします。これらの結果も診断の助けとなります。しかし、気泡は他の嫌気性細菌の感染症でも起こることがあります。
傷から採取した液体を顕微鏡で観察してクロストリジウム属細菌の有無を確認し、細菌がいれば検査室で増殖させる検査(培養検査)を行います。培養によりクロストリジウム属細菌の有無を確認できます。ただし、クロストリジウム属細菌が存在してもガス壊疽がみられない場合もあります。
多くの場合、診断を確定するには、検査目的の手術(試験切開)や切除したサンプルの顕微鏡観察(生検)を行い、筋肉の特徴的な変化を確認する必要があります。