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炭疽

執筆者:

Larry M. Bush

, MD, FACP, Charles E. Schmidt College of Medicine, Florida Atlantic University

最終査読/改訂年月 2018年 5月
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本ページのリソース
  • 人間が感染する通常の原因は皮膚接触ですが、炭疽菌の芽胞を吸い込んだり、汚染された肉を食べたりしても感染します。

  • 炭疽菌の芽胞は生物兵器に使用される可能性があります。

  • 症状としては、皮膚の隆起と水疱(皮膚接触後)、呼吸困難、胸の痛み(芽胞吸入後)、腹痛と出血を伴う下痢(汚染された肉を食べた後)などがあります。

  • これらの症状により感染が疑われる場合には、感染組織のサンプル中でこの細菌を特定することによって診断を確定します。

  • 炭疽菌にさらされるリスクが高い人には、ワクチンを接種します。

  • 死亡のリスクを減らすため、炭疽菌にさらされた場合はすぐに抗菌薬を投与する必要があります。

自然界における炭疽の発生は、ウシ、ヒツジ、ヤギなどの草食性の家畜にみられます。炭疽は土壌で何年間も生存可能な芽胞を作ることができ、放牧されている動物は、芽胞に触れたり芽胞を摂取したりすることで感染します。炭疽は通常、感染した動物または動物製品(羊毛、皮、毛など)に触れることで人間に感染します。芽胞は何十年にもわたり動物製品に残っている可能性があり、寒さや熱によって容易に死滅することはありません。ほんのわずかな接触でも、感染が見込まれます。人間が感染する場合は通常は皮膚から感染しますが、それ以外でも芽胞を吸い込んだり、汚染された肉を加熱調理が不十分な状態で食べたりすることでも感染します。

皮膚炭疽は、感染者に接触したり感染者が汚染した物体に触れたりすることで、人から人に広がります。ただし、芽胞を吸い込んで感染する肺炭疽や汚染された肉を食べて感染する消化管炭疽が人から人に伝染することはありません。

炭疽菌は数種類の毒素を作り、様々な症状を引き起こします。

症状

炭疽の症状は、以下のどの経路で感染したかによって異なります。

  • 皮膚を介して(ほとんどの場合)

  • 吸入によって(最も重篤)

  • 消化管を介して(まれ)

皮膚炭疽

大多数の症例が皮膚を介したものです。感染すると、1~10日後に、皮膚に無痛でかゆみを伴う赤褐色の隆起ができます。隆起した部分には水疱ができ、やがて破れて黒いかさぶた(痂皮[かひ])になり、その周辺が腫れます。近くのリンパ節も腫れることがあり、筋肉痛、頭痛、発熱、吐き気と嘔吐などの症状が出る場合があります。隆起が治まり、腫れがひくまでに数週間ほどかかります。

治療をしなければ約10~20%の人が死亡しますが、治療すれば死亡することはまれです。

肺炭疽(羊毛選別者病)

肺炭疽は最も重篤です。炭疽菌の芽胞を吸入することで発生し、この吸入はほぼすべての場合、職業上汚染された動物素材(皮など)の製品を扱う人に起こります。

芽胞は数週間肺の中にとどまることがありますが、やがてマクロファージと呼ばれる白血球に侵入して発芽し、この発芽した細菌が増殖し、胸部のリンパ節に拡散します。菌が作る毒素によってリンパ節が腫れて破れ、出血して感染が周りに広がります。また、感染した体液が肺と胸壁の間の空間にたまります。

症状は菌の吸入後、1日~6週間後に現れます。最初は症状がはっきりせず、インフルエンザに似て、軽度の筋肉痛、わずかな発熱、胸の不快感、乾いたせきが起こります。数日後に、呼吸が突然非常に困難になり、胸痛と発汗を伴う高熱が起こります。血圧が危険なレベル(ショック状態 ショック ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。 (低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む が起こる水準)まで急激に低下し、昏睡に至ります。こうした重度の症状は、おそらく大量の毒素が放出された結果起こります。

消化管炭疽または髄膜脳炎(脳や脳と脊髄を覆う組織[髄膜]の感染症)が起こる場合があります。

すぐに治療を始めても、重度の症状が現れてから24~36時間後に死亡することが多く、治療を受けなければ、肺炭疽患者の全員が死亡します。2001年に米国で起こった集団発生では、治療を受けた肺炭疽患者の45%が死亡しました。

消化管炭疽

消化管炭疽はまれな病気です。汚染された肉を食べた場合、炭疽菌が口の中、のど、または腸で増殖し、大量出血や組織を壊死させる毒素を放出します。発熱、のどの痛み、首の腫れ、腹痛、血性下痢(出血を伴う下痢)がみられ、吐血が起こります。

治療を受けても感染者の約半数が死亡し、その理由はおそらく、患者が診断時点ですでに重症化しているためと考えられます。

知っていますか?

  • 炭疽菌の芽胞は冷気や熱によって簡単には死滅せず、何十年も生存します。

  • 125万人以上が炭疽ワクチンの接種を受け、重篤な副作用は報告されていません。

診断

  • 感染した皮膚、体液、便のサンプルを観察して培養する検査

  • ときに血液検査

典型的な外観から、医師は皮膚の炭疽を疑います。動物や動物性素材で作られた製品に触れた、または炭疽を発症した人がいる地域に行ったなどの情報は診断の手がかりになります。

肺炭疽が疑われる場合には、胸部のX線またはCT検査が行われます。

感染した皮膚、肺の周りの体液、または便からサンプルを採取して、顕微鏡での観察や培養(サンプル中の細菌を増殖させる方法)による検査を行います。もし炭疽菌がいれば、容易に特定できます。

また、血液中に細菌の遺伝物質の断片や細菌が作る毒素に対する抗体がないか、血液検査で調べることもあります。

予防

  • ワクチン接種

  • 抗菌薬の予防的投与

感染のリスクが高い人には、炭疽のワクチンを接種します。また、生物兵器として使用される可能性もあることから、軍隊に所属する人員の大半もワクチン接種を受けます。十分な効果を得るために、ワクチンは5回接種されます。毎年の追加接種も推奨されます。安全性への懸念が広く指摘されているものの、すでに125万人以上の人が炭疽ワクチンの接種を受け、重篤な副作用は報告されていません。

肺炭疽にさらされた人には、抗菌薬として通常はシプロフロキサシン、レボフロキサシン、またはドキシサイクリンを経口で使用しますが、これらの抗菌薬が使用できない場合は、アモキシシリンを用います。抗菌薬は炭疽の発症を予防するために、少なくとも60日間は継続して投与します。このような人には、ワクチンも3回接種されます。

治療

  • 抗菌薬

炭疽の治療が遅くなればなるほど、死亡のリスクは高まります。そのため、医師は通常、炭疽の疑いが生じたらすぐに治療を開始します。

  • 皮膚炭疽には、シプロフロキサシンやドキシサイクリンの経口投与を7~10日間行います。

  • 肺炭疽や消化管炭疽の治療には、2~3種類の抗菌薬を併用します。例えば、シプロフロキサシンまたはドキシサイクリンの静脈内投与に、アンピシリン、クリンダマイシン、またはリファンピシンなどの抗菌薬を組み合わせて使用します。

  • その他の治療には、人工呼吸器による呼吸の補助や、血圧を上げるための輸液と薬の投与などがあります。

  • 新しい薬であるラキシバクマブ(raxibacumab)(体内で炭疽菌毒素に結合する抗体)が役に立つ可能性があります。

  • 脳と髄膜が侵されている場合や、肺の周囲に液体がたまっている場合は、コルチコステロイドが助けになることがあります。

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